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「技術の8000オール」はどのあたりが技術なのかを考えてみる

0.はじめに-冠番組-

乃木坂46の1期生、中田花奈さんがアイドル生活9年目を迎える2020年、待望の冠番組を持った。その名は、
”乃木坂46中田花奈の麻雀ガチバトル!
かなりんのトップ目とれるカナ?”

まさかの麻雀番組である。

おおよそ麻雀とアイドルというかけ離れた文化圏において、かなり異色のコラボーといっても数年前からNMB48さんが積み上げてきた番組ではあるがーが実現している。

元々、ルービックキューブやパズドラをやり込むなど頭脳を使うゲームへの凝り性があった中田さん。「トップ目」ゲスト出演を機会に麻雀に凝りだし、麻雀のプロリーグを扱った番組「熱闘!Mリーグ」にも出演。Mリーグで活躍する赤坂ドリブンズの鈴木たろうプロなどに指導してもらいながら、実力をつけてきた。
そして2019年12月1日に行われた「トップ目とったんで!三代目決定戦」で見事四回戦中三回戦でトップを取り、冠番組を現実のものとした。

真面目に練習を積んできた中田さん。もうこの呼び方嫌だ、かなりんにしよう。かなりんは第1回放送から着実なゲーム運び。

その結果、トップ、2位、トップ。

強い、強すぎる。
麻雀は4人で行うゲーム。単純に平均2.5位だと考えても強さが分かっていただけるのではないだろうか。
それもゲストを見れば、麻雀番組に多数出演する「打てる」人たちばかり。
番組を見たところ、”あがらせてもらった”とか”下手な打ち方に助けられた”とかそんなことはまずなかった。
簡単に言うと「上手い」のだ。そして「強い」。

焦った竹中プロデューサー。このままでは番組予算が削られてしまう。かなりんがトップなら高級スイーツを乃木坂46に差し入れしなければならない。
(イメージ)1個500円×40個=20,000円
1回のトップにつき約20,000円が飛んでいく。(安い気もするが)
そこで第4回のゲストがこちら。

1.対戦相手

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左奥「淑女なベルセルク」KONAMI麻雀格闘倶楽部・高宮まりプロ
右奥「シンデレラガール」赤坂ドリブンズ・丸山奏子プロ
右手前「卓上の舞姫」EX風林火山・二階堂亜樹プロ

俺が打ちたいよ、かなりん。

寝言はともかく、全員Mリーガーでそろえてきた。
プロである。それもスポンサーからお金をもらって麻雀を打つプロ。
普通のプロは自分で自分の賞金を稼ぐために麻雀を打つ。
だが、Mリーガーはスポンサーさんやらファンやらチームメイトやら色んなものを背負って打つ。
「ここは耐え忍んでも2着」
「ここはラス(4着)でもいい、絶対トップを目指す」
いろんな状況を考えて打たなければならない。
大の大人がプレッシャーを感じ、「ゲーム」をするのに息切れするのだ。
たろうプロと同じ赤坂ドリブンズの村上淳プロやTEAM RAIDEN/雷電の萩原聖人プロ(アカギやカイジの声の方、俳優としても著名)なんか死にそうな顔して打っている。
そんな状況で戦っている3人である。
YouTubeとかを検索してみても華麗なあがりがいくつも見つかると思うので、おすすめする。麻雀が分からない人でも、この人カッコいいな、とか、この人かわいいなとかそんな動機で十分だ。ぜひ見てほしい。

そして、かなりんの憧れの人、二階堂亜樹プロ。
この記事を読んでいる人の中には彼女がプロになってから生まれた諸氏も結構いるかもしれない。何せ麻雀歴25年。
経験、特にテレビ対局での経験値は他の女流プロから抜きんでており、麻雀ファンの人気も高い。歴戦の強者だ。
それにかわいいし。お姉さん(二階堂瑠美プロ)もかわいいのよ。
とにかく、その人をしてこう言わせた。

「技術の8000オールですよ」


2.8000オールとは?


親倍

いやぁ、いい響きです。
麻雀を知らない人からすれば、「なんのこっちゃ」という印象だろうが、麻雀を打つ人からすれば、こんな魅惑的な言葉はない。

麻雀の基本的なルールからおさらいしよう。
13枚の牌を持って、1枚引いて1枚捨てる。
3枚のセットを4組と同じ牌2枚の14枚をできるだけいい形にしていく。
乃木坂的に言えば、13人+センターの選抜選ぶイメージだろうか。
生生星があって、御三家があって、センターを決めて。
どの世界も残酷だなぁ。

もう少し分かりやすく、という方はこちらの動画をどうぞ<約10分>
https://www.youtube.com/watch?v=_7MQsEQOhJ8

話がそれてしまった。
麻雀の持ち点は一人25,000点からスタートする。
そしておおよそ4回に1回”親”の権利がやってきて、あとは”子”になる。
親は点数を1.5倍得ることができるが、子がツモ(自分で引いてくる)したときは他の2人の子の2倍を払わなければならない。
子の場合の点数はだいたいのケースで、

1翻は1,000点
2翻は2,000点
3翻は3,900点(注意)
4翻と5翻(満貫)は8,000点
6翻と7翻(跳満)は12,000点
8翻~10翻(倍満)は16,000点。
11翻と12翻(三倍満)は24,000点
13翻以上(数え役満)or役満(麻雀のレア役であがること)は32,000点

翻というのは役=どれだけ綺麗な形かの単位ぐらいに考えてもらえばいい。
親の倍満は16,000×1.5=24,000点だから、持ち点がほぼ倍である。
そして親のツモ時は他の3人から均等に点数をゲットできる。24,000÷3=8,000、これが「8000オール」の正体である。
そして、「点差」に注目してもらいたい。自分は+24,000だが、他の人は-8,000なのだ、つまり32,000点の差がつく。子の役満がちょうど32,000点。役満はまあ、そんなに出るものではない。
8,000オールをあがれれば、決定打になる、といっても過言ではない。

ちなみに、かなりん以外で親倍を決めたのは今のところ第2回ゲストの小田あさ美さんだけだ。(リーチタンヤオツモ三色同順赤裏裏)
子の倍満もじゃいさん(ホンイツ対々和白発ドラ3)だけ。
いままで放送された#6までの56局の内、3局しか倍満はない。5%。自分で打ってみるともっと少ないはずだ。
ネットで麻雀を始めた皆さんも”倍満”の文字を見たらとりあえず「いい麻雀が打てました」と感謝しよう。

そういうことをかなりんはやってのけた。プロの前で。

(参考画像)ドリブンズ・村上プロの親倍<Mリーグより>
上の画像では約30,000点を持っている村上プロ。
リーチ(1)一発(1)ツモ(1)面前ホンイツ(3)七対子(2)=8翻!をあがって

画像3

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一気に55,000点超え!それにしても、村上プロ、赤い。

3.かなりんは考えるー親倍への道ー


それでは本題に移ろう。
状況はトップの高宮プロが40,800点、かなりんは23,000点で3位。
点数差は17,800点。これを覚えていてほしい。
東4局、かなりんの親。当然、点数を稼ぎたい。
かなりんの最初の14枚

679m⑤67p1468s東西中中

種類別に分けてみよう。
マンズ<m>(〇萬)    6,7,9
ピンズ<p>(丸)        5(赤),6,7
ソウズ<s>(緑の竹) 1(鳥の絵),4,6,8
字牌                             東,西,中,中

ドラ(1枚1翻)は2萬。ない。
正直、微妙。まずまずぐらいだ。
赤い5pはドラで1翻高くなる。
中などの字牌は同じものを3枚揃えて1翻。今回に限り東は2翻。
数字は1-2-3のような順番で揃えるか、8-8-8のような同じ牌3枚で揃えるか、どちらでもいい。
とりあえずピンズが一番よくてあとは知らんという感じだろうか。
ここからかなりん1sを切る。一番離れているからだろう。
西も役にはならないが、今のところの自分の手(13枚)が微妙なので万が一のお守りだ。以下、ツモ牌→切った(サヨナラした)牌を見よう。

2s→西
3m→9m
5p→東
1p→1p
4m→5p
3s

3467m⑤67p23468s中中

ここで少し考えて。6sを切る。
他の人の捨てた牌を見ても字牌ばかりで情報が少ない。
3467mは258mが入れば2セットできそうだ。
対して68sは7sしかない。チャンスに3倍の差がある。
じゃあ、8sでもいいのでは?という声もありそうだ。
かなりんは「守備的」に打っている。
6sは45s,78s,57s,66sの時に必要になる。4パターン。
対して、8sは67s,79s,88sの時に必要になる。3パターン。
みんなあがりやすい形を目指して進めるので、もし切るなら他の人が必要そうな牌を先にサヨナラしたほうがよさそうだ。
おそらくそういう考え方で6sを選んだのだと思う。

次の順、切る予定だった8sを引いてきた。

3467m⑤67p23488s中中

ここで悩む。
選択肢は2つだろうか。
①6mを切る   or   ②中を切る

①6mを切る
中はとりあえず役牌(3つ揃えればあとはどんなセットでもOK)なので切らないという考え方。周りを見ると字牌がよく切られてて、中も出てきそうだ。万が一相手が攻めてきても中を切れば守れそうではある。
8sは、中が3枚になった時の2枚の役割だ。
ここでは2mがドラなので34mは切らずに67mの危ない方から切る。

②中を切る
中を切ると高い手になる。これが魅力だ。
・タンヤオー1,9,字牌以外の数字牌だけでセットを作った役
・平和(ピンフ)ー123や456のような順番のセットを4つと同じ牌2つの役
平和の同じ牌は中のように”役”になる牌はNG。面倒くさい役だが組み合わせがめちゃくちゃきく。この手でもタンヤオ+平和+赤で3翻は作れそうだ。
その代わり、自力で聴牌(テンパイ、あと1枚であがれること)しなければならない。

さて、ここでこの章の冒頭を思い出してほしい。
高宮プロとの点差は17,800点差。かなり負けているわけだ。
そう、「守ってる場合じゃねぇ!」わけである。
かなりんは②中を選択した。

その後、もう一度6sを引いて、そのまま切り次の順、2m!
ドラだ、しかも聴牌。
黙っていても、4翻で満貫、高宮プロから出ればトップ。
しかし、番組冒頭のたろうプロの言葉をかなりんは忘れていなかった。

「かなりんのいいところは我慢できるところ、
だけど、守っているだけだと負けちゃうと思うので、
どこかチャンスを見てぐいっと踏み込むこと」

「リーチ!」
ぐいっと踏み込んだ。
リーチはそれだけで役になる。5翻確定だ。出せばあがっちゃいますよ、の宣戦布告だ。しかもかなりんは親。つまり周りの3人は、

「親リーだー、気をつけろー(by二階堂プロ)」

状態になる。自分で手繰り寄せるしかなさそうだ。
丸山プロからドラ切り追っかけリーチ(おそらくMリーグではやらないんだろうなぁw)と戦争状態になるものの、一度もツモらせることなく

「ツモ」

5mを自らツモって、あがりとなった。
そして、リーチの特権、裏ドラに7sが見えた、ドラは7sの次の牌。
つまり、8s!2枚あるぞ!重なったやつ!

リーチ(1)ツモ(1)タンヤオ(1)平和(1)ドラ1赤1裏ドラ2=8!

8翻ーお忘れの方は表に戻ってー倍満!8000オール!
見事なあがりで、解説席のたろうプロ、

「トップ、トップだ、トップ、いいの?これ、いいの?」

見事な挙動不審である。

正直に言ってしまえば、8sが裏ドラなのは「運」である。
6sが2枚でもあがれたし、中が2枚でもあがれた。
しかし、基本に忠実に打った結果、向いてきた「運」なのだ。
だからこその「技術」の8000オールだと私は思う。

4.結果から考えることー勇気も技術ー


この8000オールをしっかりと守り切り、かなりんはトップを取ってしまった…失礼、トップを取ることができた。
最後のあがりで、たろうプロも竹中Pも笑っていたのは、私と同じように、すげぇ、やっちまったよ、と思っていたってことなんだろう。
最終的な結果は次の通り。

1.中田 47,300
2.高宮 29,900
3.丸山 27,700
4.二階堂 -4,900

憧れの二階堂プロが実力を発揮できないまま終わってしまったのは残念であるが、かなりんの大トップである。

しかし、ここで気づいたことがある。
この点差、もし親倍の場面で「リーチ」してなかったら、どうなっていたのだろうか。
親倍の手、リーチしていなくてもあがれるのだ。
戻って、あがりの形からリーチと裏ドラをマイナスすると、

タンヤオ(1)平和(1)ツモ(1)ドラ(1)赤(1)=5

5翻は満貫で、親の満貫は8,000×1.5=12,000
これを3人で分けて4000オール、十分高い手と言える。
が、最終結果に反映すると違いがよく分かる。

1.中田 47,300→35,300
2.高宮 29,900→33,900
3.丸山 27,700→31,700
4.二階堂 -4,900→-900

上3人は、ほぼ僅差になる。
それにかなりんには最終局のあがり2,400点+丸山プロのリーチの1,000点棒も含まれている。こんなの差がないようなもんじゃないか。
ん?最終局?
放送をご覧のみなさんは思い出していただけただろうか?
丸山プロ、リーチ後高宮プロの出した5mを見逃している。
点数が足りないからだ。
それではこの状況ではどうだろう。
丸山プロの最後の役を数えよう。

リーチ(1)タンヤオ(1)ドラ(1)赤(1)=4翻

4翻=8,000点。逆転には十分だ。
それどころか、リーチしなくてもあがれる。
3翻=5,200点(難しい形なので点数高め)。
どちらでも逆転できる。見逃す必要がない。
高宮プロもホンイツ(マンズと字牌だけの14枚)にしなくてもよさそうだ。
白や中のどちらかで逆転できただろう。

つまり、勝つためにはあの「リーチ」は絶対条件だったことがよくわかる。


麻雀を打つようになってしばらくすると、二階堂プロやトークの中で出てきた藤崎プロ(忍者)の真似をして、「リーチ」しなくてもあがれるなら「リーチ」しなくていいや、と思って待ってしまう人もいる。(私のこと)

しかし、彼らは「自分でツモできないだろうな、他の人がいっぱい持ってるからそれが出てくるのを待とう」と考えて、「リーチ」しないのである。
彼らだって「リーチ」はする。適切な時を考えて「リーチ」をする。
何でも黙って待ってるわけではないのだ。

かなりんも「守備型」だ。
しかし、ここぞで「リーチ」をした。
当たり前かもしれないけど、もしかしたらテレビ対局ということを考えてかもしれないけど、「リーチ」をした。踏み込んだのだ。
だからトップを取れたのだ。
その適切な時を見抜くこと、そして踏み込んだ”勇気”。
これも合わせて「技術」だと私は思う。

5.麻雀はチャンス…カナ?


ここからは技術論というよりただの見解。

ここで、たろうプロからのアドバイスを思い出してほしい。

「かなりんのいいところは我慢できるところ、
だけど、守っているだけだと負けちゃうと思うので、
どこかチャンスを見てぐいっと踏み込むこと」

中田花奈さんは乃木坂46において割と特殊な位置にいる。
始めの6つのシングルは中心メンバーの一人と言っていいだろう。
2nd「おいでシャンプー」ではフロントメンバーだし(本人が全盛期といっている)、唯一選抜落ちした4th「制服のマネキン」のアンダー曲「春色のメロディー」ではセンターを任されている。

しかし、7th「バレッタ」から16th「サヨナラの意味」まで10作連続のアンダー。任されていた位置から考えても、これはかなり堪える。
初期のダンス曲筆頭「制服のマネキン」において、現乃木坂46キャプテン・秋元真夏さんが復帰、八福神体制のあおりで西野七瀬さんが3列目に弾き飛ばされて、一時期ギスギスした事件は乃木坂史にも有名だが、中田花奈さんがアンダーになったことはあまり語られない。彼女はダンスパフォーマンスに自信があるにもかかわらず、である。(補足するまでもないが、秋元さんと中田さんは気が置けない仲であることは書いておきたい。)

それでも、我慢した。
そして、チャンスはきた。
乃木坂46の代表曲の一つ、17th「インフルエンサー」は乃木坂ファンから「中田がいないと…」と言われる楽曲である。
乃木坂46が初めてレコード大賞を受賞したその時、ラスサビでアップになっていたのは、彼女のファンなら永久に語り継ぎたい出来事だろう。
自分の価値を証明した。チャンスに踏み込める人だった。

同期や後輩までも卒業していく中で、彼女は活躍の幅を広げている。
「潜在能力テスト」や「Qさま」、「Numer0n」。
やっぱり頭脳系のお仕事が多いのが彼女らしい。
麻雀はその中のひとつ、いや彼女自身が大真面目に本気で取り組んでいる姿勢を見れば、彼女はこのチャンスを絶対に活かしきるつもりなのかもしれない。いや、活かし始めていることに気づいている方も多いはずだ。

「アイドルはパフォーマンスしてなんぼでしょ!」と声を大にしていた時もある。今も彼女の熱のこもったパフォーマンスに魅了される。
しかし、その一歩先へ彼女は踏み出したのではないだろうか。
+αの魅力をもっと多くのファンに感じてもらうために。



ここまで、筆者の妄想にお付き合いいただきありがとうございました。
最後は強引にかなりんの紹介にしてみました(笑)
乃木坂46のファンでもあり、麻雀好きでもある私は、願わくば、かなりんが番組内で役満をあがるところが見たいと思っております。
これからも「トップ目」が、そして中田花奈さんがもっと多くの方に注目されますように、応援していきたいと思います。

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