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なるべく明るい乳がん日記12退院まであと3歩

〜前回のあらすじ〜
続いたところで2〜3日といわれる術後の吐き気が6日経っても治まらず、ご飯もなかなか食べられないという謎ループに陥っていた私。
ある日、鏡で自分の舌を見るとなんと真っ白!舌苔が溜まりまくっていた。
咀嚼など、舌の動きが足りないとそうなると看護師さんから教えてもらう。
歯磨きだけじゃダメらしい。しっかりご飯を食べなくては。

ーーーーーーー

【術後7日目】
夫に会いたい。
電話をし、私を励ます自撮りを撮って送ってくれとイヤなお願いをする。
30分ほど待つとようやく10秒ほどの動画が送られてきた。
この30分に夫の羞恥心と葛藤と抵抗がうっすら透けて見える。
それでも送ってくれた夫の思いやりに感謝しながら繰り返し何度も見た。
病院にはこれ以上ないほどとても良くしてもらっているけど、早く夫が待つ家に帰りたい。

吐き気が続きすぎていることを心配した先生から「明日採血して、念の為に脳のMRIを撮りましょう。」と言われる。
いよいよえらいことになった。
「あなたが食べられるものをご家族に持ってきてもらってもいいですよ。」と、特別に差し入れの許可も出た。
先生ありがとう!!
早速夫に連絡を入れる。

が、夜になって恐ろしいことに気が付いた。
嘔吐の後1〜2時間は飲食を控えた結果、今吐き気ゼロなのだ。
どうしよう。
なんなら術後いちばん体調も良く、ご飯も食べられそうな気配すら感じる。

【術後8日目】
吐き気はなくなり、ここ数日続いていた熱も下がった。
回復してはいるものの大事を取って、予定通り朝食の前に3本採血をした。

朝の診察でついに右脇に刺さっていたドレーンの管2本を抜いた。
何の痛みもなくシュッと抜けた。
ものすごくあっさりとした別れだった。
毎日毎日小脇に抱えて眠りどこへ行くにも一緒だった私のドレーンよ。
身体の一部になりかけていたが今日でさよならだ。

バストバンドともおさらばした。私は自由だ。
血液検査の結果も問題なし。
「退院を考えましょう。」とのお言葉をついに頂く。万歳!!!

……だが、腕が上がらない。
体調を崩していた為にロクなリハビリも出来ていない私の腕は前にならえをするのが限界でそれ以上は上がらない。
こんな短期間でこんなにも腕が上がらなくなった自分が怖い。

看護師さんは「それくらい上がれば大丈夫ですよ。」と余裕の笑顔だが本人としては不安しかない。
本当に上がるようになるのか?
大至急、もらっていたプリントを見ながらリハビリを始めた。
昼過ぎ、予定通り脳のMRI(造影剤あり)も撮った。

夕方、夫が差し入れを持って来てくれた。
バナナ、フリーズドライの具沢山の味噌汁、じゃがりこ少量パック、水、固形のカロリーメイト(チーズ味)を差し入れして欲しいとお願いしていた。

コロナ対策で面会できないので受け取るのは看護師さん。
いいなぁ。私も夫に会いたい。

エコバッグの中にバナナやじゃがりこがたっぷり入っていた。嬉しい。
が、謎なものを発見。
家にあったインスタントの味噌汁。これはいい。
 ”乾燥した味噌汁の具のお徳用パック” 
ワカメと麩とネギが大量に入ったアレ。え?なんで?

夫の中で ”具沢山の味噌汁” が誤変換を起こしていた。

『ごめん、みそ汁間違えて持っていったよね』
気付いた夫から後ほど謝罪のLINEが届いた。
「おもしろい旦那さんね〜」と看護師さんからひと笑い取ったので大丈夫。
張り切ってデカいバナナを買ってきてくれた夫に感謝しながら、差し入れをありがたくいただいた。

【術後9日目】
差し入れのじゃがりこが美味い。
入院中こっそり食べるジャンクなもの最高。
2〜3本ずつチマチマ食べる。
休みながらゆっくり食べる。

まだ大事をとって左手に点滴の針を残している。
食事も4つチョイスのまま。
洗髪椅子でシャンプーまでしていただいた。
手厚すぎて申し訳ない。

やっと吐き気はなくなり、脳のMRIの結果も問題なかった。


10年以上もずっと一人暮らしを続けてきたし全然平気だったはずなのに、ひとりで食べるご飯はいつのまにかちょっと物足りないものになっていた。夫と一緒にご飯を食べたい。
隣で美味しそうに食べている人を見ながら食べることの幸福に気付く。
いつの間にか、夫は私の暮らしになくてはならない人になっていた。



味噌汁の具、あれ60食分くらいあるし。
おもしろいな〜私の夫。

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