PBFD ファクトシート (その1) 概要

PBFD研究の第一人者である Branson W. Ritchie 博士により、2011年に執筆され、2013年に更新された PBFD Factsheetの翻訳を試みます。このノートでは、ファクトシートそのものについての説明を行い、ファクトシートの最初の部分(概要)を訳します。

【ファクトシートについて】

原文:  http://c.ymcdn.com/sites/www.aazv.org/resource/resmgr/IDM/IDM_Psittacine_Beak_and_Feat.pdf  (英文PDF)

著者: Branson W. Ritchie DVM, Ph.D (獣医学博士)。PBFDの原因ウィルスを特定し、検査方法を確立した研究者。パチェコ氏病(ヘルペスウィルス感染症)、クラミジア、ポリオーマウィルス(BFD)に対するワクチンを開発した方でもある。

ファクトシート概要: American Association of Zoo Veterinarians Infectious Disease Committee Manual 2013(全米動物園獣医師連盟の感染症委員会による2013年版マニュアル)の一部として、PBFD研究第一人者であるRitchie博士が執筆したもの。

【概要】

感染の可能性のあるグループ(Animal Group(s) Affected)


オウム類。新大陸よりも旧世界の種

感染経路 (Transmission)

吸入もしくは摂取での、ウィルスに感染している動物との直接接触。
ウィルスに汚染された排泄物、分泌物および羽片との間接接触。
ウィルスは、汚染された環境内、特に換気扇等に数年間留まり得る。

臨床的症状(Clinical Signs)

 最急性(peracute): 特にヨウムに見られる。汎血球減少症と死亡。

急性(acute): 抑鬱症状の後に、ジストロフィ性の羽毛の異常と死亡。

慢性(chronic): 進行性の、ジストロフィ性の羽の異常があらわれる。長期間にわたり感染している鳥には嘴の壊死と潰瘍があらわれることもある。数か月から数年で死亡。

重症度(Severity)

急速に進行する疾患はヨウム、クロインコ、オオハナインコ及びcokatooに最も多くみられる。

PCV-1関連の疾患は、大部分の旧世界のオウム類にとっては致命的である。

慢性でより軽症の疾患は、ラブバード、ローリー、ロリキート、特にPCV-2に感染した鳥にみられる。

治療(Treatment)

世話をする人間でさえ他の鳥と接触しないような孤立した環境において、サポート的な治療が提供されるべきである。

予防と管理(Prevention and Control) 

予防:PCRによる検査が管理されている個体群において感染拡大を減少させている。
開発されたワクチンは政府による承認の段階にある。

管理: 検査と感染した鳥の隔離。entry(入国、購入、お迎え)時の厳しい検疫プロトコル

人畜共通感染症(Zoonotic)

既知のものはない

著者情報など

Fact Sheet 製作者: Branson W. Ritchie
Sheet 執筆完了: 2011年11月15日。2013年8月19日改訂
評価者: Thomas N. Tully, Lauren V. Powers

[Notes 訳者覚書]

原文中の "dystrophic feather"、または"feather dystrophy" という語句。

辞書には「異栄養性」と出ている筈です。しかし、「異栄養性の羽」と訳しても意味がわかりませんね。
"dys"という接頭辞の意味は「悪化」「困難」「不良」などです。
"trophy", "trophic"はギリシア語由来の言葉で、「栄養」を意味しています。
そこから「異栄養性」という訳が出てくるのでしょう。

大辞泉などをひけば、「栄養障害や代謝障害によって細胞や組織に変性・萎縮などの起こること」といった意味だとわかります。でも、「栄養・代謝障害により変性・萎縮した羽」と訳すのは、ちょっと長すぎます。

"dystrophic feather"という語句が意味しているのは、PBFDの症状が出た羽毛のことだと思います。Wikipedia の写真をお借りして……

……こういう羽のことでしょう。ともかく、「異栄養性の羽」と訳してしまうと意味不明なので、苦し紛れですが、「ジストロフィー性の羽」という片仮名で仮の訳語とします。意味するところは、PBFD特有の羽毛の成長障害のことだと受けとっておいてください。

PBFD ファクトシート(その2) へ続きます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?