あなたの番ですの犯人は、99%黒島ではない理由

ラスト1回になり、犯人予想が盛り上がっているが、ネットの大方の意見が黒島犯人説になっている。しかし、99%黒島は犯人ではないという理由と、犯人予想をしてみたい。

■実は推理ドラマではない、あな番

殺人事件が起こり、ネットでは考察があふれていて、推理ドラマのていをしている「あな番」だが、厳密には推理ドラマの定義から少し外れると思う。
推理小説の必須条件をまとめた「ノックスの十戒」というルールがあるが、こんなものがある。

犯人は物語の当初に登場していなければならない
探偵は読者に提示していない手がかりによって解決してはならない

推理ドラマの定石として、事件が起こった際にはすでに読者に対して、犯人とトリックを解くための情報(犯人含む)が開示されている必要があるという項目だ。
しかし「あな番」に関しては、しばしば情報が後出しになる。たとえば、甲野貴文は、ほぼほぼ黒島のストーカーだったという内山によって殺害されていると思われるが、内山が正式に登場したのは甲野貴文の死後である。

さらに、赤池家殺害の事件がもし推理小説の中で起こった場合、「オーマイジュリア」が鳴ったタイミングや、藤井が玄関に出てきたタイミング、窓が開いていたが、どこからどこまでの移動は可能かといった詳細な情報が開示された上で読者は推理することになる。そして、そこにはさほど重要に思えない些細な事実が提示されていて、それが解決のためのカギになったりする。

■わかりやすい伏線と、どんでん返し
つまり「あな番」の構造として、読者に詳細な推理のための要素を提示することなく、ストーリーの展開の意外性によって物語を進行していっているのだ。

なぜ一般的な推理ドラマにしなかったかといえば、詳細な情報を提示したとしても2クールにわたり、全ての伏線を覚えていられるわけがないし、対象視聴者が推理マニアに限られてしまうため、民法のドラマとして適切な判断だと言える。

一方、ものすごい分かりやすい伏線の連続でもある。例えば藤井がタナカマサオを殺害したのは、分かりやすすぎる伏線というかむしろガス線を切断したところを描かなかっただけだし、19話で明かされた田宮さんが黒島のDVを目撃したのも、初期から言われていることだった。
分かりやすすぎる伏線を提示することで、視聴者の「やっぱりね」というカタルシスを得やすい作りになっている。

しかし、それだけでは、意外性という点で視聴者を引っ張れないので、要所でどんでん返しを用意している。10話における菜奈ちゃん殺害のそれである。
9話時点で菜奈ちゃん殺害を予想していた人は誰もいないと思うが、それは主演が死ぬわけがないというバイアスによるものだ。
しかし、今から思うと、だからこそのダブル主演という設定で、企画当初から1クールめで片方を被害者にする設定によって意外性を担保していたのだと思う。

■最後の黒幕が黒島という予定調和で終わるわけがない
ということで「あな番」は、わかりやすい伏線(やっぱりね)と、どんでん返し(まさかそんなことが)で構成されているドラマなわけで、最終回が予定調和で終わるわけがないのだ。
つまり、すでに数話前から黒幕だ黒幕だと言われている黒島が犯人なわけないのである。

では、黒幕をどう推理するかといえば、メタ推理するしかない。なぜならば、冒頭の説明の通り、推理要素の提示が少ないため”この局面における意外性のあるストーリーとは”というメタ推理をするしかないからだ。

メタ推理をした場合、もちろん黒島は除外、19話で絞られた尾野、西村、江藤の3人は、製作側がここに絞った以上逆に「この中にはいない」というメッセージである。この中の誰かが犯人なら予定調和で終わってしまうからだ。
じゃあ意外性のある黒幕の条件とは、と考えると以下のどれかである。

1.菜奈ちゃんもしくは翔太くんが犯人(探偵が犯人説)
2.初期にミスリード要因で黒幕候補から消えた人物
3.それ以外の第3の人物

1.に関しては、どう考えても絶望エンドなのでおそらくないと思う。ドラマ全般に渡って愛を強調しているため、感情的に迎合できないラストにするはずがない。
2についても、該当する人物が乏しい。藤井にしろ久住にしろカタが付きすぎてしまっているので、ここから黒幕として浮上させることは難しく、該当人物がいない。

ということで、3.それ以外の第3の人物 を押す。ネットでは、田宮さんの奥さんが推されているが、もし田宮さんの奥さんが犯人だったら冒頭からの存在感がなさすぎである。

個人的には冒頭から出演しており、ある程度の存在感もあった水城刑事を推したい。

■水城刑事、げんかつぎの伏線
19話で、黒幕は(たぶん)星占いのラッキーデーに反抗を犯していることが判明した。本来伏線というのは、それと分からない形でさりげなく張られるものだが、物語冒頭から水城刑事が縁起を気にするげんかつぎの人物であることがさりげなく描かれている。

殺害現場に塩を持って来いと言ったり、翔太くんにお守りを渡すシーンもあった。これは、後程見返したときに、水城刑事が犯人だという伏線になりえないだろうか。
しかも神谷刑事死亡時のあいたいよタイムで、顔をふせて泣いており、顔が映ってなかったため笑っていた可能性もあり得る。

ということで、メタ推理として水城刑事犯人説を推したいが、どうなのだろうか。

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