【掌編】願い

 闇にまかり出てとどまれず東へ、東へと足は歩いた。黎明に一人きり、透きとおる青みに包まれた。白い星をみた。

 散歩の折、花の枯れた姿も美しいとよく思う。しかし花瓶に挿した切り花は枯れずに腐る。いっそ盛りを見たらもう水も与えず、きれいに枯らしてしまおうか。
 いや、そこまで求めるか。ずっと美しくなければ許せないか。
 そんなことはない。たとえ腐ろうとも見切れず、引きずる思いを知られた気がした。家に飾った芍薬は、首からくずれ落ちて。

 夜は閉じ、朝は薔薇色に明けてゆく。
 雲が、間近に迫るほど鮮明に見えすぎるような、光の差す日がある。

 七夕には必ず、願い事をして下さいね。けなげに美しい唯一つを決めず、いくつも、いくつも矛盾するまで欲を書き、流して下さい。