真空ジェシカは俺の主人公だった-M-1グランプリ2021決勝-
M-1グランプリ2021決勝戦を観るテーマは一貫して「真空ジェシカが大事故を起こさないか」で、真空ジェシカのファーストステージ敗退が決まった時に以降のコンビのネタをフラットに観れるな、と安心した自分がいて、俺の中で真空ジェシカは"主人公"だったんだと思いました。
順番
M-1グランプリ2021決勝戦は水谷隼の野郎がモグライダーをトップに据えたことですべてが狂い始めました。トップであんなにおもろすぎる漫才をしたので、審査員は「トップにしては高くつける」などいらん気の使い方をしつつも「そもそもトップに一、二を争う面白いコンビが出てくる」という可能性を排除した点数をつけました。そのためモグライダーよりも跳ねなかった4組目ハライチまでは低調に進み、5組目の真空ジェシカで会場はいよいよ笑う態勢へ、それでも点数は次の6組目オズワルドからのインフレとなり、ウケ量と点数のインフレが一つ掛け違えた状態で起こりました。後半に自分の好きな組が少なかった(例年よりは好きなんだけど、真空モグよりは応援していなかった)こともありますが、真空の敗退が決まった時点で俺のM-1グランプリ2021へのまなざしは変わりましたね。ずっと2~4組目は「モグライダーより面白いかどうか」で判断し、6組目以降は「真空より面白いか」に注視していた、こんなに応援できるコンビがいるとM-1という"番組"への見方も変わるんだなと思いました。前のめりに見させてくれて本当にありがとうございました。
審査
ここ3年ほど審査に文句つけたことなかったから忘れてたけど、そうだえみちゃんってジョーカーだったなと思い出しました。えみちゃんがジョーク飛ばして審査をするのはもう別に受け入れるんだけど、それなら松本や巨人ちゃんにはもっと緩急をつけた審査をしてほしかった。そこの認識の共有はしといてほしい。で、個人の好き嫌いは大いに審査に反映させていいよ!という思いが前提にあるとはいえ、あのハライチに98点つけるのはさすがにご自身の沽券にかかわると思いますよ。真空のわかんなかったボケに対して「センスあり」という言葉で逃げてくれたのは救いだったけど、それでも真空のボケは本当に精度が高くて、かつわかりやすくしてくれてもいたのに、「わからない」と思うんならマジで審査せんでくれと思いました。義務教育で習う範囲だと思いますよ全部。あとサンド富澤の89点は悲しすぎる。そういえばYoutubeの真空本番ネタ動画のコメント欄にも「若い人にしか伝わらないのに云々」とか言ってるバカがいて、どれが年齢による理解の差が発生するポイントか教えろ。
ネタ
2019年以降の真空ジェシカのマスターピースではないでしょうか。メタネタを捨てコント漫才に絞った時点でかなりの変化を生み出せるコンビだと感動しましたが、そのコント漫才をたった2,3年でこんなに面白く、わかりやすく、かつソリッドなボケツッコミも残してくるのはまさにエリートと言わざるを得ません。ただ一撃必殺の重いボケだけじゃなく、ツッコミが笑いの広がりが生まれるように方向を示すタイプで、その組み合わせの強さが笑いを生んでいました。2010年前後の大学お笑いの中でカリスマ的存在だった2人がプロを目指すために組んだというある意味ビジネスのコンビだからこそのかっこよさがありますね。ラランドのメディア露出以降「大学お笑い」が注目され、いわゆる大学お笑いっぽいネタとかが揶揄される傾向にありますが、真空のネタはその一つの完成系というか、やりようによってはメディアでも天下とれるぞという可能性を見せてくれました。「おばあちゃんは全員文系だと思ってた」は本当にそうなんですよ。
伏線
本番後のGyao大反省会およびストロングゼロの打ち上げにてかまいたち濱家も笑い飯西田も銀シャリ鰻もみんなが真空ジェシカに対し「オチなく終わったのが面白かった」と言及していました。これは大喜利ボケ主体の真空の良さを端的に表していること、それが漫才強者たちに認められていることなどプラス面もありますが、やはり漫才界には伏線を張って回収するまたは明確なオチがある構成を"よい漫才"とする不文律的なのがあるなと思い、ちょっと未来を悲観しました。M-1を作り上げてきた彼らの中では筋の通った漫才が当然であり、生み出すことに苦労してきたんですね。だから真空のストーリーがないように見える漫才が「それやっていいんだ!」と輝いて見えたのだと思います。野田クリだけがここに言及してなかったの、やっぱ一つ先を行く考えを持ってるなと思って野田クリのことまた好きになりました。ただ真空はめちゃくちゃ調整力があるとわかったので、というか準決の審査の基準に調整力という項目が設けられてそうなほど調整上手なコンビが近年決勝の舞台にあがっていますが、筋の通ったネタもいつか作ってきそうだと期待もしています。もちろんあと1年とかで優勝するつもりならそれをやった方がいいし、とはいえ時代も流れていきそうな感じがした決勝だったので、3年後とかには筋の無いように見える漫才でも優勝できるような気がします。真空がどちらをとるか、ワクワクします。それでも二進数→ハンドサインの流れはきれいで感動しましたね。錦鯉の1本目の「穴でも掘っとけ」の件、最高でしたよね。
展望
今回真空は完全に2019年のオズワルドと同じ「あいつら今思えば面白かったよな」枠になりました。Youtubeの再生回数もそこそこなのが物語っています。決勝にいてもおかしくない存在感を備え、強いネタ何本も作ってまた来年も勝ち上がってきてくれると思います。明確に応援できるコンビがいるM-1決勝もいいもんですね。本当に、ワクワクしています。
M-1グランプリ2021
真空が1回戦初日1位をとって始まった今年のM-1、決勝のメンツまでの審査はあまり文句のつけようもなく、毎年の反省も踏まえて、というかコンテンツとして大きくなりすぎてナレッジがやばいけど、だんだんよくなってますよね大会として。だからこそ、こんなに大きくなった大会だからこそ、もう敗者復活の国民審査は撤廃してもいいんじゃないかと思いました。国民すべてで1票とかにしてほかに石田/橋本/小沢の審査入れて4票で決めるとかでもいいよね本当に。ハライチにはがっかりした。
M-1のお楽しみの新人発掘としては特にラパルフェという新しい色モノ+視聴者の意見仮託枠や、アン縫いというソリッドワード連発面白コンビ、そしてなんといってもヨネダ2000、この3組がいただけで今大会は成功です。真空とモグライダーがいくことでパンプキンポテトフライ、ママタルト、さすらいラビー、ストレッチーズ、令和ロマンも決勝に行く可能性が見えたのも、嬉しいですね~。
ほかなんでしょうね、インディアンスやっぱ苦手だけどキムのツッコミが年々、本当に少しずつではあるものの上手くなってます。生理的嫌悪感は薄れてます。それでもネタにもう中学生入れたりとか、そういうのは本当に無理です。後輩が「面白いんだけどメロコアみたいな漫才」って言ってたのがマジでその通りすぎましたね。
いろんな芸人が総評述べますが、令和ロマン高比良くるまのコメントが全部的確で本当に好き。冷静で理論派だなあ。錦鯉のツッコミの技術力の高さは完全に納得。
日清のジョイマンのCM、面白かったけど日清かーってなって後で笑えなくなったから日清はいい案はOEMにしてほしい。
オズワルドの2本目のネタ、昨年グレイモヤで見た時も「この変化に観客ついていけるか?」って不安だったのですがそれが的中しましたね。
今年の大会の前後で潮流が変わるだろうなーと思っていて、ハライチとかアルピーとかのベテラン組や、見取り図ニューヨークアインシュタインゆにばーすの売れっ子組の漫才、明らかに視聴者の求めてたものではなかったなあ。
敗者復活でアナウンサーが「戻ってきたコンビに皆さん拍手を送り、絆を感じました」とか言ってて、いや絆とかアナウンサー側から言うのはいりませんから、そういうのはこっちで見つけるんで、こっちもバカじゃないので、と思いました。マジで余計な感動演出はやめてほしい。感性はこっちで養うよさすがに。視聴者をなめるな。TBS日曜劇場かお前は。
以上です。色んなひとが感想を書くでしょうが、嫌な気持ちにならない程度に探して読むようにします。
今年の真空のネタが好きだった人はYouTubeでやってるギガラジオ(水曜木曜あたり更新)、ポッドキャストのラジオ父ちゃん(土曜更新)もぜひ聴いてみてください。
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