通勤40分の秘密の時間

引っ越したことで通勤時間がバイクで5分から車で40分に変わった。
よく周りからは「通勤時間が長くなって大変でしょう」なんてよく言われるけれど私は案外そうでもなかった。

むしろこの通勤40分。往復80分の時間がすごく好きな時間になった。
今までは通勤5分だったので仕事をして、職場の人に挨拶をして、帰宅したその5分後には家に着いて、私より帰りが早い夫が出迎えてくれていた。
それはそれで幸せなんだと思う。
すぐにシャワーを浴びられるし、すぐに部屋着に着替えてくつろぐこともできる。

それが40分に伸びたことで、車の中で1人で過ごす時間が圧倒的に増えた。
私しか知らない毎日往復80分間の秘密の時間。
これが存外楽しくてたまらない。

まず、私は車の運転がまだまだ上手な方ではないので
単純に乗る時間が増えることで上達ペースも早くなった。
あんなに怖かった二車線道路のバイパスにも今や乗らないと職場に辿り着けないので毎日乗っている。
車線変更もビビりながらだけど随分出来るようになった。
これは嬉しい。めちゃめちゃ嬉しい。

あと人間観察が楽しい。
どんなに同じ時間に出発したって、同じ景色は一度だってない。
前にいる車は毎回違うし、後ろにいる車も毎回違う。
端を走る自転車を避けるタイミングもいつだって違うし、歩行者のバリエーションも実に豊かだ。
見てて飽きない。
リアガラスに犬のステッカーがたくさん貼ってあったら「この人は犬が好きなんだなぁ」って想像を膨らませたり、最近ではトイストーリーのバズやウッディがぶら下がってたりしてて見ててめちゃくちゃ面白い。

3パターンくらい変えてるので
毎日今日はどうやって行こうか、帰ろうか、どこが一番混まないかなってロシアンルーレットをしているみたいで面白い。
道によって出会える人も景色も同じようで違うので道選びは結構重要だ。
朝たまに駐車場で寝ている猫ちゃんがいる場所もある。
猫ちゃんに出会えた日はラッキーデーにしている。

数少ない日陰をいつも探して寝てる（笑）
そんな旅路を彩ってくれるのがラジオである。
埼玉県民なのでもっぱら「FM79.5」通称FM NACK5にハマっている。
今までは自分でダウンロードした音楽を聞いていたのだが、ある程度聞くと同じ曲の繰り返しなので飽きてくる。
そこでラジオに変えたわけだが、これがまぁ面白い。
まだ聞き始めたばかりなので何時にどんな番組をやっているのかはよくわかってない。
アロハ太郎さんと斉藤百香さんと鬼丸さんというパーソナリティーの方がいるということは分かった。
いつからか「MAKE THE FUTURE FM NACK5〜♪」と一緒に歌いながら運転してるくらいにはご機嫌である。
デンキチのCMソングも一緒に口ずさんじゃったりしている。
（このネタ埼玉県民以外ついてこれてる？大丈夫？笑）

ラジオの投稿も面白いネタが多くて朝から一人車内で笑うこともある。
今までは通勤時間なんて憂鬱以外の何者でもなかったのに笑顔で過ごすことができるなんてめっちゃ良くない？
いつか自分もお便りを書いて読まれてみたいなんて密かな願望まで生まれてきてしまった。

まだまだ楽しみはある。
帰りに寄り道ができることである。
今までの通勤5分では寄り道もへったくれもなかった。そもそも帰路に寄る店などないくらい距離が近かった。文字通りの直行直帰である。
それが片道40分もあればそれなりにお店も立ち並んでる。コンビニだって何軒も通り過ぎる。
なのでちょっと小腹が空いた帰り道は夕飯を作ってくれている夫に内緒で、こっそりコンビニに寄ってファミチキだったりを買うのが楽しみになっている。
なんといってもこの罪悪感がたまらない。絶対美味しさ上乗せされてる。
車のゴミ箱に捨てるとバレるのでちゃんとコンビニで捨てて帰る。その辺はぬかりない。

そして最後に。
40分もあれば1日の気持ちの整理がつけられる。
今日はこんなことがあったな。あんなことがあったな。
帰ったら夫にあれを話そうかな。
あのときもっとこう言えば良かったな。逆にあれはできて良かったな。
これからどうしようかな。帰ったらやらなきゃいけないこと何だっけ。来週までにあれをやりたいな。
「運転」という集中した状態を保ちつつ誰にも邪魔されない1人きりの時間。
頭がゆっくりと整理されていくあの感じがとても心地いい。
ヘトヘトだった頭を一回リセットできるので、次の行動への原動力にもなる。
私にとって「好きな時間」であり、とても「大事な時間」であるように思う。

そうやって毎日毎日通勤すればするほど私しか知らない思い出や出来事が増えていく。
これがもう楽しくてたまらない。
もはや通勤がしたくて会社に通ってるようなものである。

今日もまた渋滞に揉まれながら、好きなラジオを聞き、色々な景色を見て、色々な人を観察して、猫ちゃんに会えたら嬉しくなって、ゆっくりゆっくり一人の思考の時間を楽しみながら出社します。

それでは皆様いってきます。