スピッツ「大宮サンセット」 正気じゃないぜ!
弾き語りによる、とっても静かな曲。心地いい。
「この街で俺以外、君のかわいさを知らない」
までは、ただのノロケ曲かと思うよね。
次の一文で、急転直下、暗雲が立ちこめる。
「今のところ俺以外 君のかわいさをしらない『はず』」
「はず」というたった2文字で、聞き手に「ん?」と思わせたまま、サビに突入していく。
不安をまとわせたサビは、切なさを最高潮に盛り上げ、聞き手に「パートナーの心が離れていくことをかすかに感じつつある『俺』」への憐憫のような感情を抱かせるよう導く。とても、きれいで、とても、つらい。
見事としか言いようがない。
直接的な言葉をほとんど使わず、聞き手の感情を創出させる言葉の力に圧倒されてしまう。
でも、なんで大宮なんだろう?関東地方で生活をしたことがない私には、大宮の位置づけがいまひとつピンとこない。知っているのは、東北地方への玄関口のような場所というか、新幹線が止まる場所ってことぐらい。まあ、聞き手一人一人が、それぞれの特別な場所をイメージしてこの曲を解釈すればいいよね。大宮じゃないと、ダメなのかな?
沈んでいく大きな太陽(サンセット、夕日)に「まだ、ここにいて」と呼びかけることで、彼女の心が消えないように願う。
「正気じゃないぜ」
というこの曲の歌詞の中では突出して投げやりにも思える表現を使うことで、悲痛な叫びであることが、より強まっていく。
とても、とても哀しい歌。
アルバム「色色衣」でひっそりと輝く曲。
2022年5月18日 トラジロウ
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