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「馬券がヘタな人」と「馬券が上手い人」の考え方の違いとは?

私は決して馬券が上手なわけではありません。
今でこそNoteで「全頭評価」なるものを書くことができるようになりましたが、ここまで来るのに馬券の買い方や馬の評価の仕方をいろいろ試し、数々の失敗を繰り返してきました。

そんな中、競馬に関する情報発信をしていると、「これは私よりも馬券がヘタだろうな」と思うような人をチョコチョコ見かけるようになったのです

今回は、そんな「私よりも馬券がヘタだろうな」という人の考え方を1つ事例として紹介し、「馬券を買うけどなかなか当たらない」という人に何かしらヒントを提供できればと思います。


YouTube動画に寄せられた「?」のコメント

私はYouTubeで競馬に関する動画をいくつか出しているのですが、その中の1つに「レガレイラが日本ダービーを勝つ確率は50/50(フィフティー・フィフティー)」という内容の動画があります。

この動画はなかなかの反響があり、ダービー当日の朝に動画を出したところ、瞬く間に視聴回数が増えて、数時間で8,000回もの視聴回数を稼ぐことになりました。
動画への高評価も多数いただいたのですが、動画のコメント欄を見ていると、視聴者の思わぬ反応が。

レースは勝つか負けるか、なんだから、レガレイラだけでなく全馬が(勝つ確率は)50/50だろ?」というもの。
一瞬上げ足とりのようなコメントかと思ったのですが、1人からだけでなく複数の視聴者から同様のコメントが来たので、「これは一体どういうことだ?」と少しパニックになりました。

しかし、あとで冷静に考えてみたところ、まずこのコメントを寄せた視聴者は、そもそも動画をよく見ていないだろうということ(見ていれば50/50の意味はわかるはず)。
そして、もう1つは、「もしかして、本気で全馬の勝つ確率が50/50だと思っているのでは?」という疑念が浮かびあがったのです

全ての馬の勝つ確率が50/50という”間違い”

馬券の理屈を理解している人であれば、「全馬が50/50」という言い分が少なくとも理論上では明らかな間違い(あるいは勘違い)であることをよくご存じでしょう。
この間違いが分からない人は、厳しい言い方をすると、馬券がヘタな人と言われても仕方がないかもしれません

全馬の勝つ確率が50/50だとすると、どういうことが起こるのか?
例えば、18頭立てのレースだと、そのレースでは平均して1レースあたり9頭もの勝ち馬が出てしまうことになります。
まれに1着が同着となることもありますが、せいぜい2頭が同着というもの。9頭の馬が1着で同着になることなど、八百長があったとしてもほぼ起こりえないでしょう。

つまり、「勝つ確率が50/50」というのは、同じレースを2回走ることができたとして、1回は1着になるけど、もう1回は2着以下になるだろう、という確率をいうのです
例えば、1対1のマッチレースであれば、かろうじて2頭とも50/50と言えるかもしれませんが、それとて、厳密に言えば30/70、あるいは10/90という可能性もあります。
勝つ確率が高い馬、低い馬、様々いるからこそ大抵のレースでは1頭の馬だけが1着でゴールするわけです

言うまでもなく、私が「レガレイラの勝つ確率が50/50」と言った意味は、2回走って1回は勝てるだろうけど、もう1回は勝てないだろう、ということであって、出走する全馬に等しく勝つチャンスがあるということを言ったのではないのです。
もっと言えば、「全馬に等しく勝つチャンスがある」というのであれば、JRAは全馬の単勝オッズを等しくする必要があるでしょう。

確率論ではなく精神論で馬券を買う人

何が言いたいかというと、そういった確率論ではなく、精神論で「勝つか、負けるかだから、全ての馬が50/50」と本気で言っているとしたら、その人はきっと、どのレースも「半か、丁か」という感覚で馬券を買っているのかもしれない、ということです。

つまり、どの馬にどんな強みや弱みがあって、どんなレース展開になって、馬の調子がどうで、馬場がどんな状態で、どの騎手がどんな駆け引きをするのか、といった要素を全く考慮せずに、自分の直感や他人のおススメでヤマを張っているのが「全ての馬が50/50」と考える人の馬券の買い方です

馬券の仕組みと控除率

ここで、あらためて馬券の仕組みを見てみましょう。

  • 馬券の種類に応じて控除率が定められている(例:単勝は20%)

  • 馬券の売上げに控除率を掛けて算出された金額は、主催者(胴元)の取り分となる

  • 馬券の売上げから主催者の取り分を除いた金額が馬券的中者に払い戻される(例:単勝の場合は売上げの80%(=払戻率)が払い戻される)

  • 馬券的中者に払戻金を分配する割合(オッズ)は、その的中者たちが賭けた金額と的中者の数(購入点数)により決まる

  • 各馬券的中者には、的中馬券の購入金額(賭け金)にオッズを掛けて算出された金額が払い戻される(例:単勝オッズ5倍の馬に100円を賭けた場合、100円×5=500円が払い戻される)

  • 主催者の取り分は、馬券を外した人が負担する(馬券を外すと主催者に賭け金を没収される)

ここで大事なポイントは、1つのレースで必ず2割~3割の賭け金が主催者(JRAなど)に没収されるということ。言い換えれば、外れ馬券が毎レース2割~3割程度は発生するということです。
よく考えてみれば当たり前のことなのですが、馬券を買う人の中に負けることを想定して買う人は少ないでしょうから、「いちいちそんなことを気にしている場合じゃない」という人が大半でしょう。

しかし、馬券が上手い人は、こう思っているはずです。
「外れ馬券をつかまされるくらいなら、初めからそのレースでは馬券を買わない」と。
おそらくですが、私の推察では、馬券が上手い人は「馬券は一定の割合で外れるもの」という前提のもとで馬券を買うレースを選択し、そして馬券の種類、購入金額、賭ける馬を決めているだろうと考えています。

一方、馬券がヘタな人は、「どの馬も勝つ確率は50/50なんだから」と、そして、自分が買った馬が50%の確率で(あわよくばそれ以上の確率で)勝つと信じて馬券を買うのでしょう。
その結果、馬券が外れると「今日は外れの方(50%)だったか」と、あたかもコインの表と裏で勝敗を決めているような言い訳をするのです、きっと。

競馬はサイコロゲームとは違う

例えば、正十二面体を思い浮かべてください。

正十二面体

この正十二面体の各面に1番から12番までの数字を書き、これをサイコロのように振って一番上の面に出た番号が勝ちというゲームをします。
あなたは、どの番号が勝つと賭けますか?

「そんなもの"運"でしかないから、どの番号が勝つかなんてわからない!」と怒り出す人もいるかもしれません。
その怒りは正しいと思います。
なぜなら、このサイコロを振ってどの番号が出るかはまさしく"運"であり、どの番号が勝つかを研究したり、分析したりする余地がないからです。

この正十二面体のゲームでは、各番号の勝つ確率は全て等しくなり、全ての番号が1/12=0.08…、つまり約8%の確率で勝てるということになります。ですから、同じ番号に賭け続ければ、100回中8回は勝てるだろうということです。

では、こちらの物体についてはどうでしょう?


謎のトゲトゲの物体

きたない自作の絵で恐縮ですが、図のようなトゲトゲの物体の各トゲに番号を書き、先ほどの正十二面体と同じようにしてゲームをする場合、あなたはどの番号が勝つと賭けますか?

「これも"運"だろ!」と怒る人がいるかもしれませんが、「いや、待てよ。少し研究してみよう。」と思う人が出てくるかもしれません。
私は、競馬とはこんなゲーム(不規則なトゲトゲのある物体をサイコロのように振るゲーム)なのではないか、と思うのです
このゲームを正十二面体のゲームと同じように考えてしまう人は、おそらく馬券もヘタでしょう。そして、自分ではろくな研究をせずに、他人の予想や研究を鼻で笑いながら、馬券が外れれば「今日は運がなかった」の一言で片づける人なのです。

最初の話に戻りますが、もし競馬のレースで各馬に等しく勝つチャンスがあるというのであれば、12頭立てのレースの場合、正十二面体を振って勝ちを決めるゲームと同じですから、やはり各馬の勝つ確率は約8%になります。決して50%ではありません。

競馬は、どの馬が勝つ確率が高いかを研究、分析してより確率が高い馬に賭けるゲームです。少なくとも、私はそう考えています。
ですから、競馬が"サイコロゲーム"でない以上、各馬の勝つ確率を自分なりに割り出す作業は欠かせないのであって、その割り出しが困難なレースや、割り出せたとしても外れ馬券やトリガミ(馬券が当たっても収支上はマイナスになること)をつかまされそうなレースは、飛びつかないのが一番の得策です
馬券が上手い人は、この確率の割り出しとレースや馬の取捨選択が上手い人だと言えるでしょう。逆もまた然り、です。

冒頭で述べたYouTube動画で、「レガレイラがダービーを勝つ確率は50%」と言ったのは、私なりに研究して割り出した確率が50%ということであって、結果的に今回は勝てなかった(5着)ものの、もう1回レースができるならレガレイラが勝つかもしれない、というものです。
しかし、それを証明する術もなければ、今更それを言っても「負け惜しみ」ととらえられてしようがないので、これ以上は何も言いません。

馬券が上手い人の定義=回収率100%越えの人

今更ですが、「馬券が上手い人」の定義をまだお示ししていませんでした。

それはズバリ、生涯(あるいは直近)回収率が100%を超えている人

【回収率(%)=払戻金額÷購入金額×100】

つまり、勝ったり負けたりがあるにしても、トータルで見ると馬券の収支がプラスの人のことです。

この人たちを「馬券で儲かっている」ととらえるかどうかは、費やしている金額と回収率の高さによるでしょう。
もっと言えば、馬券が上手い人でも「儲かっている」とまでは言えない人もいるだろうと思っています。ですが、少なくとも馬券がヘタな人と比べれば、随分と楽しい競馬生活を送っている人たちだと言えます。

回収率の向上につながる「期待値」の考え方

回収率を上がるためには、もちろん馬券の種類や賭ける金額も大事ですが、何よりも1着~3着までに入る馬を高い確率で当てる必要があります
では、どの程度までその確率(的中率)を上げる必要があるのか?

もちろん、的中率が100%に近づけば近づくほど回収率が上がるのは間違いないのですが、再三申し上げているように、馬券は一定の確率で外れるものなのです。どんなに研究を重ねても、的中率を上げることには限界があります

そこで重要なのが、期待値という考え方

期待値とは基本的には数学用語なのですが、ここでは分かりやすく別の言い方で説明します。

競馬における期待値というのは、要するに「馬券のオッズと実際にその馬券が当たる確率のギャップ」を言います。
このギャップが大きければ大きいほど、期待値が大きい、という言い方になります。

分かりやすく例を挙げて説明します。
例えば、Aという馬が1番人気で、Bという馬が2番人気のレースがあったとします。
あなたは、Aの単勝を買うか、Bの単勝を買うか迷っています。

Aの単勝オッズ 2倍(1番人気)
Bの単勝オッズ 5倍(2番人気)

しかし、あなたの見立てでは、AよりもBのほうが勝つ確率が高いと考えています。

Aの勝つ確率(見立て) 40%
Bの勝つ確率(見立て) 60%

まずここで、単勝オッズと見立ての勝つ確率の間にギャップがあります。
つまり、本来は勝つ確率が高ければ高いほどその馬のオッズは低くなるべき(人気が高くなるべき)なのですが、あなたの見立てではその逆になっている(ギャップがある)のです
このギャップを競馬の世界では「期待値」として考えるわけです。

では、もしあなたの見立てが正しかったとして、AかBかいずれかの単勝馬券を100円だけ買うと確率論的にどういう結果(期待値)になるか

【Aに賭ける場合】
10回中4回はAが勝つ→合計1000円の馬券を買って、400円×2(倍)=800円の払戻金が得られる→回収率80%

【Bに賭ける場合】
10回中6回はBが勝つ→合計1000円の単勝馬券を買って、600円×5(倍)=3,000円の払戻金が得られる→回収率300%

そもそも同じレースに何回も賭けることは現実的に不可能なので、あくまで確率論で言うと、ということになりますが、この場合は圧倒的にBに賭けるほうが期待値が高いということになります。

ここまではお分かりいただけると思いますが、もし、あなたの見立てが間違っていた場合、すなわち、勝つ確率が人気どおりだった場合はどうなるか見てみます。

Aの勝つ確率(実際) 60%
Bの勝つ確率(実際) 40%

同じように100円の単勝馬券を買ったときの期待値は、以下のようになります。

【Aに賭ける場合】
10回中6回はAが勝つ→合計1000円の馬券を買って、600円×2(倍)=1,200円の払戻金が得られる→回収率120%

【Bに賭ける場合】
10回中4回はBが勝つ→合計1000円の単勝馬券を買って、400円×5(倍)=2,000円の払戻金が得られる→回収率200%

さあ、どうでしょう。
Bの回収率は依然として200%という高い期待値になっていますが、Aの回収率も120%となり、100%を超える期待値となっています。
こうなってくると、勝つ確率が高いAの単勝馬券を買いたくなってしまいますが、果たしてそのほうが得なのでしょうか?

何が言いたいかというと、期待値を考えた場合、まず見立ての勝つ確率の正確性と精度(=ブレの少なさ)を上げることが重要だということ。これらが低ければ、例え期待値を意識して馬券を買ったとしても、全く期待しない結果になるわけです。

そして、その上で、オッズと見立ての勝つ確率のギャップ(期待値)が大きい馬やレースを選んで買うことが回収率の向上につながるということ。つまり、的中率を上げられなかったとしても、期待値の高い馬やレースを選ぶことで、結果的に回収率が上がることになるわけです。

私が自身のNoteで毎週アップしている「JRA重賞 全頭評価」では、見立ての勝つ確率が高い馬から順にS評価~C評価まで順位付けして公開しています。
この評価と単勝オッズに大きなギャップがある場合は、期待値が高く、これらを選んで馬券に組み込むことで回収率向上につながるかもしれませんね。

最後に

繰り返しになりますが、競馬は一定程度に負ける可能性があります。
これは、ギャンブルに共通の特徴で、言ってみれば、宝くじも同様です。宝くじなんかは、控除率(主催者の取り分)が約50%もあるので、競馬よりもよっぽど難しいギャンブルです。
逆に言えば、"誰もが儲かるギャンブル"などありません。儲けたいのであれば、ギャンブルをやめるか、その道のプロになるしかないでしょう。

趣味程度に競馬を楽しみたい人には、”儲からないけど面白いゲーム”と割り切って、できるだけ損をせずに楽しむ方法を考えてほしいと思っています。
そういう点でいうと、私は、以下の記事で「ワイドBOX」という買い方を初心者の方にはおススメしていますので、ぜひご一読ください。

ギャンブルにハマってる人で儲かっている人が身の回りにいますか?
「万馬券が当たった!」といって喜んでいる人はいるかもしれませんが、その人が生涯トータルで儲けてるかどうか。おそらく、約80%の確率で生涯収支はマイナスでしょう。それが競馬の仕組みなのです。

参考文献・サイト






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