FC東京 J1リーグ中間レビュー(遅)

一部では優勝候補とも謳われながらリーグ11位でフィニッシュするという挫折を味わった2023シーズンを経て、大型補強と黒田剛監督の就任で急成長した新興勢力・町田ゼルビアとJリーグ初代チャンピオンにして同じ味スタを本拠地とする永遠のライバル・東京ヴェルディという相反する2つの東京を拠点とするクラブの昇格により、FC東京というクラブの存在意義が問われることになった2024シーズン。クラブエンブレムの変更と共に再起を図ったシーズン前半戦は、内容・結果共に浮沈を繰り返す煮え切らないものとなっている。
この記事では、そんなFC東京のここまでの戦いをチーム全体のパフォーマンス、各選手のパフォーマンスという2点から振り返っていく。

⒈ チームレビュー

①幾つかの「点」

開幕三連戦を1勝2分という苦しい結果でスタートしたFC東京。登里が加わりビルドアップに磨きがかかったC大阪にはボールを持たれ、すでに完成度の高い広島と神戸にはロングボールを有効活用されてハイプレスを空転させられ、前線4人を除いた状態でゴールを守るようなシーンが散見された。また保持面でも、新加入の荒木遼太郎が2戦3発という鮮烈なデビューを飾った一方、昨季15得点のエース・ディエゴオリヴェイラはその荒木との連携に苦しんでいた。
そこで、クラモフスキー監督は大きく舵を切った。第4節アウェイ福岡戦でボランチに高、トップ下に松木、最前線に偽9番として荒木を配置する新システムを導入したのだ。2年間待ちわびた本職アンカー・高が巧みなゲームコントロールで味方に時空間を配り、2人の若きが積極的に中盤に降りて対人能力に優れる福岡CB陣から離れ、WGを務めた遠藤と仲川がその動きに呼応して中央へ現れたり裏を狙って的を絞らせず、非保持でもハイプレスを自重することで試合のテンポを落とし、福岡に得意のカウンターを打たせなかったことで1−3で勝利、24年ぶりに鬼門・アウェイ福岡から勝ち点3を持ち帰った。
また、新システムの心臓だった荒木と松木が共にU−23代表に招集されると、東京加入後は以前の大外で1対1を仕掛けるWGというより内側のレーンへ移動してフリーマンとして振る舞うプレーを好んでいた仲川をトップ下へコンバートし荒木とは相性の悪かったディエゴと縦関係を組ませるとこれがハマり、遠藤の負傷離脱に伴ってポジションを再び奪った俵積田の躍動もありGWの三連勝につながった。
この他にも、どちらかのサイドの高い位置にボールがある際に逆サイドのSBがバイタルエリアで待ち構えミドルシュートを狙う設計や、土肥の開幕スタメン抜擢、安斎のRWGで起用など、タイトルの可能性が潰えた後も毎試合のように同じようなメンバー選考で同じような戦い方を続けていた昨季終盤と違い、ある程度柔軟なゲームプランとある程度柔軟な選手起用によって「点」を見つける作業はこなせているように感じる。

②繋がらない「線」・不明瞭な「原則」

「点」はいくつか見つかっているし、順位表上でも昨季よりは高い位置につけられているとは言え、戦績は安定していない。サッカーの内容も、緩やかに前進し続けているというよりは成長と退化を激しく繰り返している印象が強い。例えば、先述したアウェイ福岡戦の直後のアウェイ川崎戦では、コンパクトなミドルブロックを敷かれ荒木と松木を消されると、ディエゴのいない前線にロングボールを蹴ってボールを捨てる負の連鎖にハマり0−3という完敗を喫した。この試合で中央の出口を消された時にどう前進するかという課題を突きつけられた東京だったが、直後の国立2連戦で浦和には未完成なミドルブロックの隙を突き、鹿島とのオープンな殴り合いを制して再び成功体験を得てしまったためか、この課題への対応が疎かになっている。実際、町田戦から今に至るまで、コンパクトな守備陣形を敷かれた相手への対策は明確に定まっていない(徳元のロングパス→遠藤の裏抜けのような解決策は、出し手が徳元/受け手が遠藤のケースでしか再現できないし、それをコンパクトなブロックの攻略の糸口としてチームに共有し、試行回数を積んでいく姿勢もあまり見られない)。また、WGのキャラクターに合わせたSBの人選を行なっているにも関わらずそれぞれが担当するレーン/タスクが不適切/不明瞭だったり、ダブルボランチの組み合わせの最適解は見つかったがその2人が担うタスクが多すぎたりと、点同士の結びつき、つまり「線」の繋がりがとても薄いことは大きな問題である。
また、選手たちから、テンポの選択などの大まかな点で「〇〇すべき」といった提言のニュアンスが含まれたコメントが頻繁に聞かれたり、対戦相手によって戦い方が180°変わることも引っかかっている。これは推測に過ぎないが、今のFC東京は細かい戦術の前段階である、各局面で自分たちが基本的にどう振る舞うかという「原則」の設定が曖昧だったり不足しているのではないかと感じている。特にこれが顕著なのが非保持局面で、昨季終盤は剥がされるか嵌め切れるかどうかに関わらず一貫してハイプレスをかけていたが、今季は試合ごとに自分たちのメンバーによっても対戦相手によっても対応が変わることが多く、大外のホルダーへのマーカーの決定が遅れたり、大外の並行サポートに対して無防備であったり、WGの人選によって帰陣への意識に大きな差があったりと、足並みが揃わない印象がある。
現状、自分は「今のFC東京のサッカーはどういうサッカーですか?」という質問に対して明確な答えを持てていない。むしろ、贔屓クラブではないG大阪や町田について方がこの質問に対する回答を用意しやすいとまで思う。
経営権がMIXIに移行したのと共に始まったポジショナルプレー導入計画は3年目を迎えているが、成果はほとんど見られていない。(アルベル前監督の解任or山形前GMの辞任のタイミングで方針が微妙に変化しているような雰囲気も感じる)
先日、ポヤトス監督就任2年目のG大阪が我々に見せつけたサッカーは、自分たちが目指しているはずのサッカーそのものだった。1年遅く改革に乗り出した相手にこれだけの差をつけられているという現実とは、必ず向き合わなければならない。

③残りのシーズンに期待すること

8/10日現在、FC東京は天皇杯・ルヴァン杯共に既に敗退しており、リーグ戦でのACL出場権獲得も厳しい状況に置かれている上、今年は勝ち点差が詰まっているため降格のリスクがなくなったわけでもない。Twitterで見かけた(気がする)情報によると、クラモフスキー監督の契約はあと1.5年残っているとのことだが、現時点での内容・結果に劇的な進展が見られなければ今オフでの監督交代が既定路線だろう。また、高・荒木・遠藤のような保持型チームに必要なピースを補強していることから、大幅な路線変更にもならないと思っている。
そこで、残りのシーズンに自分が期待することは3つ、「点」を見つけ続けること、一本でもいいから適切な「線」が引かれること、そして来たる東京ヴェルディ戦で絶対に勝利を収めることである。
自分が「点」の候補として密かに期待しているのは、徳元を後方に残し岡・土肥・高・小泉と共に3−2の並びで行うビルドアップにチャレンジすることや、遠藤の裏抜けによる擬似カウンターをチーム全体で共有する(あわよくば俵積田ら他のWGたちにも遠藤の裏抜けを実装する)ことだ。もしこの2点が形になって線で繋がれば、ミドルブロック主体のチームに対しては安定的な保持の時間を作れ、人数を合わせて前からプレスをかけてくる相手に対してはロングボールを使った擬似カウンターで殴り続けるという連鎖ができる。(※追記:徳元が名古屋にレンタル移籍してしまったため、文字通り実現する可能性は0になった)とはいえ、これは高望みすぎて現実味がないだろう。先述した土肥や安斎の抜擢、荒木や仲川のコンバートに見られるような柔軟な選手起用から来シーズン以降に活かせそうなものが更に見つかること、また抜擢された若手が経験を積めること以上のものを期待するのは難しいかもしれない。
一方、東京ダービーでの勝利は必ず達成されるべきだと考えている。1年前の天皇杯ではPK戦の末勝利し、8節でも前半に退場者を出しながら後半ATに追いついたとはいえ、2試合とも内容では押され気味だったことは否定できない。今度こそ完勝を納め、東京のオリジナルクラブとしての矜持を保つ必要がある。

⒉ 個人レビュー

ここからは選手個人についてのレビューとなる。点数や評価のようなわかりやすい指標をつけるとかえって基準にブレが生まれかねない為、感想のような形式で振り返っていく。また、ルヴァンカップと天皇杯については自分が観戦できなかった試合があるためレビューはリーグ戦でのパフォーマンスに限ったものとし、あくまでレビューであるため出場機会がなかった選手については割愛する。

①GK

・1 児玉剛
ここ数年は第3GKとしてカップ戦での出場がメインとなっているが、13節柏戦で波多野の退場に伴いスクランブル出場。結果的に2本のミドルシュートから追いつかれる形となったが、45分間という短い出場時間、出場した経緯、止めようがない犬飼のゴラッソなど様々な事情からパフォーマンスについて言及するのは難しい。

・13 波多野豪
野澤がオフに負傷した影響で開幕戦のスタメンを掴み、安定した空中戦リーチの長さを活かしたショットストップで、殴られ放題だった序盤戦で勝ち点を拾うことに貢献した。一方、ビルドアップとハイライン裏のカバーは得意分野とは言えず、2度同じ形からDOGSOで退場したことでサスペンション中に再び野澤にポジションを奪われた。特に13節柏戦の退場は、2度目のミスだったこと、3−1でリードしていた前半終了間際に犯したプレーだったこと、後半に追いつかれて勝ち点2を失ったことなどを考えるとかなり印象が悪かった。野澤の五輪代表参加中だった24節鹿島戦に出場するも、久々の出場で試合勘が鈍っていたか、頼みの綱のショットストップにほころびが見られ、総じて良いパフォーマンスとは言えなかった。25節G大阪戦で復帰した野澤がスタメン出場し圧倒的なパフォーマンスを残したため、定位置再奪取はかなり厳しいと思われる。また、試合から遠ざかると露骨にコンディションが落ちるGKをセカンドキーパーとして計算するべきなのかという問題も残っている。

・41 野澤太志ブランドン
正月に行われた日本代表の親善試合に招集され、順調なスタートを切ったかに見えた昨季の正守護神は、その代表期間に負った怪我を引きずり開幕戦でベンチスタートとなったが、5節川崎戦にて波多野の1回目の退場に伴って今季初出場。ここから正GKに復帰するも、国立2連戦が終わると今度は五輪世代の代表に招集され、1ヶ月不在となる。この代表期間に出場した試合でミスを連発した影響か、復帰後の名古屋戦ではそれを引きずった低調なパフォーマンスに終わった。それでも徐々にコンディションを戻すと19節湘南戦、20節札幌戦と立て続けにハイパフォーマンスを披露。正GKとしての威厳を示した。波多野や昨季途中まで正GKを務めたスウォビクと比べるとハイライン裏カバーとプレス耐性は高い一方で、ミドルパスの精度はまだ高いとは言えない。22節柏戦では相手のプレスをギリギリまで引きつけようとした結果パスが乱れ、高嶺への絶好のアシストとなってしまったシーンもあった。パス精度に不安が残るとはいえ、ゴールを防ぐという面においてはJ1トップクラスの実力を持っている。この夏の移籍は考えられないが、同世代のライバルである鈴木彩艶や小久保玲央ブライアンが海外でプレーする中、野澤にも海外挑戦の時が近づいているのかもしれない。

②CB

・3 森重真人
監督が志向するハイラインハイプレスのサッカーへの適性が疑問視され、開幕スタメンを2年目の土肥に譲った大ベテランは、なんだかんだでここまで14試合に出場。昨年ほどハイラインに拘らなくなった分、自陣でゴールを守る場面で要所を潰す嗅覚や体を張ったブロックといったベテランならではのプレーでチームに貢献している。一方、14節名古屋戦で中3,4日でスタメンが続くとパフォーマンスが落ちることを露呈。以降はエンリケ、木本とローテーションしながらの出場が続いていたが、カップ戦敗退を経て、来季以降を見据えたのか岡の出場機会が増えるのと反比例して出場機会を減らしている。世代交代の時期が近づいているかもしれない。

・4 木本恭生
露骨に調子を落とした昨季と比べると復調している。序盤は土肥の台頭でベンチ外が続いていたが土肥の離脱に伴って出場機会を得ると安定したパフォーマンスを続け、鼻骨骨折という怪我を負ってから3週間で試合に復帰するタフガイっぷりも見せた。エンリケの離脱に伴って岡がスタメンに起用されると相方を務める機会も増えたが、土肥が復帰した現在は3,4番手という扱いを受けているような印象だ。(もしくはエンリケの代役に岡が指名された時点で、立ち位置が変わっていたのかもしれない)
森重ほど適性がないわけではないがハイラインハイプレスのサッカーを目指す上ではもう少し機動力が欲しく、長いレンジの鋭い楔のパスは蹴れるが土肥ほどプレス耐性が高いわけではなく、森重や岡のように左右どちらの位置で出場できるわけでもないとなると、来年以降の立ち位置は依然不透明だ。

・30 岡哲平
CB陣唯一の補強となった岡だが、序盤戦はほとんど出番を得られずベンチ外が続いた。転機となったのは木本とエンリケの離脱が重なった19節湘南戦。明治大学の先輩である森重とのコンビでRCBとして出場すると、WGの守備意識が希薄で殴られ放題という展開の中、野澤がほぼ全てのシュートを防いだことが大きかったとはいえクリーンシートに貢献。木本の復帰後はその森重からポジションを奪う形でLCBに回って出場を続け、22節柏戦ではJ1初ゴールを記録した。土肥が復帰した25節G大阪戦でもLCBとして先発しており、来季以降を見据えた起用であることは前提としても、信頼と期待がおかれていることは明白だ。
まだ荒削りな部分はあるものの、両足でロングフィードを蹴れる点は森重に重なり、機動力が高くハイラインに適性があり、土肥ほど上手くはないものの運ぶドリブルにもチャレンジしているなど、ポテンシャルの高さは随所に感じられる。

・32 土肥幹太
今季最大の発見。昨季はユース昇格組の中で最も影が薄かったという印象だったが、キャンプで評価が急上昇。森重や木本といった実力者を抑えいきなり開幕スタメンに抜擢された。
J1初スタメンの試合でマッチアップしたのは実績十分のレオセアラ。現時点でJ1得点王に君臨している狡猾なストライカーは、対人能力に優れるエンリケを避け土肥を狙い撃ちするような動きを見せたが、土肥は特に悪目立ちすることなく淡々と対応し、国立2連戦でもスタメンとして十分なパフォーマンスを見せた。そして、プロ2年目らしからぬこの落ち着きが1番発揮されるのがビルドアップの場面だ。土肥はプレスの圧にビビることなく平然とボールを晒し、運ぶドリブルで相手のプレスラインを超えながら長短関わらず縦パスを打ち込むことができる。また、この縦パスを引っ掛けられてピンチを招いたとしても全く動じないことも大きな強みである。
順風満帆なデビューを飾った土肥だが、少し気になるのは稼働率の低さと空中戦だ。開幕節の後は2試合ベンチを外れ、国立2連戦でのスタメン復帰後も1ヶ月はスタメンに名を連ね続けたが、そこから再び失踪(25節G大阪戦での復帰直前のインタビュー記事で怪我をしていたことが明かされた)。ここまで8試合の出場にとどまっている。また木村勇大(東京V)やオセフン(町田)といった空中戦を得意とするCFとのマッチアップでは後手を踏んでいる印象が多い。残りのシーズンは試合に出続けることで、更なる成長に繋げてほしい。

・44 エンリケトレヴィザン
加入後から強みも弱みも変わっていない。強みは地上、空中問わず屈強な対人性能だ。迎撃守備やDFライン裏へのロングボールをスイープすることにおいてエンリケの右に出るCBはJ1全体を見渡しても少ないだろう。一方で弱みはプレー判断だ。持ち味であるアグレッシブさは不安定さと表裏一体で、無闇な迎撃で局面をひっくり返されたり、カードをもらうことも少なくない。そして、そのプレー判断の脆弱性を最も露呈するのがビルドアップだ。前方に余裕があれば左足からグラウンダーの鋭い楔のボールを蹴り込むこともできるが、蹴り先がバレバレすぎて縦パスを引っ掛けることも多く、また少しでも圧がかかるとすぐにSBの方向に圧から逃れるようにドリブルし、そのままSBにボールを渡してプレスの嵌め所を作ってしまう
現在メンバー外が続いている(おそらく怪我)が、岡と土肥の成長次第、自身のプレス耐性の成長次第では、以前のようなレギュラーが確約された状態からは立場が変わるかもしれない。

③SB

・2 中村帆高
長期離脱明けということもあり、長い試運転期間経て18節磐田戦でスタメンに復帰。対人能力の強さとアルベル仕込みのフリーランはある程度キープしていたように見えたが、ウェルトン対策として先発起用された25節G大阪戦で不用意なタックルから開始5分でイエローカードを貰ったシーンに象徴されるように、アグレッシブさに対して怪我明けの体がついてこないようなシーンも見られた。また、保持でも昨季序盤に中村と抜群のコンビネーションを見せた仲川が非保持貢献度を考慮してトップ下にコンバートされ、代わりに安斎がRWGに起用されている現状では、保持面での良さであった引き出しの多いWGのプレーに呼応できる能力があまり活かされていない。この点を考えると、RWGに安斎が出場する限りRBには大外を主戦場とする白井の方が優先して起用されるだろう。更に、チームのモチベーターであり左右両方のSBとしての出場が見込める長友の方がベンチに置きやすく、Jリーグのベンチ7人制の弊害を受けベンチ外となる試合も少なくない。この状況を打破する上で先日獲得が発表された左利きの本職RWGであるエヴェルトンガウディーノとの相性も重要な鍵を握るだろう。

・5 長友佑都
37歳を迎えたレジェンドは開幕戦からスタメンの機会を重ね、4節アビスパ福岡戦では神出鬼没にバイタルに現れミドルシュートを放って5054日ぶりのゴールを決め、15節横浜F・マリノス戦でも同じような形から同点弾を沈め、今までとはまた違った形で存在感を放った。非保持強度もまだまだ衰えていないが、白井の復帰、連戦期間の終了やカップ戦の敗退を機に、安斎との相性の問題、ビルドアップでの貢献度の問題を抱える長友も徐々にベンチに座る回数が増えてきていて、ここでも世代交代の足音が近づいてきている印象を受ける。

・43 徳元悠平
クラモフスキー体制移行後はほとんど試合に絡めておらず、この夏には放出の噂も出た徳元。白井、バングーナガンデの離脱に伴って棚ぼた的にベンチに滑り込んだ18節磐田戦で途中出場すると、1点ビハインドの84分に極上のフリーキックで安斎のゴールをアシストし、続く19節湘南戦では俵積田と交代でLWGに入ると億千金の決勝弾を沈め、2試合合わせて20分ちょっとの出場時間でチームに勝ち点4をもたらした。このパフォーマンスが評価され出場機会を増やすと22節柏戦・24節鹿島戦でもアシストを記録、定位置を奪取した。高いキック精度はセットプレーだけでなく、遠藤の裏抜けに呼応して提供するロングレンジのスルーパスや体の向きで騙した上で鋭く差し込む楔パスなどにも活かされていて、チーム随一のプレス耐性≒ビルドアップ性能を持っている。逆に弱点は非保持にある。特にアジリティ(=瞬発力)に難があり、WGとの1対1は相手に上回られることも多く、サイズも小さいためクロス対応も見込めない。バングーナガンデの復帰後にどちらをスタメンに選ぶべきかサポーターの中でも意見が分かれている印象があるが、自分自身は今後もボール保持に重心を置くサッカーを継続するべきで、その中心に徳元もいるべきだと考えている。
(※追記:名古屋へのレンタル移籍が決定。シンプルに悲しい。)

・49 バングーナガンデ佳史扶
昨季からスタメン出場を継続する中で、いまひとつ殻を破りきれていない印象がある。元々苦手だった対人守備は改善傾向にあり、独特なテンポで相手を翻弄するドリブルは唯一無二だが、ミクロな観点で捉えた時に保持局面で相応のバリューを出せていないことが非常にもどかしい。俵積田は大外で勝負するWG、バングーナガンデも本来は大外を駆け上がりたいタイプのSBではるが、ブライトンにおける三笘-エストゥピニャンのような関係性を目指せる能力を持った2人であるだけに、お互いにお互いを活かす関係性が構築しきれていないのが勿体無い。組んでからの時間は短いが効果的な繋がりを生み出している遠藤-徳元のユニットと対照的な道を辿っている。
また、これはチーム全体に見られる傾向だが、バングーナガンデは特にWGサポートに於いて内側を全速力で走り抜けることだけに終始することが多く、このプレーはWGと対面する相手選手に影響を及ぼせていないことが多い。最近は序盤戦〜中盤戦にかけて出ずっぱりだった影響もあってかサイレント離脱しているが、復帰後は徳元との激しいスタメン争いが待っているだろう。(※追記:徳元はいなくなりました)

・99 白井康介
昨夏SBの枚数がある程度揃っている中で獲得が発表された時は自分も含めポジティブな印象を持たないサポーターも多かったように記憶しているが、今ではRSBのファーストチョイスとなっている。6節浦和戦で中村の負傷交代に伴い出場すると、ポジトラ時の爆速オーバーラップ、プレス発動時の素早い縦スライドという2点で、勤勉だがWGとしての大外性能に欠ける安斎と抜群の相性を発揮しスタメンに定着。その後も調子を保ち続けているが、飛び抜けたパフォーマンスを発揮したのは相方の安斎が退場してしまった8節・東京ダービー。RSB兼RWGという一人二役を完遂し、パスカットから1人でゴール前まで運び遠藤の1点目をアシストするなど、異次元のパフォーマンスを見せた。
ハイラインハイプレスに拘りを持つ曹貴裁監督率いる京都で磨かれた無尽蔵のスタミナ以外にも、敵味方の状況に応じてファー/マイナスに蹴り分けられるクロス3人以上で接続したビジョンを描けるクレバーさといった点でも保持型チームとの相性は良いように思える。また、最近は内側でのプレーにもチャレンジしているが、こ走らせてナンボの白井を内側に持っていくことも、代わりに突破力に劣る安斎を大外に配置することもあまり合理的ではないように感じている。新戦力エヴェルトンが大外を主戦場にするWGであるならば、内側のレーンでのプレーの習得を試みていることも理解はできるが、これも蓋を開けて見ないとわからない。

④CH

・8 高宇洋
2年間待ちわびた和製アンカーがチームに与えた影響は大きいが、本来の強みを全て引き出せているようには感じられない。オープンな殴り合いを許容しトランジション合戦に勝ち筋を見出すチームに適応した結果、3人目として背後に飛び出したり、ネガトラ時に広い守備範囲をカバーしたり、高を消されるとビルドアップが滞ることを察して最終ラインまで降りてきて配球を担うなど、新潟時代とは少し違ったプレーでチームを支えている。そんな中でも高がポジティブな意味でのブレーキ役となって無闇な速攻→ロストによるトランジションの増加・チーム全体の体力の消耗を防いでいたり、求められた膨大なタスクをほぼ遂行できてしまうことは事実で、この先チームがどんな方向に舵を切ろうとある程度適応することはできるだろうが、高の最大の強みである敵味方両方のテンポを適切にコントロールできる能力を活かしたボール保持を前提とする設計をチーム全体にインストールした方がチームとしての最大値が高まるのではないか、という疑念は自分の中から消え去ることはないだろう。

・10 東慶悟
4節福岡戦に終盤のクローザーとして登場するも10分後に負傷交代したことなどもあり、ここまで出場は3試合18分、ベンチ入りを含めても6試合のみの出場登録となっている。前線からボランチにかけて厚い選手層が整った上、カップ戦も早期敗退した今季はリーグ戦において東のユーティリティ性に頼る必要がなく、ベテラン組の中でも最も影の薄い存在となっている。

・37 小泉慶
ここまで25試合に出場し、キャプテンとしてもチームを支える大黒柱となっている。豊富な運動量と対人性能の高さは圧倒的で、莫大な裁量を任される中で相方の高と共にピッチ上を縦横無尽に動き回っている。前線への楔のボールをスイッチに3人目として裏へ飛び出して局面を一気にひっくり返し、そこからファーへのクロスを狙う形は小泉のシグネチャームーブになりつつあり、3つのアシストも記録している。しかし、動き回ってこそ真価が発揮されるという点で高と事情の違いはあるものの、それを差し引いても東京のダブルボランチに任されているタスクは多すぎるため、サイドの攻略に加担した小泉がネガトラ発生時に帰陣できないシーンも少なくない。チーム全体の整備が進めば、小泉のフィルター性能がネガトラ局面で存分に発揮され、今以上にチームを支えられる存在になるだろう。

・40 原川力
ボランチとして開幕スタメンを勝ち取ったが、現在スタメンを務める2人と比べると可動域が狭く、特に非保持でポケットのカバーが疎かになる事が課題で、これが改善されないとこのポジションで出場することは難しいかもしれない(設計不足、浸透不足によって引き起こされているエラーという可能性も否定できない)。一方、スタメン時に幾度か見せた味方を使いながらのプレス回避は魅力的だ。高と小泉がレギュラーに定着して以降はビハインド時に高、小泉と交代したり、ボールをの収め所としての役割を期待されトップ下に投入されることが多いが、その頃には東京が死に体になっているか展開がオープンすぎることが多く、原川の味方を使い味方に使われるプレーが活きることは少ない。タイプは違うが、スカッド内での立ち位置は昨季の塚川とやや似ている。飛距離・精度共に高水準のキック、先述した味方の使い方、味方からの使われ方など、明確な強みを持っていることは間違いない。その分、上手くチームに組み込めていないことがもどかしい。

⑤WG

・22 遠藤渓太
海外挑戦後は影が薄く、同じポジションに俵積田とジャジャが居る中での加入に対し、自分は当初懐疑的な目を向けていたが、結果的にはチームに欠かせない存在になった。プレースタイルは非保持での貢献、ポジトラ時のテンポ管理、相手の背後への裏抜け、高い決定力などを持ち味とする万能型で、爆発力がありながらも荒削りなライバル2人と真逆のステータスを持っている。特に非保持局面での貢献度の差は大きく、遠藤ではなく俵積田・ジャジャが起用されると左サイドの守備力はかなり落ちる。一方で、単独でチャンスメイクをするという点では2人ほどの打開力はなく、SBによるWGサポートがほとんどない設計の中で相手に自陣でブロックを敷かれると強みを活かしきれないことも少なくない。とはいえ、現状チームとしての守備設計に大きな問題を抱える東京が単体守備力の高い遠藤を優先して起用しない理由がない。まだ26歳ということを考えても、これからもコアメンバーとして東京を支える選手であり続けてほしいと願っている。まずは東京ダービーで再びゴールネットを揺らすことを期待したい。

・28 野澤零温
J3での武者修行から帰還したが、変わらずプレータイムを得るには難しい状況に置かれている。野澤のプレースタイルはチームに求められるCF像とは違い、WGも人員が足りているとなると、実績に欠ける野澤がその序列を覆すことは難しい。代表離脱組に加えて遠藤が離脱した4月後半から5月にかけてベンチ入りし、終盤に投入されたが目立った活躍はできず、再びベンチ外の期間が続いた。特徴であるスピードを活かしてニアの選手を囮にファーに詰める形で奪った23節新潟戦のゴールは見事だったが、怪我人発生などの場合を除き、序列を覆すほどのパフォーマンスかどうか判別がつくほどのプレータイムを与えている余裕がないのが現実だろう。21歳と若いため、まずはプレータイムを確保できる環境で経験を重ねることが重要だと思われる。

・33 俵積田晃汰
昨季鮮烈なデビューを飾った若きドリブラーは、新たな武器を得た上で新たな壁にぶち当たった。前を向いた状態でボールを受けた先にある程度のスペースがあれば対面のDFを置き去りにできるスピードとアジリティを持ち、敵陣に侵入し相手に構えられた状態でもSHとSBの間を割ってPA内に侵入するプレーは昨季から継続して脅威となっている他、今季は対面の選手を抜き切らずにクロスを上げることを新たに習得し、2つのアシストも記録した。正対し相手選手を固定した後のプレーの選択肢が増えたことは大きな進歩だ。
その一方で明確な課題も2つある。1つ目はプレー判断だ。俵積田のドリブルには守備側の選手2枚を引きつけて味方を1枚余らせられる引力があるが、チーム単位の設計不足が影響していることを差し引いても、俵積田自身もその引力を有効活用できておらず、カットインから一定のスピードを保ったまま強引にミドルに持ち込み、精度を欠いたシュートが枠外に外れるシーンはよく見られる。そして2つ目は守備貢献だ。これもチーム全体の問題ではあるが帰陣後にどこを/誰を消さなければいけないのかが曖昧で、簡単に相手に侵入を許してしまうことが多い。この2点が改善されれば、世界に通用するWGになれるだろう。

・38 安斎颯馬
昨季に特別指定選手として加入が発表されて一部試合に帯同し、今季から1年前倒しでプロ契約を結んだユーティリティ。昨季は怪我人などの兼ね合いでSBでの出場が多かったが、今季は開幕戦で仲川との交代でRWGで起用され、4節浦和戦以降はこのポジションでスタメンの座を勝ち取った。
非保持局面ではRSB白井と連動し相手CB→SBの横パスに反応して前から圧をかけたり、自陣大外のマーカーに対してタイトな守備ができ、保持局面ではDFラインの背後に抜け出して出口になったり、左サイドからのクロスに対して毎回ファーに詰めることを徹底しているなど、ユーティリティらしく献身性を持ち味としているが、逆に自分がボールを持って前を向いた時にできることはあまり多くない。他のWG候補と比べると特にドリブル突破性能で大きく劣っていて、大外レーンの仕事を担保できる白井と縦関係を組まないと弱みが目立った。(また、これは安斎自身の問題ではないが、最近はその白井とユニットを組んでおきながら安斎が外/白井が中でプレーしている時間が長いように感じていて、ここは少し理解に苦しむ。)本職RWGのエヴェルトンガウディーノが加入した中で、再びスタメン争いに巻き込まれる可能性も考えられる。安斎は安斎らしく、まずは持ち前の献身性を落とさないことが重要だろう。

・70 ジャジャシルバ
俵積田と交代で投入され、マッチアップした日本代表・毎熊を文字通りぶっちぎり荒木へのアシストを記録した開幕戦直後は怪我に悩まされた昨季とは違う姿を見られることが期待されたが、結果的には似たタイプの俵積田との競争に敗れ鳥栖へレンタルされることになった。大外だけではなく、狭いスペースでも細かいタッチで局面を打開しようとするプレーは期待感を持たせたが、結局得点に結びつくことはなく、万能型のスタメン遠藤/爆発力を持つベンチ俵積田という構図が完成した今、東京で出場機会を得るのは難しくなった。横山が移籍した鳥栖で出場機会を得て、東京に帰ってきた時には成長した姿を見せて欲しい。

⑥CF/AMF

・7 松木玖生
キャプテンに就任した今季は最序盤はボランチ、4節福岡戦以降はトップ下で出場し、五輪代表参加による離脱もありながら18試合で2得点4アシストと確かな結果を残した。トップ下の定位置から縦横無尽に動き回ってビルドアップの出口となり、そこから持ち前のキックレンジを活かしたスルーパスで一気に局面をひっくり返すプレーは、最終ラインから相手のプレスを丁寧に剥がして前進することを苦手とする東京にとって貴重な前進手段となっていて、豪快なボレーシュートで奪ったゴールはイングランドの至宝にしてレアル・マドリードの心臓であるベリンガムを彷彿とさせるものだった。トップ下としてもボランチとしてもまだまだ荒削りではあるが、プレミアリーグに通用するフィジカルは持っているはずだ。まずは修行先のトルコ・ギョステペで輝きを放ってほしい。

・9 ディエゴオリヴェイラ
リーグ戦15ゴールを記録し復活をアピールした昨季と比べると物足りないゴール数に留まっているが、これは衰えというよりディエゴのプレースタイルとチーム全体のバランスや対戦相手の東京対策との兼ね合いに問題があるように感じている。昨季まではディエゴがビルドアップの出口としてチーム全体を押し上げる役割を担っていたが、荒木遼太郎という正統派10番が加入し、少し降りて相手CBを釣り出してからターンで置き去りにすることで局面を打開することを好むディエゴと中央でボールを引き出し相手を剥がせる荒木と役割、そして使いたいエリアが被ってしまった結果、鮮烈なデビューを飾った荒木と裏腹に少し悪目立ちしていた。しかし、荒木と松木の五輪代表参加の影響で10節新潟戦で前半のうちに負傷した寺山に代わって出場すると、トップ下のポジションからサイドに流れることが多い仲川と同時に起用されたことで自分の使いたいエリアを確保し復活。4戦連発ゴールを挙げる。しかしこの後は12試合(うち先発8試合)に出場するもわずか1ゴールと不調に陥っている。
この不調について、自分は出口役を担うディエゴと仲川を相手のボランチやCBに塞がれてしまうと前進手段がなくなってしまうチームの構造に問題があると考えている。相手の中央封鎖に対応してディエゴがサイドへ流れて出口を作ると、機動力に欠けるディエゴは自身が出口となり局面が打開されてからWGがクロスを上げるまでにボックス内に入っていけないのだ。高さ・強さを兼ね備えたストライカーが最終局面でボックス内に辿り着かないのは非常に勿体無い。
個人的に、ディエゴには相手の視野内、つまりゴールに背を向けた状態で動いてボールを引き出すのではなく、相手の背後へ抜け出す動きでボールを引き出したり、荒木・仲川が使うスペースを広げる動きを求めていくべきで、それができないのであれば年齢も踏まえて次なるストライカーへの世代交代へ踏み切るべきだと感じている。

・11 小柏剛
札幌から完全移籍で加入したが、怪我による離脱が長引き、ここまで6試合1ゴール(PK)と、2.3億円とも言われている移籍金に見合う活躍を見せられていない。しかし、相手の背後に抜け出してボールを引き出す/相手の最終ラインを下げさせることでチームを前進させるプレーボックス内でのシュートまでの駆け引きを持ち味とする小柏は、机上論の段階ではあるが荒木との相性が良さそうに見える。また、空転するかそもそもやらないかの2択状態になっているハイプレスにも貢献が見込める。以上のことから、小柏は出場することさえできれば東京に新たなCF像を提示できるクオリティを持つ選手だと思っている。ただ、小柏に対しても現在の荒木、松木やディエゴと同じようなタスクを任せれば、そのような動きを得意としない小柏の活躍は見込めないだろう。小柏を起用するのであれば、チームとして小柏の活かし方、小柏からの活かされ方を共有する必要がある。

・17 寺山翼
本来はボランチの選手であるが、ここまで出場した2試合は前のポジションに入っているためここで取り上げる。高と小泉がレギュラーに定着し、1人でカバーできるポジションが広い東やセットプレーキッカーとしての役割を見込める原川と比べるとベンチ入りさせる優先度が低かった上、先発のチャンスを掴んだ10節新潟戦で前半途中に負傷交代するという不運に見舞われ、プレータイムを得られていない。後半戦は高、小泉の控えとして出場するのか1列前で計算されているのかはまだわからないが、新潟戦では仲川のCBへの制限に呼応して中盤へのパスコースを制限するいわゆるチャレンジ&カバーを適切にこなしていた印象があり、近年の東のようにクローザーとして役割を務めることも考えられるのではないか。

・39 仲川輝人
昨季は怪我による離脱も少なくなかったが、今季はここまでの全26試合に出場している。狭い局面でもボールをキープでき、中央から動き回って出口を作れる仲川のトップ下へのコンバートによって代表期間中の荒木と松木の離脱の穴を埋めることには成功したと言ってもいいだろう。しかし、コンディションを保っている代償として非保持局面での貢献は見込めなくなっている。その事情も考えるとWGより守備負担の軽いトップ下へとコンバートしたことは妙案であったが、それでも前線からの激しいプレスは見込めず、同じくハイプレスへの貢献が見込めないディエゴとの併用の結果、ハイラインハイプレスを諦める試合が多くなっている。また、非保持局面での貢献が見込めない選手として保持局面でバリューを出し収支がプラスになっているのかという点でも微妙なラインであり、ディエゴとプレーエリアを食い合わないとはいえ数年前のドイツ代表ににおける「降りるハヴァーツに呼応して背後へ抜け出すミュラー」のような関係性までは構築できておらず、どんな状況でも時間を作って味方を待てる荒木と比べるとアクセルを踏みすぎて難易度の高いプレーを選択し、トランジションを増やしてしまう傾向も気になる。今までは絶対的な立ち位置という印象があったが、WGへの再コンバートは不可能に近く、小柏や山下が怪我から復帰し荒木も五輪代表での活動が終わり試合出場が見込まれる中で、仲川にしか生み出せないプレーが何なのかを見つけることが重要になってくるだろう。

・52 佐藤龍之介
特筆した活躍を残すには出場時間が短すぎたが、そもそも17歳にしてJ1デビューを飾ったことに大きな意義がある。本格的な活躍が期待されるのはもう少し先だ。

・71 荒木遼太郎
新加入組の中で最も大きなインパクトを残したのは荒木だろう。昨季の鹿島であまり出番を得られなかった中でどれだけの輝きを放てるか注目された開幕戦で、チームの前進を一手に担いながら2得点を記録し、押されっぱなしだったチームに勝ち点2をもたらしてサポーターのハートを掴んだ。その後も2節広島戦、4節福岡戦、6節浦和戦、代表招集を挟んで14節名古屋戦とゴールを決め、ここまでチームトップの6得点を記録している。その後は得点こそないものの、余裕がない状況でも荒木にボールが入れば相手のプレスを剥がしてくれるという信頼は揺るぎないものになっている。ディエゴ-仲川のユニットが定着し、共にビルドアップの出口として新システムのキーマンとなっていた松木が海外移籍で抜けた直近の試合ではスタメンから外れることが多かったが、短いプレータイムの中でも一度ボールを持てば持ち味を十分に発揮した。
課題は非保持局面においての個人戦術の浸透不足(カバーシャドウ、チャレンジ&カバーなど)で、チームとして理想のサッカーを目指す上でも個人として海外挑戦を見据える上でも改善は必要だが、この問題はディエゴ、仲川、松木ら前線の他の選手たちにも共通する課題で、結局誰が出てもハイプレスはあまり効果を発揮していないため、荒木をメンバーから外す理由にはならないと考えている。
現状ディエゴとの相性が悪いことは周知の事実で、今後新たに誰とユニットを組むことになるのかは不透明だが、ファーストチョイスに据えるべき才能であることには間違いない。

3. あとがき

ここまでお読みいただきありがとうございます。2若です。毎日警報級の暑さが続く夏ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。「私は元気です」と言いたいところでしたが、この度1年ぶり2度目のコロナウイルスに感染してしまいました。高熱にうなされている間、ふと「開幕前あれだけアウトプットアウトプット言ってたのにマッチレビューどころか中間の振り返りすらも書いていないぞ」と思い立ち、丁度Jリーグも中断期間に入っていたこともあり、解熱とともにこの記事を書き始めた次第であります。が、全然まとまらないうちに自宅療養期間が終わり、Jリーグの中断期間も終わり、試合が重なる中で振り返りのタイミングを完全に逸してしまい、ダービー直前での投稿となってしまいました。これでは皆様もどうか体調にはお気をつけください。そして、まずは今日、絶対に勝ちましょう。

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