草鞋が鶏に、鶏がガチョウに

パブリックドメインとして公開されている『Заветные русские сказки』(А. Н. Афанасьев)に収録されている「Лисичка-сестричка и волк」の翻訳になります。
 原著はパブリックドメインですが、私が翻訳したものに関しては著作権を放棄していないので、無断転載・無断使用を固く禁じます。
 誤字脱字、誤訳などあるかと思いますが、楽しんでいただければ幸いです。

 値段を設定してありますが、購入せずに全て読むことができます。

『草鞋が鶏に、鶏がガチョウに』


 キツネは小道を歩いていました。すると、片方だけの草鞋を見つけました。
 次に小屋に近づいて男にお願いしました。
「ねえ、ダンナさん、アタイを泊めてくれないかい」
 男は言いました。
「狭くて、場所がないんだ」
「アタイの体はダンナより小さいでしょ。 私は長椅子に横になって、尻尾は下に垂らせばいいでしょ」
 男はキツネを泊めてあげることにしました。するとキツネは言いました。
「この片方だけの草鞋を、ダンナの鶏の所へ置いといてくれないかい」
 皆が寝静まってから、キツネは起きて、自分の草履を外へ投げ捨てました。
 朝早くに皆が起きると、キツネは自分の草履について尋ねました。すると男は言いました。
「おまえ、失くしちまったのか!」
「困りました。 草履の代わりに鶏をください」

 キツネは鶏を手に入れると、別の家へ行き、そこでも同じように、手に入れた鶏を、ガチョウを飼う男の所に放そうと考えていました。夜になるとキツネはこっそりと放した鶏を逃がし、翌朝、鶏の代わりにガチョウを貰いました。

 次の家へ行って、泊めてもらえるようにお願いをして、ガチョウを子羊の傍へ置いて、再びガチョウの代わりに子羊を騙し取って、また別の家へ向かいました。

 キツネはそこでも泊めてもらい、子羊を子牛の所へ置いてもらえるようにお願いしました。夜遅くキツネは子羊をこっそり逃がして、朝早くに子羊の代わりに子牛を求めました。

 鶏がガチョウに、それから子羊になり、最後に子牛になりました。

 キツネは子牛から綺麗に肉を取り出して、皮の中に藁を詰めて、道に置きました。
 そこへ、狼と熊がやって来て、キツネに言いました。
「こいつはすげぇ、ソリを盗んで、この牛に引っ張らせようや」
 それから、キツネたちはソリと首輪を盗んで、それを牛に着けて、ソリに座りました。 キツネは手綱を取って、叫びました。
「ハイヨー、藁の子牛! ソリは他人のだし、首輪はお前のじゃない、でも、止まらず走れ!」
 子牛はびくともしません。

 キツネはソリから飛び出し叫びました。
「馬鹿野郎め! そんなにそこが良いなら、そこにいなっ!」
 そう言って、キツネは去っていきました。

 狼と熊はソリと子牛が手に入って喜びました。早速、子牛の皮を裂いてみたものの、あるのは皮と藁のみ、二匹は落胆して、散り散りに帰りました。

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