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大学入学共通テスト 情報Ⅰ 試作問題 第2問解説【解法テクニック】 (大学入試センター 2022/11/9発表)

はじめに

大学入学共通テスト「情報Ⅰ」の試作問題のほとんどは、「日常生活」の場面を想定して出題されています。

私が尊敬している、東京都立神代高校 情報科 稲垣俊介先生は、高校生が自分事として捉えて学ぶ「情報Ⅰ」の授業実践を行なって情報発信しています。

今回の試作問題を見ると、暗記(知識)だけで解ける問題はあまりなく、「自分事として」捉え、日ごろから学んでいく必要があると感じています。

逆に言うと、生徒に教えさせて頂く側の立場としても「自分事」として説明していかなくてはいけないと感じました。
この動画解説の最後の問題(第2問B 問3)は、自分事として考えて解説しました。
お恥ずかしいですが、情報教科を好きになってほしいという想いで試行錯誤しながら動画制作していますので、温かい目で見て頂けると幸いです。

書籍出版します!


テクニック解説動画(第2問)


問題のダウンロード

問題の出典:大学入試センター


動画制作


文字おこし

大学入学共通テスト 情報Ⅰ 試作問題について、今回は第2問の解説を行っていきます。

第2問のAは二次元コードに関する問題になります。
二次元コードは、QRコードや二次元バーコードと呼んだりします。

QRコードに関する事前の知識はあまり必要なく、文脈から解釈できる問題が大半です。以前の授業動画でQRコードの概要について説明していますので、まずは数分そちらの動画をご覧ください。

ICカードやスマートフォンが普及したことにより,支払い方法は変化してきています。内蔵ICと電波で支払いのやり取りをする交通系電子マネー,バーコードを読み取り支払う決済サービスなどが浸透してきています。

バーコードと言えば、このような一次元バーコードを想像する方もいると思います。
バーとスペースの組合せにより、数字や文字などを機械が読み取れる形で表現したものです。一般的なものは、JANコード(ジャンコード)と呼ばれる13桁もしくは8桁の数字が記載されています。

2次元バーコードは、水平方向と垂直方向にデータを持っており、2方向に情報が表示されるため二次元バーコードと呼ばれます。
Quick Responseを略して、QRコードという名称で有名になっています。

QRコード®は、デンソーウェーブが1994年に開発した2次元コードのコードです。親会社のデンソーはトヨタグループに属していて、自動車関連製品などを作っている会社になります。
QRコードが開発される以前は、商品管理に必要な情報が多すぎて1つの1次元バーコードでは足りずに、バーコードを10個ほど並べてスキャンしていました。
それは、作業効率が悪かったため、多くの情報量を保持することができる次世代のバーコードを開発したとされています。
QRコードがここまで広まった理由として、ライセンスフリーということがあります。
通常は、このようなは発明を、他の人が使用する場合、許可を得たりお金を払ったりする必要がありますが、ライセンスフリーは第三者の自由な再利用を許諾したもののことになります。

【参考サイト】


QRコードの特徴について
1次元バーコードとQRコードを比較していきます。

まずは、多くの情報を持つことができるということがあります。
一次元バーコードは13桁もしくは8桁の数字をあらわせますが、QRコードは最大で7089桁もの数字の情報を表すことができます。また、英数字や漢字などの情報も持つことが可能で、英数字なら最大で4296文字、漢字なら最大で1817文字の情報を持つことができます。
QRコードの最小単位は、白または黒のセルになります。
この黒と白の組み合わせで情報を保持しています。以前0と1で表す2進法について説明しましたが、これもコンピュータ上では白を0、黒を1として扱い、その組み合わせによって様々な情報を表現できます。
QRコードはいくつかのバージョンが存在しており、そのセルの細かさによって持てる情報量の上限が変わってきます。
QRコードのバージョン(種類)は、1から40まで設定されており、それぞれのバージョン毎にセル構成(セル数)が決められています。


次に復元機能があります。QRコードが何らかの理由で汚れたりした場合でも、QRコードの中に復元用のコードがあるために、一部のデータが読み取れなくても、復元用コードから欠損したデータを知ることができます。この誤り訂正レベルは何段階かあり最大で30%までの欠損に対して情報の復元ができます。
ただし、3つある大きな四角の1つでも隠れると読取りができないということは覚えておきましょう。

次に、読取り方向についてです。
一次元バーコードは、通常はバーコードと同じ方向にスキャナを合わせる必要があるのに対し、QRコードは360度どの方向からも読取りが可能になります。

このような、様々なメリットがあることから
QRコードは、電子決済だけでなく、チケットなど様々な用途で普及が広がっていっています。

第2問A 問1

それでは空欄アから確認していきます。空欄アは二次元コードが広まった理由について問われています。
先程の概要解説で説明したように、第三者の自由な再利用を許諾しているいるので、正解としては、③の「特許権を保有していても権利を行使しないとしていたから」になります。

知っていればすぐに解ける問題ですが、知らなくても消去法で絞り込むことができます。

0番の「そこで,使用料を高くすることでこの二次元コードの価値が上がったから」
については、使用料を高くすることで、使う人が少なくなってしまうので不正解になります。

1番の「しかし,その後特許権を放棄して誰でも特許が取れるようにしたから」については、特許権自体は放棄はしているわけではなく、自由に無料で利用していいよ!と許諾しているので不正解になります。また、他の人が特許をとれるようにしてしまうと、その人が独占してしまう可能性もあるので不正解といえます。

2番の「特許権を行使して管理を厳密にしたから」については、管理を厳密にしてしまうと、手間がかかり使う人が少なくなってしまうので不正解になります。

よって、3番に絞り込むことができます。

第2問A 問2

次は空欄イについて確認していきます。
隅に3つある四角形が円形でもいいのではないかという話で、正方形の方が都合が良い理由について問われています。
解像度についての基本的な知識が問われていて知らないと若干難易度が高いですが、消去法で解ける問題でもあります。

⓪番の「円形では,(d)~(f)の角度によって黒白の比が異なってしまい,正しく読み取れなくなる可能性があるから。」
については、円形でも、正方形でも角度によって黒白の比は変わらないので不正解です。

1番の「円形だと上下左右がないので,二次元コードの向きが分からなくなるから。」については、1つの印というわけではなく、隅にある3つの印の位置で上下左右が分かるので、円形でも上下左右の向きは分かるので、不正解になります。

2番の「プリンタやディスプレイの解像度によっては,正方形の目印に比べて
 正しく読み取れる小さな円形の目印を作ることが難しくなるから。」
については、低解像度だとこのようにギザギザになって円形を作るのが難しくなる可能性があるので、正解になります。

3番の「円形では目印が斜めに傾いていても,それを認識することができないため正しく読み取ることができないから。」
については、円形でも斜めに傾いても認識することができるので不正解になります。

第2問A 問3

次に問3を解説していきます。
問3は二次元コード生成ツールの話で、私自身よく使っています。
空欄ウ・エは生成した二次元コードを見て読み取れることを選ぶ問題で難易度は低めです。

順番に見ていきましょう。

0番の「同じ復元能力であれば,文字数に比例してセルの数が多くなり,同じセルの大きさであれば二次元コードも大きくなる。」については、以下のパターンで20文字と30文字を比較すると文字数が多くなっているのに二次元コードは同じ大きさなので不正解となります。

1番の「復元能力ごとに,文字数の一定の範囲でセルの縦と横の数が決まり,文字数が多くなるほど段階的にセルの縦と横の数は多くなる」については、復元能力毎に見ると、文字数が一定の範囲を超えると段階的にセル数が大きくなっているので正解になります。

2番の「文字数とセルの数には関係が見られない」については、文字数が一定数を超えるとセル数も段階的に上がる関係があるので不正解になります。

3番の「ある文字列を復元能力30%で作成した二次元コードは,同じ文字列を復元能力7%で作成したものに比べ 約4倍のセルの数がある。」については、4倍まではいかず2倍程度なので不正解になります。

4番の「復元能力30%にするためには,復元能力7%と比べより多くの情報が必要となる。」については、いずれの文字数を比べても 30%の方がセル数が多いので正解になります。

5番の「同じ文字数であれば復元能力を変えてもセルの数は変わらない。」については、同じ文字数でも復元能力が高いほどセル数が多い傾向があるので不正解になります。

第2問A 問4

次の問4は二次元コードの当てはめ問題になります。

表2よりⅠ・Ⅱ・Ⅲの順で情報量が多くなっているのでその分二次元コードのセル数が多くなると予想できます。
パズル形式でわかるものから当てはめれば、正解できる問題になります。

空欄オは、情報量的に隣の29x29より小さいはずなので、最もセル数の少ない②の25×25が当てはまります。

空欄クは情報量的に最も多くの情報を保持できるはずなので、最も多くのセル数がある①の49×49が当てはまります。

空欄キは、33より大きく49より小さいものになるので、③の37×37が当てはまります。

空欄カは、残った選択肢を当てはめて⓪の33×33になります。

第2問B 問1

第2問のBは待ち時間・行列のシミュレーション問題になります。
余談ですが、共通テスト情報は2日目最後の17時から行われる予定なので、この(食べ物である)クレープも問題が出るとお腹が空いて集中力が途切れてしまう人もいるかもしれません。
おわったらご褒美にクレープ買って帰ろうと最後に気合いを入れなおしましょう!

それでは、空欄ケの部分を解説していきます。
この生成させた乱数と到着間隔の関係性をどのように導くかが重要になります。

生成させた乱数は、表1の累積相対度数と対応しています。
たとえば、2人目の0.31は表1の累積相対度数の0.26~0.42の間に位置しています。
その下の行の階級値の2分が到着間隔となります。

3人目の0.66の場合は0.64~0.82の間に位置しますので
その下の行の階級値の4分が到着間隔になります。

この導き方に気づけば、10人目の0.95については0.94と0.96の間に位置するので、8分が到着間隔ということが分かります。

よって空欄ケは、8になります。

次に空欄コについて確認していきます。
空欄コは図1のシミュレーション結果の表を自分自身で完成させ、最も待ち人数が多いときの人数を導く必要があります。

1人目は行列なしで、クレープの注文から商品を出すまで4分待てばクレープが手に入ります。
2人目は、1人目から2分後に到着しますが、1人目の対応がまだ終わっていないので1人目の後に並びます。1人目の対応がおわるのが4分でそこから2人目の対応がはじまり、対応時間4分待ちます。
3人目は2人目が到着してから4分後に到着しますが、2人目が未だ対応中なので、行列に並び8分目から3人目の対応がはじまります。
4人目は3人目が到着してから2分後に到着します。
5人目の到着間隔は0分なので4人目と同時に到着します。
つまり、3人目対応中の時に4人目、5人目が行列を作っているイメージになります。
この待ち人数が最も多い人数を求めるにはこの表を完成させる必要があります。
6人目は例として示されているので、
7人目から描いていきます。7人目は到着間隔3分なので6人目が到着してから、3分後になります。7人目の対応がはじまるのは6人目の対応が終わる24分から4分間になります。

8人目は7人目の到着から2分後から行列に並び前の人の対応が終わるのを待ちます。
9人目は、8人目到着から3分後から行列に並び前の人の対応が終わるのを待ちます。
10人目は先ほどの空欄ケより8分後になります。到着が遅いので行列は少なくなっていることが縦に並ぶ濃い黒の数より分かります。

これで空欄コを解くネタはそろいました。
縦に一番多く濃い四角の待ち時間が並んでいるのは、19分から20分の4つになるので、空欄コは4になります。

空欄サシは待ち時間が最も長い人の時間になるので、9人目の濃い四角が最も多く並んでいる四角の数を数えると13マスになります。
この部分が該当し1マス1分なので、サシは 13ということが分かります。

第2問B 問2

問2は来客人数毎に、最大待ち人数と回数の関係性のシミュレーション結果を比較したものになります。
読み取れないことを述べている選択肢を選ぶ問題ですが、図が読み取れれば容易に解ける問題でもあります。

選択肢を順番に確認していきます。

0番の「来客人数が多くなるほど,最大待ち人数が多くなる傾向がある。」については、各来客人数に対する最大待ち人数をみると、来客人数10人の時は最大6人、来客人数20人の時は最大10人、来客人数30人では最大13人、来客人数40人では最大18人と多くなる傾向があるので、間違った選択肢ではありません。

1番の「最大待ち人数の分布は,来客人数の半数以下に収まっている。」については、来客人数10人の時は、最大待ち人数は6人で、 来客人数の半分以下ではありません。つまり、誤った選択肢なので正解になります。


2番の「最大待ち人数は,来客人数の1/4前後の人数の頻度が高くなっている。」については10人の場合は2~3人(前後)の人数帯、20人の場合は5人前後の人数帯、30人の場合は、7人前後に人数帯、40人の場合は10人前後の人数帯の最大待ち人数が多いので間違った選択肢ではありません。


3番の「来客人数が多くなるほど,最大待ち人数の散らばりが大きくなっている。」については、青い左右の矢印の幅が来客人数が多くなる程広がっているので、最大待ち人数の散らばりが大きくなっているといえますので、間違った選択肢ではありません。

第2問B 問3

問3は、対応時間を4分から3分に短縮した時に、図2の来客人数40人のシミュレーション結果がどのように変化するかをシミュレーションした結果が問われています。

時間があれば、図1の表を3分に短縮して最大行列がどのようになるかシミュレーションして予測できますが、共通テストの制限時間に間に合わない可能性が高いです。


少し話は変わりますが、
昨日仕事で外に出ているときに、「家の牛乳が無くなったから帰りにスーパで牛乳買ってきて」と奥さんからLINEが届きました。


仮に「嫌だ!忙しい」と返信すると、家庭に大変なことが起こる、
もしかしたら家に入れてもらえないかもしれません。


だから、「喜んで!」と返信して牛乳を買って帰ることにしました。
これが家庭を円満に保つコツだと思っていますが 皆さんはどう思いますか?

スーパーに到着し、牛乳を買うためにレジに行くと、なんと9人もレジに並んでいます。
レジ係は1名です。並んでいると私の後にも2名きました。




その時店内放送で、「2番レジ開放お願いします」とアナウンスが流れ、レジ係が2名になりました。2名なので、倍速になります。


私の後にもレジ待ちの客が並びましたが、レジのスピードが上がったことで、私がレジを済ませる頃には行列は5名くらいまで減っていました。
皆さんもこんな経験がある方もいると思います。
つまりこの問題も、対応時間を早めることで最大待ち人数が減るのではないかと日常生活から予想ができます。


グラフに置き換えると、10人前後が最も大きい山が、最大待ち人数が減るので左に移動するはずと予想が付きます。
そうすると、最大待ち人数が減っている⓪番が該当することが分かります。
他の選択を念のため確認すると、1番はグラフ自体の形があまり変わってないので除外します。2番は最大待ち人数が増えてしまっているので、除外します。3番は今まで通り10人が最も多く全体的に減ってないので除外します。

【待ち行列シミュレーターが提供されています!】

以前コラボさせて頂いたGIGAchの安藤昇先生がこの待ち行列問題のシミュレーターをスプレッドシートで提供しています。
実際に時間を短縮するとどうなるかなど、動かしてみると理解がかなり深まると思いますので、以下動画の概要欄をご参照ください。


入試に向けて

情報教科を「入試の為」に勉強すると思っている方も多いと思いますが、この共通テスト試作問題のほとんどは、日常的な場面の問題解決がテーマとしてあげられています。
私が奥さんから牛乳を頼まれた時のように、情報教科で習う内容を「自分事」に置き換えて、是非日常生活の問題解決に役に立ててもらえると嬉しいです。

私の動画も、問題解決をテーマに今後も情報発信していきます。

第2問の解説は以上になります。最後までご視聴ありがとうございました。



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