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なるべく明るい乳がん日記14リハビリで取り戻せ

〜前回のあらすじ〜
尋常じゃない吐き気で院内をザワつかせていた私だったがついに無事退院!
私の留守中ちょっとでも楽しく過ごせるよう設定したHulu無料1ヶ月で何を見たのか夫に聞いたら「仮面ライダーアマゾンを全話。」とのこと。
我が夫ながらすばらしくてナイスチョイス。

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退院後、改めて夫に手術直後の先生から受けた電話の内容を聞いた。

手術終了。全摘出しました。
転移があるかわきの下のリンパ節を確認したら1つ転移が見つかり、リンパ節を切除。リンパ節の検査で転移の広がりが分かる。
4月中に術後の治療方針を決める。
来週中退院。

夫のメモ帳(誤字は多かったので修正)

きちんとメモを取っていた。
さすが私の信頼した男である。
『来週中退院予定』が延びたのはゴメン。ちょっと色々あって。


転移がどれだけ広がってるか、それが問題だ。
やっぱり、ちょっと気になったらすぐ診察、何もなければ毎年検診。
とにかくこれが本当に大事。

がんになってしまうのに明確な理由はないし誰のなんのせいでもないから、なってしまったことをあれこれ言ってもしょうがない。
とにかく、いかに早く見つけて対処するか、それがとても重要だと思う。

私はちょっと変だな、気になるなと思いながら数ヶ月放置した。
仕事は休めないと思っていた。(←こういうところが長女)
でも、命の方が大事だ。当然だ。

健やかに日々暮らしてこそ、仕事も良い仕事ができるんじゃないかと思う。
無理を重ねたりストレスを溜めたりすることは良くない。
おかしいと思ったらすぐ診察を受けて欲しい。
それが私がこれを書く理由で願いだ。
早く見つければ身体的、精神的、金銭的負担が大きく減るのだ。
そして乳がんは乳腺外科だ。婦人科ではない。(婦人科だと思っていた。)


退院後、とにかくまず食べれるものを食べれるだけ食べた。
体重はわりとすぐ元に戻った。

もらったプリントやネットや本で調べて腕のリハビリをした。
手を上に上げてキズがパカッと開いたらどうしようと最初は一瞬思ったけど大丈夫。ちゃんとくっついてるしテープもびっしり貼ってあるから。

ゆっくりと息を吸いながらゆっくりと伸ばす。無理はしない。
毎日毎日、ちょっと動かしては休み、動かしては休む、を繰り返す。
洗濯物を干すことがいいリハビリになる。
シワを伸ばすためにパタパタ振るのもいい。
手首側から肩に向かってゆっくり何度も撫でるようにもした。

上がらないのは腕だけのせいじゃない。
胸の辺りが動かないからだ。
腕は胸に繋がっていて、上半身全部を使って腕を上げてるのだ。

胸の辺りが硬いことともうひとつ、わきの下に筋が張ったように出ていて、それが突っ張って伸びないし痛い。

さらに気をつけの姿勢をとると、右脇だけ何か挟んでいるかのような違和感がある。体感では広辞苑くらいの厚さの分厚い辞書を右脇に挟んでいる。
もしくは枕。クッションでもいい。
とにかくデカい何かがわきに挟まっていて気をつけをしても気をつけをした感じがしない。なんだこれ。
右胸右脇から右二の腕辺りがボワーンと麻痺している。
これどうなるの?
私、右利きなんですけど。


とにかく毎日リハビリをやった。それしか解決方法はない。
壁に紙を貼って、 ”手を前から上に上げる” と ”横から上に上げる” をやってはどこまで上がったか記録した。
壁のぼり運動もした。
肩に手を置いて前に後ろにグリグリ回した。

術後、体調不良で寝てばかりいた私はリハビリの開始が遅かった。
胸の辺りが動かないと腕も上がらない。
もし胸の辺りが癒着していたらどうしようと急に不安になる。


術後3週間。
液が溜まっているのか少し膨らんでいる気がする。
少量ならこのまま吸収されるらしいけど、これが少量なのかがわからない。
たぶん少量だろう。少量なんじゃないか。

一日中不安になってもしょうがないので、遠慮なく楽しく遊んで過ごした。
具体的に言うと、入院中に情報を知り、これは絶対やりたい!と発売されてすぐ入手したファイナルファンタジーピクセルリマスターを順番にやった。

今も色褪せぬ名作の数々。
特にが好きだ。
の飛空挺で空を爆速で飛び回るあの開放感がたまらない。
どちらかといえばドラクエ派だがドット絵時代のFFも好きだ。
ドット絵の方が想像の余地があっていい。
本や落語が好きなのも想像できるからだ。
頭の中で人物や景色が生き生きと動き出すおもしろさが好きなのだ。

西加奈子さんの『くもをさがす』ももちろん読んだ。
本の中から西さんが力強くハグしてくれるようなそんな本だった。
ただ海外のこととはいえ、日帰り全摘手術は無いと心の底から強く思った。
あの術後の地獄の一夜を看護師さんの助けなしでは私は乗り越えられない。
(あれほどの地獄になる人はおそらく滅多にいない。個人差があります。)

西さんがメディアで元気な姿を見せてくれることが本当に嬉しい。
ついでに誰も興味ないとわかりつつ、私が好きな西さんの本をご紹介。
『漁港の肉子ちゃん』と『きりこについて』
未読の方はぜひ!!



そんなこんなで日が経つにつれて少しずつ腕が上がるようになってきた。
術後1ヶ月ほど経過したある日、手を上げると胸のキズも一緒に動くことに気付いた。
すごいすごい!動いてる!!
癒着の心配は杞憂に終わった。
溜まっていた液も知らない間になくなっていた。

脇にあったドレーンのカサブタもいつしか取れ、脇に残っていたアザは術後1ヶ月半もすれば消えた。
3つあった点滴の跡もいつの間にか消えた。どれだけ点滴してたのか。

まだ皮は硬いし時々キズも痛い。
ボワーンと麻痺して感覚がない。
わきの下の筋も相変わらず出ている。
突っ張って主張している。

右腕を伸ばすと肘から手首に向かって引っ張られるような痛みがある。
肘とか手首の内側が痛い。
なんで手首?胸から遠くない?
腕の内側に斜めにシワが寄る。
なんのシワ?どういうこと?
腕にここまで影響があるとは正直思っていなかった。

でも利き手で良かったと思う。
どうしても利き手の方がやりやすいことがあるのでそれを日々繰り返すことはきっといいリハビリになっているはず。
利き手じゃなかったとしてもそっちが利き手になりそうなくらい動かすだけなのでどっちでも一緒っちゃ一緒だけど。


術後2ヶ月。
舌の下側に口内炎が出来た。
がんだったらどうしようと不安になったが一週間も経たないうちに治った。完全にただの口内炎だった。


GW明けしばらくして、病院から病理検査の結果が出たと連絡があった。
いよいよ今後の治療方針を決めることになる。

それまでに、そしてこれからも、とにかく私に出来ることはただひとつ!
ストレスのない健やかな暮らしを続けること。
これに尽きる。
バランス良くしっかり食べ、よく笑い、よく眠る。
腕を動かすだけじゃない、日々の暮らし全てがリハビリなのだ。

「リハビリテーション」ということばには広い意味があります。「リハビリテーション」(Rehabilitation)は、re(再び、戻す)とhabilis(適した、ふさわしい)から成り立っています。つまり、単なる機能回復ではなく、「人間らしく生きる権利の回復」や「自分らしく生きること」が重要で、そのために行われるすべての活動がリハビリテーションなのです。

京都府リハビリテーション支援センターと市立御前崎総合病院


だから私は今日も本を読み、音楽を聴き、ゲームをする。
これも立派なリハビリテーションなのだから。

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