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なるべく明るい乳がん日記17TC療法を始めます!
〜前回のあらすじ〜
1回目の抗がん剤投与のため入院中の私は早くも暇を持て余していた。
病室のテレビはBSも映るのでまず朝から『あまちゃん』の再放送を見る。
そして朝ご飯を食べつつBSで『らんまん』を見て、8時から今度は地上波で2回目の『らんまん』を見る。もちろん昼の再放送も見る。
とにかくこの頃私は『らんまん』にどハマりしていた。
人の心の流れを笑いを交えながら丁寧に自然に描いていて心地良いのだ。
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【入院2日目 TC療法1回目の投与】
「今回は入院して様子を見るけど、大丈夫そうなら2回目からは通院で投与することも出来ますよ。どうします?」と看護師さんに聞かれた。
通院にするなら今のうちに予約を入れた方がいいとのこと。
私はまだ一度も投与していない。
投与してみて自分がどうなるのかまだわからない。
また吐き気が止まらなくなるかもしれない。
どうか大丈夫であって欲しい。
できれば入院より通院がいい。
いや、通院にしたい。
なんの根拠もなく期待だけ込めて「2回目は通院にします!」と張り切って予約を入れた。
投与は午後から。
昼食は腹八分目にするように言われていたのを完食間近で思い出し、慌てて一口分のチャーハンを残した。
手遅れだしそれなら全部食べても一緒だ。
14時頃、アイスグローブを持った看護師さんが病室に登場。
左手に点滴の針を刺す。
まず最初に、デカドロンという吐き気止めの入った生理食塩水を5分くらいかけて点滴で流した。
両手をアイスグローブに入れる。
どんどんどんどん手が冷える。
痛いほど冷えたところで両手を出してアイスグローブの上に置いた。
アイスグローブの上でも充分冷たい。
手を動かす時は点滴の針から抗がん剤が外に漏れないよう慎重に動かす。
漏れたら怖いので出来るだけじっとしている。
次にドセタキセル(商品名タキソテール)という抗がん剤を流す。
これが約1時間かかる。
私には伝説級に吐き続けた過去があるので看護師さんはものすごく慎重に、ゆっくりと流し始めた。
心配そうにしばらく側についていてくれたけど、意外と大丈夫そう。
ケロッとしている私に看護師さんもホッとしたのか「また様子見に来るね」と、どこかへ行ってしまった。
ちょこちょこ見に来ては大丈夫そうだなと確認してまたどこかへ。
そうして1時間以上かけてドセタキセルを流し終え、生理食塩水を5分ほどかけて流す。
アイスグローブもここで回収される。
次は商品名エンドキサン(シクロホスファミド)という抗がん剤を流す。
これは約15分かかる。
人によってはプールの時みたいに鼻がツーンとするらしい。
私は特に何も感じなかった。
最後に締めの生理食塩水を5分流し、点滴の針も抜いて終了!
思っていた以上に平和に初の抗がん剤投与が終わった。
あれ?こんなもん?
拍子抜けするほど、なんともない。
看護師さんが肩の荷が降りたようにホッとしていた。
無事に終わってよかった。
次は通院で出来そう!
しばらくして薬剤師さんが薬の説明をしに病室に来てくれた。
投与した翌日とその次の日の朝昼2回今度は錠剤のデカドロンを服用する。
錠剤のデカドロンはなぜか五角形でうっすらピンク色だ。
なんでこんなファンシーな仕上がりなのか謎だがそのパワーは絶大!!
抗がん剤投与前に液体のデカドロンを流しただけでこの私が1ミリも吐き気を感じずケロッとしているのだから。
すごい吐き気止めだデカドロン。
薬が在って良かったし、薬が合って良かった。
開発者に愛をこめて花束を。大袈裟だけど受け取って欲しい。
主治医の先生も心配して様子を見に来てくれた。
全然大丈夫そうな私を見て先生も「よかった〜」と安心していた。
ご飯を完食し、お風呂に入り、洗濯もした。
本当に投与したのか?って思うくらい元気に動ける。
夫にも無事に終わったと連絡を入れる。
残念ながらこの抗がん剤は脱毛率100パーセントなので今はこんなになんともなくても10日ほどすれば私の髪は抜け始める。
それを夫は毎日見ることになる。
毎日それを見る方が、もしかしたら辛いかもしれない。
どう接したらいいか悩んだり迷ったりするかもしれない。
私はどう接してもらったら嬉しいだろう。
たぶん悲しまれるのがいちばん辛い。
『髪は抜けるからそれを見るのは辛いかもしれんけど西遊記の三蔵法師(夏目雅子)と思ってくれたらいいから』
ものすごく対応に困るLINEを私は夫に送りつけた。
突然の三蔵法師にさぞ困惑しただろう。
思い付く限り精一杯のポジティブ発想のつもりだったが盛大にスベッた。
西遊記は昭和50年代に放送されていた実写ドラマ。子供の頃どハマりして見ていたぶっちぎりで面白い娯楽活劇であり、私が知る限り世界でいちばん美しいスキンヘッドがこの三蔵法師であるが、それと並ぼうとは厚かましいにも程があると言える。
なんとかして夫が私の脱毛を悲しまないようにしたかっただけの空回り。
しかも夫は西遊記見たことないらしい。あんなにおもしろいのに。
そっちの方がショックだわー。
とにかく悲しまないで欲しい。
笑って受け止めて欲しい。
まず、私が笑ってしまえば夫も気が楽かもしれない。
二人ですごいな〜って笑ってしまえたらいい。
嘆くよりも、おもしろがろう。
泣くのはいやだ笑っちゃおう〜だ。
私は進んでいくのだ!
とにかくデカドロンのおかげで、会う看護師さん全員に声を掛けられるほど強いインパクトを残したあのエンドレス吐き気伝説に私は終止符を打った。
よかった〜デカドロンがあって。
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