身体の声を聞く vol.5
しばらく前のこと、
自分のダメ感の世界に閉じ込められたように
そこから抜けられなくなり、非常にもがき苦しんだ時期があった。
その重さと息苦しさに慌てた私は、
自分を救うべく朝晩の散歩を始めた。
膝を抱えて、じっとしている自分をなんとか外の世界に連れ出したのだ。
その時に、初めて体感して理解したのは、思考と身体は一体であるということだった。
毎朝、夫と2人で散歩をするのだが、頭の中にはいつの間にかに重い考えが流れてくる。
しかし当の私はその思考さえ気づかないで無言で歩いている。
その時にすかさず夫から声がかかるのだ。
「どうした?」と。
その時に自分ははっとして気づく
重い思考に取り巻かれている自分に。
これは、毎回の散歩ごと、そのようになる度ごと、夫によってすぐに発見された。
夫はなぜわかったのか。
それは私の姿勢が、猫背になり、前かがみになったからである。
夫は、私が猫背になり体を丸くするたびに、すぐに声をかけた。
私はというと、思考が起きたことも、前かがみになって歩いていることさえも、全く気づかなかった。
夫に注意され、その時何を考えていたかを振り返り自分の思考と体の関係に気づくことになる。
その時に、徹底して思考と体がリンクしているというのを学んだのだ。
我々の身体、体感、感情は、潜在意識と深く結びついている。
マイナス思考になれば身体の緊張が起こるし、体が硬くなり、そして血流が滞るため、体は冷える。
その時、最も早く心をプラスへと整えるのには、どうすれば良いのか?
まずは、身体を柔らかくして、暖かくケアすることは、精神に直結すると、
身体の理屈を知る方々は伝えている。
瞑想して精神を整えることよりも早く回復するとおっしゃる方も非常に多いのだ。
私も身をもって体験した。
さて、以前NHKのTEDという番組で紹介された
アメリカの社会心理学者のエイミー・カーディ氏の「パワーポーズが最高の自分を創る」という非常に興味深い話がある。
それは、1日2分間の両手を広げる万歳のパフォーマンスをすることが、
より力強く人生を変えていく大きなサポートとなるという内容のものです。
彼女はIQが高く天才と言われ、その才能を早くから見守られる立場にあったのだが、19歳の大学生の時に自動車事故にあい、脳を損傷してしまう。
事故後は平均のIQよりも2段階も下がり
大学の卒業は無理だろうといわれ
周りからは、別の道を歩むようにと説得されるが、
何年もかけて辛い努力をして、何とか大学の卒業まではこぎつける。
そんな彼女を見守り指導してきた先生から、
与えられた発表の場やスピーチがあった。
彼女は、悩み、今の自分には無理だからできないと前日に断りの電話を入れる。
今自分のいる世界は、事故に遭って、能力も低下して、わたしがいる場所ではない、これは自分にとって嘘になるからやめたいとの思いからだった。
しかし、先生は「私は、あなたに賭けたのだからやりなさい」と彼女に伝えます。
そして、人前での発表やスピーチは、嘘でもやり続けなさいと言われます。
「嘘だと思っている、その嘘が本当になるまでやり続けなさい」
「自信があろうがなかろうが、これは自分にとっての嘘だと思おうが、思うまいが、
たとえそれが、幽体離脱をするくらいのものだろうがなんだろうがやり続けなさい」と
そして彼女はやり続けました。やりとげ、嘘が本当になり
最後には、彼女は自分がここにいてはいけないという思いがあった事すら忘れるほどに変わります。
ハーバード大学に移り当時クラスメートで自信がなく一度も人前で発表しなかったクラスメイトに、エイミーは声をかけます。
なぜなら、そこでは授業に1度も発表しない生徒は落第をする可能性が大きいからです。
「手を挙げて発表しないと落第をするわよ」と心配して声をかけます。
彼女は、昔のエイミーと同じ言葉を言います。
「私は、ここにいるべき人間じゃない」と。
昔の自分と同じ言葉を放った友人に、
エイミーは全てを伝えます。
「嘘でもいいから、やり続けなさい」と。
その後どうなったでしょうか。
教室では、誰にも認識されなかった彼女が
最後には、一目置かれる素晴らしい意見を述べる学生に変わったのです。
ボディーランゲージとしての意味で
最も特筆すべきことは、
自分の身体が自分の心へメッセージを与え
その影響が様々な結果に結びつく
というということです。
パフォーマンスから意識へ、意識は、この世界での社会的な結果にまで影響を及ぼすのです。
つまり、身体(潜在意識)が心へメッセージを伝えるのです。
背中を丸めたり首に手を当てたり、体を小さくするのは、自分は無力だと自分自身にメッセージを伝えることになります。
彼女の研究室で、エイミー・カーディは、生徒に対してある実験をしました。
パフォーマンスの意味も、わけも一切伝えず、
実験の目的も伏せました。
まず、万歳のポーズを2分間やったグループは
精神的、肉体的元気さを維持する
テストホルモンが上昇し、
コルチゾールというストレスホルモンが減り
また、身体を小さくしたり、首に手を当てたりするポーズをしたグループはストレスホルモンが増える結果が明確にわかったのです。
そして、2分間万歳をしたパフォーマンスグループと、身を縮こめるパフォーマンスをしたグループ
それぞれに対して、ストレスを与えるような無表情で無言の試験宮を前に、採用試験の面接をします。
後で、試験宮にどの生徒たちを採用したいかと尋ねます。
結果は、万歳をした生徒たちは全員が選ばれ、
体を小さくしたパフォーマンスを2分間した生徒たちは1人も選ばれなかったのです。
身体のパフォーマンスは、自分へのメッセージでもあります。
まさに、私が散歩の時に、自分のマイナス思考にはまってしまったときに、下を向いて猫背になり、身をかがめていたのは、自分に対して私は無力なのだと伝えていたことになります。
今はその意味がはっきりわかりました。
それからの散歩は
毎回、私は意識して自分の猫背の状態を客観視し、胸を張って万歳をして歩いています。
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