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東京にいる私の休日。昨日三浦半島に魚を獲りに行った。

東京にいる私の休日。昨日三浦半島に魚を獲りに行った。


日曜日の夜。御徒町で大学時代の友人と飲んだ帰りの電車の中。

ホームで緑色の山手線に乗った俺を、青色の京浜東北線に乗る大学の後輩がニコニコしながら見送ってくれる。
そういうのやめろちゃー、と1人言う。
車内には他人がたくさんいる。
なので恥ずかしい、と俺は少し思った。


さっきまでニコニコしながら携帯をいじっていたおじさん、今は無表情ですね。
雨が降って窓ガラスに水の粒がたくさん付いている。これはまだ濡れているという感じではないなと思う。
子供の頃、雨の日に車の中で窓ガラスに結露した水分を舐めてみたりした。
そいうことを思い出したりしている。
山手線、雨。窓ガラスが湿る。何となく。あー


それから好きなアイドルのTwitterをみる。好きな人ができたことを正直にファンに伝えてくれている。そのことを考える。君はまんまるとしていて赤ちゃんみたいで愛おしい。うまくいけよ。

窓ガラスに映った隣の女の人の姿を見ている。一生懸命携帯をいじっている。1分少々停車をいたします。3番線ドアが閉まります。
生きるって何なんだろう。一応考えてみる。

世の中の全てを描写することができない。それは生きるって何?それがわからないことに似ている。

車内にいる中国の人、(服装とかで何となくわかってしまうんだ。ごめん)すごい形の耳たぶだなと思ったけどよく見たら肌色のワイヤレスイヤホンだった。そういうこともあるんやな、と思う。むしろ、なんかすまん、という感じか。目を瞑っている。何の音楽を聴いているんだろう。気持ち良さそうだ。

そしてそれから、昨日三浦半島に魚を獲りに行った時のことを考えた。
潜って銛つきをしていた時のことを思い出してみる。

水の中に潜るとパキパキと音がしていた。水圧の変わる音なのかな。冷たい水面から水の中を見ていると魚たちは野生というより、そういう風にプログラムされた明らかな物体だった。怖い、つぎに潜るのが明らかに怖いと思った。息が全然続かない。俺は泳ぎが得意ではないんだ。すぐに頭も身体も全部疲れてくる。
空はさっきから晴れたり曇ったりしている、
波は泳ぎの得意でない俺が泳げているんだから高くはないんだろう。でも、海で泳ぐなんて滅多にないから波の高さの基準がわからない。水面から15センチくらい、やっと顔を上げて吸う、私の空気はとても清浄で、とても美味しい。
そうしてしばらく潜ったり水面を漂ったり、小魚に無意味に銛を刺そうとするけど刺さらないな、ということをしたりしていると本当に疲れてきた。これ以上、続けると本当にやばいなというところまできた。

俺が潜っていた崖のそばの水中は深く抉れて空間があった。そこに何かあるかもしれない。意を決して潜ってみる。これが最後だ、と思う。
しかし何もいない。
今思えば、バシャバシャと音を鳴らす人間を嫌って生物は皆逃げていたのだろう。諦めて戻ろうとしたそのときに、中途半端に汚れた雑種犬のような柄のナマコを見つけた。息が続かない。これ以上は魚を探せない。何も考えずにそれに銛を突き刺した。差し口から白い何かがだらだらと吹き出している。何も考えずに銛を前に置いて陸地に向かって泳ぎ出した。水が冷たい。ナマコを見ながら泳ぐ。シュノーケルを介した自分の呼吸音が聞こえる。荒い。
そのとき、銛の先のナマコが口(?)からドロドロと白いものを一気に、まさに一気に噴き出しているという感じで放出していることに気づいた。波の音で音なんか聞こえないし元々音なんかしないんだろけど、びゅるるー音がしてるみたいな勢いでそれは内臓を吐き出している。白、だけでなく赤や茶色、色んな色の内臓をである。泳ぎの進行方向からその内臓がどんどん流れてくる。ふとそれに触ってみるとものすごい粘着質だ。これは何か似ている。というか、瞬間、脳内の特定の回路にその感触はアクセスした。ロックが解除される。



それはまさにざーめんが水中に放出されて起こる性質と同じ粘着質のそれだった。
お風呂の中でそういう行為(ソロでもデュエットでもだよ、俺はソロしかないが)
をした人になら確かに分かるだろう。
ねばねばとした粘着感というより、むしろタンパク質の粒の際立ったぷりぷりとした粘着感である。
シュノーケルを咥えながら、うわっという声が出る。
水中で銛を刺されて内臓を放出するナマコ。
ナマコ、ナマコと俺。
こんなのはなかなか見られる映像ではない。
また、自分の眼球で見ているのに動画のように見えるな、と一瞬思うがその間にも内臓の噴出は止まらない。
びゅるるーという感じで内臓は噴き出しつづけ、それはシュノーケルや衣服その他にも流れてきて粘着し続けている。
内臓を噴き出し続けるそれはまさに宇宙生物のそれのようにしか見えない。
なんやねんこれー
瞬間、俺は笑いが止まらなくなった。シュノーケルを介して、自分の耳にだけ笑い声が聞こえる水中。



ひーこらと息切れと寒気が止まらない、何とか陸に上がった。
ナマコのざーめん(もうそう呼んじゃおう)をふりかけられた俺は、爆笑しながら陸に上がり、それを一緒に来ていた友人に見せて一緒に爆笑しようと彼の元へ駆けていく。
友人は懸命に釣りをしている。
今夜の晩飯を獲ようと必死だ。
今起こったことを懸命に話した。
が。全然ウケなかった。
あの面白さは実際にそれを見た人にしか伝わらないのだろう。 


俺はこのことを伝える為にだけこの文章を作成し、今五反田に着いたのでこれからうどんを食べに行く。(うどんを待っている間に加筆修正しました)

おにやんまのうどんはとても美味しいと思う。

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