ハイデラバードの思い出〜『パラダイス!OK!!』

実は数えるほどしか、インドに行ったことがない私たち。
初めては、ケララの風の沼尻さんやなんどりの稲垣さんご夫妻と行ったケララ&タミルの旅。
2回目は、沼尻ご夫妻と行ったケララ「オーナムサッディアを食べる」旅。

そして、3回目は『せっかくなら北インドも行っとこうじゃないか』という私の提案に、とらさんが付き合ってくれた香取先生主催のキッチンスタジオペイズリー豪華ツアー。
そして『せっかくインドに行くなら、南インドも行っとこうか』ということで、ツアーに先駆けて、ハイデラバードに前乗りすることにしました。

ハイデラバードといえば、やはりビリヤニ。
香取先生からも、行っておくべきお店リストをお預かりし、意気揚々と向かいます。
初めて行ったハイデラバードは、旧市街・新市街それぞれに全く違う印象です。
美しい装飾の入った食器には目を見張るものがありました。
今お店で使っているものの中にも、ハイデラバードのものがいくつもあります。

泊まったホテルはタージグループで、これがまた朝ごはんが美味しい!
しかも、日本人は物珍しい上に、あれこれ質問するとオープンキッチンでオムレツ(ヨーロピアンなタイプ)を焼いてた人から、奥にいた人たちまで出てきて、あれこれ作って食べろ食べろと持ってくる。
コンチネンタルブレックファーストを食べる人がほとんどなので、インドらしい朝食を楽しんでくれるとらさんの存在に嬉しくってしょうがないといった様子。
断れない私たちは、動けないほどお腹いっぱい食べてしまい、昼過ぎまで居心地の良いお部屋で寝ている始末。

やばい!やばいぞ!!
これじゃ、日本にいるのとあんまり変わらんじゃないか!

というわけで、一応外にも出かけて行きましたよ。
おすすめリストの中のレストランでビリヤニも食べてみるわけです。
いやー、美味しい!でも、お米の一粒一粒に油がまとわりついているような、そんなビリヤニは、かなりヘビーです。
間違っても、ハシゴなんて無理無理無理。

今日は、簡単にサラダで済ませて、外に食べに行くぞ!
翌朝、心に固く決めて、朝食会場に向かいます。(行かないという選択肢はない貧乏性な私たち)
できるだけ端っこに座ろうと思ったら、ホールチーフにオープンキッチンかぶりつきのお席に案内され、「今日はあれも、これも食べてもらおうと思っているんだよ」という不敵な笑みを浮かべる料理人さんたちに出迎えられ・・・

また、お腹いっぱい食べてしまった・・・
動けない・・・なんということだ・・・

というわけで、せっかくのハイデラバード滞在なのに、予定の半分も行けなかったレストラン。でも、絶対に行ってみたかったお店、それが「パラダイス」
いわゆる食べログ的なランキングでも常時トップに君臨するビリヤニ専門のチェーン店です。
ホテルのフロントにいた美しいお嬢さんに相談したところ「テイクアウト専門のお店に寄ってから空港に向かったら」との提案。このお嬢さん、美しい上に仕事ができる方で、上司の許可を取った上で、アプリでタクシーを呼んでくれ、その運転手にパラダイスに寄ってから空港に向かうよう伝えてくれました。
ご存知の通り、タージのようなホテルでタクシーを呼ぶとそれなりの金額がかかります。彼女の手配のおかげでビリヤニ付タクシーをリーズナブルに利用することができました。

さて、向かったパラダイス。外観は、ビザ屋かハンバーガー屋か、といった様子。
ここは勉強なので、チキンとマトン、それぞれグレービー付きでオーダーします。
すると、ビニールに包まれたほっかほかのビリヤニ本体、カップに入ったグレービー、デフォルトでついてくるビニール入りのミルチカサーランとライタ。これらがダガダガダガっとカウンターに並べられて、ぽいぽいぽいっと紙袋へ。
早いっ、多分マクドナルドでハンバーガーセットを頼んだのと、ほぼ同じくらいの所要時間です。
プラスティック製のスプーンとフォークを受け取って、タクシーに戻ります。
たちまち、車内はビリヤニの香りに包まれました。あまり愛想がない運転手さんは「無事に買えて良かったな」とだけ言って、空港へ向かいました。

さて、余裕を持って、空港についた私たち。
このビリヤニを食べる場所を確保しなければ、と思って空港内外を歩いてみましたが、そんな場所はありません。
うーん、やばいな。せっかく買ったのに、味見もせずに処分するわけにはなぁ。。。と思っていたら、警備の網を背にした椅子2脚を発見。
警備員の方に断りを入れると、笑顔でokポーズ。
「ひとまず、味見だけでもしてみよう」というわけで、それぞれ数口ずつ食べてみる。
「う、うみゃーい!!」
殺風景な空港の隅っこで、袋に入ったビリヤニをつつく日本人2名。
ボリューム満点のビリヤニ2袋、とてもじゃないけど、完食には程遠い。
『美味しいけど、流石にこれを持って搭乗手続きはできないよなぁ。』
と思っていたら、さっきから見守っている警備の人が「問題ないから、そのビリヤニももってこい」という身振りをしているので、一応、ビニールの口だけ結んで紙袋に戻して、手荷物検査場へ向かってみたわけです。

「これは?」やっぱ聞くよねー
「パラダイスです」あ、いや、パラダイスじゃなくってビリヤニだよね
「パラダイス?!」はい・・・「OK!」
えっ?

その後も、いくつかある検査場全てで
「これは?」「パラダイス」「OK!」が繰り返されたわけで

結局、搭乗口まで、パラダイスのビリヤニ入り紙袋を連れていってしまった私たち。
いやね、結構、じゃなくって、かなり、匂うのよね、この袋。
言ってみれば、あれですか、新幹線の中の551蓬莱の豚まんみたいな?!
文楽を聴きに、大阪まで夜行バスで通っていた時代、何度もお伺いをたてて持ち帰っていたことを思い出しちゃいましたよ。ほんと肩身が狭いんですよね。

で、事もあろうに、というか、インドではよくあることですが、ハイデラバードからデリーに向かう飛行機が1時間遅れて、その間もずっとビリヤニと一緒に待ちぼうけ。流石にそこで食べようとは思わなかったけど。

そして、ようやく乗り込んだ飛行機の機内。やっぱり漂うビリヤニの香り。
事もあろうに、お隣に座ったのは、目の覚めるような美しいお嬢さん。
「どこから来たの?」と素敵な笑顔を向けてきた後、鼻にちょっと皺を寄せ「ん?この香り?」
あー、すみません、すみません。
こんな綺麗な方のお隣で、こんな匂いさせてすみません!
「ビリヤニなんですよ」と、カバンの中から紙袋をちょっと持ち上げて頭を下げる。
「あ!パラダイスね!」満面の笑顔です。
「美味しいわよねー、ぜひデリーでも楽しんでね」
デリーに仕事で向かうと言った美しい人は、親指を立てて、満面の笑みを浮かべたのでした。

すごいなぁ、パラダイス!
パラダイスは完全無敵だった・・・


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