見出し画像

ベトナム犬肉食文化2

ベトナム人が犬肉を食べるのは陰暦の月末だという。
その時期に食べるのは厄払い的な意味があり、反対に月初に食べると、その月は良くないことが起こると言われている。大体陰暦の月初4日くらいは、犬肉に手をつけないらしい。

一緒に働いているスアン先生は、あまり暦には興味がなく、疲れがたまったときに市場で買ってきて自分で焼いたり茹でたりすると言う。犬肉は滋養強壮の肉でもあるのだ。

スアン先生の親戚は犬肉屋をやっており、月末になると一日200キロくらいは売れるというから驚きだ。犬肉屋は珍しいわけではない。中規模以上の市場に行けば、たいていひっくり返された犬の姿を見るから、ぼくが知らないだけで、実はかなり一般的に食されている可能性がある。

ベトナム人が口をそろえて言うのは、「犬は野生が一番美味い」ということだった。町中をうろついている野犬も含んでいるが、そういう言い方があるということは、当然食用のために飼育されている犬もいるということになる。

そうなると気になるのは、供給元だ。
野生の犬だけでは到底需要に追いつかないのは分かっていた。となると、食用の犬は一体どこから来るのか。
そう思っていろいろと聞いて回ったら、犬肉食を巡る事情が少し見えてきた。

1、輸入
ベトナムで食されている犬は、国内産とカナダからの輸入犬がいるという。しかしこれは一人に聞いただけで、裏をとっていない情報です。悪しからず。

2、牧場
と言っても、広大な草原に放たれているわけではなく、檻の中だ。
※朝日新聞の記事があったので貼りつけておきます。

ここにはタインホア省と書いてあるが、ぼくが確認したところではベトナム北部、中国国境のランソン省にもあるし、ハノイの西、フート省にもあった。北部なら結構どこにでもあるのかもしれない。

3、買い付け
犬肉業者が、個人宅などを回って食用犬を買い付けるのがこれにあたる。
例えばスアン先生の例。
スアン先生は小さい頃、犬を何匹も飼っていた。初めは2匹だったのが、子どもが生まれて増えたのだ。

月日は流れ、子犬は立派な成犬になった。
その頃、家族会議で、どの犬が賢いか、上位2匹を決めることになった。
スアン先生は事情を知らなかったので、本当に賢いと思っている2匹を選んだ。家族も同意した。

しばらくして、スアン先生のうちに訪問者があった。
彼らが家に入ったとたん、普段は大人しい犬たちが騒ぎ、逃げ始めた。

「きっと、あの人たちから犬の生き血の臭いがしたんですよ。後になって分かったんですけどね」とスアン先生は言った。

訪問者は、犬肉の業者だった。
業者は家族が選んだ二頭を除いて、すべての犬を相応の代金と引き換えに持ち去ったと言う。

幼少期にそんな体験をしたら、犬肉なんて食べられなくなるんじゃないかと思ったが、スアン先生も犬肉は好きだという。

ベトナム人は犬も飼うし、小鳥も飼う。
しかしそのどちらもレストランのメニューにラインナップされている。
食べちゃいたいほど可愛い・・・って訳じゃないだろうが、日本に住んでいるときよりもずっと生々しく、命をいただいて、自分が生きているということを実感するのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?