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『映画大好きポンポさん』の魅力と"90分"について語る。

こんちには、蕩です。
前回は「春アニメ OP,EDアニメーション5選」について掘り下げる記事を書いたのですが、個人的に満足する内容で気に入っています。
そして皆さんの温かい感想,拡散のおかげでブログを続けられていることに、改めて感謝です。

さて、今回は『映画大好きポンポさん』です。
TLでほとんどの方が「面白い」「最高だった」と言っているので、興味を持った方も多いんじゃないかなって思います。正直クソ面白かったです。
なので、その魅力を"基本的にはネタバレなし"のまま全力で伝えたいと思います。よろしく!!


「エンタメの化け物」

『映画大好きポンポさん』は漫画原作の作品なんですが、オリジナル要素が強いかつ"1つの映画"だけで完結しているので"オリジナルアニメ"として取り扱っていいかなという認識で話を進めます。

さてさて、ここ最近の"アニメ映画"で面白いって思うのは、基本的に続編系の作品が多いですよね。

『鬼滅の刃』
『エヴァンゲリオン』
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』
『SHIROBAKO』
『メイドインアビス』

続編系は必ずと言っていいほどに予備知識が必要です、一部で「映画だけ観たけど面白かった」なんて言う方もいらっしゃると思います。でも事前知識がある人間より深くまで楽しむことは不可能。
加えて、普段アニメを観ない,またはアニメ好きな方でも"該当の作品"を観ていない時点で続編系の作品ってハードルが上がってしまうんですよね。

でも"オリジナルアニメ"は違います。
続編系と比べて面白い作品を0から作る点で難しい印象はありますが、誰でも全力で楽しませることができる点こそオリジナルアニメの強みだと思います。
そして、これが一番言いたいことです。

『映画大好きポンポさん』は誰でも楽しめる!

もちろんクリエイターの方に強く残るような、そして私たちアニメ好き,映画好きを特に満たしてくれるような作品なのは間違いありません。
でもそれだけを伝えてるのって勿体ない。あんまりアニメを観ないという方にも楽しんでほしい、そのポテンシャルは確実にあると信じています。
ということで、その"誰でも楽しめる"理由を3つ挙げて紹介していきたいと思います。

●取っつきやすいキャラデザとポップな色彩

何となくマニアックな作品っていうのはキャラクターの見た目が重かったり、雰囲気を作るための厳つい造形が多くて敬遠されることがあります。
それも面白さの1つですが、窓口って大事ですよね。

そして普段アニメを観ない人間にとっての窓口は"キャラの見た目"で、ポンポさんはこれが優れてます。

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ポンポさんのキャラデザと色彩は親しみやすい!!

"キャラデザ"って本当に重要なんです。
キービジュアル見てください、これ以上ないくらいに取っつきやすそうなキャラが揃ってますよね。
あちこちを軽やかに動き回りそうな造形をしているし、ポンポさんのお茶目に舌を出している姿から、他のキャラクターも"表情豊か"に盛り上げてくれそうな印象を持ちます。この時点でとても楽しい。

そして"色彩"もすごいポップで、「重たい空気の作品なのかなあ」って思うことは皆無です。
実際に胃がもたれる雰囲気になることはありませんし、最後までこのビジュアルから抱いたイメージで駆け抜けるように物語は展開されていきます。
これが「エンタメの化け物」である理由の1つ。

●テンポの良い内容

練りに練られた複雑な内容の作品っていうのも面白いのは重々承知ですが、これも人を選んでしまう。
全体的に重い雰囲気に包まれた2~3時間の映画作品って、どこかでテンポが緩んでしまう。

でもポンポさんは素直に色々な方が楽しめる内容に加えて、"テンポが良い"ので飽きないんです。
ジェットコースターのような展開をしてきます。

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ポンポさんは「簡単」「王道」「90分」!!

ポンポさんの内容を簡単に説明するなら、絵に描いた青春とは程遠い人生を過ごしたジーン(主人公)が映画監督になって"最高の映画を作る"だけです。
他に説明を付け加えることも可能ですが、この事実だけ知っていれば"ジーン監督が作る映画"に全員が携わる内容なので、他キャラの背景も勝手に見えてくるという「簡単」な構成でシンプルに楽しめる。

また、全てを犠牲にする人間,夢を追う人間,現状に悩んでいる人間が悩みつつ、"映画製作"を通して夢を掴み取る展開は至って「王道」です。
挿入歌を挟むタイミングも抜群で、展開の盛り上がりとテンポ感を上手い具合に助けているところも誰でも楽しめる理由の1つに入っているのかなって思います。わかりやすさって大事。

そして「簡単」「王道」の右肩上がりで盛り上がり続ける展開はワクワク感に満ち溢れている一方で、私たちが普段楽しんでるアニメ,映画がどうやって作られているのかという"裏側"を知れるように描かれているので、創作における葛藤と完成させた達成感を一緒に体験できるような構成が魅力的です。
この部分は特にアニメ,映画ファンも含めて"誰でも楽しめる"理由になっていると思います。

●軽快で楽しいアニメーション

個人的には、"伏線"等を台詞以外で画面の中に託せるのがアニメの強みだと思っていますし、キャラの芝居以外でも楽しませられる媒体だと認識してます。
 
ただやっぱり"キャラ芝居"に心躍るのがアニメーションにおける最大の魅力、これが何よりもキャラクターという存在の輝きを引き出してくれてると思うんですよ、この点でポンポさんは化物レベルです。

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ポンポさんは"観たまま"で楽しめる!!

取っつきやすいキャラクターが、メリハリつけて軽快かつ贅沢に動き回る姿は気持ちいいです。
若干のオーバーリアクションが絶妙な爽快感を生み出しているし、単純な動作でも"芝居"が丁寧かつ大胆で遊び心が満載なので、観ていて愉快です。
さらに、映像の中に張り巡らされた"重要な伏線"のようなものがありません。(あるとは思う。)

ただ『映画大好きポンポさん』を心から楽しむための"重要な伏線"とかないんですよね。
だって私はその存在に全く気づいてないのに、ここまでポンポさんについて夢中になって語れるくらい楽しんでいるのが証拠!!

あと、露骨な暗転とかで"場面転換"するとプチッと集中が途切れる時ってありますよね。
ポンポさんはこの"場面転換"にあらゆる道具を用いることで、視線誘導的に映像に対して興味を持たせたまま次の展開に移ることを重要としているので、集中力が途切れることを防ぐどころか、「次は何を使って場面転換するんだろう」と楽しみにさせてくれるのが魅力的です、だから"軽快""飽きない"。

ここまで語った要素を整理してみてください。
欠点が全然見つからないというか、どこか一定の層を弾いてしまう要素が見当たらないんですよね。
誰にでも面白いを与えてしまう、ワクワクの塊。

「エンタメの化け物」って言葉がピッタリです。


「"90分"が持つ説得力」

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そこまで影響ないと思いますが、微ネタバレになってる可能性はあるので死ぬほど新鮮な気持ちで楽しみたい方は、視聴後に読んで頂けると幸いです。

視聴した方はご存知の通り、視聴していない方もTL等で上映時間のことは知ってると予想。

「90分ピッタリで終わらせるなんてすごい!」
「ポンポさんを90分でまとめるの最高!」

なんて絶賛の嵐になっています、私もめちゃくちゃ衝撃を受けました。軽く震えましたほんとに。
そこで皆さんが絶賛する"90分"と、ポンポさんが理想とする"90分"の関係性について語りたい。

●"90分"で終わらせた魅力の正体

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ということで、早速語ってみようと思います。
さっき難しいこと考える必要がないって書いたので若干気が引けますが、こうゆうことを文章に落とし込むのも自分の楽しみ方だと思ってるので。

ポンポさんは映画に関係する過去の出来事から、「90分以上の映画は嫌い」って断言します。
そうです。この時代に2~3時間の映画を集中して楽しんでくれっていう方が難しい話で、もともとアニメ好き,映画好きって方でも「確かに90分くらいの作品はありがたい」って思った方は相当な数いるんじゃないかなって気がします。

結果的に作品内でジーン監督が作った映画、そして『映画大好きポンポさん』という私たちが視聴している映画の両方が「90分」で終わります。
何となく"劇中劇"ってことは把握してるはずなのに、どこかそのカテゴリに違和感を覚える方もいたんじゃないでしょうか。これから観るという方も不思議な感覚になる方はいると思います、それは『映画大好きポンポさん』という劇の中に視聴者である私たちまで入ってしまうからじゃないかなって。

●これはもう"劇中劇中劇"と呼ぶ。

劇の中に存在するポンポさんの気持ちをリアルタイム、そして並行して体験することができるので私たちも"劇の中"にいると言えます。 
ポンポさんの世界にいる人間たち、そして劇場で座っている私たち全員の意識が"90分"に向くように巻き込むスタイルをとって、劇場内における全員がこの"90分"に対する意味合いを共有することができる設計になっていると思うんですよね。

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なので最後にポンポさん→ジーン監督に言った台詞を、視聴者→ジーン監督という同じ矢印で同時に言える作りとなっていることがリアルタイムで同じ体験を成立させて、"劇中劇中劇"という面白さに繋がっている気がします。

そして、エンドロールが流れた後にポンポさん→ジーン監督に言った最後の台詞を、視聴者は『映画大好きポンポさん』という目の前の作品にもう一度言える作りになっているのがニヤッてなるポイント。
この瞬間に私たちは"劇中劇中劇"の世界から突如抜け出して、『映画大好きポンポさん』を楽しんだ観客という人間に戻って感覚的かつ物理的に劇場から出られることが、この作品の持つ特有の魅力だと心から思っています。

エンドロールが終わるまで座っていてほしいとは言いません、ただエンドロールが終わるまで座らざるを得ない気持ちに襲われる魅力を味わってほしい。

これがポンポさんにおける"90分"が持つ説得力。

という、私の考えた"90分"の魅力の正体です。
これを踏まえると「エンタメの化け物」って言葉の説得力まで増すといったお話でした。


個人的な感想

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最高でした、私の中では傑作です。
"映画"を作る"映画"を"映画館"で楽しめる。
誰でも楽しめる「90分」を作り上げてしまった時点で『映画大好きポンポさん』という作品は、面白いが溢れたアトラクションって感覚です。
本当に最初から最後まで面白くて、飽きるなんて言葉が全く浮かばないどころか「次!次どうくる!」って身を乗り出してしまいそうなくらい、ワクワク感に満ちた作品でした。アニメ好きでよかった。
「これが"アニメーション"か」と心底震えました。

EDと呼ぶのかはわかりませんが、個人的にエンドロール時に流れていた「窓を開けて」というCIELさんの楽曲がとても爽快感に溢れてて好きでした。
制作会社の"CLAP"が叩く手拍子から始まる映画でしたが、この「窓を開けて」も手拍子が挟まれていて最初から最後まで楽しい気持ちにさせてくれる遊び心満載な部分も素敵だなって思いました。

この作品はぜひ観てほしい、「○○向け」なんて間口を狭くせずに友達に声をかけたりして、この作品が持つ魅力を広めてほしいです。
変に上手い言葉使って感情揺さぶるような必要も全くありません、「面白そうだから一緒に観よう」って気軽に言ってみてください。充分です。

"単純な楽しさ"ってそうゆうものだと思うんです。
普段、私がTwitterで書くアニメ感想,作品を細かく掘り下げるブログを読んでくれてる方には「お前がそれ言うのか」って思われてそうですが、今回の記事で伝えたかったのは"単純な楽しさ"です。
私がこの作品を心から楽しんだっていう気持ちと、『映画大好きポンポさん』って作品の魅力が記事を通して伝わったなら、これ以上ないほど幸せです。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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では、この記事が"5000文字ピッタリ"という些細な遊び心を紹介して終わりたいと思います。
次は『氷菓』の記事でお会いしましょう!

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