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時々フィクション日記 お姉さん

「本当に転がりこんでいい?」
 お姉さんは、メッセージの文面からでもわかるくらい憔悴していた。
「もちろん」
 わたしは即座に打ち込んだ。それから一年と少し、わたしはお姉さんと一緒に暮らしている。

 初めてお姉さんと会ったのは同じ趣味サークルだった。歳は結構離れていて、時たま一緒に遊ぶ間柄になった。恋愛関係ではなく仲の良い友達の一人。
 当時から、わたしは亡くなった祖父の家に住んでいた。家は二世帯住宅を意識したつくりで、一階と二階それぞれに台所やシャワーがある。時たま冗談半分で友達たちに「困ったら転がりこんでよ」と言っていた。実際、一人で住むには少し広かった。お姉さんとも「友達と住むの楽しそうだね」なんてきゃっきゃしていた。
 それがお姉さんの事情でてんやわんやして、嘘から出たまことになったわけだ。
 お姉さんとは今も至極普通の友達だ。一緒に食卓を囲んで、どちらかが話したいとき話し相手になって、たまにボードゲームで遊ぶ。それだけ。自分でも不思議な関係性だと思うけど、居心地はとてもいい。
 最近、猫を飼おうか考えている。暇な時に保護猫さんのページを見て、どの子をお迎えしようかなって妄想中。変な家族がまた増える...…かもしれない


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