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茄子のはなし

ひき肉は豚もしくは合い挽きが良い、まず慎重にパックを開けて見える一面に塩コショウを軽く振っておく、ひき肉自身の脂を引き出す為の呼び水的なサラダ油をフライパンに少しだけ垂らしたらその上に先ほど塩コショウを振った面を下にするようにパックからひき肉を落とし、新たに見えた上面にも軽く塩コショウを振る。ハンバーグを焼く要領でまず片面を中火でこんがり焼くこの時油跳ねがすごいのでフタをするのが良いように思う、香ばしい香りがして来たら一旦ふたを開けて様子を見る。肉の底面の周りの脂が焦げ色になっていたらひっくり返す頃合いだ、油跳ねがすごいかもしれないので一旦火を止め音が落ち着くのを待ちフライ返しでひっくり返してフタをしてまた中火、私はこの辺りの待ち時間で茄子を切り水にさらして置いている。

ひき肉の両面が香ばしく焼けたらフライ返しをつかって四角いハンバーグをランダムな大きさに切っていく今度は見えた赤い面を焼いていくという算段であるここからは箸を使ってコロコロと面を変えながらやや弱火でじっくりをひき肉の持つ油を引き出しながら歪なサイコロステーキをひたすら焼いていく。念のため一番大きな塊を割ってみて火が通っていたら後は気のすむまで香ばしく焼いていきその油を今度は茄子に吸わせるように焼いていく、肉の脂を吸った茄子の甘味は癖になる、おそらく脳とか肺とか肝臓によくない成分が入ってるに違いない、茄子も気が済むまで焼くと良い、個人的には会社で何かあったに違いない帰って来た息子くらいくたくたに焼くのが好きだ。まぁ息子いないんでよくわかんないけど。

さてひき肉も茄子も気が済むまでこんがり焼いた後はここに無難な調味料を入れればなんでも美味しいはずだが今日は出来合いの麻婆茄子のソースを買ってきたのでそれを入れる、味噌ベースと書いてあり食欲がそそる事は目に見えている、ここで味噌が嫌いな人にも配慮出来るのが出来る大人という物である、ざまぁ味噌嫌いざまぁ。仕上げに適当に切ったネギをフライパンに散らして15秒くらい混ぜる、もう火は止めていいだろう余熱で十分だ。戦争も過ぎればただの虐殺だ、ネギの恨みを末代まで買う必要は無いだろう。

炊いたご飯に麻婆茄子をかける、どうやら購入したソースはそんなに辛くないらしいのでスパイス会社が長年かけて研究開発しましたというような事をでかでかと書いているジャケットの一味唐辛子をドバドバと振る、カレーに近かった表面は赤に侵略されていく、かくしてスパイス会社は麻婆茄子の制圧に成功した。

麻婆茄子と米をスプーンの上に乗せ口に運ぶとなるほど和の旨味を感じる、その奥から茄子が吸った油の甘味とクタっとした食感、少しザクっとした焼いた肉の香ばしさがやって来る、唐辛子の辛さが舌から体を駆け抜けじんわりと汗が流れて来た所にハイボールを流す。少しピリっとしたアルコールの角が良い感じに油と辛さを忘れさせる後はこのループで気が付けば皿が綺麗になっていた、今度オイスターソースを少し足したり、仕上げに花椒を入れてみてもいいのかもしれない、きっと味に奥行きが出るはずだ。

茄子が少し余っている、明日は何を作ろうか?茄子は無限の可能性を秘めている。俺と違って、俺と違って。

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