水星の魔女:考察と予測

はじめに

これは水星の魔女12話終了時点の情報から考察記事です。
主にガンダムがどのように開発されたのか、技術の中身を考察して、エリクトやスレッタがどういった存在なのかをまとめていきます。
目次をご覧になっていただければわかりますがだいぶん突拍子もない方向でまとまっていますので話半分にお読みください。

考察はアニメ本編、プロローグ、公式サイト内の情報を参考にしております。アニメ雑誌などの情報や制作者インタビューの類いは一切見ておりません。
ただし使用される言語から想起される作中言語の引用元と思われる情報を引き合いに出してメタ考察を行なっている箇所もございます。ご留意ください。
なお、書いている人はド文系であるためSF考証は不得手であることをご留意ください。

GUND-ARM(ガンダム)とは

水星の魔女におけるガンダムとは…
GUND(ガンド)・フォーマットと呼ばれる身体拡張技術を搭載したモビルスーツ(MS)のこと

ガンドはパーメットリンクと呼ばれる技術を使用し、人体と非生物機構を接続・制御するシステムの名称です。

公式HPのワード集から引用しつつ前提となるパーメットリンクやガンド・フォーマットの仕様をまとめていきます。

パーメットリンクとは

まずパーメットリンクに使用されるパーメット(PMET)について押さえておきます。
下記が公式設定です。

太陽系内に偏在する鉱物から発見された元素。個々のパーメット間で情報を共有する性質があり、パーメットを素材や推進剤などに混合させ制御することで様々な技術が開発される。パーメットを人体に流入させる身体機能拡張技術は宇宙に進出する基盤と考えられている。

https://g-witch.net/words/

記述から大雑把に察するに、ようするにパーメットは電子回路や記録媒体の役割を果たすことが出来るようです。
名称の由来は推測するに「Permanent Magnet Excitation」(永久磁石励磁)ではないかと思います。

れい‐じ【励磁】
磁化していない強磁性体を磁化すること。また、電磁石のコイルに電流を通じて磁束を発生させること。

デジタル大辞泉

パーメットと結合した物体は一度電気通すと比較的長い間、少ない電力で強力な電磁石的な動きをするのかもしれません。
だとすると省電力で大きなエネルギーを得ることが可能なのかな、と予測できます。
パーメットを推進剤に混ぜているという点もなんとなく電力の効率を重視している予感がします。
推進剤というのは(専門的なものは置いておいて)一般的にはロケットエンジンの燃料のことです。
燃やして気化して爆破させるイメージの現在のメジャーな推進剤である化学燃料に直接電子制御用の媒体を混ぜ込むといわれるとピンときませんが、ロケットエンジンが電気推進に置き換わっている考えると推進剤にパーメットを混ぜるのは理にかなっているような気がします。
恐らく水星の魔女ではモビルスーツも宇宙航空間も、フロントのような大型の人工衛星も脱炭素化して電気推進がメジャーなんでしょう。令和だぁ…。

なにはともあれ個々のパーメット間で情報を共有するという特性を利用して、従来の電子制御よりも簡易に情報を伝達、共有し、機械を制御しようというのがパーメットリンクと呼ばれる技術なのだと思われます。

ガンド・フォーマットとは

冒頭でも記載してますが改めて。

【GUND】
パーメットを利用した身体機能拡張技術。GUND技術を軍事転用したシステムは「GUNDフォーマット」と呼ばれ、これを搭載したモビルスーツは「GUND-ARM」と総称される。

https://g-witch.net/words/

パーメットリンクは基本的に物質と物質、機械と機械といった非生物同士をリンクする技術だと思われますが、それを人間と機械に応用したものがヴァナディーズ機関開発のガンド・フォーマットだと思われます。

身体拡張技術というのはロボットなどを用いて人間の持っている運動能力や知覚を増強することです。
ロボットは使っていませんが、視力という知覚を底上げするという点では眼鏡などは身体拡張ツールと言えるかもしれません。補聴器などもそうですね。

ヴァナディーズ機関は宇宙開発で欠損した身体能力を補う医療技術としてガンド・フォーマットを開発し、後にそれがMSに軍事転用されることになりました。
ガンド・フォーマット搭載型モビルスーツのことを「GUND-ARM」――通称・ガンダムと呼称するというのが本作の設定です。

人体にどうやってパーメットを流入させたのかについてですが、これは普通に考えて血液に混ぜたかと思います。血管は全身に張り巡らされてつながっていますから脳からの情報を毛細血管まで共有することが可能です。
そうすると血管で神経系の代用をすることが可能と言えるかもしれません。

プロローグ時点までのガンダム開発

ここからはヴァナディーズ機関を買収したオックス・アース社がどのようにガンダムを開発したのか考察していこうと思います。

ガンダムのメリット

ざっくりいうと操縦は簡単になるが機体制御や反応速度は飛躍的に向上するというのが従来MSに対するガンダムのメリットだと思われます。

おそらくは従来MSも人体とリンクしていないと言うだけでパーメットリンク自体はどこかしらに組み込んであったのではないかと思います。推進機構とかそれこそパーメットで省エネ化してたかも。

とはいえ操縦の部分ではどうしてもパイロットの入力を電子情報に置き換える作業が必要です。入力から実際にMSが動作するまでにやるべき工程は多いため、若干とは言え動作にラグが発生すると考えられます。
また複雑な作業はパイロットが入力すべき項目が増え、操縦が繁雑になることが考えられます。

ガンド・フォーマットを使用することで人間とMSが直接リンクできれば繁雑な作業の大半をカットできるため、操縦は簡単に、動作は速くなることが予測できるわけです。
実際プロローグでは交戦したドミニコス隊のメンバーがMSの反応速度に驚いていました。

データストーム問題の発生

ヴァナディーズのガンド・フォーマットはエルノラの義手がほぼきちん動いていることからしても(商売になるかは置いておいて)技術的には大きな問題のないものだったと考えられます

ところがMSに搭載されると「データストームの問題」によりパイロットの生命が脅かされることになりました。

データストームとはまずなんなのか――まあ読んで字のごとく「データの嵐」という意味でしょう。

基本的に宇宙空間は真空であることを除いても人体に悪影響な宇宙線やらなにやらが飛び交っていています。
つまりMSが集めてくる情報にはもともと人体に有毒な情報が混ざった汚染情報なわけです。

この汚染された情報がデータストームの原因です。

義肢の時にこの問題は起きていません。
まあ義肢は宇宙空間を直接漂ったりしませんし、義肢にはカメラもセンサーもついてませんから共有する情報のデータは人体にのみ依存しています。
その為データストームが起きなかったのかと予測されます。

初期ガンダムの仕様

上記から初期ガンダムでデータストームが起きた原因はMSが収集した情報を直接パイロットに渡してしまったからだと判断できます。
情報を水に例えると、MSが収集してくる情報は工場近くの海水のようなもの――汚染水になります。
初期ガンダムはこれを人体に直接飲ませる仕様になっていました。

初期ガンダムの仕様を考える上で、少しを戻してパーメットをどうやって人体に流入させたのかというところをもう少し考察しておきます。
血液を使ったのだろうという予想でしたが、血液にパーメットを入れる方法はぱっと2つ浮かびます。

・パーメットと酸素と結合させて肺から取り込ませる
事前に酸素(O)とパーメット(PMET)を結合させコックピット内を満たす空気に混ぜておきます。パイロットがコックピットに入ると呼吸をして酸化パーメット(OPMET)が肺に入り込みます。
ヘモグロビンが酸素ごとパーメットを取り込んで全身に運びます。
酸素が細胞でエネルギーとして使われるときパーメット単体の状態になって血中に漂います。このときパーメットとして情報共有の働きをします。
酸素は役目を終えると二酸化炭素となって再び血中に戻ってきます。そのとき単独のパーメットを捕まえて炭素と一緒肺まで戻り、排出されます。
表記が正しいかは置いておいて、化学式的に表現すると肺からの動きは↓
OPMET→O+PMET→CO2PMET→排出

・直接体内にパーメットを注入する
鉄剤注射のように注射を使って直接血管に送り込む方法です。
パイロットは事前の医療的措置が必要になります。注入をしていないパイロットはガンダムを使用できない可能性が発生します。
なお注入後、PMETはヘモグロビン中の酸素と化合します。そこから排出されるまでの動きは空気に混ぜているときと同様、二酸化炭素と一緒に排出されるものと思われます。
PMET→OPMET→O+PMET→CO2PMET→排出

義肢の場合、空気中にパーメットを散布すると言うことですので前者はあまり現実的とは言えません。義肢の装着にも医療的な処置が必要ですし後者が適しているように思います。
義肢内に体内にパーメットを注入する装置を設けておき、パーメットが減少すると義肢のパーメット剤を補充するようにするとか。

一方MSでは後者は適していいるとは言いがたいです。
義肢はいわばオートクチュールの一点ものですが、MSは量産して販売することを前提に開発せねばなりません。納品後即誰でも動かせねば商品としては不十分でしょう。搭乗予定のパイロットにいちいち毎回医療処置を施すのも手間過ぎます。
よってMSでは前者の空気中に酸化パーメットを入れておく方法をとったのではないかと思います。
3話でグエルがパーメットリンクを使用できていた様子からも可能性は高いのではないでしょうか。

MSのパイロットは専用のパイロットスーツを着ていますが、スーツ搭載の酸素は基本的に緊急用です。そんなに大量には乗せられませんから。
その為基本的にMSにより大きなボンベを搭載し、それがコックピット内を満たしています。コックピットが開いたりしない限りはメットを被っていてもこっちの空気を使うわけです。
オックス・アース社が最初に開発したガンダムはMS搭載のボンベの中にパイロットに流入させるパーメットを混ぜ込んでいたのでしょう。
そうするとMSには二種類のパーメットが存在することになります。

Ⅰ.MSの情報を保有するパーメット(MSパーメット)
Ⅱ.空気中の情報をほぼ持たないパーメット(無属性パーメット)

Ⅱの無属性パーメットのうち人体に流入したパーメットは人体の情報を学習しします。すると次のパーメットに変化します。

.人体の情報を持つパーメット(人間パーメット)

ガンドが立ち上がるとⅠのMSパーメットとⅡの人間パーメットがリンクを開始。
しかし、最初期のガンダムはⅠとⅡがリンクする際に間に挟んでおくべき汚染除去のための濾過装置を持っていませんでした。
よってパイロットは汚染水を直接飲むことになり、あっという間にデータストームで中毒症状を起こして身体が機能不全に陥ります。

ガンド・フォーマットを手早く雑にMSに突っ込んだせいでこのような仕様になったのかと思われます。これは恐らくオックス社が早く新MSを売り出したくて碌な検証をしなかったのでしょう。
ヴァナディーズはもっともと医療機関でMS開発は素人ですし、買収された手前初期の開発はオックス社主導の下に行なわれたのだと思います。

ルブリス試作機の仕様

さて、オックス社主導下のガンダム開発が暗礁に乗り上げ、代わってシステムの専門家であるカルド・ナボ博士を中心にヴァナディーズがオックス社のエンジニアの力を借りながら開発したのがルブリス試作機だと思われます。
ガワはまんまオックス社のMSの流用ですが、大事なのは中身なので。

プロローグでヴァナディーズ機関が開発していたガンダムルブリス試作機は上記の問題をクリアする機能が組み込まれていました。

上の項目で情報を水に例えましたが、MSの用意した水は純粋な水ではなく水の中にあらゆる不純物が混ざった汚染水だった。
ということは汚染物質を除去する浄化装置があればよいのです。

ルブリス試作機はMSがもたらす情報のうち人体に害のある情報を除去する機構を組み込んでいました。
これは恐らくMS搭載OSに手を加え、プログラムの力でMSのセンサーから集められる不要な情報をコックピットまで持ち込まないように処理したのではないかと思われます。

つまりナディムとウェンディが乗っていたルブリス試作機は情報汚染の問題を解決済みの機体だったことになります。

しかし汚染の問題を解決したにもかかわらず、ガンダムルブリス試作機もパイロットに負荷がかかりすぎる失敗作だった。
汚染された海水を浄化装置に通して飲料可能な水の変えたはずなのになぜなのか……。

次なる問題の原因は恐らく――水の量が多すぎることです。

そもそもMSが収集してくる情報量はとても多いのです。
わかりやすいので体高で話をしますが、MSは18メートル、人間は大きくてせいぜい2メートル、これを水とコップに置き換えるとMSは18リットルの水を入れられるけどそれを注ぐ人間のコップは2リットルが限界。
それ以上注がれたら情報が溢れて耐えきれずに死ぬわけです。

つまりデータストームの真の原因は情報の質だけではなく、量の問題もあったわけです。

ガンダムルブリスの仕様

これは恐らく本来はガンダムルブリス試作3号機が正解なんじゃないかと思うのですが、オックス社が無理やりロールアウトしたため試作機という扱いにはなっていません。が、厳密にはまだまだ開発途中。
たぶん資金不足に陥って融資の為に無理矢理成果物を出してきたんでしょうね。
まあそこは置いておいて……。

恐らく開発を主導したカルド・ナボ博士は試作機を二機作って失敗した段階で「これは情報の質だけじゃなく量も関わってるな」と気づいたのだと思います。

その為3番目の試作機には1号機2号機にはない仕様を入れ込むことにしました。
MSの機体内に18リットルの水を注げるコップをあらかじめ用意することにしたのです。

どういうことかというと、試作機まではMSは情報収集と情報濾過のみを行なっていました。ここに情報の貯蔵も任せることにしたのです。

MSが収集した情報はMS内の情報濾過装置で不純物や毒素を取り除かれ、MS内の情報貯蔵タンクに送られます。
そしてタンクと人間を大きな水槽と小さな水槽を管でつなぐようにし連結、タンクと人間の間で水を循環させるように情報を循環させます。
これで理論上人間から情報があふれ出ることはなくなりました。

さてではどうやって機体内にタンクを用意したのかとうと、すでに人間のことを学習済みのパーメットをMS内に送り込み、人間に使える情報を貯蔵させることにしたのです。
ここでエルノラが必要になってきます。

機体の製造が終わった後、まずエルノラの義手のパーメット(Pエルノラ)をガンダムルブリス内に流入させます。
ルブリスのカメラなどの情報収集センサーやシステムはまだ立ち上げたりはしません。その状態だとまだMSよりも人間の持つ情報量の方が多いため、人間にはほとんど負荷はかかりません。
Pエルノラはルブリスのパーメットと情報共有をはじめます。ルブリスのパーメットはもともと持っていた自身の機体情報とPエルノラからの情報を合わせて18リットルの水が入る大きなコップを形成します。

この状態でMSルブリスを起動するとPルブリスに機体が集めてきた情報が貯蔵されます。
エルノラが搭乗した状態でパーメットリンクを開始するとPルブリスはエルノラ内のPエルノラと情報の循環を開始、情報はこぼれることなく双方を循環し、これでルブリスとエルノラは情報共有が可能になります。

プロローグは恐らくルブリスにコップを成形したあとの話だと思われます。

ルブリスはなぜ起きないのか?

プロローグの段階ではガンダムルブリスは上手く起動せず、沈黙の状態からスタートします。
恐らく沈黙自体は想定通りの出来事だと思われます。沈黙の原因はPルブリスに蓄積されたPエルノラの情報が妨げとなって機体とPルブリスが上手く連携できないためだと予想します。

ガンダムルブリスの機体は金属がベースの無機質ですが、ルブリスのパーメットはエルノラという人間を学習して有機的な動作を中心とするOSを搭載していると考えられます。
このギャップが機体が動き出さない原因かと思われます。
windowsで動かすことを想定しているPCにマックを入れると誤動作を起こすとか、iPhoneにiMac用のmacOSは突っ込めないとか、そのあたりとちょっと似ています。

とはいえパーメットはプログラムではなく情報共有元素で、ルブリスはエルノラの情報とガンダムの機体情報両方を保有する情報体のようなもの。肉体との齟齬はあくまで錯覚なので、動けるはず。
だから開発チームは様々な方法でルブリスに機体となじむよう教えているわけです。

教え込む過程でエルノラたちが実施しているテストですが、おそらくは幼児の方が環境に慣れやすい点から、ルブリスがエルノラを学習していることを利用してルブリスの深層意識(実質的にはエルノラの)に潜っていっているのだと思います。

プロローグでエルノラがしているルブリスの起動テスト画面は
「PMET LINK REGRESSION TEST」
REGRESSIONは回帰や(幼児)退行と言った意味があります。
Pルブリス内にあるエルノラの情報を一つずつ幼少に向けて降りいるということだと思います。

情報はいくつかの層になっており、一気に中心点まではたどり着けません。一つずつ声を掛けて起こし、応答が返ってきたら次の層へ降りていきます。
そして恐らく中心に到達できれば、慣しが終わってルブリスが起動するという状況なのではないでしょうか?

エルノラの深層情報を遡っての起動になりますので、補助することは他人にも出来ますがエレノア本人がテストを行なうのが最適です。
「おまえでなければ誰にも起こせない」というカルド博士の言葉も納得です。

しかし理論上唯一ルブリスの起動が出来るはずのエルノラもレイヤー33からコールバックを受けることが出来ず、起動テストは足踏み状態です。
なぜエルノラはレイヤー33からコールバックを受けることが出来なかったのでしょうか?

エリクトにルブリスが起動できた理由

エルノラがレイヤー33からコールバックを受けることが出来なかった原因とエリクトがルブリスを起動出来た理由は恐らく全く同じだと思われます。

答えはルブリスのレイヤー33の情報はエルノラがエリクトを妊娠していたときの情報に該当するためです。

エルノラは若くしてガンドの義手をつけていた女性です。
ナディムと出会って結婚し、エリクトを妊娠したときには彼女の右はガンドの義手があり、当然体内のPエルノラは胎児のエリクトの情報を共有します。

加えてエリクトは胎児の時へその緒を通して母親からパーメットを受け取っていた可能性が高いです。へその緒は母体から胎児に酸素や栄養素を渡す役割を果たしています。
酸素にくっついてエルノラのパーメットは胎児であるエリクトに渡り、そのほとんどは二酸化炭素と一緒にエルノラに戻るとは思いますが、一部は残留してエリクトの体内に残ることが予測されます。
パーメットがくっつける相手は確実に酸素だけではないので、どうしても全てを体外に排出仕切ることは出来ないのです。(これはエルノラにも言えることですが)

これがどういうことかというと、Pエルノラは胎児の時にエリクトに流入しており、Pエルノラはエリクトとも情報共有が可能ということです。
もちろんPエリクトを基盤にしたルブリスもそれが可能です。

ルブリスのレイヤー33は察するにエルノラだけでコールをしても駄目で、エルノラとエリクトが一緒にコールを掛ける必要があったのだと思われます。
エルノラは右腕に常にガンドの義手をしているのである程度距離が近ければルブリスは自動的に彼女の情報を共有できます。
一方エリクト内のパーメットは量が少ないためコックピットに乗るまでコール不可能だった。
レイヤー33からのコールバックはエリクトが呼びかけだけで起こったのではなく、正確にはエリクトがコックピット内にいて、そこにエルノラが近づいてきたので起動したと思われます。
もしエリクトだけで起動できるならカルド博士の目の前でコールバックがあってもおかしくはないはずなので。

ガンダムルブリスは完成形

プロローグの終盤、ガンダムルブリスは無事に起動。
これによってガンド・アームはデータの汚染と流入量の問題を完全にクリアし、当初の想定通り完成したことになります。

こう書くと「あれ……でも今もパイロットに負荷がかかりまくってるじゃん」と思う方もいるとは思うんですが、本編現在のガンダムのパイロットへの負荷問題は起点は一緒かもしれませんが方向性は全く違う問題です。

未完成だから起きていたこれまでの問題とは違い、むしろ完成して想定通りの働きをしているからこそ発生している問題と言えるでしょう。

これを説明するためにはパーメットスコアがなにを表わしているかを考察していく必要があります。

パーメットスコア考察

「パーメットスコア」については作中で単語が出てくるだけでそれがどのようなものなのかはほとんど説明がありません。

1.スコアが上昇すると機体性能が上がる
2.スコアが上昇するとパイロットへの負荷が増す
3.対ガンダム兵器(アンチドート)はスコア3までしか効かない

上記の3点がアニメ12話まででわかっているパーメットスコアに関する情報です。

アニメ内の描写やガンダムの設計思想から考えてもパーメットスコアが上がるとより多くの情報をパイロットと人間の間で共有できるのだろうということは想像がつきます。
これらを踏まえて考察していきます。

パーメットスコアとは

結論から言えばパーメットスコアとは
「1個の人間のパーメットに対し何個MSのパーメットが接触しているか」
これを表わしていると思われます。

上述からも基本的に
・MSは人間よりも収集する情報量が多い=パーメットが多い
・人間はMSよりも情報量が少ない=パーメットが少ない
ことがわかります。

その為基本的には1つの人間のパーメットに対し、MSのパーメットが複数結合する形で情報共有が行なわれます。

具体的にどのように行なわれていくか、簡単な図にして見ていきます。
項目を以下で区切ります。

・スコア1~3
・スコア4以降(集合体恐怖症・注意)
・スコア(4+X)+1

3番目の項目の表記がすっきりしていませんがなぜそうなるのかは順を追って説明します。

パーメットスコア1~3

比較的人間にとって負担の軽い情報共有のレベル。
パーメットの結合状態は一次元~二次元的な展開の中で行なわれる。

・スコア1
人間パーメット1個に対し、MSパーメットは1個だけ接触して情報を共有する。パーメットの結合は点で行なわれ一次元的な形状である。
作中の誰も「パーメットスコア1」と宣言していない様子からガンドを立ち上げると自動的にこの状態になると思われます。

・スコア2
人間パーメット1個に対し、MSのパーメットが2個結合する。
パーメットの結合形状は直線的となり、二次元的な形状へと発達。
線で結びついたことでパーメット同士はスコア1よりやや外れにくくなる。

・スコア3
人間パーメット1個に対し、MSパーメットが4個結合する。
パーメットの結合形状は平面的となる。
この形状もスコア2同様二次元的である。

結合する数についてはいくつかパターンがあるかもしれません。
わかりやすいので4つをベースにしています。

パーメットスコア4~4+X

二次元的に展開していたパーメットの結合状態が三次元的になる。

・スコア4
人間のパーメット1個に対し、MSパーメットが6個結合。
結合形状は平面から一気に立体(三次元)へと跳ね上がる。次元超越
結合形状が複雑化し、パーメット同士の結びつきが強固になる。

推測するにアンチドートは平面的なパーメットの結合を解除出来るが、立体的な結合については解除出来ないものと思われる。

縦軸(x)と横軸(y)を使っていたパーメットの結合に奥行き(z)が追加されます。
パーメットの数は最小1+3でも立体になると思われます。
重要なのは3本の軸を使って結合するようになるという点です。

・スコア4+X
スコア4からどれくらい三次元内で発展していくか不明なため便宜上、このように表記する。

人間パーメットに対し、MSのパーメットは27個以上結合し始める。
人間パーメットの周囲は全てMSのパーメットが固めてしまい直接結合できなくなったMSパーメットはやむを得ず外側に結合して内側のMSパーメットを介して情報共有を試みる。

第一層、第二層、第三層とMSパーメットの層が厚くなって行くにつれ、中心にある人間パーメットに圧力がかかりはじめる。

限界を迎えた人間パーメットは圧を避けるために次の展開を迎える。

パーメットスコア(4+X)+1

三次元でのパーメットの結合が限界を迎え、三次元の天井を突き破って情報体が四次元を突破。二度目の次元跳躍が起きる。

先ほどまで球体で表わしていましたが、それだとちょっともう図を描くことが出来なくなってきているので、立方体をベースに説明していきます。

この図は続に「超立体」とか「正八胞体」と呼ばれる図形です。
四次元を三次元で見れるように描画されています。これは8個の立方体から成立しています。

先ほどまでと同じく青が人間、赤がMSです。
どのようにしてこの形状に変化していくのか説明していきます。

1.人間パーメットが外側に自分自身をコピー
まず中央の立方体は内側にいると展開できない。その為、いったん囲みの外に出る必要がある。外層に結合してきたMSパーメットの情報を消去し、人間パーメットの情報に書き換える。

2.外側の人間パーメットが展開
外側の人間パーメットはいったん平面的に展開し、広がる。

立方体の内側に蓄積されていた情報も壁面を構成する情報として利用され、人間パーメットは一面あたりの面積が広がり、体積も増えると予測される。
(図では省略)

3.外側の人間パーメットが再度立体へ
拡大が終わると平面的になっていた人間パーメットは再度立体へと戻る。
このとき、外の面が内側へ、うちの面が外側になる。
人間パーメットの体積は広がったが、それでも不十分な分が発生数る場合包まれるMSパーメットが圧縮される。
この状態だとMSパーメットが破損する危険があるため、中央の人間パーメットから記憶情報を消去する。
ただし人間の肉体の構成情報は物理的な肉体が残るため消去しきれない。スマートフォンやパソコンの初期化に該当する作業である。
中央に空洞が発生し、MSパーメットは圧力を逃がすことが出来る。

4.展開完了
人間パーメットがMSパーメットの外側を完全に包む形状になる。
外側の人間パーメットは三次元を包む四次元情報体となっている。
MSパーメットは4次元の人間パーメットと壁伝いに接触、情報のやり取りをする。
中央には肉体の構成情報によってのみ成立している人間パーメットがいる。この情報体の内には記憶情報の類いは一切なく、言う生まれたままの状態に戻っている。

パーメットスコアからの推論

以上の考察からパーメットスコアの上昇は次元突破と密接な関係があると推定できます。
理論設計に則ったガンダムに登場しているパイロットは、ある時を境に4次元に向けて上昇し、三次元での肉体を放棄して四次元の情報体へと進化が促されるのではないでしょうか。

四次元の情報体になったパイロットは三次元での自分の情報を消してしまっても、データ上の取り扱いは自分自身であると断言できます。
自分の全ての情報を持っているからです。
Aさんが撮影した写真データをBさんにラインで送ったとして、Bさんが持つ写真データは偽物ではなく、AさんとBさん両方が本物のデータを持っています。Aさんがデータを誤って消してしまってもBさんがデータを持っていれば同じ写真が存在していると言えるのと同じです。

プロローグから本編まで

ここまで考察したところでプロローグから本編が始まるまでの間になにが起こったのかをまとめて考察していこうと思います。

スレッタとエリクト

先ほどパーメットスコアから推論を導き出し、ガンダムに乗っているとガンダムのパイロットは四次元情報体になる可能性を提示しました。

しかし三次元に物質として肉体は残ってしまう。
肉体に生命活動を継続できないほどの損傷がなかった場合、その身体は動き始めるわけです。

スマートフォンを初期化してしまっても起動させてしまえば動かせるのと同じです。
自分でダウンロードしたアプリや撮影した写真ファイルなどは消えてしまっていますが、スマホの機能は変わらないのです。

よってエリクトの肉体も「エリクト・サマヤ」がいなくなっても「人間という生命」として活動するのです。

つまりこれがエリクトとスレッタの関係だと予測されます。
・エリクト=情報体となって四次元に跳躍
・スレッタ=初期化されたエリクトの身体で活動を始めた別人

スレッタとエリクトは何歳か?

プロローグの事件は水星の魔女本編の21年前、そのときエリクトは4歳になっているため、単純に計算すればエリクトは作中で25歳頃、ということになります。では二人の実際の年齢は今いくつなのか。

・エリクト:9歳
・スレッタ:16歳

これが正解だと思われます。

まずスレッタがなぜ16歳なのかというと、これは普通に公式で言われていることです。考察の結果もこの公式設定は疑う余地がないかと思います。
スレッタは本編開始16年前に三次元空間のエリクトの肉体が初期化されたことによって生まれた存在です。

よってここからエリクトが何歳で四次元跳躍を果たしたかも推測することが出来ます。
25-16=9
エリクトは9歳には四次元跳躍を果たしていると思われます。
エリクトの年齢はこの跳躍を果たした年齢で固定され、以後年を取ることはありません。
これは老化する肉体を彼女が捨てたためです。

しかしそうなるとスレッタは肉体的には25歳なのかという疑問が出てきますが、スレッタは肉体的にも16歳相当と思われます。
恐らく彼女は誕生してから数年間、肉体が成長していなかったと思われます。

まずスレッタが0歳で生まれた時には肉体はすでに9歳前後なわけです。
物質的な時間は不可逆なので、エリクトの身体がスレッタに合わせて赤ちゃんまで戻ることはあり得ません。
スレッタはそのまま1,2,3と年齢を重ねていきますが、エリクトの肉体としては過去の情報なのでそれが肉体的に反映されることはありません。

仮にスレッタが0歳という情報を入力しても肉体というファイルはエラーを吐き出して更新を受け付けないわけです。

一方、四次元の情報戴になったエリクトは三次元の自身の肉体については閲覧権はありますが更新権を所有していません。
そもそも情報体のエリクトは三次元の情報を収集するクラウドサーバーの管理人ようなものなので、勝手に端末の機種を変更するような真似は出来ないのです。
iCloudのエンジニアはクラウド内の他人データを技術的には覗き見できるし弄れるけど(やっちゃ駄目だが)iCloudを使用している人間のiPhoneを勝手に機種変更することは不可能、ということです。

というわけでエリクトの肉体の更新権限はすでにスレッタしか持っていないわけですが、彼女が入力するデータはある一定の年齢までは物理上受け付けることが出来ないエラー情報です。
それがスレッタが歳を重ねてエリクトが次元跳躍した時間に追いつくとエラーではなくなり情報更新が可能になって肉体が歳を取るようになるわけですね。

ピンと来ない方もいるとは思いますが、ようするに我々の身体は意識せずとも老いに向けて日々作り変わっているわけですが、肉体のどこかでは必ずその為の指示が送られているのです。
そのどこかがあるとき0歳になってしまって、今の自分に「一歳になりなさい」と指示を送ったところで肉体は若返ることは出来ませんし、さりとて今の年齢より一つ歳を取るための指示もなければ身体はそこに足踏みし続けるしかないというわけです。

こうであればエリクトと肉体を共有する精神的にも肉体的にも16歳のスレッタ・マーキュリーが矛盾なく存在出来ると言うことになります。

スレッタは無事に生まれるか?

上述の通りスレッタは四次元に上昇したエリクトの肉体に代わって宿った生命と言うことになりますが、恐らく生まれた瞬間からわりと死の危機に瀕していたかと思います。

スレッタの生まれた状態を図にするとこんな感じです。
スレッタはエリクトの情報体が包み込むルブリスの体内に誕生したと言うことになります。
この状態はまだ厳密にはスレッタは生まれたとは言えないかもしれません。ルブリスの情報体が壁になってスレッタの行動の自由を制限しているからです。恐らく物理的にもコックピット内に閉じ込められた状態だったとと思われます。
謂わば胎児ということになるでしょうか。
厳密にはこの状態ではまだスレッタは生まれているとは言えないですね。
その為なんとかしてルブリス内から引っ張り出す必要があります。

それで上図のように展開します。
まずルブリスの情報を外部に複製しておきます。これが恐らく後のエアリアルですが、スレッタが生まれた時は違う名称だったと思われます。

ルブリスの情報のバックアップが取れたら元のルブリスを初期化します。
スレッタを包む情報の壁はなくなり、スレッタは外に出ることが出来ます。エリクトはスレッタ自身でもあるため情報の壁をすり抜けるのに負荷はありません。
これで独立したスレッタ・マーキュリーが誕生するわけです。
情報負荷の心配もあったわけですがこれでとりあえずいったん危機は逃れました。

図を見てなんとなくイメージできる人もいると思いますが、スレッタはエリクトを母体に、ルブリスという羊水に浮かんでいた子どもと言うことになります。
スレッタとエリクトの正式な関係姉妹よりも母子に近いかもしれません。
第5話でスレッタに父親の影がないのもこの図なら納得ですね。謂わばエリクトの単性生殖なので。
ということはエルノラとは肉体的には母子だけど情報処理上は祖母と孫という関係がより近いのかも。
(まあエルノラが再婚したりして妹か弟がいたらはその子たちとは遺伝子上は間違いなく兄弟ですけどね)

エリクトとスレッタの間にはへその緒のように情報のつながりが残ったままですが、これは四次元的なつながりなので現状切ることは難しいかと思います。また後のことを考えると切らない方がいい線とも考えられます。

ルブリスの強化

スレッタが無事に地上に爆誕したところで、問題の全てが去ってしまったわけではありません。
やるべきことはまだたくさんある…おかげでこの考察もまだ終わらない…つらい。

スレッタが外に出たところでルブリスとエリクト、スレッタのつながりが切れているわけではありません。
エリクトは四次元空間で情報を集め続け、その負荷はルブリスやスレッタに降りかかる危険があるわけです。

とはいえ基本的に脆弱なスレッタに負荷を掛けるわけにはいきませんので、エリクトからの負荷はルブリスが担うことになります。
そうするとどうなるのかというと……ガンダムに乗ったときにパイロットにかかる負荷と同等以上のものがルブリスにのし掛かってくるわけで、ルブリスは最悪死にます。

しかしルブリスが死んだ場合、死んだという情報がエリクトやスレッタに波及してしまう可能性があるため困るわけです。
その為四次元情報戴のエリクトからの負荷に耐えられる強いルブリスを作ろうという流れに当然なるわけですね。

そこでまずルブリスの改良型、それを三機作ります。
一機は負荷耐性の実験をするためのメイン機、二機はバックアップとして待機させておきます。
エリクトとリンクして少しずつ負荷を掛けていきながら、進行度合いに合わせて都度バックアップを取っていきます。

メイン機が耐えられる負荷の限界に到達した場合、待機1をメイン機に切り替えて新しい負荷の実験を開始します。

メイン機は初期化します。
負荷実験のデータを反映して限界地点を越えれるように再調整後バックアップとして待機させます。

大前提としてルブリスの派生機体が全機破損してしまうと実験が続けられないと言うことになりかねません。
ですから一機は常にバックアップとして待機させねばなりませんが、二機しかないとどちらかが壊れた場合、もう片方を壊すわけにはいかないので両方待機させるしかないです。
三機あれば常に実験をスピーディに続けられますし、万一が起こって二機立て続けに壊れても一機残っているので危険性をかなり減らすことが出来ます。

こうやって少しずつ四次元情報体であるエリクトからの負荷耐性の高い強靱なガンダムを作っていくわけです。
そして目標地点に到達した機体が正式ロールアウトとしてエアリアルと呼称されたと思われます。

こうなるとルブリス・ウルとルブリス・ソーンはエアリアルになり損なった強化型ルブリスの実験機体なのかもしれません。

強化型ルブリス情報体はたくさんいる

強化型ルブリスの負荷実験で初期化するタイミングですが、前提としてルブリスが死を感じるほどの負荷がかかると困るので、死ぬ一歩手前で止めておきます。

そしてルブリスが死を感じる前に初期化し、死を観測不可能にします。
こうすると殺さずしてルブリスを消去できることになります。

ちょっとわかりにくいですね。
シュレディンガーの猫と言えばいいのか……よく連載漫画などで推しが死にそうな場合、死ぬ前に読むのをやめれば推しは死なない、なんて冗句を言ったりしますがあれに近いです。

初期化という行為は死というよりは、死を避けるために最初の状態に戻す、という行為に値します。

よって初期化されたルブリス実験機たちの情報体は死なず、そのバックアップは三次元のバックアップ機とは別に四次元空間のエリクトにそれぞれ別のルブリスの情報として集積していきます。

これが恐らくスレッタがいうところの「みんな」だと思われます。
エリクトと接触して負荷実験を経験した全ての強化型ルブリス実験機はエリクトがその情報を保持することで初期化された後も四次元空間に生存しているということになります。

逆を言うとエアリアルはともかくバックアップ状態で待機だったと思われるウルやソーンの情報はエリクトも保存してないでしょうね。

初期化の方法・アンチドート

自分で自分の情報体を内部から消したエリクトと違ってルブリスの初期化はエルノラたち開発チームの人間が人為的に行なっていたことになります。
その手段として用いられたのが「アンチドート」です。

アンチドートはパーメット間のつながりを断ち切る兵器です。
(ちなみに「解毒剤」という意味だそうです)
パーメットの結合を解くと情報は自動的に初期化されます。
これはパーメットの情報保有の仕方が影響しています。

パーメットの情報保有法

そもそもパーメットは単独では情報を保管する性質は持ちません。あくまで共有しかしないのです。
例えば赤という情報を1個のパーメットに入れたとして、一瞬共有した後は情報が抜け落ちます。

しかし複数のパーメットが結合すると、互いの間で情報を回し続けるため、結果として情報を保有している状態になるのです。
「緑・赤・黄・青」の情報を保有するパーメット結合体は下図の状態で情報を保有しています。

この原理を利用して多くのパーメットを結合し、情報を共有させ続けることでガンダムはデータを保管し情報処理を行なっています。
これがガンダムのOSシステムの仕組みの根幹なのです。

ですが結合を解かれるとパーメットは情報を共有できず、保持し続けることが出来なくなってただの粒子に戻る――これがアンチドート利用した初期化の仕組みです。

ルブリスは何次元の存在か

ところでパーメットスコアの項目で「アンチドートは二次元的なパーメットの結合までは打ち消せるが三次元的には無理である」という話をしました。

ではルブリスを形成している情報体は平面的なパーメットの結合状態なのかというと、違います。
ルブリスの情報体は三次元的に結合しているはずなのです。

なぜかというと、そもそも四次元のエリクトと接触するには三次元情報体である必要がある為です。

我々の世界は時間軸が横に一次元、空間軸が立てに何次元か続いています。
わたしたちは三次元にいますが正確には「三次元+一次元(時間)」の世界です。
エリクトはそこから一段上にいます。

我々は三次元のそこに触れることで二次元と接触し、三次元の天井に触れることで四次元と接触できます。
しかし五次元や一次元にはどんなに手を伸ばしても直接は触れられません。
触れられるのは自分がいる次元の上と下だけと言うことになります。

ですからルブリスが四次元のエリクトとパーメットリンク可能であるなら、少なくとも三次元的な情報体でなければならないことになります。

ルブリスが三次元の情報体であることを推測するのに他にも証拠になりそうなものがあります。
プロローグと本編でのアンチドートの効果の出方に微妙に差があることです。
プロローグのアンチドートのシーンと公式9話のアンチドートのシーンなのですが、光学モニターに注目して見てみます。

プロローグではウェンディの乗っているルブリス試作機はモニターごと真っ黒になってシステムがまるごとダウンしている様子が窺えます。操縦桿をウェンディが動かしても反応はありません。

一方で9話でスレッタとエアリアルがアンチドートを食らったときは動きは一旦停止しますが、エアリアルのモニターは正常なままです。エアリアルのシステムはアンチドートを食らってもダウンはしておらず生きていることがわかります。
加えてスレッタの「わたし一人でやるの?」という台詞からもパーメットリンクが切れているだけでアナログ入力は生きており、従来MSと同じように動かすことは可能だったわけですね。
(ちなみにパーメットリンクが切れていても会話可能だったのはエリクトがハブの役割を果たして情報をやり取りしていたのだと思います)

更にルブリス・ウルも12話でアンチドートを食らって(パーメットスコア4だったのありますが)無事だったことを見るに、プロローグで立ち上がったルブリスが平面的な結合から立体的な結合を持つ情報体を形成したと推定してもよいように思います。

つまりルブリスを機体外部から強制的に初期化出来るとするならば、パーメットスコア4以上、三次元情報体を打ち消すより強いアンチドートがすでにこの世にあることになります。

アンチドートは人間に効く

三次元結合を断ち切れるより強力なアンチドートがあるとするならば、なぜそれが兵器転用されていないのか。
これについてはずばり生身の人間にも効果がある為だと思われます。

まずもって我々が三次元に生きていると言うことは三次元の情報体であると言えるわけです。
ですから三次元の情報体としての結合を解かれたら、肉体は残りますが意識はこの世から消え去ります。
これまでの考察でエリクトとスレッタの間では(アンチドートは使っていませんが)それが十分成立していることがわかるので、三次元に有効なアンチドートが生体に有効であることは推測が難しくないわけです。

つまり三次元対応アンチドートを使用した場合、人間を殺さずして人間を消すことが出来ます

これ高い確率で本編にすでに登場しているのではないかとわたしは思っております。本編第6話のラストです。はい。
エラン4号な……!

そういえば第6話の最後の方ではベルメリアが「経験をフィードバックさせる~」云々言っていましたね。
命乞いと言うよりはせめて4号の情報だけでも拾い上げておこうというかのような台詞です。

更に7話ではエラン本物が影武者が用意できていないことに文句を言うと「代わりは調整中」といった台詞が出てきます。

ここまでの考察をお読みくださった方ならピンとくるかと思うのですが、エランたちの状態はエアリアルの開発過程における強化型ルブリスの扱いにすごくよく似ています。
というか恐らくまんまなのではないでしょうか。
6話のプロスペラとベルメリアの会話でのプロスペラの台詞。
「あのガンダムのパイロット何人目なのかしら?」
この台詞は同じような実験をした経験がなければ出てこない類いのものだと思うのです。

違うのは機体か人間か、ルブリスは3機以上運用だったのに対してエランは恐らく2人しかいないのではないか、ということです。
エランが本当に3人いたら7話で本物が出てくる必要はありません。
ということは……5号はひょっとして肉体的には????

初期化されて状態の人間にだったら他人の情報をまるごとぶち込むことは理論上可能なんですよね…まあ多少の拒否反応とかはあるのかもしれないけど、そう言うのどうにかするのが調整って言う行為だから…。
だとしたら誰の情報入れたのかって話なんだけどCEOは5号の決め手に「あなた(本物)と同じ性格の悪さですよ」って言ってたな……まさか本物の情報をぶち込んだなんてことは……いやいやいや……。

まあ5号については普通に整形が間に合ってなかっただけという可能性もあると思うのですが…。

アンチドートは医療器具

恐ろしい機能を持つアンチドートですが、解毒剤という名前から推測するにこれはもともと医療器具の一種で、後にそれが軍事転用されたアイテムだと思われます。
ガンダムと一緒ですね。

何のための医療器具かというとデータストームで身体機能不全に陥った人間の治療用の器具です。
プロローグでは寝たきりになってしまっているガンダムのパイロットの姿が複数確認できますが、彼らを治療するための器具がアンチドートだったと思われます。

そもそもデータストームで倒れた人というのは人体内にパーメットが異常に流入し、それが自然排出されず体組織と結合してしまっている状態だと思われます。さしずめパーメット中毒症候群という感じの病名でしょうか。
プロローグの起動テストではエルノラのパーメット流入量をチェックしている点からもパーメットが異常に体内に溜まることは危険であることがわかります。

本来は酸素等と結合して体外排出されるはずのパーメットが肉体を構成する別の元素(鉄Feとか)と結びついて簡単に排出されなくなるのでしょう。磁性を持てるなら金属元素とは相性が良さそうです。
そしてアンチドートは恐らく体組織と結合してしまったパーメットを除去するために開発され、成功したのだと思われます。

しかしアンチドートで治療した人々は、元の人格に戻ることがなかった。それどころかまるで赤ん坊のようになってしまって言葉もしゃべれず、歩けもせず、一人でトイレに行くことも出来なくなってしまっていた。

それは人間を初期化してしまったからなのですが、恐らくアンチドートの開発者たちはそう考えなかったと思います。
というかすぐにそうだとはわからなかったのだと思われます。

なぜかというと、そもそも寝たきりで生命維持装置にかかっているような人を治療しているわけですから、彼らが記憶喪失とはいえ起き上がったなら治療は成功したと考えるからです。

むしろ身体的には間違いなく元気になっている。
ただ人格だけがまったく元に戻らない。
ついでになぜかある一定の時まで歳を取らないおまけがついている。
(なおアンチドートを掛けたあと歳を取らないことが一般で知られている場合、ベルメリアがエルノラの娘が10代であることに驚かない理由の説明にもなります)

この記事ではガンダムの仕組みの方から分析しているのでアンチドートによる人体の初期化が全ての原因だと言い切ることが出来ますが、アンチドートの開発者はガンダムの仕組みがわかっていないのでそこまで考えが及びません。
彼らはとにかく中毒症の原因であるパーメットが体外から除去できれば元気になるだろうと考え、実際その通り肉体的には元気になっている。
記憶だけがなぜか戻らないがこれは恐らく治療が遅かったからだと考えたのではないかと思います。中毒症の後遺症だと判断したのでしょう。
そう考えるのは実に自然だと思います。
そして記憶障害はガンダムのせいで自分たちの医療器具に原因があるとは考えない。

恐らくプロローグでヴァナディーズが襲撃されるに至ったガンダムの生命倫理違反というのは、この治療したところで人格が戻らないという点にあるのではないでしょうか?

これは実際にはガンダムとアンチドートという二本柱の原因があった。
ガンダムの方で問題を解除出来れば(その見込みも一応あった)自然と解消できたはずなのだけれど、それを待たずに一方的にガンダムだけに原因を求めて襲撃してしまったのだと思われます。

もしもガンダムが完成していたら、アンチドートによる医療処置に問題があったことがすぐにわかったと思います。
逆に言えばガンダムが完成してしまうとアンチドートの開発元は不都合な現実が明るみになると予測されます。
ガンダムの完成に頑なに反対する人間がいるとしたらこのあたりの人たちでしょうね。
よかれと思って開発した治療器具で実は人間を殺してたかもとか言われたらつれえもんな……。

まあ実際のところはデータストームで身体機能に障害が出たら初期化する以外に直す方法はないので治療方針は合っているんですけど。
問題はバックアップなしに初期化していることなんですよ。
バックアップ機能はガンダムの分野なんでアンチドートとガンダムは本来二つひと組で運用するべきなんですよね。

ただし完成されたガンダムとアンチドートを使用してもデータストームを想定通り治療出来ない人間というのもいます。
それがスレッタとエリクトの場合ですね。
これは次元跳躍をどのような方法で行なったのかが関係してきます。
次の項目からエリクトの次元跳躍(スレッタも含めて)の仕方を見ていきます。

ガンダムと次元跳躍

パーメットスコアのところで次元跳躍に至る理屈については説明しましたが、次は具体的にどう跳躍したかの話です。
人間で例えると赤ん坊から成長すると身長が伸びる、というのがパーメットスコアの理屈で、ここから先は身体がどうやって背を伸ばしているかという話になります。

スリングショット式の次元跳躍

まずエリクトはどのようにして四次元に到達したのか。
それを表わしたのが下図になります。

起点は現在です。
三次元の天井、四次元の底に二箇所アンカーを打ち込みます。
エリクトが9歳なら0歳の時と8歳の時が支店(アンカーポイント)になります。

そして天井に向かってエネルギーを噴射。
これまでの人生で蓄えた情報量の質量=記憶を推進剤にいったん二次元にダイヴします。
そしてゴムの弾性を生かして上に跳ね上がり四次元に上昇するわけです。
スリングショット(パチンコ)の原理ですね。

図だとわかりやすいように少し斜めに飛ぶようにみせていますが、基本的にスリングショットは後ろに引いて前にまっすぐ飛ばします。
よって実際には垂直に飛び上がっています。

ここで一つ問題になるのが現在を起点にした場合、過去にアンカーを打ち込むことは容易ですが、普通は未来には打ち込めないという点です。
なので理論上いかなる人間も本来はこの方式で四次元に上昇できないはず。

ですがエリクトの場合、エルノラのパーメットが体内にあったおかげで母親の時間軸を利用することが可能でした。

エリクトが9歳で跳躍したならエルノラが18歳以上であれば未来にアンカーを打ち込んで十分な力を得ることが可能だったと思われます。
よってエリクトは本来不可能なはずの次元跳躍を実現したのです。

スリングショット式の欠点

スリングショット式の欠点は未来にアンカーを打ち込む関係上、どうしても親の時間軸を重ね合わせて使用しなければならない点です。
しかも胎児の頃に繋がっていなければならないことを考えると母親がガンドアームの使用者でなかった場合はスリングショット式では跳躍できません。

恐らく二次元にダイヴするところまでは自力で出来ても天井を突き破って四次元に上がるのにエネルギーが不足するので、二次元と三次元の間を跳ね続けることになるのだと思われます。
情報体は三次元で安定することが出来なくなってしまうため、身体が正常に動かなくなると思われます。

私は最初の方で最初期のガンダムの問題点は汚染情報のせいだろう、という推測を立てておりましたが、修正します。
恐らくプロローグ初っぱなからガンダムのパイロットが寝たきりになってしまっていた最大の原因はこれだと思います。
四次元に上手くいけずに三次元と二次元の間で情報体がピンボールのように跳ね続け、エラー情報を吐き出し続けて肉体が動かないのです。
問題が起こっているのはいわゆるOSなのでアンチドートで初期化すると肉体自体は正常に動き出すわけですね。

序盤あえて間違った考察を載せたのですが、ここまで説明しないと正解に近いだろうという方の考察にたどり着かないんですよね。
これがガンダムの呪いか…。

母親がガンドアームの使用者でない人間がガンダムに乗るとある時点で情報体が四次元に以降とするのに、二次元と三次元の間でずっと跳ね続ける羽目になる。これがスリングショット式最大の問題点と言えるでしょう。

更にスリングショット式の場合は無事に四次元に跳躍しきった後も様々な問題が予測されますが、それについては後述とします。

振り子式の次元跳躍

スリングショット式次元跳躍の問題点をクリアするためには別の方式で次元跳躍を試みる必要があります。
そこで考えられた次の方式が振り子(円運動)型です。

現在を起点に過去…例えば18歳なら9歳の地点にアンカーを打ち込み、三次元の天井(四次元の底)に向かってこれまでの人生で蓄えた情報量の質量=記憶を噴射します。
そうすると支点を中心に振り子のように動き、0歳を過ぎると四次元を突破できるというわけです。

これなら母親がガンダムに乗っていなくても自力で四次元突破出来そうですね。
しかも時間が経過すれば自然と三次元まで帰って凝れます。

振り子式の欠点

図だけ見るといけそうな気がする振り子型ですが、これもやっぱり欠点があります。
停止する人がいなければ永遠に円を描いて回り続けてしまうことです。

わたしたちが地上で風車を回すと、風車は何度か回って動きを止めますが、これは目に見えないだけで空気抵抗が勢いを殺してくれているからです。
その為、真空空間で風車を回すと理論上誰かが静止するまで延々と回ります。

これが人間で起きるとどうなるかというと…
18歳で跳躍する場合、18までため込んだ記憶を噴射剤にして0歳まで戻ることになるので意識が幼児退行することになります。
そして四次元の壁を突破した後、再び情報体は再成長して18歳まで戻り、三次元に着地。
したと思ったらまた0歳まで幼児退行→突破→成長→着地→退行以下を延々とリピートします。

つまり目の前にそういう人がいたら突然子どもっぽくなり始めて赤ちゃん返りして最終的には動けなくなったと思ったら、また動き出して年相応になっていって、ああいつもの知っているあの人まで戻ったな、と思ったらまた赤ちゃん返りするという……。
怖い。病気か?

まあ多分、振り子式での跳躍に成功してた人がいた場合これもデータストームの患者と判断されて治療されてたでしょうね。

この方式では四次元で勢いを殺してくれるナニカ、摩擦抵抗を発生させてくれる存在が不可欠です。
が、なければやはりこれも上手くはいきません。

とはいえ恐らくカルド博士が考案した次元跳躍方式はこの振り子型が理想だったと思われます。

ガンダムと理想の次元跳躍

これまでの考察を考えてもカルド博士は恐らく最初からガンダムによる次元跳躍、四次元に人間の情報体を飛ばすことを目的にガンダムを開発したいたと思われます。
カルド博士が想定した理想的な人間の四次元跳躍は下図です。

1.振り子の動きで人間が四次元に跳躍
2.ガンダムの情報体を摩擦抵抗に利用、四次元内で勢いを殺す
3.三次元に戻って安全に着地

図の右側はその振り子式の跳躍に掛かる時間の経過を表わしています。
跳躍する際は蓄積した情報を推進剤として使うので一瞬です。抵抗もありません。
しかし戻るときはガンダムの情報体が空気抵抗的な働きをして推進力を打ち消していくので速度はゆっくりになる。
揺り戻しが起こらないよう跳躍した年齢でぴったりと着地させるには、18歳なら18年分の抵抗力が必要になってくると思われます。
なので四次元に18歳で跳躍した場合、18年後に三次元に戻ってくることが出来ると思われます。
そしてそのとき、実年齢は36歳でも肉体と精神は18歳のままなのです。

カルド博士はこれが宇宙開発に欠かせないと考えたのだと思われます。
確かに広大な宇宙を開発するのに人はまず寿命が短すぎます。
10光年先なんて宇宙規模じゃ隣近所みたいなものですけど、光速で移動しても10年掛かるってことですからね…。

けどこの方法だと人間の寿命を延ばすことが出来るんですよ…。
そんでもっと言えば、最終的には恐らくワープ航法まで発展させることが出来るんですよ。

例えば上図の場合四次元空間に滞在中の18年間は身体が成長しないわけですから、その間意識を持たないように眠らせておいて、18年後三次元に戻ると同時に起きれるようにしておきます。
その間に輸送機に乗っけて移動させておけば18年後まったく知らない場所で目覚めさせることが出来るわけですね。
これはワープ航法の入り口の一つと言えます。

ちなみに四次元滞在中にスレッタのように身体が勝手に別の意識を持って動かないようにするには、アンチドートをずっと掛けておけばよいのです。
これがガンダムとアンチドートはニコイチ運用が基本と考える理由です。

ガンダム開発がワープ航法に繋がる可能性があるならデリングとプロスペラは手を組めるよなぁ……これ最初に開発した人はマジでめちゃくちゃ金儲けできるだろ!

ルブリスの想定外

まあ、ようするにガンダムは人間が安全に四次元空間を利用できるようにするための道具として開発されたのだと思います。
しかしその為にはガンダムの情報体(OS)は四次元的に起動しておく必要があります。

おそらくカルド博士はガンダムルブリスを四次元的な情報体にするつもりだった。
ルブリスをスリングショット式で四次元跳躍させるつもりだったのです。

ところがルブリスは三次元の情報体としてしか立ち上がる頃が出来ず、その状態でエリクトがルブリスに搭乗してしまった。
よってルブリスよりも先にエリクトが最初に四次元に打ち上げられてしまったのです。

ただエルノラのパーメットを利用したルブリスが三次元にしか立ち上がらないというのは理論上ごく普通のことだと思われます。
カルド博士はルブリスが三次元に立ち上がった後にエリクトの情報をルブリスに学習させることでルブリスを四次元情報体とするつもりだったのかもしれません。

それかプロローグで立ち上がったときには四次元的になるはずだと計算を一世代分勘違いしてしまっていたか……。
どっちなのかはもう確認しようがないですね。

四次元のガンダムであれば人間を安全に次元跳躍させることが出来ますし、加えて四次元空間にパイロットの情報のバックアップを取っておくことも可能だと思われます。
だから何らかデータストームのような症状が出た場合もいったんアンチドートで人間を初期化した後、ガンダムに乗せてバックアップの情報を共有させることで人格を元に戻すことも可能だと思うんですが……ルブリスはそうでなかったんですね。

いずれにしろエリクトは人類とガンダム全て合わせて恐らく最初に四次元跳躍を果たした人物であり、そしてスリングショット式で打ち上がった以上、止めるものがいない限りどこまでも上に向かって跳び続けるしかなくなったと思われます。

エリクトとスレッタの今後

スリングショット式で次元跳躍を果たしたと思われるエリクトですが、この方式は三次元の天井を突き破って四次元に突破した後も様々な問題が予測されます。問題の予測と解決が恐らく物語における二人の今後の方向を決めてくると思うので、ちょっと推察していきます。

エリクトの次元跳躍

スリングショット型の欠点を説明したとき跳躍自体に成功してもその後も問題が多いという話をしました。
実はスリングショット型は次元の床に安全に着地することが極端に困難なのです。

上は二つの方式を重ね合わせてみた図になります。
現在から過去の時間軸を使う振り子型に対し、スリングショットは過去から未来の時間軸を使います。
放出される情報の質量は当然スリングショット型の方が多く、停止するためのエネルギーも膨大になることが予測されます。
単純に考えても恐らく円運動の倍のエネルギーを止めなければなりません。

基本的に動いている物体は推進方向とは逆の方向に推進力と同程度の力が加わることで停止します。

とはいえ四次元に跳ぶエリクトを止めるために上から力を加えるということは五次元から押さえつけると言うことになります。
つまり四次元の天井、五次元の底にぶち当たるとエリクトは制止出来ると言うことになります。
が、これは事実上の衝突事故なのでエリクトは死亡します。

また推進力が切れた場合についても考慮しておかねばなりません。
垂直に上がっていいるためどこかで燃料が切れると一気に下まで落下することが予測されます。自分が明けた四次元の床の穴にそのまままっすぐ落ちていき、更に三次元の床の穴に落ち、最終的には二次元の底に激突します。
そして死亡というわけですね。

ロケットをイメージしていただけるとわかりやすいと思います。
ロケットは地上から発射され、基本打ち切っておしまいです。大気圏外まで打ち上がったロケットのパーツは最後は大気圏まで戻ってそこで燃え尽きるように設計されています。

なのでエリクトも打ち上がったら最後は爆発し燃え尽きて散る宿命なわけです。
ロウソクみたいできれいだね……ってそういうことか……。
最悪か?

しかし本編現在、6話11話とエリクトが存在していると思われる以上、彼女は何らかの方法で上昇の勢いを殺し、垂直ではなく斜めにずれて自分が開けた穴以外の四次元の床に着地したと思われます。

実はこれをやったのがスレッタなんですね。
スレッタは三次元からエリクトを引っ張って彼女が四次元の天井に激突しないようにし、かつ安全に着地できるポイントまで誘導したのです。

「スレッタは無事に生まれるか?」とう項目でエリクトとスレッタの間をつなぐラインは今後のことを考え切らずに残しておいた方がよいだろうと書いておりましたが、このためです。

ただし二人の繋がりを断ち切ることが出来ない以上スレッタは最終的にはエリクトに引きずられて次元跳躍をする運命にあると思われます。

なぜなら情報体であるエリクトは四次元に跳躍した後も情報を収集することで質量を増やしていくため、四次元のエリクトの身体がいっぱいになったら今度は絶対に五次元に跳ぼうとするからです。

二人の動き

というわけでいったん二人の次元跳躍に関する動きを今後も含めてまとめてみていこうと思います。こうだっ…!

これが現時点で私が描ける精一杯の二人の動きを図にしたものです。

まず基本的な情報を話しておくとエリクトの次元跳躍の周期は18年です。
これは彼女が最初に9歳で跳躍した時に自身の18歳にアンカーを打ち込んだためです。この最初のポイントの設定が必然的に一回あたりの跳躍周期として設定されることになります。

最初のエリクトは
1.9年掛けて次元上昇に必要なエネルギーをチャージ
2.跳躍。いったん下の次元にダイブし、勢いを使って上昇。
3.9年掛けてスレッタに勢いを殺してもらいながら安全に着地
4.着地終了後すみやかに次の跳躍に向かってエネルギーを再充填
この動きを繰り返します。

エリクトだけの図

図の通り四次元に飛んだ最初の跳躍が着地まで完了するのはエリクトが生まれてから18年後が目安です。
つまりスレッタが9歳の時にエリクトは一回目の跳躍周期を終了し、二回目の跳躍周期に入ってエネルギーの再充填に入っていることになります。
次にエリクトが跳ぶのは生誕から27年後、スレッタが18歳の時が目安です。

すなわち本編一期からあと二年ということになります。

この二年という数字はメタ的に見てもかなり重要度が高いと思われます。
というのもシェイクスピアのテンペストでは主人公プロスペローは使い魔のエアリアルに「二日後には自由にしてやる」と告げるからです。
水星の魔女はスレッタが18歳になるまでの物語かもしれません。

スレッタが18歳になるとエリクトは跳躍のエネルギーを充填し終え、いったん三次元の肉体に降りてきます。
そうすると当然中にいるスレッタは肉体から弾き出され、スレッタも強制的に四次元跳躍を開始することになります。

スレッタだけの図

スレッタは0歳で誕生したときにエリクトとラインで繋がっています。
ちょうど母親と子どもがへその緒で繋がっているように。
そのラインを使って成長をしながら跳躍したエリクトを横に引っ張り、勢いを殺させつつ着地させます。(スレッタ9歳の時)
この着地ポイントはスレッタにとっても非常に重要なアンカーポイントとなります。
エリクトの着地が終了したらスレッタは肉体的に成長しはじめることになります。理屈がわかっていると彼女がいつ跳躍するか予測がつくわけです。

そして18歳になると上述の通りエリクトがいったん三次元の肉体に戻ってきます。弾き出されたスレッタは事前に置いておいたアンカーを利用してすみやかに振り子の動きで四次元を目指します。

スレッタは四次元方向へ自分の情報の質量(記憶)を噴射。エリクトはこのバックアップを取っていきます。
スレッタは0歳まで若返り、0歳地点で9歳のエリクトと重なる。エリクトはスレッタの情報を吸収して18歳のスレッタ・マーキュリーになる。
不思議なことに二人はこの瞬間すっかり入れ替わってしまうんです。

そうするとどうなるかというと、エリクトは
1.五次元に跳躍したエリクト
2.スレッタと入れ替わり三次元に戻ったエリクト
の二人に分裂します。

また五次元に跳躍したエリクトは手順に乗っ取り四次元の自分を初期化しますが、この身体はそのままスレッタが使うことになります。

こうして
五次元:エリクト(a)
四次元:スレッタ
三次元:エリクト(b)
という図式になるわけです。

五次元に到達し着地を終えたエリクトaは次の18年周期で今度は六次元に向かうことになります。
そのタイミングはエリクトの誕生から45年が目安になります。
エリクトaは四次元にダイヴ、四次元のスレッタは押し出されて五次元上昇を始めます。

振り子の動きで半円を描きながら移動しているスレッタは三次元にいる18歳のエリクトbと接触してしまいます。
するとエリクトbには強制的に円運動で使用する為のアンカーが打ち込まれ、直線を伸ばして27歳のエリクトbが引きずられるように跳躍に入ります。

もともとエリクトaが五次元跳躍を開始する時はスレッタにとっては三次元への帰還を予定していたときでもあります。
因果関係が重なり合ってスレッタも五次元に跳躍するスレッタaと三次元に帰還するスレッタbに分裂することになります。

こうして以後18年ごとにスレッタとエリクトは交互に三次元に姿を現しつつ、次元上昇に合わせてデータ上はどんどん増加していくことになります。

二人は跳躍せねばならない

三次元からいなくなったり、分裂したり、交互に三次元に現れたり……
しかも図を見てわかるとおり同い年生まれのみんなが63歳でお爺ちゃんお婆ちゃんになるときまだ36歳だったりと一見なんとも非人間的な状態になってしまうと予測される二人。

それでも生きるためには次元跳躍を受け入れるしかないかと思われます。

なぜならこれは打ち上げられたロケットの話です。
止めることはすなわち死を意味します。
スレッタをガンダムに乗せなくとも四次元のエリクトは通常の人間とは違う形で成長し続けています。
彼女の身体がいっぱいになったときは必然的に上昇を試み、そしてガンダムとスレッタの助けがない場合は100%失敗して死亡します。
それはスレッタも死でもあるわけです。

「逃げれば一つ、進めば二つ……ううん、それ以上……」
この台詞はもともとスレッタが母から教わったもの。
エルノラにとってなにが一つでなにが二つ以上だったのか、考察した結果これはこういうことかな……という気がします。

逃げればスレッタとの18年間の安寧の生活が待っている。
18年後娘が死亡しても哀れな母親として過ごせばよい。
しかし娘を少しでも長く生かしたいと願うならば魔女の誹りを受けようがやるしかないと言うことになります。

おお、肝っ玉母ちゃんやな……泣けるで。

おわりに

以上が水星の魔女におけるガンダムの考察、そこから予測できるエリクトやスレッタの将来、ガンダムがどのように発展していくかの予測です。
けっこう突拍子もないところに繋がったように見えるかもしれませんが、個人的にはいい線をついている部分もあるんじゃないかなと思っています。

少なくとも何らか四次元が関わっていいる可能性は高いと思っています。
これは9話の戦闘からの予測ですね。
9話は最後シャディクが知覚の範囲外から突然撃たれて終わります。
四次元を認識できない我々が四次元から攻撃を受けるとなにもないところから突然撃たれたように感じるはずなのです。
もちろん、実際にはチュチュの狙撃だったんですが、9話はエアリアルを通してエリクトが接触をしてきたと思われる話でもあります。
メタファー(暗喩)として四次元からの狙撃をあのように表現したのではないでしょうか。

またOPではエリクトが最後モニターをオフにする描写があります。
三次元の我々に無理矢理四次元を体験させるには二次元をみせるのが手っ取り早いため、ああいう演出かもしれません。

次元跳躍に伴い二人が三次元に交互に降りてくるようになるかどうかは、仮説の一種と見なしていただいて問題ないと思います。
ワープ航法に繋がるかどうかも、素粒子などを使ったテレポートの理屈にいくつか高次元を使ったものがあったはずだと記憶しているくらいで、ちゃんとした理屈は知りませんし、あの図が合っているかもわかりません。

一応現状の本編の描写と大きな矛盾点はないと自負しておりますが、それだけで圧締いるとは言えないので…まあこういう考察もあるな、程度に楽しんでいただけたら幸いです。

三万字くらいあるけど……こんな長くて大変なもの、本当にお読みいただきありがとうございます!

最後にちょっとおまけの考察を乗せておりますが、これは現時点で「私が考える水星の魔女怖い話」になります。
レディ・プロスペラとある人物あたりのちょっとした考察になります。
単なる怖い話というか、最悪を想定した準備運動の話の類いです。
興味ある方はどうぞ。



【おまけ】レディ・プロスペラ?

レディ・プロスペラの正体について考察していきます。
正体もなにもエルノラじゃないんかい、と思う方もいらっしゃると思うのですが……

あれ、身体別人じゃないですか?

これまでの考察でも書いているけど、三次元の人間の情報も消せるし、エランたちの例を考えると、パーメットを使えば、初期化した人間に別の人格を入れ込むことが可能だと思うんですよね。

じゃああのエルノラ、中身は本物だけど身体は別人の可能性あるのでは?

11話でデリングに対してエルノラが
「エルノラでかまいませんよ」
というけどデリングは
「レディ・プロスペラ」
って余分ですよ。

そんでデリングって実はプロローグから本編まで、一度も嘘をついてないんです。都合の悪いことを黙っていたり、相手が誤解するように誘導する台詞は口にするけど、マジモンの嘘はつかないんですよ。
これは恐らくキャラ設定でそうなっているのだと思います。嘘つくの苦手なんでしょうね。
だからサリウス・ゼネリはデリングと会話してデリングが隠れてガンダム開発してたことを見破るんですよ。

そういう性格の人間が彼女を「エルノラ」と呼ばないということは「エルノラ」じゃないのかもしれない…。
中身は間違いなくエルノラだと思うけど、身体別人かもしれない…。

ということは、あの髪は染めているとか、カツラによる変装ではなく、地毛かもしれない…。
年齢的にエルノラと同い年か少し若いくらいの女性なら、その身体の持ち主にも子どもがいたかもしれない。
髪とか目の色がそっくりな子どもが、出てくるかも……すでにいないか?

ぐえ、え、グエル……おまっ……!
目の色も似てない!?

正直スレッタとグエルとレディ・プロスペラ(仮面なし)を並べられてミリしらで誰と誰が親子だって言われたら、グエルとプロスペラが親子だと思うともう、わたし…。
エルノラはスレッタと同じ丸い目だけどレディ・プロスペラは切れ長形なんだよね…。

小説「ゆりかごの星」の情報だと、エアリアルはスレッタのママが開発してテストパイロットも務めていたらしい。
そんで戦闘シュミレーションのスコアはとてもいいらしい。

……まさかとは思うが、エアリアルってジェターク関連のガンダムだったりして……何らからのトラブルでテストパイロットがデータストームに見舞われ、その人物を初期化したと。
そのときみんなエアリアルは四次元情報体になっていると勘違いして(実際には恐らくいったんエリクトの身体から脱出しただけ)初期化したパイロットをエアリアルに戻したら、共有されるのはエアリアルの元になっているルブリスの、エルノラの情報なのでは?
エルノラになっちゃうのでは……?

その、エルノラがさ……「自分は娘と捕まっている」とか思ってた場合、エルノラになってしまった人……娘(スレッタ)連れて逃亡しないか?
エルノラになってしまったエアリアルのテストパイロットの人、突然おかしくなって行方不明になったってことに……なるよね?

……グエルの父親のヴィムがさ、デリングがグエルの行方不明を指摘したときにすごく怒ってつかみかかったじゃん。
あのシーン…すごい過剰に反応するな、もうちょっと大人しくしてた方がいいと思うんだけど…って思ったけど、トラウマ刺激されたからだったりして……。

もしそうだとすると、グエルはひょっとしたら幼少の頃に9歳のエリクトの姿をしていたまだ小さい4歳以下のスレッタと会ってたことがあったりしてな……それだと突然好きになったことにはならないというか、幼なじみの可能性もあるかもな……。

でもグエルの母親がレディ・プロスペラの肉体の持ち主だった場合、スレッタがグエルから奪ったものリストに母親も追加されてしまう……!

あと、あとさ…スレッタには弟がいるらしいけど…
ラウダの母親、誰だと思う?

以上、水星の魔女怖い話でした!
ここまでお読みくださってありがとうございます。
おまけの考察は本当に最悪に備えるための怪談話くらいに思ってね!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?