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2019年春アニメ感想 暦物語&続・終物語

 この記事は、もともとは2019年7月1日に掲載予定だったものです。事情はこちら→ご無沙汰しておりました。

 『続・終物語』の話に入る前に、まず『暦物語』の感想を。

 これ、結局どこで配信されているかわからなくて、見られなかったやつだ。今回、ニコニコ生放送で初めて視聴することができて、ああ、こういう作品だったのか、と。
 『暦物語』は短編もの。15分の内容で、その中で必ずお話が1本終わるようになっている。お話はいつものように怪異譚だが、もっと日常に接地し、すぐにオチが付くような作りになっている。ジャンル的に「日常のミステリ」と呼ぶべき内容になっている。
→Wikipedia:日常の謎

 相変わらずの西尾維新節全開で、話が15分の枠内でサクサク進むので、かなり面白い。「日常のミステリ」なので、お話自体は単純だが、『化物語』らしい捻りがあちこち。
 気になると言えば、会話のテンポがいつも以上に早め。無駄話が多いのはいつも通りだが、いつも以上に情報量が多く感じられる。『物語』シリーズは毎回、止めたり戻したりして見るのだが、ニコニコ生放送だとそういうわけにもいかず。「ん? 今のは?」と思っても止められず、情報を見逃すことが多くなった。
(この辺り、私自身が老化して見る・読む速度が遅い、というのが大きいが)
 もう1つ気になるのは、名探偵・羽川翼に頼りすぎ。事件の半分くらいは羽川が解決、あるいはすべて解説してしまっている。すでに世界旅行で携帯電話の向こうにいる羽川が、阿良々木君の不完全な説明で解決してしまうのは見事な探偵ぶりだが。キャラクターとして万能すぎ。便利すぎるキャラクターというのはいかがなものだろう。

 絵については相変わらず良い。前後の連なりを大胆に無視して、グラビア風の絵が次々と出てくる『物語』スタイル。ドラマの流れを考えると不自然だけど、まあ『物語』なんで。それとは別として「うまいもんだなぁ」「美しいなぁ」とか思う。(思っている間に、話が飛んでいる。罠だ)
 ああいうふうにキャラクターを見せるために、お話を無視して画を作ってしまう。結局は「ヒロインをいかに美しく魅せるか」が映像作家の使命なので、こういう方法もありか、と見ている間は考えてしまう。

 後半戦は『続・終物語』。
 朝、洗面台の鏡の前に立っていると、鏡の向こう側の世界にうっかり入り込んでしまう阿良々木君。
 鏡の中のお話。ありきたりといえばありきたり。「緩い企画」といえばその通り。
 しかしそこは『物語』シリーズ。一筋縄ではいかない。いや、一筋の理屈を付けてくる。そもそも『化物語』という題材で、ややメルヘン色のある「鏡の中の世界」は水に油。それをどのように馴染ませるのか。いかに『化物語』らしい怪異譚のお話にするのか。
 鏡とは何か? というお話から入り、鏡の本質とは、左右反転させることではなく、その本質を炙り出すこと、ラーの鏡こそが鏡の本来の使い方である……という理屈をひねり出してくる。こういう語り口、そこに持っていくストーリーラインはやっぱり西尾維新節。うまいもんです。

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 鏡の世界……ということでキャラクター達が様々に変化している。ロリキャラになっている阿良々木火憐。大人になっている八九寺真宵。普通に可愛いキャラになって、キッチリしていない老倉育。蛇神様の千石撫子。怪異化して怪異っている神原駿河に羽川翼。
 『物語』シリーズとは、ヒロインを語ることが作品の本題であるので、やっぱりヒロインが強い。今回、様々な形に姿を変えたものの、その魅力が減じることはなく。「これもありだな」と思わせる力がある。
 しかしよくよく考えると、1本のエピソードにこれだけのヒロインがずらっと登場するのって異例のことじゃないかと……。

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 長く続いた『物語』シリーズはこれで一応の完結、幕を下ろす、ということになっている。だが私は終わるとは思っていない。またどこかで、なんでもない感じにひょっこり戻ってくるんじゃないか。そんな期待をしている。


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