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詩吟と菅原道真と呪術廻戦

2024年3月現在ジャンプで連載中の「呪術廻戦」を見てるとどうもこの作者は、近年よくある主人公らしい能力をあえて主人公以外のキャラに持たせて、能力的な特別性を持たせないまま主人公を主人公たらしめるという難しいことに挑戦してるのかもしれない…と推測しつつ見てる。それはさておき。

呪術廻戦には菅原道真の名前が出てくる。
詩吟は古今東西の漢詩を節をつけて朗詠するものだが、その中には菅原道真が作った漢詩もある。教室で購入するテキストでもわりと前の方に掲載されている。
こんな感じの↓

九月十日(重陽後一日)  菅原道真

去年の 今夜 清涼に 侍す
秋思の 詩篇 独り 断腸
恩賜の 御衣 今 此に在り
捧持して 毎日 余 香を 拝す

なぜ「菅原道真」なのかって?「漢文」=「呪術」だから
作中では、登場人物の1人(2人だったかな)が菅原道真の子孫ということになっており、道真は平安の世で強い呪術を駆使する術師として説明されていた。
ではなんで菅原道真かっていうと、彼が当時を代表する漢文博士だったからだ。
漢文に強い=「強い呪術を使える」なのである。

大昔の日本の権力者が大陸から漢字を輸入したのは、漢字に伴う仏教とそのシステマチックに洗練された呪術を取り入れたかったからで、その力はかの古代の英雄ヤマトタケルを死に追いやった山の神を追い払うほどに強力だった。
例えるなら北斗の拳でケンシロウと死闘を繰り広げたファルコが修羅の国の下っ端にあっさり倒されたようなものだろうか?(違うかもしれない)

たぶん宿儺は漢文に強い
ともかく、漢文=呪術なのだ。
そしていわゆる「呪い」という概念がはっきり誕生したのも平安時代だし、大陸から取り入れた呪術を日本ナイズして、国家から個人まで自在に駆使するようになったのもこの時代だった。
呪術廻戦の平安キャラが言う呪術全盛とは漢文全盛という意味でもあるのだ。

だから呪術廻戦は必殺技も漢字だし、なんか難しい四字熟語も出てくるし、手印が仏教に関連しているのもドンピシャでそのためだ。
つまりあの両面宿儺だってゴリゴリに漢文世界の人なのだ。頭の良い人ぽいので仏教から陰陽道まで全部頭に入っているかも知れない。
漢文文化が日に日に薄れ、そういう文化があった事すら忘れられつつある現代では、呪術師が弱いのも当然と言えるだろう。

菅原道真と言えば、

東風吹かば にほひをこせよ 梅の花 主なしとて 春を忘るな

の和歌が有名だが、数々残した漢詩・漢文よりも和歌が一番広く親しまれてしまったのは、漢文学者だったご本人的にはどうなんだろう?と思ったりする。

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