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東京より君へ

やあ、そろそろ暑くなってきたね。東京の町に出てきました、相変わらずわけの分からないこと言ってます、って歌を何度も聞いていたのがウソみたいに東京に馴染んでいるよ。君はずっと東京が好きだ、文化の中心地だから、作家のイベントとアニメグッズの宝庫だと憧れていたね。でも一つ、か二つくらい君に残念なお知らせがある。作家にはなれなかった。君は作家になっていた僕を夢見ていた。東京が、自分の人生を変えてくれると信じて、いつかきっと明るい方へ、明るい方へたどり着くんだと最後の航海に乗り出した。

でも、夢は、かなわなかったよ。

君が望んだものは、3つかなわなかった。
一つ。世界で一番の理解者が亡くなったこと。
二つ。人生で一番好きになった女性を傷つけ、もう会えないこと。
三つ。聖職者になれなかったこと。
そして、4つ目は、作家になれなかったことだ。

理解者と生きる未来は失われた。
大切にしたかった女性はいなくなった。
罪深さから、聖職者にはなれなかった。
そして、実力不足で作家デビューできなかった。君はいま、東京がどんなに美しいかって、
思い焦がれているんだろう。僕は今、何とか生きているよ。言えるのはそれだけ。何とか、生きている。

君の夢に付き合って後悔しているところだよ。
君が好きだった作家もまた、こうやって橋の下の世界をよくよく覗いたのかなって、そう思ったりするよ。

君の選択が間違っていたのかもしれない。
ぼくはまだ、性懲りもなく何らかのくだらない
文章を書いているよ。友達の子どもが生まれたって、聴いた時、素直に喜べなかった自分に最低な気分だって思ったよ。これが今の僕だよ。
何とか生きてるよ。君は元気かい。

27歳は楽しいかい。
37歳は、楽しくはないよ。
君なら、27歳も楽しくないって速攻で
否定するだろうけど。もうちょっと生きてみるよ。誰かの幸せから隔離されたような場所で、自分の幸せなど分からなくて、誰かを傷つけたことだけを思い出して、早くしにたいだけの僕だけど、まだ君の夢を追ってみるよ。もう少しだけ。まだしなないから、安心しなよ。まあ、27歳の君なら、僕と一緒で、いつでもしにたいし、いつかしねるからラッキー、ハッピーだって言うだろうけど。しねない世界に産まれなくて良かった。それが僕と君の共通認識のはずだから。

じゃあ、そろそろ行かなきゃ。
バイトだから、また後で。こんな泣き言はもう自分の中だけで納めておくよ。またね、27歳の君。生きろ、なんて言う人間を信じるなよ、
人を傷つけることに最後まで自覚的であれよ。

アディオス。←これ、懐かしいね。

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