晴れの日のビリヤニ
休業による引きこもり生活がすっかり長くなってしまって、スパイスに触れる機会も全くといっていいほど無くなってしまいましたが、そんな私たちが、リクエストにお応えして、久しぶりにビリヤニをご用意することになりました。
皆さんにもおなじみになった、とら屋食堂のキャラクター「ミールスぞうさん」の生みの親であるルルエチュードのひとみさん、彼女は昨年5月に素敵な方と入籍されたのですが、コロナの影響で式は延期になっていました。
そのご夫妻の披露宴でビリヤニを出したいのですが、とのご相談をいただいたのは、半年前のことでした。
会場であるインターコンチネンタル東京ベイのブライダル担当の方も、とても好意的で、盛り付ける器や搬入、そして、万一の場合の対応についても、とてもきめ細かい対応をしてくださいました。
披露宴の場には、お子さんからご年配の方まで、いろいろな世代の方がいらっしゃるということでしたので、食べやすいチキンビリヤニにしよう、とご夫妻と相談して決めましたが、さて、鶏肉は何にしようかしら、と、とらさんと考えました。
とら屋食堂でチキンビリヤニといえば「森林どり」が多く登場します。
でも、せっかくなので、ちょっと特別感がある鶏肉がいいかも、ということで今回は「阿波尾鶏」をご用意することにしました。
ご存知の方も多いかと思いますが、徳島県の地鶏である阿波尾鶏は、低脂肪なのにコクがあり、甘みや旨みがしっかりあるので、ビリヤニにするととてもおいしいのです。
そういえば、これまでもとら屋食堂ではいろいろな鶏肉をビリヤニにしてきました。
鴨のようにたっぷり脂が出て、その旨みで白ごはんが食べられるんじゃないかと思うようなコッテリタイプもありますし、ホロホロ鳥の旨みも独特な美味しさでした。ただ、好みは分かれるかもしれませんね。
そういう意味では、阿波尾鶏はほぼ全ての方が楽しんでいただける食材なのではないかと思います。
もし、読んでらっしゃるあなたが、すこぶる鶏好きさんなのでしたら、ぜひいつか「天草大王」のビリヤニを試していただきたいと思います。きっと喜んでいただけるはずです(^^)
さて、結婚式当日、朝早くから仕込みは始まります。
今回はコースメニューの中のお肉料理の後、ということでしたので、お一人分は少しずつ、と分かっていても、やはり『余裕を持って』がとらさん流です。
バスマティライス2キロに対し、阿波尾鶏は4キロ使用、揚げ玉ねぎやミントなどの香草類もたっぷり入ります。
おめでたい場なので、カシューナッツやレーズンも忘れずに。もちろん、いつも以上にサフランもたっぷりです。
計ったようにピッタリと2、2升用の保温ジャーに収まったビリヤニを乗せて、一路会場のインターコンチネンタル東京ベイへ向かいます。
前日まで荒れ模様だったのに、嘘のように晴れ渡った空、高速道路もとてもスムーズで、無事にブライダル担当の方にお渡しすることができました。
会場では、デザイナーであるひとみさんの才能とセンスが至る所に光っています。
まず、来場した方が受け取る座席表、そして、マスクケース。
座席表の裏には学級通信のような「〇〇家通信」。そのタイトルは
『南インドカレー婚』カップル 披露宴始まる
おーっ!!そうなんですよね。このお二人、南インド料理がご縁でお付き合いが始まったんです。とら屋食堂の名前も出ていますよ。
おまけに、テーブル席の名前は全てスパイスです。シナモン、マスタード、フェンネル、スターアニス、サフラン、コリアンダー、クローブ、ターメリックと、アンティークのボタニカルアートのようなデザインが本当に素敵です。
私たちの席は「カレーリーフ」
さすが、わかってらっしゃる!
ウエルカムムービー、新郎新婦の入場の後、乾杯に合わせカーテンが開けられると、素晴らしい風景が広がりました。本当に「持ってる」お二人です。
緊急事態宣言中ということもあり、アルコールの提供はありませんでしたが、いろんなノンアルコールドリンクが用意されていて、これが女性陣には大好評。もちろんmenuも新婦のデザインです。
お料理も、どれも美味しく盛り付けも素晴らしく、楽しく宴は続きます。
と、とらさんがなんだかそわそわしていますよ。
「もうちょっと味付けを濃くした方がよかったかなぁ」
「ライタあった方が良かったよねぇ」
ご存知の方も多いですが、とら屋食堂のビリヤニは比較的薄味です。通常はお皿の上に600g以上乗っかっていて、トッピングやライタ、アチャールなどと一緒にご自身の好みで食べ進めていただくようにしています。
今回は、ホテルの厨房で盛り付けし、配膳していただくということで、ご夫妻と相談して、ライタをつけるのは諦めました。
それでも、きっと美味しく召し上がっていただけるから、きっと上手に配膳していただけるから、と励ましていましたが、どうにもそわそわは止まりません。
本当にインターコンチネンタル東京ベイさんのプレートは素敵でしたからねー。
「ここにいきなりライスだけが来るんだよ」
ちゃんとトッピングもお渡ししてるから
「やっぱり場違いだよ」
新郎新婦がどうしても、ってリクエストしてくださったんだから
そうこう言っている間に、お色直しも終わり、ついにビリヤニが運ばれてきました。
なんということでしょう!
これはもはや、私たちが知っているビリヤニではありません。お、おしゃれ過ぎる…
司会の方からビリヤニのご説明があり、世界三大炊き込みご飯(ビリヤニ、パエリヤ、松茸ご飯)というキーワードもありました。わかりやすい。
その後、高砂に呼ばれ、皆様の前でご挨拶も。
「西荻のお父さん、お母さん」とご紹介いただき、恐縮することしきり。。。
いつものことですが、私一人でぜーんぶ喋ってしまったので、今回はとらさんにもひとことお願いしましたよ(^^)
宴が終わった後も、皆さんから「美味しかったです」「初めて食べました」「インドで食べたんです」などとお声をかけていただきました。
そう、新郎はタミルナード州から始まって、北から南までインドをまわった結果「やっぱり南インドが合う」と感じたそうで、その旅仲間の方々もいらっしゃっていました。
「営業が再開したら、お店にも行きますね」と声をかけてくださった方もいらっしゃいました。
2、2升のビリヤニは、60人以上のゲストにお出ししてもまだ余ります。
一緒に入れていた密閉容器に詰めていただき、新郎新婦のお土産になりました。
「ビリヤニディナーです!」という嬉しいメッセージをいただきました。お!さすが、ちゃんとライタが付いてます(^^)
このような機会は滅多にないので、最初で最後になるかもしれませんが、本当に素晴らしいイベントのお手伝いができて嬉しかったです。
お二人の未来が、美味しいもので満ち溢れますように。どうぞ、末長くお幸せに。