BCL短波ラジオ熱、再び
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BCL短波ラジオ熱、再び

尾上祐一 Yuichi Onoue

時折自分のtwitterfacebook、そしてこのnoteにある自分史などで70年代後半の少年期より短波ラジオを断続的に聴いてきている事を記しているが、ここのところ短波ラジオ熱が再び上がってきた。短波について私的な事柄と、安いラジオで効率よく聴くノウハウ、久々に聴いての所感をまとめてみたので興味のある方の参考になれば幸いである。

※ここに2000年頃に自宅で短波ラジオを即興演奏した長時間録音のMP3を用意したので、これをBGMに以下を読んで頂くのも乙かと思います。
http://torigoya.main.jp/temporary/ShortWave.mp3

私と短波ラジオ

初の短波体験は1970年代中盤の6~7歳の頃、母親が持っていたSonyCF-1700という短波付きラジカセでだった。異国の音楽異国の言語ローファイな音、異常な発信音ノイズ混信フェーディング・・・といった混沌としたサウンドに大きなインパクトを受けた。当時のBCLブームもあり本格的に聴きたくなり、10歳の頃に高性能なBCLラジオをねだったが、工作好きな父親は安易に出来合いのものを与えず、5石スーパーヘテロダイン方式で周波数カウンタも搭載した短波ラジオを自作してくれた。写真は、父が参考にした書籍とその中の製作記事である。

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バーニア・ダイアルで微調整チューニングができ、バンド切り替えはソケット式のコイルを差し替えて行うという物で、正直その性能に不満な点もあったのだが、周波数カウンタがあるおかげで聴きたい局を狙うことができ、隣国だけでなく東南アジア、オセアニアからの放送なら結構きけた。聴いた放送局には受信報告書を送りベリカードも集めた。そしてDIYでやることの面白さを父親から教えてもらった事は大きかった。処分してしまったが大変思い出深い自作ラジオで写真を撮っておかなかった事を大変後悔している。
 こうして少年期に短波を聴きまくった事で自分がやりたいことは放送局を持つ事と、電気を使った音楽だと思うようになった。そのコンセプトは、アマチュア無線やミニFM放送局、そしてシンセサイザーやエレキギターと自作のエフェクターを駆使した音楽の実践につながり、その後は、音声や映像のネット配信(youtubeチャンネル, SoundCloudチャンネル各種ストリーミングサービス)と、回擦胡リボンコントローラーといった自作の電気楽器演奏を中心にした音楽活動の形で現在まで続いている。短波の経験はそれらの根幹となっている私的に大変重要なものなのである。
 ただここ15年程は能動的に短波リスニングを行うことはなく直江実樹さんをはじめとした音楽仲間が短波ラジオを"演奏”しているのを聴いたり、それと一緒にセッションするという感じであった(多くの人にとって短波と音楽は結びつきがあるのである)。今でもそんな風に周りで短波を楽しんでいる人がいることや、50歳を過ぎ自分的に色々な経験やメディアが一回りした感じで再び短波熱が上がってきた所である。

ラジオをONしたが殆ど入らない、しかしそれは・・

現在私は、東京の多摩丘陵にある鉄筋コンクリート造りの団地に住んでいる。久々に短波を聴こうと思い立ち、室内で手持ちの短波ラジオ(Sony ICF-SW40)をロッドアンテナを伸ばしONしたが、殆どと言っていいほど入らなかった。少年~青年期に住んでいた杉並の実家や、2000年位に住んでいた世田谷のアパートでは室内でもガンガン入ったのに此処はダメなのか・・・と落胆したが、基本的に短波は空からの電離層反射波を受信するので、空が見えてればどこでも受信可能なはずである。つまりコンクリ団地の室内では電波が殆どシールドされてしまうのであり、外に出て空の下でラジオを点ければ以前と同じ感じで近隣諸国の放送がバンバン入る事を確認した。なぜ昔は室内でもOKだったかというと、木造の家に住んでいたので電波がシールドされずに室内でも良好に入感していたからだった。
 であれば暫し外でラジオを聴くか、と思ったが3月のまだ寒い時期に外で長時間ラジオを聴くのは厳しい。というか外でロッドアンテナを伸ばしてつまみを弄りながら延々ラジオを聴くのは近所の人に怪しまれかねない。なのでホームセンターで5mで220円の電線を買ってきて、ベランダからちょっと外の方まで張りだしだ電線アンテナを室内まで引き、ロッドアンテナに繋いでみた所、室内でも外と同様に良好に入るようになった。こんな感じの非常に大雑把なアンテナであるが団地の内部より少し外に飛び出させて張っているのが味噌である(ちょっと見難い場合はクリックして拡大してみて下さい)。

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ちなみに室内でロッドアンテナを伸ばしても入らない場合は、その建物が電波シールド状態になっているので室内にワイヤーアンテナを張ったり、ラジオのグレードを上げても微々たる効果しかないだろうと思われる。逆にこのように外までアンテナを張れば国内いかなる地域でも数千円の安いラジオでバンバン入る筈である。短波を聴きたくてラジオを買ったが、全然入らない・・・あまり入らない・・・と落胆されていた方は上記の方法をぜひお試しいただきたい(場合によっては窓際にラジオを置くだけでも色々入ってくる)。
 ただエアコン、PC、携帯電話、LED電球、蛍光灯等がノイズ源になる事があるのでこれらにも要注意である。機材をON/OFFさせてノイズの有無を確かめ、問題ある場合はそれらから極力離すなり、OFFするなりするのがベターである。因みに当方の環境ではエアコンが一番問題のノイズ源で、確りBCLする場合はOFFしている。他の機材はちょっと離せば大丈夫な感じである。

敢えてアナログ同調の安いラジオを改めて購入

こうして我が家の室内でも朝から深夜までいつでも短波ラジオを聴くことができるようになった。受信機は、先ほど記したSony ICF-SW40を当初使っていたが、このデジタル同調ラジオはチューニング時、周波数が1kHzや5kHzのステップで変わるのと、ステップを変えるごとに一瞬音が途切れてしまい、チューニングというよりチャンネルを切り替えてるような感じなので好きになれない。やはり微妙な周波数調整ができてバッドチューニングを含めて電子楽器的に楽しんでこそ私的には”短波”なのである。70年代後半のBCLブーム期の中古のラジオは当然その辺バッチリなのだが動作品は価格がかなり高騰している。またデジタル同調でも現行の数万円の高級機ならちゃんと連続した感じでチューニングできるようだが、まだそこまで金を使う気にならない。
 というわけで現行のもので昔ながらの微妙なチューニングができるアナログ同調で激安な短波ラジオを探してみた所、ELPAER-C54TというのとER-C55Tというのに目星をつけた。前者は周波数表示が針の目盛りタイプ、後者は周波数がデジタル表示タイプという違いがある。昔だったら周波数デジタル表示機は圧倒的に高かったが、今(2021年)ではなんとER-C54Tが1600円、ER-C55Tが1800円とたった200円の差しかない。サイズはズボンのポケットに入る小ささ。よりノスタルジックなのは前者だが、待ち受け受信や自分が聞いている局が何なのかを知るうえでは、デジタルで正確な周波数表示が出来るタイプのほうが良いと判断しER-C55Tを購入した。繰り返すがこのモデルはアナログ同調、デジタル周波数表示のラジオでありデジタル同調ではない(電子楽器的に使用する者はここが重要)。結果はすこぶる良好で先に記した外部アンテナを付ければ昔ながらの短波を十分に味わう事ができている。このER-C55Tは、放送を聴いていると時間とともに勝手に周波数がずれていってしまい手動で合わせ直す必要があったりと、その性能にケチをつけようと思えば色々あるのだが、いかんせん1800円のモノである。下の写真は、その外部アンテナをER-C55Tのロッドアンテナに巻き付け接続した所である。

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このシステムで3月の夜の時間帯、6MHz~8MHzをぶらぶらしてMP3録音してみた。
http://torigoya.main.jp/temporary/SW_20210310.mp3

更に夏の夜にチェックしたときの映像がこちら。

改めて短波帯を俯瞰してみて、その特徴など

こうしてこのELPA ER-C55Tと外に張ったワイヤーアンテナで室内でも朝から夜まで全時間帯で昔のような感じで短波リスニングが可能になった。ネット情報も参照しつつ色々聴いて、分かったこと、気づいたことなどを以下に列挙してみたい。

周波数と時間帯
2021年3月の現時点では、太陽が出ている時間帯は9MHzあたりより上が、夜の時間帯は9MHzあたりより下が賑やかになる。これは電波伝播の特性であり、かつ放送局もその特性を考慮して季節や時間帯によって発信周波数を変えているからである。→海外短波放送が定期的に周波数を変えている理由

入感する局 以前入感した局 入感しない局
現時点で当方の機材と環境で聴けるのは国内のラジオNikkei(旧ラジオたんぱ)以外は、大半が中国、韓国、北朝鮮、台湾の(その日本語放送を含む)局である。他の地域はまだ確認がとれていない。昔はオールタイムで強く入感していたモスクワ放送VOABBCの極東向け放送は廃止されたとの事と、他にも様々な国の日本語放送があったがやはり多くが廃止された。同じく昔はよく入ってきたNHKの国際放送Radio Japanが中々入感しないので調べたところ、現在も短波で発信しているが大分縮小された様子(スケジュール表)。スケジュールに合わせて聞いてみた所、細々と入感。少々寂しい。あと日本発信の北朝鮮拉致被害者向けの放送"しおかぜ"に時間と周波数を合わせているが現状キャッチ出来ていない。

季節や太陽黒点数の影響
遠くの局を入感させるには先に記したノイズ源の除去は勿論だし、アンテナや受信機の性能もさることながら、空(電離層)の状況も重要である。一般に冬の時期は電波伝播的に条件が悪い。夏に向かえばもうチョット遠くの色々な局が聞こえる様になると思われる。さらに11年周期で増減する太陽黒点数も電離層に大きな影響を与える(→wiki太陽活動周期)。黒点数が多いほうが有利なのだが、只今の2021年は大体その谷間にいる感じで、やはり不利な状況である。

中国大陸、北朝鮮の放送でかかる音楽の変化
相変わらず一党独裁が続く中華人民共和国。北京放送はやはりプロパガンダ色が強い内容の放送が多いが、その一方で以前は掛かる事のなかったポップ色が濃い音楽が掛かる事が多くなっており中華な感じはやや薄らいでいる。現代の中国においてハイテク産業が盛んなことはご存じの通りだし、ポップス向け楽器やエフェクターの開発、販売が非常に盛んなことも周知のことなので当然といえば当然であるが。とはいえ台湾のテレサ・テンを掛けることを禁止していた中国大陸である。当局にとって脅威にならない範囲のポップスならラジオでかけてもOKという感じか。もちろん昔ながらの中華音楽が掛かることも多々ある。
 同じくプロパガンダ色の強い北朝鮮の放送は基本的には以前のままな感じだが、やはりポップスを流す点でバリエーションが増えた感はある。以前は戦前~戦中の日本の影響が強い軍歌調、唱歌調や、ロシア風の合唱曲や器楽曲という感じだったが、それらに加え現在は、昭和歌謡曲風、昭和戦隊物のテーマソング風、テクノポップ風、ディスコ風なイメージの曲調も加わり、1960~1980年位にあったポップス楽曲な感じで私のような50代の人間には曲だけ聞いている分には極めて懐かしい。歌われている内容は、全てお決まりの例の内容である→Youtubeにまとめがある

便利なサイト Short Wave Info
自分が聞いている放送局の周波数が分かれば(先に書いたようにEL-C55Tはデジタル周波数表示なのでほぼ正確に分かる)、それがどこの局なのかをこのサイトで調べることができ大変便利。逆に、あのラジオ局はどの時間帯にどの周波数で送信されているのかも引くことが出来るのも素晴らしい。→Short Wave Info ※±5kHzの項目にチェックをいれて調べるのが万全である。

アマチュア無線局
アマチュア無線帯をワッチするが現状アマチュア無線局は当方の環境、機材では全然入感しない。多摩丘陵という地理的条件が悪いのかもだが、放送局に比べ圧倒的に送信出力が弱い電波ゆえ、受信機、アンテナを良いものにすればある程度は入ってくるとも思われる。

モールス通信
以前に比べ当然ながらかなり減ったが、まだ時折聞こえてくる。12MHz帯で韓国の船舶向け海岸無線局(コールサインHLW2やHLO)を確認できた。

消えたテレタイプやFAX系通信
ピーヒョロ、ロな感じの音のテレタイプやFAX系の通信は殆ど聞けなくなった。この時代、テキストや画像の伝送はネットでやればいいって事だろうか。20年前の録音があるのでそれと比較すると、
http://torigoya.main.jp/temporary/ShortWave.mp3
こちらのほうがテレタイプ~FAX系の通信音がまだいっぱい聞けて、それをチューニングするときのビー・ヒョロなノイズがすごく魅力的でこれぞ短波って感じの重要なファクターの一つだったとおもう。今はこれがほとんど入ってこなくなったのが寂しい。ただモールス同様アマチュア無線ではまだやってるとの事で、受信機とアンテナを良くすれば聞こえてくるかもしれない。

という感じである。まだ私的に再熱したばかりなので、今後も継続的にリスニングして、季節での違い、さらには11年周期を念頭に入れた太陽黒点数の違いといった事で状況がどう変化するのかなど長い目で見てゆきたいと思っている。こう改めて短波を聴いていると、音楽はHi-Fiな環境で聴くのとはやはり一味も二味どころか十味くらい違った感じで別物に聴こえるし、数分前までは強力に入感していた局が聞こえなくなってしまったり、ある国の放送を聴いていたら、いつのまに別な国の放送になっていたり・・・・と短波ならではのハプニングや、イマジネーションを掻き立てられるのが面白い。

と、まだ書きたいこともあるのだが長くなってきたので、短波についてはまた改めて続編記事を書きたいと思う。


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尾上祐一 Yuichi Onoue
69年東京生まれ。ギター等の既成楽器からリボンコントローラ、回擦胡などの自作楽器まで演奏。ハイテク~ローテク、古今東西の様々な音と音楽を探求。演奏活動、録音製作をソロからワナナバニ園、サンピンといったバンド・ユニットまで形態、ジャンル問わず盛んに行ってます。