高級鉛筆削りを使ってみた
先月購入した、ドイツ製の高級シャープナー(鉛筆削り)を、満を持して使ってみた。
鉛筆削りにそんなにお金をかけるなんて、私の人生に起こるイベントだと思ってなかった。
100円でも、なんなら無料ででも手に入るようなありふれた文房具。
しかも学生時代以来、ほとんど使っていなかった(から、最近まで持っていなかった)。
仕事で必要だと言われて、そんなこともあるかぁと思い調達することにしたけど、プラスチックの安価な鉛筆削りを買う気にはなれない。
できるだけプラスチック製品を新しく買いたくないこと、特に好きとも思えない安っぽいものにお金を使いたくないこと、がその理由。
仕事で使うといってもそこまで頻繁に鉛筆を削るわけではないので、電動鉛筆削りを買う気にもならない。嵩張るし。
だから、ごく小さいサイズの、できれば金属製で壊れにくい鉛筆削りがないかなと思って探してみたら、あったのだ。
ドイツのメーカーDUXによる、真鍮製のシャープナー。
1908年からずっと変わらない製法で、職人の手によって作られ続けてきたという老舗の鉛筆削り。
その来歴にも痺れた。
ドイツの職人さんの手仕事を、日常の中で感じられる。しかも、自分の仕事道具として!
そして何より、真鍮の色味とデザインにひとめぼれした。
年々味わいを増していくような、沈んだゴールド。上のダイヤルで削り具合を調整することができて、ツマミを回すたびに涼やかな"チン"という金属音が鳴る。(この音が、とても、美しい。)
ドイツ製のシャープナーは他にもあったけど、絶対にこれがいいと思った。
あいにくこのシャープナーは現在(日本で)販売されていないようなので、中古で出るのをひたすら待った。
(その間は、ハサミの刃で無理やり鉛筆を削った)
ようやく納得できる価格で状態の良いものが出てきたので、ありがたく購入。
(替刃もいただけた。うれしい)
さて、満を持して削る。
削り心地はというと、この前にハサミで無理に削っていたからか、鉛筆自体の滑りが悪い。
がんばってゴリゴリ削っていくと、記憶にあったようなショリショリと軽やかな削り心地に変わっていった。
ほら。美人になったね……。
使い終わってから、コンコンと紙の上に黒鉛の粉を落とす作業すら楽しい。
あまり頻繁には使わない仕事道具でも、値段に関わらず、これが欲しいと思ったものを採用するのは贅沢でいいなと思った。
値段に関わらずっていうのは、もちろん、安いほうに作用することもある。
自分はこだわりがないのに、あるいは安価なもののほうがどちらかというと好きなのに「いいものを買ったほうがいい」と思い込んで無理に買うと、後でじわじわ後悔することも多い。
(気に入っていないと、いずれ手放す可能性も高いし)
数千円払って、一生を共にしたいと思える鉛筆削りを買い、使うのが、今の私にとっての贅沢で豊かなこと。
好きなものにはちゃんとお金を使って、好きじゃないものは買わないというのが、心地いいお金の使い方だと実感した。
そんな鉛筆削り記念日でした。
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