尊いもの
小悪魔猫の雪と暮らし始めて1年半が経つ。
日々、彼女と過ごしていて思うのは、とにかく猫の生活は規則正しい。毎朝必ず6時には起き、お布団の中でグズグズしているカイヌシを一通り観察。なかなか起きないときは肉球を顔にあて、ぺしぺし叩きながら早く起きろと急かすことも忘れない。そして起きたことを確認すると甘い声で「にゃー」と一声鳴いて、「早くご飯を出しなさいよ」「新鮮なお水はまだ?」「カーテン開けてほしいんだけど」とすかさず催促してくる。私の朝はそんな雪に導かれるように始まっていく。
帰宅して電気をつけると待ってましたとばかりにすり寄ってきて、カイヌシに自分のにおいをつけるという仕事を着実にこなす。目の前でごろんと転がり、なでてほしい箇所をさりげなくアピールする。満足すると立ち上がり、「さあごはんの時間よ」と言わんばかりに先陣を切って部屋に入っていく。いつも変わらない、彼女のルーティンである。
雪が来る前の生活を思い返してみると、どうだったのかな。ズタボロの状態で終電に飛び乗る。誰もいない部屋の電気をつけ、ベッドに倒れこみ、泥のように眠る。泥の中から無理やり身体を起こし、また会社に向かう。その繰り返しだったし、いろんなことが不規則で身体だけじゃなくて精神状態も非常によろしくなかった。だからこそ、雪がいてくれて、日々変わらない生活サイクルを粛々とこなしている姿は、私にとってとても意味のある事だった。寝て、起きて、食べてという「生きること」の大切さを思い出させてくれたから。
変わらない日々を当たり前のように過ごせることはとても尊い。雪自身がそんなことまったく意識せずに過ごしていることを含めて。猫が教えてくれることは本当に多いと思いつつ、今日も傍で寝ている雪の存在に救われている。
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