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浪人と忍者のはなし 1
忍者は隠れて仕事をするのが得意なので、いつもこそこそした作業をやれといわれます。
侍や武将などは、戦争で功績を挙げるのが大切ですが、忍者はそういう目立つことはしませんでした。大体、人目につかないところで、内密に何かをやらされます。
ある忍者が、主君から、敵の武将を始末するように命令されました。敵の武将は、となりの城にいて、その城下町には10万人が住んでいます。
10万人は皆銃をもって、市内を警備しているので、とても侵入できそうにないな、と忍者は考えました。
忍者は主君に聞きました。
「となりの城の武将は、10万人の兵隊を持っています。わたしは、10万人の兵隊を全部排除しようとおもいます」
主君は聞きました。
「それはすばらしい。どのような手段で、10万人の兵隊を排除するのか」
ところが、忍者は何も説明せず、ただお金をよこせといいました。主君は、仕方ないので忍者にお金を渡しました。
忍者は大量の金銀を荷車に乗せて、となりの城下町に向かいました。すると、山の峠で、3人の男に囲まれました。
男たちは、忍者に言いました。
「その荷車に乗せているものを、全部わたしてもらおう」
忍者は、荷車を横に停めて、立ちはだかる男たちに言いました。
「わたしは、いま重要な仕事をやっている途中です。あまり時間がないので、できれば他をあたってください」
すると、男たちはいきりたって刀を取り出しました。そして忍者に言いました。
「話にならん。おい、殺すぞ」
3人の男が刀を振り上げて襲いかかってきたので、忍者は腰につけていたけん銃を抜いて、真ん中のひとりを撃ち殺しました。それをみた残りのふたりは、びっくりして固まったので、忍者はふたりも撃ち殺しました。
忍者は射撃の達人なので、弾はすべて男たちの眼玉に命中していました。
「これから仕事だというのに、ムダな作業が増えた」
忍者はそうやって愚痴をいいながら、3人の屍体をひきずって、道の横のくさむらに埋めました。
忍者が金銀を乗せた荷車を引き始めたところで、10人程の小さな子供たちが立ちはだかりました。
この子供たちが口々に言います。
「お父さんがきょうの晩御飯を買うためにこの峠にきたんですが、弁当を渡すのを忘れました。わたしたちのお父さんを見かけませんでしたか」
忍者は、これは、さっき殺した3人の追剥の子供たちだな、と思いましたが、面倒なことになるので、ただ、さあ、知りません、とだけ答えて立ち去りました。
山を下りて、忍者は敵の武将の城下町にたどりつきました。城下町は高い壁に囲まれていて、壁の隙間や上に、たくさんの兵隊が立っています。
兵隊たちは槍や鉄砲を持っていて、あたりを監視しています。とても、忍び込めるようなスキはありませんでした。
忍者は、城下町を守る大きな門の前にやってきました。
門は、見上げるような高さで、その下には100人以上の兵隊が立っています。
忍者は、すぐに呼び止められました。
門番をやっている兵隊が言いました。
「現在、この城への出入りは禁じられている」
「ちょっと用件があるんですが、だめですか」
「だめだ。おまえは、何者だ」
忍者は、身分証を見せました。そこには、偽の肩書と名前が書いてあります。
「はい。わたくしは、月額サブスクリプション制の、拳銃と毒の弾丸サービスを提供しています」
そういうと忍者は、ふところから拳銃と銃弾クリップを出して、兵隊に見せました。
兵隊たちは、ざわざわと興奮して駆け寄りました。
「これは珍しい、拳銃だ」
「この銃弾は、普通のものと何が違うのか」
兵隊たちは、忍者の差し出した武器に夢中です。
忍者は、これは、案外簡単に、城下町に入れるかもしれないな、と思いました。
ところがそのとき、モゴーという魚介の笛の音が鳴り、兵隊たちをかきわけるように男が出てきました。とてつもなく背の高い男で、周りの兵隊たちはこの背の高い男に道を開けました。
この男は、城下町の警備を担当する隊長でした。
隊長は、そのあたりの愚かな兵隊とは違い、経験があり、また非常に賢い軍人です。忍者が何をしようとしているかも、おそらくわかっているに違いありません。
隊長は言いました。
「がやがやと騒ぐんじゃない。持ち場に戻れ」
兵隊たちは散っていきました。隊長は、忍者に言いました。
「この城下町は、となりの敵軍から狙われている。だから、部外者を入れるわけにはいかない。立ち去れ」
忍者は、この男がいてはここはだめだなあ、と判断しました。
忍者は言いました。
「さようですか。残念ですが、立ち去りましょう」
隊長は言いました。
「マテ。おまえはどこから来た。どこの者だ」
忍者は言いました。
「はい。わたくしは、月額サブスクリプション制の、拳銃と毒の弾丸サービスを提供しています。国友機械工業の営業、羽村です。優れた拳銃と毒の弾丸を、第一線の軍人の皆さまに提供するためにこうして旅をしております」
「そうかそうか。それは残念だが、今、城下町に入れるわけにはいかない」
「さようですか。それでは、残念ですが、今日は引き揚げて、峠のあたりで野宿しようとおもいます」
忍者は、その場を立ち去りました。
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