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蒸散による水の減少量を調べる実験

この稿では、蒸散による水の減少量を調べて気孔がどこにあるのかを確認する実験を取り上げます。

★例題1
次のような実験をおこなった。この実験について、あとの問いに答えよ。

1、葉の枚数や大きさがほぼ同じ、同一種の植物を3本用意した。

2、3本の植物を、同量の水を入れたメスシリンダーA、B、Cにさし、水面に少量の油を注いだ。

3、Aのメスシリンダーにさした植物には何の処理もしなかった。Bのメスシリンダーにさした植物は、すべての葉の表にワセリンをぬった。Cのメスシリンダーにさした植物は、すべての葉の裏にワセリンをぬった。

4、植物をさしたメスシリンダーA、B、Cの重さを電子てんびんで測定した。

5、メスシリンダーA、B、Cを、明るく風通しのよいところに置いた。

6、4時間後、それぞれのメスシリンダーの重さを再び測定したところ、それぞれの減少量は、Aが3.2g、Bが2.8g、Cが0.6gであった。

(問い1)この実験で、水面に油を注いだ理由をいえ。

(問い2)この実験で、ぬったワセリンはどういう役割をしているか。

(問い3)この実験では水の量が減少しているが、それぞれのメスシリンダーで、水はどこから失われたと考えられるか。

(問い4)葉の表側からの蒸散量を調べたい。どのメスシリンダーとどのメスシリンダーを比較したらよいか。また、葉の表側からの蒸散量は何gか。

(問い5)葉の裏側からの蒸散量を調べたい。どのメスシリンダーとどのメスシリンダーを比較したらよいか。また、葉の裏側からの蒸散量は何gか。

(問い6)蒸散がすべて気孔でおこなわれているとすると、この実験から、気孔は葉の表と裏のどちらに多く存在しているといえるか。

★(解説)
植物は不要になった水分を体外へ排出します。
この作用を蒸散といい、おもに気孔と呼ばれる穴から、水蒸気の状態で体の外へ水を排出します。

上の問題で取り上げた実験は、植物の体を通して外へ排出される水の量だけを調べる実験です。
この問題では、水面に油を注ぐことで水が直接空気にふれないようにして、水面からの水の蒸発を防いでいます。

蒸散はおもに気孔でおこなわれます。
この実験は、蒸散をおこなっている気孔が、植物のどの部分に多いのかを確かめる実験です。

ワセリンは、ねばりけのある物質であり、ワセリンをぬることで穴である気孔をふさぐことができます。
ワセリンのぬってある面の気孔は穴がふさがれてしまい、気孔から水蒸気を体の外へ出すことができなくなります。

★この種類の問題を解く前に、必ず確認しておいてほしいことが1つあります。
それは、水蒸気がどこから外界へ失われるのかをあらかじめ考えておくことです。

この問題だと、(1)水面からの蒸発、(2)葉の表からの蒸散、(3)葉の裏からの蒸散、そして見逃しやすい(4)茎からの蒸散、この4つがありうることを最初に確認しておかないといけません。
油を水面に注いだことで、(1)水面からの蒸発だけは考慮からはずすことができます。
結局、この問題では、葉の表、葉の裏、茎の3つの場所で蒸散がおこなわれていることになります。

以上の考察を経て、この問題を解いていきます。

★(解答)
(問い1)この実験で、水面に油を注いだ理由をいえ。

水面からの水の蒸発を防ぐため。

(問い2)この実験で、ぬったワセリンはどういう役割をしているか。

気孔をふさいで、ふさいだ気孔から蒸散をさせないようにしている。

(問い3)この実験では水の量が減少しているが、それぞれのメスシリンダーで、水はどこから失われたと考えられるか。

メスシリンダーAは、葉の表、葉の裏、茎の3ヶ所、メスシリンダーBは、葉の裏、茎の2ヶ所、メスシリンダーCは葉の表、茎の2ヶ所で、水が失われた。

(問い4)葉の表側からの蒸散量を調べたい。どのメスシリンダーとどのメスシリンダーを比較したらよいか。また、葉の表側からの蒸散量は何gか。

葉の表だけが条件の異なるもの2つを比較すればよい。
どこもふさいでいないものと、葉の表だけをふさいだものとを比較したらよいから、AとB。

葉の表側の蒸散量は、A-B=3.2-2.8=0.4g。

(問い5)葉の裏側からの蒸散量を調べたい。どのメスシリンダーとどのメスシリンダーを比較したらよいか。また、葉の裏側からの蒸散量は何gか。

葉の裏だけが条件の異なるもの2つを比較すればよい。
どこもふさいでいないものと、葉の裏だけをふさいだものとを比較したらよいから、AとC。

葉の表側の蒸散量は、A-C=3.2-0.6=2.6g。

(問い6)蒸散がすべて気孔でおこなわれているとすると、この実験から、気孔は葉の表と裏のどちらに多く存在しているといえるか。

水の減少量の多い、葉の裏。

★例題2
次のような実験をおこなった。この実験について、あとの問いに答えよ。

1、葉の枚数や大きさがほぼ同じ、同一種の植物を5本用意した。

2、5本の植物を、100gの水を入れたメスシリンダーA、B、C、D、Eにさした。

3、Aのメ スシリンダーにさした植物には何の処理もしなかった。
Bのメスシリンダーにさした植物は、すべての葉の表にワセリンをぬった。
Cのメスシリンダーにさした植物は、すべての葉の裏にワセリンをぬった。
Dのメスシリンダーには、葉をすべて切り取りった茎だけをさし、切り口にワセリンをぬった。
Eのメスシリンダーにはガラス棒をさした。

4、植物をさしたメスシリンダーA、B、C、D、Eの重さを電子てんびんで測定した。

5、メスシリンダーA、B、C、D、Eを、明るく風通しのよいところに置いた。

6、4時間後、それぞれのメスシリンダーの重さを再び測定したところ、それぞれの水の量は、Aが83.0g、Bが87.0g、Cが95.0g、Dが99.0g、Eが99.8gであった。

(問い1)葉の表側から出て行った水の量は何gか。

(問い2)葉の裏側から出て行った水の量は何gか。

(問い3)茎から出て行った水の量は何gか。

(問い4)水面から蒸発した水の量は何gか。

★(解説)
問題を解くときに一番確実な方法は、考えないといけない内容を「可視化(目に見える形に)」しておくことです。

この問題の場合、2つのことがらを見に見える形にしておくと楽に解くことができます。

1つ目は、水の減少量を書き出しておく。

蒸散は、水がおもに気孔から外の世界に排出されることですから、残った水の量ではなくて、失われた水の量のほうが大事です。
元の水の量100gから残った水の量をひいて、減少した水の量を求めておかないといけません。

問題の図の上か下でよいので、
A・・・100-83.0=17.0g
B・・・100-87.0=13.0g
C・・・100-95.0=5.0g
D・・・100-99.0=1.0g
E・・・100-99.8=0.2g
計算をして、求めた水の減少量を書き込んでおきます。

2つ目は、もっと大切なことですが、頭の整頓のために、どこから水が出て行ったのかを、自分自身が一目でわかるように、書き出してみることです。

例えばメスシリンダーA。
他のメスシリンダーを参考にすることで、Aでは、(1)水面、(2)葉の表、(3)葉の裏、(4)茎の4つの経路から水が出て行っていることがわかります。

わかった!と、そこで終わる人が多いのですが、それが失敗のもと。
わかったことを必ず目に見える形にしておく。
難問を解く際の必須事項です。

無駄な時間はロスですから、丁寧に書く必要はありません。
Aの上か下に、水・表・裏・茎と書いておく。

水が出て行く場所と、水の減少量を書き並べると次のようになります。

A__水・表・裏・茎__17.0
B__水・×・裏・茎__13.0
C__水・表・×・茎__5.0
D__水・×・×・茎__1.0
E__水・×・×・×__0.2

これでやっと準備完了、楽に解いていくことができます。

★(解答)

(問い1)葉の表側から出て行った水の量は何gか。
上のメモから、AとBの違いが、表から出た水の量だと一目でわかります。
17.0-13.0=4.0g

(問い2)葉の裏側から出て行った水の量は何gか。
AとCの違いが裏から出た水の量。
17.0-5.0=12.0g

(問い3) 茎から出て行った水の量は何gか。
茎だけ違っているのはDとE。
DとEの違いが茎から出て行った水の量です。
1.0-0.2=0.8g

(問い4)水面から蒸発した水の量は何gか。
水面からだけ水が蒸発しているのはメモからE。
0.2g

俊英塾代表。「塾学(じゅくがく)」「学道(がくどう)」の追究がライフワーク。隔月刊誌『塾ジャーナル』に「永遠に未完の塾学」を執筆中。関西私塾教育連盟理事長。