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替え玉はカウンターに100円玉で。

豚骨ラーメンを食べたいのに、食べれない日が3日間続いた。友人の夕飯を食べる約束をしていたり、飲み会があって気づけば終電直近になったりでうまくタイミングが合わなかったのだ。

そして、ついに予定がない日。豚骨ラーメンを食べたくなったら行くお店はたまがったと決めている。しかも、15時ごろの並んでいなそうな時間に行くのだ。スムーズに目的を遂行するプロの殺し屋のような自分を褒めたたえる。

電車に乗って横浜まで、ラーメンだけを食べに行く。定期券内だから成せる所業だ(ケチんぼ)。

お店の前に着くと、店内は満員。この時間なのに混んでるのか、まあ仕方ないと思いつつ鞄に手を突っ込みお財布を手探りしていると、店内から大学生くらいの男が出てきた。おっ、ちょうど席空いたかな、ラッキーと思った矢先、彼は券売機に小銭を入れ、目当ての品が記載されているボタンを探し始めた。彼の手が指揮者のように縦横無尽に動いている。地味に割り込まれた…?

豚骨ラーメンを食べるというのは、食事の時だけおいしければいいというものではない。遠足と同じで、食べに行く前から食べ終えて帰るところまでがセットなのだ。
しかも3日間燻っていた欲がその一連の流れの理想値を否応にも高める。だから、これは割り込みではないと思わなければいけない。
彼は店を出て、食券を買いそうな青年を見つける。しかし財布を探しているようなので、変に待つのも気を遣わせるし先に買ってしまおうと思ったのだ。
いやそんなわけがない。彼はこっちを一瞥もせず食券機に向かっていた。まあいい、そんなことは、美味しく豚骨ラーメンが食べられればいい。

しかし彼は1分程お目当ての商品のボタンを探し続け、挙句買った食券は「替え玉」だった。お釣りもなかったからぴったり100円持っていたはずだ。

いや、カウンターに100円玉置いて頼めよ!!!さすがにそう思った。わざわざ店を出て食券で替え玉を頼む意味はなんだ?
100円玉で替え玉をできるシステムを知らなかったなんて言わせない。そんな理由はずっとお城で過ごし続ける生活に嫌気がさして、意を決してお城を抜け出して城下町でご飯を食べ、代金を払わず店を出て店員に怒られるお姫様しか許されない。

しかも、替え玉は100円玉をカウンターに置いて頼むという過程が豚骨ラーメンを食べるという体験の満足度をより高めているのに!!!

彼の指揮、および食券選択がようやく終わり、店内へ戻った。ついに食券を買う。お財布を開くと、一万円札しかなかった。店員さんに両替してもらう。お札を手渡してきた手は少し濡れていた…。出鼻をくじかれまくっている。

店内は満員だが、以前友人と来た時はテーブル席があったことを思い出し、そちらに向かおうとすると、そっちは3人以上のお客様です!っと咎められた。もうこんな時間だ、お客さんも来ないだろうにいいだろ、立て続けのムッとする気持ちと計画がうまくいかない残念さで落ち込んで泣きそうだ。

やっと席が空き、豚骨ラーメンを食べる。
やっぱり美味しい。やっぱこれだねーだ。最高だ。
もちろん替え玉。

食べていると、外に続々と人が並んでいる。
この時間でも人が絶え間なくくるんだな。だからテーブルで食べさせてくれなかったんだなと店員さんにムッとしたことを反省。

食べ終わり間近、店員さんが僕のどんぶりの中を見てくる。そして、あと少しお待ちくださいと外の客に言う。
僕は最後まで豚骨ラーメンを堪能するタイプなので、残ったスープに胡麻を大量に入れたりして最後まで楽しむ。そんなことをしていると、あれ?こいつまだ出て行かないぞと、またどんぶりを覗き込まれる。もうちょっと上手く、気づかせないようにさりげなくできないものか。そんなあからさまにやるなやと思い先ほどの反省を撤回。

完食。帰路に着く。
完璧にプラン通りには行かなかったけど、まあ及第点だ。
実は替え玉、あんだけ語っておきながら食券でしちゃったし。

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