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短編小説まとめ

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自分の作った小説の中で4千字~1万字程度の話をまとめたものです。明るい話、暗い話はバラバラですが手軽に読める程度の短い話ばかり集めました
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#短編小説

【短編小説】厄介な隣虫

その虫は最も近しい隣人である。 医者の源斎が患者に頼まれて体の中で暴れ回る「虫」をとる話…

鳥野 小川
2週間前
24

【短編小説】石の心臓

ああ、やっと見つけました。探しましたよ。 謎の石と不吉なナニカを書き綴ったとあるノートの…

鳥野 小川
4か月前
29

【短編小説】涙空トーストのはじまり

いつか骸も花のための養分となる。 どうしても小春ちゃんに救いある展開を与えたくて…。上記…

鳥野 小川
4か月前
72

【短編小説】桜の樹の下には初恋が埋まっている

埋めても埋めてもまた芽吹く。 初恋を桜の下に埋めた少女の話。  桜が嫌いだ。いかにも春代…

鳥野 小川
5か月前
33

【短編小説】記憶の置き傘

あなたが忘れたものはなんですか? 男と何度も現れる赤い傘の話。  それを見つけたのは小雨…

鳥野 小川
6か月前
33

【短編小説】氷と炎の国より贈り物を

グレイリヨール!(アイスランド語でメリークリスマスの意) 常夜の国の大烏がアイスランドの…

鳥野 小川
8か月前
28

【短編小説】黒猫のシロ

自分にないからこそ好きになる。 白を愛する黒猫を飼っている男の話。  うちには「シロ」という名の猫がいる。動物好きな妻がどうしても、と切望して家に迎え入れた黒猫だ。――そう、黒猫なのである。  別に足先や尻尾の先が白だとかそういうことではない。てっぺんから尻尾の先までまごうことなき黒だ。無数の毛を一本一本かきわければ、一本くらい白髪ならぬ白毛が見つかるかもしれないが、やるのはよほど暇なときにしておいたほうがいいだろう。わざわざ白髪を探すなんて、人間相手でもやらないのだから。

【短編小説】仏に非ず

無邪気な悪が最も恐ろしい。 おぞましい像とそれに魅入られた男。苦労人の店主を添えて。 以…

鳥野 小川
9か月前
30

【短編小説】クラゲの押し花

硝子板にはまった海の花。 老女と好色なクラゲ。クラゲに振り回される店主を添えて。 上記の…

鳥野 小川
9か月前
25

【短編小説】未亡人

ひとりは寂しい。 「ぼく」が隣の「おばあちゃん」の最後を見届ける話。  ぼくのとなりには…

鳥野 小川
9か月前
29

【短編小説】お菓子をもらいに

Trick or Treat! お化けが主役の祭りには、人の世であっても本物が紛れているかも? 駄菓子屋…

鳥野 小川
10か月前
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【短編小説】夜を食べる

トラウマも腹に収めてしまえば怖くない。 夜恐怖症を克服するために夜を食べる男の話。  そ…

鳥野 小川
10か月前
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【短編小説】涙空トースト

たまには子どものように泣きじゃくってもいいのでは。 喫茶店の店主と泣きたい女とハニートー…

鳥野 小川
11か月前
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【短編小説】極北の秋

どんなに遠く離れても世界はつながっている。 ある男と北極と紅葉の話。  どこまでも見渡せるような、だだっ広い丘が眼前に広がっている。短い夏を謳歌した草葉が青々とした緑から生命の終わりを表す鮮やかな赤へと変わっていた。 「まさか北極圏でもこんな景色が見られるなんてな」  雄大な自然を前に男は呟いた。延々と続く枯れ草の絨毯は美しいが、どこか単調で終末的だ。さすが世界の果てである。  同時に瞼の裏に赤ん坊の手のひらのような真っ赤な葉がひらめいた。そうだ、紅葉といえば子どもの頃