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夏学期2週目: 帯域を開放する

こんにちは、虎塚です。

今日は三連休の一日目でした。見出しの写真は今日の19時頃、キャンパスからビーチまで歩いた時に撮りました。

フルタイム勤務の2週目は、9時頃にラボへ行き、18時頃に帰宅するのが習慣になりました。9時より前にいるのは、大体いつも同じ2人、あるPhD学生とそのメンティーの学部生だけです。そして、17時が近づくとラボのメンバーは原則帰宅します。ほとんど毎日、私がラボを出る最後の一人になっています。

私が何年も前に日本で体験した大学院と比べて、学生のラボでの作業時間が非常に短いように思います。ここの大学院生は、指導教員に雇われて、お給料をもらいながら研究をしています。ラボにいる時間が短くても、全員ピアレビュー誌に論文を投稿して出版済みか、あるいは投稿中です。国内にも国外にもたびたび出張しては研究の発表をしています。そうしながら、とてもよく遊んでいます。冬は毎週のようにスキーやスノーボード、今の時期は自転車とクライミングに出かけていて、ランチでよく話を聴きます。

何が違うのだろう、と考えます。私もラボの皆さんのように生産性と効率を上げたい。その勘所を掴めば、対象が研究でなくても、これからの学習や仕事で役に立つと思います。

何が違うのだろう。英語スキルだろうか?

私は英語スキルが低いので、授業ではいつもついていくのに四苦八苦しています。研究の真似事をしていても同じです。平均的な英語母語の学生の何倍もの時間を投入して、ようやく人並みの結果を出せたり出せなかったりする程度の能力です。しかし、もしかしたら、英語スキルの低さを言い訳に、必要以上に時間を使っている部分もあるかもしれません。というのも、ラボの大学院生たちは英語を母語としない人の方が多数派です。仕事の進め方、もっといえば生き方が、彼らとは根本的に違う気がしてなりません。

何が私に足りないのだろう。

そう考えていて、数年前に聴いたpodcastを思い出しました。NPRのHidden Brainという番組です。

https://www.npr.org/2018/04/02/598119170/the-scarcity-trap-why-we-keep-digging-when-were-stuck-in-a-hole

(当時は、「人は欠乏しているものに執着するようになる」という考え自体が私には新鮮で、感銘を受けたようです)

今回思い出したのは、後半に登場する臨床医Katie(仮名)のエピソードでした。モチベーションが高く、医学校をクラスでトップの成績で卒業したKatieは、臨床に就くやいなや休みを取らずに働きます。その上で、最新の医学についていく勉強も続け、過度なワークアウトをし、やがて摂食障害を起こして体調を崩してしまい働けなくなります。その後、彼女は回復して仕事に戻るのですが、その過程が興味深いです。彼女は、まず何もしない時間を強制され、その後(「優れた医師になるためには必要でない」という理由で封印していた)絵を描く趣味を取り戻します。

回復後のKatieは、「週に1回か2回、何もしない時間をあらかじめ作り、自分自身とデートをするようになった」と述べます。Julia Cameronがいう「アーティスト・デート」のようなものかもしれません。そして番組内では、それが彼女の「帯域を開放した」と説明されます。

Katie is consciously freeing up bandwidth. And something strange has happened as she's done so. The less consumed she feels about work, the better she does at work.

https://www.npr.org/transcripts/598119170

「仕事のことで頭が占められていなければいないほど、仕事が上手くいくようになった」というのです。

これは面白いと思いました。よく聞くのは、仕事のことで頭を常にいっぱいにしているからこそ、冴えた発想や成果が上がるという話です。しかし、Katieのエピソードのように、頭を仕事でいっぱいにしない方が効率が上がる人、分野、タイミングなども、ひょっとするとあるのかもしれません。あるいは、仕事で頭をいっぱいにしつつも、それだけに囚われないように、帯域を適度に開放する方法があるのかもしれません。なんとなく、最後のこれが正解の気がします。

ラボの院生の皆さんも、帯域を巧みに開放しているのかもしれません。

というわけで、この三連休は私も帯域を開放して(そもそも開放する必要があるほど根を詰めてやっていない気もしますが)来週に備えようと思います。数年ぶりにランニングシューズを買い、海に行ってみました。

ではでは。

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