TCGインタビュー 新刊『これならわかる テレワークの導入実務と労務管理』後篇

11月27日にテレワークに関する書籍を発刊されました鳥飼総合法律事務所の弁護士 川久保 皆実 先生にお話を伺いました。
弁護士 川久保 先生は弊社主催の『労務調査士資格認定講座』の立ち上げに参画いただき、現在は弁護士業と共に、IT企業で労務管理ソフト『Log+』を販売監修されております。さらに今年11月には、つくば市議会議員選挙に初出馬で3位という高順位で当選されました。
今回は先月発刊された著書の見どころやテレワークの極意について、インタビューしました。
前篇は下記URLから閲覧ください
https://note.com/torikai20190908/n/nb429b6218d9b


川久保書籍表紙1

ーコロナ禍によって唐突に中小零細企業までテレワークを導入せざるを得ない状況になった中で、在宅勤務の規程・ルールを定めるより先に実施している企業も多いと思います。規程・ルールがないことのリスクはどのようなことがあると考えられていますか。
まず、法的な面では、テレワークに関する費用を労働者に負担させるのであれば、必ず就業規則に定めなければなりません。その際には、当然ですが、労働者代表からの意見聴取、労基署長への届け出、労働者への周知という手続きを踏む必要があります。
次に、実務的な面では、作業環境・セキュリティ環境を事前に細かくチェックして問題がない人にのみテレワークを認めるということをルール化しておかなければ、労災や情報漏洩のリスクが高くなります。新型コロナ感染の第一波の際、自宅にPC作業に適した環境がなくて、ソファーとローテーブルで作業をしていたら腰を痛めたなんて話も出てきていましたね。会社としては、作業環境、セキュリティ環境などを含めてルールを定めておかないとリスキーですよね。
さらに、業務マネジメントの問題として、テレワークで業務がきちんと回るのかどうかという話もあるじゃないですか。どういうITツールを使ってどういう管理をしていくのかというルールが作れていないと、業務が上手く回らなくなって経営的に問題が生じてくることもあります。
また、自宅で一人で働くとなった時に孤独感や不安感からストレスにも繋がっていくので、そこをどうするかも含めて会社としての運用ルールを考えないといけないですね。

ー先生が取締役をされている株式会社シンプルウェイでは、社員の孤独感解消のための取り組みはされていますか
本にも毎朝ウェブ会議で挨拶してるということを書いたのですけど、最近は挨拶だけでなく社員同士で質問リレーをしています。朝のウェブ会議の司会進行役が毎日変わっていって、次の日の司会進行役に質問を投げる、みたいな。
例えば私が今日の司会進行役だとしたら、
「おはようございます。今日もよろしくお願いします。昨日の司会からの『テレワーク中にしている工夫について』の質問に答えます。テレワークを効率的にやる工夫ですが、私は●●のようにやっています。明日の方への質問は『つくば市内でおすすめのレストランはありますか』です。」
みたいな話をしています。

-仕事やテレワークに関する質問でなくてもいいんですね。
逆に仕事以外の質問のほうがメインなんです。私が以前実際にした質問は「ドラえもんの道具を一つだけもらえるとしたら何が良いですか?」で、結構盛り上がりました(笑)質問リレーは、スタッフ同士が別々の場所で仕事をする中で、お互いの人となりを知って、よりよい人間関係を構築することを目的としてやっているので、質問内容はむしろ仕事に関係ないことの方がいいですね。
そんな感じで朝の5分くらいでバッとしゃべって「今日も一日頑張りましょう」って締めていますね。原則在宅勤務を始めて最初の1週間くらいは役員が事務的なことを話して終わってたんですけど、みんな退屈そうにしていたのでこれではいけないな、このままじゃ無意味な時間になってしまうと思ったので、それならば色々な人が喋った方が絶対いいなと思ったのでその方針に切り替えました。またみんなが飽きるまでに新しい朝の企画を考えたいなと思います。

ー会社に出社した時の「週末どうだった」みたいな雑談のテレワーク版みたいですね。
それこそがメンタル面、孤独感の解消に繋がると思いますし、人となりを知る事で気軽に仕事の話もできたりして仕事の効率アップに繋がると思うので重視しています。むしろ社内の雑談だと1対1だったりいつも同じメンバーだったりしますけど、オンラインであることで全員とおしゃべりできているので、むしろ会社に出社してる時よりも一人一人の事を知れているなと思います。

ーコロナ終息後にテレワークは定着するか、元の出社メインの働き方に戻っていくか川久保先生はどうお考えですか。
もちろん業種業態にもよりますが、そこは経営者の考え方次第かなと。テレワークのメリットはBCP(非常時の事業継続)だけでなく、オフィスコストの削減、生産性向上など色々と考えられます。そこをどこまで経営者が理解できるか、会社として必要だと思えるか次第だと思います。
接客業や製造業など、どうしても出社しなければならない業種もあります。そのような業種では、テレワークは0か100かではなく、出社とテレワークをうまく組み合わせていけば良いと思っています。1人の社員という軸でもこの日は在宅、この日は出社、1日の中でもこの時間は在宅、この時間は出社など、テレワークの良さと出社勤務の良さを賢く組み合わせることができると経営的に上手く回っていくと思いますね。
人材定着という面も大きい。シンプルウェイでも、原則在宅勤務かつフレックスタイム制というのが社員さんに喜ばれていて、特に子育てや不妊治療中の方には凄く感謝していただいている。なので優秀な女性社員がどんどん増えていくという(笑)
人材不足が叫ばれる中でも、同社について求人の応募が絶えないのは、そういう柔軟な働き方ができるからなんだろうなと感じます。

ーそれでは最後に、士業の方が多くみていると思いますので、士業事務所でテレワークするときの注意点があれば教えてください。
士業事務所、特に弁護士業界は紙の文化が凄く残っているので、テレワークをするにあたってはペーパーレス化をいかに進めていくか、というところが非常に重要です。紙の量が膨大なので普段からペーパーレス化を進めるように心がけること。それと合わせて、ペーパーレス化するということは情報を電子データで持つという事なので、その情報のセキュリティ対策をどうしていくか、という事が士業事務所のテレワークにとっては重要なのかなと思います。

ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
ありがとうございました。

今回インタビューさせていただいた本
(出版元の日本実業出版のHPに飛びます)

《プロフィール》

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弁護士 川久保 皆実 氏
1986年生まれ、茨城県つくば市出身。東京大学法学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科(法科大学院)修了。
ITベンチャー企業に勤務した後、司法試験に合格し弁護士となる。以後、現在に至るまで鳥飼総合法律事務所所属。得意分野は企業法務と労務。
2018年 株式会社リージットを設立し代表取締役に就任。
2020年11月つくば市議会議員就任。


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