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文体の舵をとれ 練習問題⑶問2

 練習問題③問2 『半ページ~一ページの語りは七百文字に達するまで一文で執筆すること』 普段短文スタイルなので、長文だと新しい扉開けますね!!楽しい

練習問題四

練習問題四2

 幅三十センチほどの白い皿のうえで湯気を立てている牛肉のステーキに、フォークを突き刺すと、フォークは肉の繊維と繊維の間にずぶずぶと埋まっていき、透明な肉汁が突き刺された穴からしみだして、皿の上には透明な肉汁でいっぱいになり、ステーキの横に添えられたマッシュポテトに浸透し、フランスパンの切れ端で皿をぬぐうと、パンの白い内側が薄茶色に染まり、そのパンを頬張ると閉じた口、歯と歯の間から染みこんだ肉汁が吹き出し、こんなにかたくこわばった空気であってもステーキという食べ物はおいしいのだとルーシーはパンを飲み込み、次に肉を口に放り込むと、牛肉の脂が舌先でとけ、口いっぱいに広がっていき、ルーシーの目の前では父がルーシーの顔ほども大きく口を開け、肉片を凄まじい早さで放り込んでいき、くっちゃくっちゃと音を立てて肉を何度も噛み、時折たんを絡めたような音を立て、自身の大皿に肉の切れ端をぷっと飛ばし、父の食べる様を見ているだけで、ルーシーは食べているステーキを少しもどしたくなる気色悪さに襲われ、テーブルの斜め左に座っている母はご馳走を前にしても、いつもの芋がゆを前にしている時と全く変わらない憮然とした青い顔立ちで、マッシュポテトを何度かつつき、時折ゆっくり口を開け、動物園で草を食べる象のように、一定したペースで皿の上の食べ物を口に運んでいき、弟のダニーは母の横で椅子の上で体を何度もくねらせ、唇の周りはステーキソースでベタベタに汚し、時折サルのような声をあげ、注意しても耳に入らないのか騒ぎ続け、最終的に無表情の母に叩かれて、今度は大きな声を上げて泣くさまを見ていると、人間と動物をわける違いというのは一体何だろうか、などとルーシーは考えてしまう。


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