外見について

自慢じゃないが、私の見た目はあまり良くない。
上中下でいうと、中の下～下の上くらい。
しかも、これは自己評価だから、客観的にはもっと低いかもしれない。
ルックスで人の目に留まった経験はない。

10代～20代前半くらいの頃は、それなりに自分の外見に悩んで、時々泣いたりした。
これくらいの年代は、周りも分別がないから、平気で他人の見た目に言及する人がたくさんいたし、可愛い子と露骨に対応を変えられることもよくあった。
私の場合は、母親が、私の顔の作りやスタイルの悪さを挙げて、「恥ずかしい」とか「そんなんだから男に捨てられる」とか「整形してみたら？」とか口に出す人だったから、その影響もあった。

ただ、今は、自分の見た目をそこそこ気に入っている。

ちなみに、整形とかはしていないし、何なら老いによって昔よりも外見の水準は下がった。
それでも私が自分の見た目を好きなのは、この微妙な外見が、まともな人間関係を作ってくれていると気づいたから。

私は、友達は多くはないし、モテる方でもない。
ただ、そんな中で近づいてくる数少ない人は、百発百中でまともだった。
つまり、私に近づいて何か利益を得ようとかいう人はいなくて、単純に、考え方が好きとかフィーリングが合うとかで近づいてくる人ばかりだった。

私は、最近までこれが当たり前だと思っていて、自分が恵まれているとは思っていなかった。
でも、どうやら違うらしい。

職業柄、離婚の相談をよく受ける。
私の観測範囲では、DVとかモラハラの被害に遭っている女性の美人率はかなり高い。
そして、加害者の言動は、対等だと思っている相手にはとてもできないであろうものばかりである。

加害者は、なぜそこまで見下している相手と結婚したのか？
それは、そういった人の多くが目指していたのが、「他人が羨む属性」の妻を手に入れることであって、妻の中身など見ていなかったからではないか。
「他人が羨む属性」の最たるものが、容姿が美しいこと、である。

それから、私の学生時代の友達にも美人が多くいるが、（もちろん楽しいことも多いものの、）いかがわしいサークルやパーティーの誘いとか、水商売関係の誘いとか、そこまでいかなくても、美人をうまく利用しようとしているとしか思えない類の誘いが多いという話はよく聞いた。

上のような話から私が学んだことは、美人であるという、他人にとって魅力的な性質を持っている人ほど、なんのフィルタリングもなく、いろんな目的の人が近づいてきてしまうようだ、ということ。
フィルターが機能しないから、美人には、人をうまく選別する力が求められる。
逆に、この力がないと、簡単に人生が狂わされる。

私の外見は、これらの人たちを近づけない天然フィルターになっていた。
外見に特別な魅力がないおかげで、初めから、それだけが目的の人を近づけずに済んでいたのだ。
私は人を見る目がないから、これは間違いなく人生に有利に働いたと思う。

私は、今、致命的な悪事に巻き込まれた経験もなく、誰かに体や心を深く傷つけられた経験もなく、一緒にいると心地良いと言ってくれる人達と、それなりに幸せに暮らしている。

私がこのような幸せな状況にあるのは、私の外見が絶妙な水準だった（＝下手に美人ではなかった）おかげなのだと、今なら思える。