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竹島水族館探訪記

先日訪れた愛知県蒲郡市にある公立のちいさな水族館の展示がとても探究学舎のコンテンツ制作と似ているなぁと思った話を記録しておきます。
訪れたのはここ、竹島水族館です。深海生物では日本一の数を展示しているそうです。

まずはいくつか展示を見ていきましょう。

カブトガニの裏側!
え、美味しいのかどうか…?
みんな大好きチンアナゴ
チンアナゴの通信簿…
しれっと展示の仕組みを暴露
おとうふが冷やっこに成長する(ここは水族館)
冷やっこの仲間いろいろいるね
これがうわさのスカウトマン…!


これまでみたどこのウツボ水槽よりもカッコイイ…!
これで今日からウツボの見分けには困らない!
バックヤードの重鎮からのオシャレ部門第二位…!
ウツボは美味いらしい

張り紙が…多い…!!
なんか普通の解説じゃない…!!
通知表?美味?履歴書??

秘密兵器は扇風機…!

展示のネタばらし…に至ってはもう生き物についての解説じゃないし…
ただ、ひとつひとつの水槽自体は大きくはないし、特に珍しいものがいるわけではないけれど…とにかく見応えがあります。ていうか、撮ってた写真張り紙ばかりでした。

水槽の周りは張り紙でいっぱい!
魚マンションかわいい…

思わず読んでしまう手描きの張り紙。イラストもゆるいし擬人化された生き物の説明もなんだか身に覚えがある例えで身近すぎます。
その横でしれっと泳いでる当事者(当時魚?)の我存ぜぬの面がなんだか急にもうすごく面白く見えてしまいます。しかも運が良ければその水槽担当の飼育スタッフがいて、直接話を聞けたりしちゃうのです。生き物も身近になるどころか、飼育スタッフさえ身近に。

スタッフ紹介のボリュームがすごい(上にお知らせでいっぱいの巨大なホワイトボードがある)

この張り紙のすごいところは、擬人化された通知表とか履歴書から浮かび上がる生き物の特徴が、水族館の解説的には間違ってないすごく上手いディフォルメになっているところ。専門施設なので当たり前なんだろうとは思われるかもしれませんが、これがなかなか難しいことなんだろうと思います。生き物に興味を持ってるならまだしも、興味さえないひとにいきなり専門的な説明をしても興味持つどころか引いちゃいますよね。

サメとかタカアシガニとか触れるゾーンも張り紙たくさん!

実際に、全国の水族館を手弁当で視察した館長さんによると解説パネルって全然読まれてないらしいです。確かに行ったことある美ら海とか八景島とか江ノ島みたいな超有名水族館でもほとんど読んでるのみたことないかも。
お客さんからしたら、大きくて綺麗な水槽とか、イルカショーとか、そういうきれいで楽しいものを見て癒される場所で、専門的な知識は別に…みたいなひとが大半なのでしょうか。

すごい小さいステージだけど芸達者なオタリアのショーもある

そこに目をつけた館長さんが始めたことがこのゆる面白い解説張り紙。まだヒラ飼育スタッフでしかなかった当時ひとりでやって上司の方に剥がされたりしたらしいです。「ざんねんないきもの」系の本が子供達にすごく流行ったけどそれと似てるかもしれません。
館長さんがなぜそんなことなんてしたのかというと、ずばり竹島水族館は廃館寸前だったため、来場者もお金もなくできることがそれしかなかった。
愛知県には名古屋港水族館という大型施設もあり、高速を使えば日帰りで三重県の鳥羽水族館や静岡の沼津深海水族館などにも行けてしまうため、車文化で日帰り移動範囲も広い愛知県内では何か強みでもない限り立地的にも弱すぎるのですが、諦めなかったところがこの館長さんのすごいところ。
お金がなくても何か自分にできることはないか、まずは同類の施設をくまなく視察して現在の水族館を取り巻く状況について調べることから始めたんですね。
(意外とこれできるひと少ない気がします。どんなジャンルの仕事でもこれやらないと結局は「オレが考えた最強の〇〇」になってしまうので…)
そこでの気づきのひとつが「水族館に来ているひとは生き物の情報を得るためにきているのではない」ということだったようです。

そこからの起死回生の様子はカンブリア宮殿などをみてもらうとして。

カンブリア宮殿にも取り上げられていたスタッフ水槽

若手の飼育スタッフに予算と水槽をまるっと任せるやり方もいいなぁと思いました。自分がお客さんに見せたい景色や生き物を予算内で実現する方法を考え、実行し、実際に客足を見て判断する。これは館長さんも何かあった時の責任を負う覚悟があるからこそできること。予算内に収めるために自分でダイビングして捕獲してくる飼育スタッフもいるようで、内制の多い探究学舎のコンテンツ制作に繋がるところがあるなぁと思いました。

さて、そんな竹島水族館ですが「興味を広げる」ことを仕事としている我々にとってはすごく重要なことを示唆してくれていると思います。

  • 本物を目の前にしても「きっかけ」がなければ興味はわかないということ

  • 「きっかけ」は誰にでもわかることばや感情の動きであること

  • 知りたいと思ったらすぐに追加情報が手に入ること

  • 表側は簡単でも裏側は専門的であること

このあたりは探究学舎に関わる方ならわりとすぐ気づく類似性だと思うんですが、大切なのはここからで、竹島水族館がここまで人気になったのは
「その自分たちのやり方を信じて続けたこと」
だと思うんですね。今できることを全力でやり、信じて続けること。改善すべきことでできることはすぐにでもやる。長期でめざすものを見失わない。すごくダイナミックなプロセスを大事にしているなぁと。

床面積が倍くらいになる!?

そんな竹島水族館ですが、コツコツ頑張ってきてついに…増築をしています!
館長さん悲願の深海水槽が出来上がるようなので、またぜひ足を運びたいと思ってます。みなさんもぜひ機会があれば訪れてみてください。

蒲郡はみかんの名産地で、竹島には八百富神社(やおとみじんじゃ)という日本屈指のパワースポットがあります。絶景。江の島、竹生島、厳島に並ぶ日本七弁天のひとつです。お土産にはヤマサのちくわも忘れずに!

もちろん水族館の物販も最高にイカしてるのでぜひ!
外からも島からも絶景が望める竹島
お土産にはヤマサのちくわオススメ
温泉もあるよ

▼カンブリア宮殿にも取り上げられてました

▼X(旧Twitter)インスタもあります


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