いつかお会いする方へ「静かに旅立った人を静かに見送った日」
Aさんの部屋に入り、手を合わせ頭を下げた。
2カ所の介護施設で、調理の仕事を始めてから数名の方を見送った。
「私の作るご飯はお口に合いましたか?」
「食べてくださり、本当にありがとうございました」
「もう少しでできますからね。待っててくださいね」
私の言葉に、いつも大きく頷いてくださいましたね。
会話はできない状態だったので、好きな食べ物を聞いた事は無いけれど、何故か私はきんぴらごぼうが作りたくなった。
人参を入れずにゴボウだけのキンピラが作りたくなり、包丁を手にした。
黙々と。
先輩や上司は目に涙を浮かべながら、いつもと変わらぬ動きをする。
人間の死に
「私は慣れたくない」と、私も目に涙を浮かべながら、いつもと変わらぬ一日を過ごした。
「食べてくださり、本当にありがとう」
そして
「お疲れ様でした」
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