TCGインタビュー 新刊『これならわかる テレワークの導入実務と労務管理』前篇

11月27日にテレワークに関する書籍を発刊されました鳥飼総合法律事務所の弁護士 川久保 皆実 先生にお話を伺いました。
弁護士 川久保 先生は弊社主催の『労務調査士資格認定講座』の立ち上げに参画いただき、現在は弁護士業と共に、IT企業で労務管理ソフト『Log+』を販売監修されております。さらに今年11月には、つくば市議会議員選挙に初出馬で3位という高順位で当選されました。
今回は先月発刊された著書の見どころやテレワークの極意について、インタビューしました。

川久保書籍表紙1

ー川久保先生、本日はよろしくお願いいたします。
 まずは本書を執筆されたきっかけを教えてください。

4月に緊急事態宣言が発令された中で、5月に日本実業出版社さんからテレワークに関する書籍の執筆依頼をいただきました。
 単著で240ページ程度というお話で、少し不安もあったんですけど、こんなチャンス滅多にないですし、テレワークの本を今出さなくていつ出すの、という想いがあったのでお受けしました。6月から頑張って1日5ページを目標に毎朝3時起きで執筆していました。(笑)

ー川久保先生は労務分野に強いという印象ですが、テレワークに注力し始めたきっかけは何だったのでしょうか。
弁護士になる前はITベンチャーに勤めていたのですが、パソコン1台あれば自宅でもどこでも仕事できるという働き方をしていました。社会人のスタートでそういうテレワークを当たり前のようにしていて、その働き方が自由でとても気に入っていました。そのあと弁護士になって労働法をやっていく中で、働き方改革という時流が2016年くらいからさらに高まり、テレワークという働き方が社会にもっと広まっていくと良いなと思ったので、テレワークの労務管理について探ってみたいなということで勉強を始めました。

ー今年の情勢で一気にテレワークをせざるを得ない形になり注目が集まりました。
元々、国や都は、2020年の東京オリンピックに向けて、都心の交通網の混雑緩和のために、テレワークの推進を頑張っていたんですよ。それが奇しくもオリンピックが延期になり、代わりに新型コロナウイルスの感染対策というもっと強力な推進力によって、テレワークが日本全国に一気に広まった。とても皮肉な話だと感じます。

ー先生が取締役をされている株式会社シンプルウェイでは原則在宅勤務制を導入したと伺っております。それは元々の計画だったのでしょうか、それともコロナ禍の影響でしょうか。
株式会社シンプルウェイでは、今年の9月1日から原則在宅勤務に移行しました。それまでは、子育てや介護等の事情のある社員を除いて原則出社するというルールにしていました。
同社では、従来から、クラウドシステム(Log+)を用いて社員の労務管理やタスク管理を行っており、在宅勤務でもマネジメントできる体制は整っていました。それにもかかわらず原則出社させていた理由としては、周りの目が無くなったときにサボったりする社員が出てしまうのではないか、原則在宅勤務で業務が本当に回るのかという漠然とした不安が社長にあったからです。
けれども、今回のコロナ禍において政府から緊急事態宣言が出された4月と5月のタイミングで、全体の7割の社員について一時的に在宅勤務としたところ、業務に全く支障が出ませんでした。
緊急事態宣言明けに一旦は原則出社というルールに戻したのですが、社員が増えオフィスが手狭になってきたことから、いっそのこと原則出社ではなく原則在宅勤務というルールに変えてしまおうということになりました。
さらに、そのタイミングでフレックスタイム制も導入することで、場所だけでなく時間についても柔軟な働き方ができるようにしたいと考えました。例えば子育て中の社員は朝早く起きて1時間働いて子供が起きたら家事育児をし保育園へ送った後にまた働くみたいな、かなり柔軟な働き方をできるようにこの際せっかくだから改正したいということで、今年の8月1日からフレックスタイム制を導入し、その1か月後の9月1日から原則在宅勤務制を導入するという風に変えていきました。

ー今回の書籍においての一番の見どころやこだわったところというのはどういったところですか。
テレワークがテーマの書籍が色々出ているのですが、弁護士や社労士が書くと法律面・労務管理面に内容が偏ってしまいやすく、かといってIT系の人が書くとITツール、システムの話に偏ってしまう。実務でテレワークの導入を行う場合には、法律面もIT面もまんべんなく制度整備しなければならないのに、法律面ではこの本、IT面ではまた別の本を読まなければならないというんだと、実務の担当者の方は大変だと思います。なので、最低限この本を読んで貰えればテレワークを導入するにあたって労務管理だけでなく情報セキュリティ面、どういうITツールを使えばよいか、という部分をまんべんなく理解していただけるような内容にしようということを心掛けましたね。
それと、「本は読んだけれど、じゃあこの先どうしたらいいの」っていう本にはしたくなかったので、とことん実務で役立つような内容にしたいと思いました。なので本書第2章に制度を整備するためのワークシートを用意して、かつ社内規程のひな型も用意させてもらいました。しかもそのひな型も類書では厚労省が出しているものをちょっとだけ変えているだけというものが多いのですが、そうではなく実際自分が会社で導入するにあたって実務での使用に耐えうるような実務的な内容にするよう心がけました。

ーそのクオリティのものを提供しているのですね。それで2,000円は安いですね(笑)
そう!これで2,000円はお買い得だと思いますよ!このノウハウ全部提供していいのかな?って(笑)
弁護士として依頼を受けて作るレベルのもの、セキュリティ規程に関するところまで作りこんだので、導入担当者としては相当美味しい一冊だと思います(笑)

ー規程のひな型の部分も、企業のニーズに合わせて、例えばフレックスタイムを導入するケースと導入しないケースでそれぞれひな型を用意しているというのも驚きでした。
あれはかなり大変でした!でもそれくらいでないと痒い所に手が届かない、通常の労働時間制ならこの規定でいいけどウチはフレックスタイム制を導入しているからこのままでは使えない、みたいな話になってしまうと思います。本来であればそこで弁護士にご相談くださいという話なんですが、中小企業様だと専門家に相談しようというところまでいかないと思うので、とにかくこの本はテレワークを日本に普及させたいという一心で書き上げたものなんです。

今回インタビューさせていただいた本
(出版元の日本実業出版のHPに飛びます)

《プロフィール》

DSC_2746_re - トリミング

弁護士 川久保 皆実 氏
1986年生まれ、茨城県つくば市出身。東京大学法学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科(法科大学院)修了。
ITベンチャー企業に勤務した後、司法試験に合格し弁護士となる。以後、現在に至るまで鳥飼総合法律事務所所属。得意分野は企業法務と労務。
2018年 株式会社リージットを設立し代表取締役に就任。
2020年11月つくば市議会議員就任。










この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?