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なるべく明るい乳がん日記31なんか思ってたんと違う

〜前回のあらすじ〜
ついに局所治療の最終工程、放射線治療を始める準備が整ったはずだが、多くの本やネットで見た『身体に直接ペンで印を書く』をしていない。そんな人いる?これ合ってるの?(ちなみにこの日記の中は2023年9月末である。寛容な心でお付き合い願いたい。)

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【9月末】
夫が人間ドックに行って『脂肪肝をあなどらないで』というチラシをもらって帰ってきた。なんてことだ。君が丸いお腹を譲らないからか。バリウムを飲んだ夫のお腹が便意のたびにキュルルーンと切なく鳴いている。いろんな意味で頑張ろう、夫よ。

ついに『らんまん』が終わってしまった。みんなにもう会えない。寂しい。

【10月初旬】
髪は順調に生育している。まだミリ単位の坊主だけど嬉しい。手足の痺れは続いている。生活に支障はないけど地味に気になる。

抗がん剤が終わって身体のダル重さがなくなっていくにつれ、どんどん何かをしたい、吸収したい気持ちが強くなった。冬から春に向かって芽吹いていくような清々しい気持ち。(実際は冬に向かっているけど。)図書館で本を借りて読んだり、noteを登録してこの乳がん日記の下書きをし始めたのもこの頃だ。


1回目の放射線治療を受けに総合病院へ向かった。私のようなバック駐車がどう頑張ってもちょっと斜めになる人間にとって駐車場が広いというのは大変ありがたく、くす玉を割るレベルで嬉しい。広い駐車場大好き。

担当の看護師さんに案内され、リニアックという機械のある部屋に行く。上半身を脱いでバスタオルを前に当てて台の上に仰向けに寝る。頭をCT撮影でも使った硬めのビニールみたいな丸いクッションに置き、両腕をそのクッションのくぼみに沿わせて上げる、膝の下には三角のクッションを入れて、CT撮影の時の体勢を再現する。機械のために部屋は冷やしてあるので、寒くないように足元は毛布を掛けてもらう。バスタオルは胸に掛けたままで大丈夫なのが嬉しい。

「最初は位置合わせをするので少し時間が掛かります。照射中は部屋にひとり(治療を受ける私だけ)になりますけどカメラで見てますので何かあったら手を振って下さい。」と技師の人に言われ、全員部屋から出て行った。

こういう仰向けで受ける検査や治療に使う機械のある部屋の天井は、どこも青い空と白い雲だ。キレイな優しい景色に、温かみと思いやりを感じる。

私が仰向けになっている台を中心に、薄いグレーの四角や楕円の装置が4つフイーンと音をさせて回転していく。角度を変えて止まってはピーーーとかペーーーとかいいながら照射し、また装置が回る。その背後で、うすーーくオルゴールの音楽が流れている。

……このメロディーなんか知ってる。朧げに歌詞が浮かぶ。

ユゥーアマイオーゥーンリィーーユゥーアマイトレーージャーー
……ああ!河村隆一か!え?なんで?

よくわからないまま装置が回る。切々と歌い上げる河村隆一の脳内再生が止まらない。なんでこの曲?選曲が絶妙すぎる。

困惑している間に照射は終わった。ペンで直接線を書くことなく終わった。線書かない方が楽でいいけど、いいの??

なんでも前回撮ったCTと、仰向けに寝た姿勢の画像とを比較して、毎回機械の方で位置を合わせてくれるらしい。そういえば仰向けに寝て、技師さんが大まかな位置を(赤いレーザー光が上から出てる)合わせて退出した後、私を乗せた台がガガッと動いていた。あれか!えー!めっちゃ楽!!しかも2回目からは10分もかからずに終わるらしい。毎日通うのはめんどくさいけど、なんの痛みもなかったし25回はきっとすぐ終わるだろうと思った。


でもやっぱり25回には25回分の重みがあるのだった。

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