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夏学期4週目: 訪問研究者の方を迎える/卒業研究の履修許可/6年ぶりの飛行機

こんばんは、虎塚です。5月最終週はちょっとバタバタしていました。思い出しながら書いてみます。

訪問研究者の方を迎える

この週は、国外からうちの先生(以下、ボス)を訪ねてきた研究者や学生の方が、ラボに滞在されていました。私のチームのテーマはその方たちの仕事と関連が強いため、ご飯をご一緒したり、チームで議論する会を開催したり、キャンパスを案内したりなどで、かなりの時間を過ごしました。冒頭の写真は、キャンパスから歩いてすぐのビーチへ訪問客の方々を案内した時の光景です。この日は21時過ぎの日の入りでした。

訪問客の一人であるPhD学生は、ボスをco-supervisorにしています。その方にボスが掛けていた言葉には、院生でない私にも参考になる部分がありました。それは、ここのラボに滞在している間は、チームでの議論に最も時間を使ってね、というものでした。この助言には2つの要素があったと思います。

一つは、個人作業は人と議論ができない時間に回そう、というもの。「スライドを直すなんて飛行機の中でもできるよ。私は飛行機ではいつもメールを書いています。飛行機に乗っている間は新しいメールが来ませんからね」とボスはニコニコしながら仰っていました。

もう一つは、同行者に遠慮しない、というもの。ボスはその学生の方に、「一緒に来ている人の動向に合わせている場合じゃないよ。あの人はもう学位を取ってキャリアを積んでいるけど、あなたは途中なんだから。いかにして自分の学位取得課程を意味のある、そして楽しいものにするかに集中しなくちゃ」と言って励ましていました。

どちらの助言も、目標に沿って作業を選び、時間の価値を最大化せよ、という趣旨だと受け取りました。自分の仕事にも当てはめたいです。

卒業研究の履修許可

この週、卒業論文(Thesis)のコースを来年度に履修する許可をもらいました。

いま通っている大学では、学士のThesisは特別な課程(Honours)を修める学生のみに課される必修科目です。一般の課程(Major)にいる学生はThesisを書きません。私は既卒で大学に入り直したので、Honoursの課程に入ることは許されず、Majorにいます。したがって、本来はThesisを書くことなく卒業します。

しかし、卒論指導を、それも英語で受ける機会はきっとこれが最後になると思うと、やってみたくなりました。せっかく研究大学に入学したのだから、プロの近くで科学の営みを回す訓練を受けて卒業したい。そのためには、指導研究や卒業研究といったコースを履修するのが一番だと思います。たとえば、ボランティアやパートタイムとしてラボに出入りした学生が、データ入力や試験溶液作成といった部分的な作業に終始してしまうのは、よく聞く話です。私が体験したいのは、問いを立て、メソッドを試行錯誤し、結果を議論し、文章にまとめて、口頭で発表して質疑応答する、小さくても一つのプロジェクトの流れなので、構造化されたコースを取るのが適しているはずです。

というわけで、専攻のアドバイザを担当されている教授へ成績表を送り、自分には卒論を履修するキャパシティがあると(厚かましくも)主張して、幸い許可を頂きました。カナダではなんでも交渉次第とよくいわれますが、その通りです。機会をくれたアドバイザの先生に感謝です。

さっそくボスに報告して、来年度も引き続き指導頂けるようお願いしました。

6年ぶりの飛行機

6月の一週目にカナダの別都市で開催されるカンファレンスに参加するために、日曜日に飛行機で移動しました。この6年間で初めてのフライトでした。

離陸時には感傷的な気分になりました。最後に飛行機に乗った時は、まだ前職でソリューションアーキテクトをしていて、休暇を日本で過ごした帰りでした。その時すでに退職して移民しようと心に決めていましたが、学生に戻ることは考えていませんでした。でも、次のフライトはきっとずっと先になるだろうとなんとなく考えたのを覚えています。だれでも、人生にいくつか、あの時に自分は人生に離陸推力をかけたな、と振り返って特定できる時点があるかと思います。仕事も住居もパートナーもなくカナダに勝手に残ったあの春は、自分にとってそんな点の一つでした。

さて、カンファレンスに向かう便で私が目撃したのは、着席した瞬間から途切れることなく科学と研究について隣の席の教授と熱く語り続けるボスの姿でした(聞くつもりはありませんでしたが、周囲の乗客が皆さん黙っていたので耳に入ってきました)。離陸からきっかり1時間たったところでボスは立ち上がり、荷物入れからラップトップを取り出すと再び席に座って、今度は猛烈な勢いでキーボードを叩きながらさらに喋り続けていました。元気すぎる……。

後日、カンファレンスの飲み会で、「飛行機での姿を見て、ボスはなんて元気なんだと驚嘆しました」と本人に伝えたところ、「I LOVE my job!」と満面の笑みが返ってきました。日頃からボスは「教育も、研究も、お金を獲ってくるのも大好き!」とよく仰っています。やはり大学で先生をされるような方は超人ですね。

そんな一週間でした。カンファレンスの話はまた別途書くでしょう。

ではでは。

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