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FC東京2024シーズンプレビュー

アルベル前監督によるポジショナル改革が一定の成果を生み出し、更なるベースアップと上位進出を目指し臨んだ2023シーズン、船頭だったアルベルの解任など様々な転落の末に11に沈んだFC東京。新たなエンブレムと共に巻き返しを図りたい2024シーズンの展望を、ここに書き記したいと思う。

①2024シーズンのスタッフ体制

FC東京公式X(旧Twitter)より引用

まず、スタッフ人事の中で特に影響を与えそうな3点をピックアップしてまとめていく。ただ、実際に各スタッフがどんな仕事をしているのかは分からない部分が多いため、ざっくりとした筆者の推測が内容の大部分を占めることをご容赦願いたい。

1.前栃木SC監督・時崎悠氏のコーチ就任
自分自身、栃木SCというチームに対しての印象がほとんどないためパブサからFFのJ2観測者や栃木サポーターのツイートを断片的に読み取ったところ、プレスの設計に長けている指導者だということがわかった。昨季終盤戦、個々の強度で上回ってボールを奪うことはあっても組織的なプレスがあまり機能していなかった(詳細は後述)ことを考えると、この「補強」は的確だったと言えるのではないか。

2.アナリストがめっちゃふえた
スタッフの中でも1番実情がよくわからない「アナリスト」という役割だが、単純に数を大幅に増やした(昨年2人→今年5人)ことは興味深い。1人1人が担当する分析範囲を狭め、より専門性の高いアナリストを雇う手法はフットボールの最先端である欧州でメジャーな方法である。また、新任アナリスト4人の中でも特に気になるのがクラモフスキー監督(以下ピーター)の前任クラブ・モンテディオ山形からやってきた今崎晴也氏と自身のnoteやサッカー雑誌footbalistaなどに分析記事を寄稿していた白水優樹氏だ。今崎氏はピーターのやり方を熟知しているであろうし、昨年11月noteにイングランド・プレミアリーグ全クラブのセットプレー守備を分析した記事(下にリンク)を投稿していた白水氏は東京が長年課題としているセットプレーを担当するアナリストとして入閣したのではないか、と推測している。

3.早川直樹氏のフィジカルコーチ就任
中村帆高や青木拓矢のように試合中の大怪我による長期離脱や、仲川輝人のように古傷を頻繁に再発するケースに加えてシーズン最終盤の俵積田晃太のようなサイレント離脱など、パターンが多様で防ぎにくいものであったとしても、結果論としてシーズンを通して怪我人が多かったことは事実だ。ピッチ上で余計な強度を求めた監督・コーチ陣にも責任があり、その部分も改善が必要ではある(詳しくは後述)が、選手のコンディション管理・フィジカル強化を担当するフィジカルコーチに日本代表のアスレティックトレーナーとコンディショニングコーチを歴任した早川氏を補強したことが怪我人の減少に繋がることを期待したい。


②2024シーズンのスカッド

各選手の配置は筆者の予想です 悪しからず

1/13新体制発表会時点 スカッド外
・レンタル:
小川、木村、蓮川、大森(育)、岡庭(育)、梶浦(育)、塚川、西堂
・退団:
スウォビク、アルトゥールシルバ、青木、内田、渡邊、アダイウトン、ペロッチ
・海外移籍に向けて離脱:
熊田(追記 1/26 🇧🇪1部ヘンクへのレンタル移籍が決定)

2024シーズンに臨むスカッドはこのようになっている。ここでは各ポジションごとの陣容を分析していく。

・GK
ハイライン裏のカバーやビルドアップ時の繋ぐ意識・勇気がスウォビクより優れ、ショットストップでも引けを取らなかった野澤大志が一旦は守護神の第一候補であろう。しかし、野澤はアジアカップに招集された(ついでに手首怪我しちゃった)為キャンプに合流できておらず、またパリ五輪に向け再び代表に招集される可能性があるため、2ndキーパーの波多野の出番も一定数あるだろう。スウォビクより遥かにマシだったとはいえ野澤はまだ「ビルドアップが上手い」GKとは言えない。ショットストップの安定感をそのままにミドルパスの精度や後方で相手のプレスを誘引する技術などを高めていく必要があるだろう。波多野もレンタル前に課題としていた安定感を改善し、野澤大志と熾烈なスタメン争いを繰り広げてくれることを期待したい。

・CB
ピーターの志向するハイライン・ハイプレスのサッカーにおいて、CBには広い可動域と高い迎撃強度・対人性能が求められる。例えば、ピーターの元上司であるアンジェ・ポステコグルーが今季から監督を務めているトッテナム・ホットスパーは、彼の就任と共に上記3つの条件に合致したミッキー・ファンデフェンを獲得し、相方のクリスティアン・ロメロと共に広いエリアをカバーさせることでゴール方向へより多くのリソースを割くことに成功、序盤戦の快進撃に繋げている(また、スパーズはファンデフェンの負傷離脱とロメロの退場処分が重なった11月に5戦で1分4敗と大きく勝ち点を落とした時期もあった)。経営規模が大きく違うプレミアリーグのクラブと比較したのはナンセンスかもしれないが、現在のFC東京にはこの条件に当てはまるCBがエンリケ・トレヴィザンしか居ないと考えている。ピーター体制になってから主にエンリケの相方を務めた森重は、高いパフォーマンスを発揮していたとはいえ年齢の影響から可動域に難があり、今季1年を通してあのコンディションを保てるかはわからない。一方、控えだった木本と木村は森重からスタメンを奪うことはなく、全タイトル獲得の可能性が消え消化試合に入ってからもほとんど出番を与えられなかった。そして、他のポジションは2023シーズン時点で概ねスタメンが計算できた(下図)ことも考えると、右利きCBの獲得は優先事項だと考えていた。

この時点でだいぶ豪華。

しかし、新体制発表会後の小原GMのコメントを鵜呑みにすると補強は一旦終了、つまりこのポジションへの選手獲得は大卒新人である岡のみで打ち止めとなった。仮に大学時代の岡が先述の条件を満たしたCBだったとしても、既存のCB陣をほぼ残した(木村は鳥栖へレンタル)ことから、即戦力として計算しているわけではないことがわかる。この結果、CBは少し不安が残るポジションとなった。昨季不振に陥った木本を筆頭に既存の戦力を適応させ、それが叶わなければ夏に選手の入れ替えを行うことが必要だろう。
(個人的には複数選手の退団で空いた外国人枠を使い、エンリケとコミュニケーションが取りやすいポルトガル語圏からアスリート能力+突っ込みたがりなエンリケの裏カバー&ラインコントロールができる右利きのCB獲得することが出来れば浦和の北欧コンビのような鉄壁のCBコンビが形成できると思っているが、流石に求めすぎかもしれない。)

・SB
LBにバングーナガンデ(以下カシーフ/五輪代表濃厚)と徳元、RBに中村(怪我明け)と白井に加え、両SBを兼任できる長友とボランチとRBを兼任できる小泉(+二種登録された当初はSB換算だった安斎)が居るSBはかなり層が厚いのではないか。非保持強度を優先するのであればLB長友/RB小泉、俵積田や遠藤ら大外に張れるLWとの相性を考えるならLBにWGサポートに長ける徳元、10番タイプの荒木やセカンドストライカータイプの小柏が各WGを務める場合は大外性能の高いカシーフや白井と組ませるなど、人選パターンも豊富である。元々の対人性能に加え昨季は保持時の関わり方に進化が見られた中村が大怪我以前のコンディションで復帰するとスタメン争いは更に激化するだろう。

・6番(ダブルボランチ)
昨夏にレンタルで加入しポケットへの飛び出しと正確なプレースキックでスタメンに定着した原川、国内では数少ない保持時に4番(アンカー)として振る舞える高を獲得したことでボランチにも厚みが出た。昨季終盤に寺山が大きく成長を見せて3番手に浮上、松木が10番(トップ下)としての境地を開拓し、更に余剰戦力状態だった塚川とここ2年怪我で欠場が増えたベテラン青木を放出し新陳代謝が図られた為キャラ被りも少なく、選手の組み合わせによって様々な戦い方を生み出せる陣容になっているのではないか。
少し話は逸れるが、新陳代謝というと東の契約延長の際にXで様々な意見が交わされたことは記憶に新しい。個人的にはボランチ・トップ下・SHと広いポジションに穴を埋められる上、途中投入でも常に高い強度で試合に入れる東は、ベンチに7人しか登録できない現行のJリーグにおいてスカッドに居てくれると有難い選手なのではないかと考えている。
また、甲府への完全移籍が既定路線かと思われていた品田が帰還したことには驚いた。出場機会はかなり限られると思われるが、青赤の18番を背負う選手としてのプライドを見せてほしい。

・10番(トップ下)
昨季終盤から退団した渡邊に代わって松木がこのポジションに入ることが増えたが、ディエゴへの負担が大きかった縦パスの蹴り先になって時間を作る、スペース消費の小さいターンで局面をひっくり返してWGにパスを散らす、WGが中を覗いたタイミングでポケットへ飛び出すなど、精度に欠けるシーンはあれど保時時はシンプルなプレー選択でチームのアクセルとなり、非保持時も持ち前の高い強度でネガトラ局面での即時奪回に大きく貢献した。先日行われたTM琉球戦でもこのポジションで出場し1G2Aを記録したようで、「居れば」スタメンで出ることはほぼ確実だろう。しかし、彼も五輪代表に招集される可能性が高く、五輪後に海外移籍することなども考えられるため不在の場面が増えるかもしれない。そこで獲得してきたのが真の10番タイプである荒木だ。詳しいことは分からないが、鹿島では非保持貢献度に難があったことと降りてくる鈴木優磨とプレーエリアが丸被りだったことで出番を失っていたのだろう。鈴木優磨と垣田が2トップを務めていた鹿島では非保持時4−4−2ではSH位置での守備が求められたであろうが、東京のトップ下は非保持時4−4−2の2トップ位置に入ることになる為、荒木の非保持貢献度が低くてもある程度はなんとかなるはずだ。
(追記:荒木もパリ五輪世代だった。もし両方とも選ばれちゃったりしたら小柏や遠藤が10番に回るなり東や佐藤くんが出るなりするはず。)

・WG
小原GMが「ディエゴいなかったらヤバかった(意訳)」という発言をしている通り、得点ルートのディエゴへの依存をかなり気にしていた強化部はこの冬、FW、特にWGの補強にかなり資金を投入した。良いFWを取ってくれば点が取れるというわけではないが、そもそもの問題として仲川が離脱するとRWに回されていた渡邊と困った時の100万馬力・アダイウトンが退団したという経緯もあり、WGの層が相当薄くなっていたのは確かだった。ここに資金を投入しすぎてRCBを確保できなかったのだとしたら、とかスペの仲川の控えにスペの小柏を据えるのはどうなのか、とかは一旦置いておいて、レーダーチャートの面積が広いLWとしてマリノス時代にピーターや仲川と共闘し、ドイツではRWと10番もやっていたらしい遠藤と、CFの影から爆速で飛び出す得点パターンを得意とし、シャドー系10番、CFとしても換算もできる小柏の補強はピーターを監督に据えサッカーをやる上では渡邊、アダの抜けた穴を埋める以上のものになったのではないかと思う。気になる点としては昨夏に獲得したジャジャシルバがCFとして換算されているような雰囲気が感じられる(でなければ遠藤ではなくCFを獲得していたはず)ことだろうか。

・CF
昨季ディエゴの控えとして換算されていたペロッチと熊田が抜け、湘南で怪我を負いほとんど出番がなくコンディションも不明瞭な山下敬大とJ3松本山雅への半年ローンの後再び戻ってきた野澤零温に加え、小柏やジャジャらがCFの控えを兼任するという陣容を眺めると「『ディエゴいなかったらヤバかった』と言う割にはディエゴ直属の控えがいないじゃん!」というイメージを持ってしまう。しかし、そもそもディエゴのような役割をこなせるFWを探してくるのは難しいだろうし、他のポジションに投資したことなどを考えると今冬はこれが限界なのかもしれない。このポジションで気になるのはジャジャシルバだ。獲得時にプレー集を見た限りではACミランのラファエル・レオンのようなスラローム系LWという印象を受けた為、CF位置でどのようなバリューを生み出せるのかは分からない。しかし、レアル・マドリードのロドリゴや以前ナポリに所属したメルテンスのように、WGから偽9番へとコンバートされた選手も少なくない。このコンバートが成功すれば、ディエゴとは違ったオプションとして機能するのではないかと期待している。
何かしら支障をきたすことがあれば夏にブラジル人CFガチャを回したり、J2から強奪するケースも有り得るだろう。


③ピッチ面で改善すべきポイント

ここから先ではピッチ面の話となるが、前提として言語の共有をしておきたい。Xで観戦試合の主観をツリー状で放り投げていらっしゃるkeita(@keitakrn)さんが先日投稿されたnote(画像の下にリンク)内の画像を引用させて頂く。主に選手の可変について下記の画像に載っている番号を使って表記する。
(この表現を使うと、単純に短い文字数で可変を表せるほか、偽SBとして表記されることの多いSBのインバートにおいてアーセナルの冨安やリヴァプールのTAAなど、ボランチ化してビルドアップに関わる可変=2-6移動なのか、ジローナのミゲルやマリノスの永戸のように大外に張るWGを内側からサポートしたりポケットへの飛び出しなどビルドアップ後のプレーに関わる可変=2-8移動なのかを簡単に区別できるなど、いくつかメリットがある。)

ありがとうフットボールジャンキー。

このnoteを読めば現在ブンデスリーガを席巻中のレヴァークーゼンの構造を理解すると共に現代フットボールへの解像度が爆上がりすること間違いなしなので、是非皆さんにも読んで頂きたい。


さて、本題に戻ろう。昨季、監督交代後も波に乗り切れず11位に沈んだ原因は以下の4点にあると考えている。
1. 可変コストと可変先バリューを無視した「ポジションチェンジ」
2-1. ユニット効力を考慮しない人選
2-2. フィニッシュ設計とテンポ管理
3. 間延びする3ライン
それぞれ、順を追って分析していきたい。

1.可変コストと可変先バリューを無視した「ポジションチェンジ」
アルベル前監督はポジションを守ることを強調してアンカーのサリーなどを制限していたが、1年経ってもビルドアップに関わるGK・DF陣に保持の個人戦術が浸透しなかったことなどもあり、前後が分断され少ない枚数で爆弾ゲームのように行われたビルドアップは完全に崩壊した。一方、後を引き継いだピーターは選手の自由な移動を許容しすぎているように感じられる。それぞれの移動が局所的なオーバーロードを作り出すわけではなくただのポジションチェンジになっており、可変コスト=移動距離が長いためネガトラ局面で帰陣が間に合わなかったり、本来ライン間で受けて目線を集めるプレーを得意とする渡邊がビルドアップの出し手に回るなど、個々が生み出すバリューが可変先で大幅に減ってしまうシーンが散見された。特に33節札幌戦(●1−3)はそれが顕著で、ミシャ式マンツーを掻い潜ろうと様々な可変を試みたが、外に開いた木本→ディエゴへの楔くらいしかまともに機能していなかったと記憶している。

※約3ヶ月前の試合なので自分の観戦メモを元に作成。記憶はあまり残っていません。

このような大移動によって余計な強度を求められ、1試合単位でもシーズン単位でも終盤に向けてどんどん体力を失っていくことになった。
2022シーズンのJ1昇格プレーオフで観たモンテディオ山形はこんなことにはなっていなかった為、キャンプにてこの問題が解決されることを期待している。

2-1. ユニット効力を無視した人選
昨季はディエゴのシュートを打ちきる能力、俵積田のドリブル、仲川、原川のポケットへの飛び出しなど、選手個々の質的優位から得点に結びつけるケースは多かったが、その質的優位をチーム全体で共有し、2人以上が関わる再現性のある攻撃はあまり見られなかった。この原因のひとつはユニット効力をを考慮しない人選にあったと考えている。特に気になったのはWGとSBの人選だ。例えば、2022シーズンから頻繁に組まれる左サイドのアダイウトン-カシーフのユニットを見ると、ドリブルに広いスペースを必要とし、外でちぎってカットインから得点を狙うアダイウトン(そもそも、明らかに非保持時前線居残りポジトラモンスターというスペックをしているアダイウトンを今のサッカーに適応させるのは難しい)と、主に2-7(2-8)移動からのクロスを長所とするカシーフでユニットを組むと、互いが最大限のバリューを発揮できるエリアが被る。更に、ネガトラ局面ではトランジション強度やそもそものポジショニングが壊滅的なアダイウトンと守備を長所としないカシーフによる左サイドは相手にとって攻略しやすいポイントとなっていた。また仲川が出場できない試合に組まれることの多かった右サイドの渡邊-長友のユニットは、10番タイプの渡邊が右ハーフスペースから中央レーンに常駐し、更に逆サイドまで出張していくこともあったために長友が常時2-7移動を強いられることになっていた。クロス精度や縦突破などの大外性能の衰えと引き換えにフリーランの走り分けでWGを解放するプレーを習得した長友に大外の仕事を求めることは悪手であり、渡邊とユニットを組むのは夏に獲得してきた2-7移動からのクロスを特徴とする白井であるのが自然だろう。

2-2. フィニッシュ設計とテンポ管理
2-1で「質的優位をチーム全体で共有し2人以上が関わる再現性のある攻撃はあまり見られなかった」と書いたが、特にこれが顕著だったのがファイナルサードまで進めた後の局面だった。例えば、俵積田がサイド深部に侵入した時、SBが遅らせSHが帰陣する時間を稼いでダブルチームを形成されタイトに対応されることが多かった。これを逆手に取れば俵積田が2人引きつけているから周りの選手はある程度自由に振る舞えることになる。この原理を使った二人称のブロック攻略方法として主に挙げられるのがペナ角クロスだ。マンチェスター・シティではマフレズやベルナルドが右のサイド深部で引きつけ、ペナ角で解放されたデブライネがクロスを供給し、中でハーランドやハーランドを囮に使ったギュンドアンが合わせる鉄板パターンで得点を量産した。

しかし、昨季のFC東京は俵積田や仲川がサイド深部でボールを持てても既に塞がれたポケットへのフリーランに終始し、チームとしてペナ角クロスを放る設計がなく、中々ボールをPA内に運ぶことができなかった。

これを
こうしたい。
図が下手くそなのはご容赦ください

また、相手からボールを奪い切った後、ホルダーにしろ周りの選手にしろゴール方向への動きが多すぎることも気になった。その行動自体に余計な強度がかかるし、ホルダーへのサポートが手薄になって再びボールを奪われると再び余計な強度がかかる。トランジション合戦に持ち込み強度で上回ることで勝ち点3を掴む(例:第9節広島戦○2−1、13節川崎戦○2−1)べき試合もあるだろうが、そういう試合に高い強度を出せるようにという意味も含めて、保持時にテンポを上げすぎることなく、不用意なロストを避けることも改善点の1つだ。この部分では新加入のアルビレックス新潟の心臓にして数少ない和製・正統派4番である高宇洋に期待したい。間違っても犬走りしない/させないように。

3. 間延びする3ライン

ピーター就任直後はチームの非保持における共通認識が定まり、ボランチに松木・安部/SBに長友・小泉というネガトラ強度を重視したスタメンを組んでいたため保持→ネガトラ→回収→保持と敵陣で2局面を回すことに成功していた。しかし真夏の連戦で求められた余計な強度で疲労が溜まったことや、徐々に癖や隙をスカウティングされるとプレスがハマらなくなってくる。流れとしては、
①LW俵積田orアダイウトンのポジショニングが曖昧でチーム全体の陣形が間延びし左サイドから前進される
②カバーするためボランチやエンリケが遅れて釣りだされる
③ここで迎撃しきれない場合、中央に大きなスペースができカウンターを食らう
という鉄板パターンがあり、このパターンから擬似ロングカウンターを喰らうシーンも少なくなかった。30節横浜FC戦(●0-1)の失点シーンは典型的なものだろう。

また、仮にプレスがハマり相手広いスペースへのアバウトなクリア性のロングボールを蹴らせても森重VS足の速いFWのマッチアップになってしまうと部が悪く、森重をスタメンで使う以上は90分間×1シーズン相手に対して奪いに行くプレスをかけ続けることは難しいように感じている。(なお、沖縄キャンプでは木本がCBの1番手として計算されている模様。ハイライン適正があるのかは定かでないが、2022シーズンは森重以上の可動域を見せていたと記憶しているので、自陣ブロック形成時の跳ね返し力やビルドアップ能力も含めて、復活に期待したい。)
更に、相手にプレスの1列目を越えられた際にチーム全体で足が止まる傾向があり、素早いリカバリー=帰陣ができていないシーンが頻発するのも気になった。①でも触れたが、これら多くの非保持の課題の解決のため招聘されたであろう時崎コーチの手腕が問われることとなる。


④「理想」スタメン

以上の点を踏まえ、自分が考える理想のスタメンを書いていきたいと思う。ただし、これらはあくまで「俺がFC東京にやってほしいサッカー」を中心に考えたものであり、首脳陣の方針、対戦相手の詳細な特徴、怪我人、コンディション調整の為のローテーションなど、スタメン選びを構成する様々な要因をほとんど考慮していないものであることを前提に読み進めて頂きたい。一応、大まかに2つに分けた想定を書いていく。

1. やってほしいサッカー=保持局面が長い想定
保持から逆算し、1番バランスが良さそうな形を考えた結果が以下のスタメンである。

並べてみると結構豪華に見える。実際豪華なんだけれども。

保持時は徳元はの2−6移動からRDM小泉or原川が6−8を担当、中村or白井が仲川の立ち位置に呼応して2−8or2−7移動する右肩上がりの2−3−5を基本としている。左サイドは俵積田or遠藤の大外性能を活かすためビルドアップにおける個人戦術とWGサポートに長ける徳元を起用し(LDM高はヘソに常駐させる)、この2人称に+αとして10番や9番が加担する形を想定し、右サイドは大外だけでなくライン間でも仕事が出来る仲川を最大限活かすため、2−7移動を許容できる中村か白井をRBに起用し、6−8の小泉or原川も適度にサイドに加勢させる3人称に+αとして10番や9番が加担する形を想定する。非保持時は10番が一列上がってCBへプレスをかける役割とアンカー番を兼任する4−4−2〜4−2−3−1を想定している。
この人選をベースに練度を上げれば、中央合体や外周りに偏ることなく、更に枚数を無駄に前に割きすぎることもなくネガトラ面でもうまくバランスが取れると考えている。

ポケットの飛び出しなどで空くRDMの背後を
木本or森重が高い迎撃強度を保ち消し切れるかが肝。

また、この人選を考える始点となった両WGが怪我などで欠けた場合は、相手に合わせてWGストライカー系の小柏と10番タイプの荒木のどちらかを選んで穴埋めをすることになる。その場合、どちらの選手を起用するとしてもSBには、より2-7移動で生み出せるバリューの多さが求められることになるため、LWに欠員が出た場合はLBに徳元ではなくカシーフ、RWに欠員が出た場合はRBは中村ではなく白井を起用することを想定している。特に、LWが荒木か小柏に変わる場合は各レーンを担当する選手が逆転するため、前提がかなり変わってくる。



2. 非保持重視=トランジション合戦想定
次に、奪いにくるプレスをかけてくるクラブ(例:マリノス、広島、鳥栖など)とのトランジション合戦を想定したスタメンを考える。

図作ってから気づいたけどLBに徳元置いても良し。

非保持強度を優先するため、長友をLB、小泉をRB、小泉が居なくなったボランチには松木を下ろし、10番のポジションにはプレスの強度を上げられる小柏をチョイスした。また、トランジションが多くなる試合ではSBの可変コストをなるべく少なくしたいため、シャドーストライカー系統の小柏を10番位置で起用することでより少ない手数で攻撃を完結させたいという狙いもある。また、先程の保持局面が長い想定ではスタメン候補だった俵積田や荒木は非保持貢献度に不安があるため外している。
非保持の形は変わらないが、小柏を筆頭に前からの圧力をより強めていく。保持(ビルドアップ)では個人でのプレス回避能力に長けるRB小泉をDFラインに落として相手のプレスを誘引し(ビルドアップを重視するなら更にLBに徳元でも良い/徳元LBであればRBが中村や長友でも良い)、間延びした中盤のスペースやDFラインの背後に小柏やディエゴを動かし、そこから少ないタッチ数で一気に擬似カウンターを完結させるのが主な狙いだ。

ハイリスクハイリターン。エンリケと木本のビルド性能でやれるのかは未知数。


⑤あとがき

改めまして、2若と申します。コロナ禍の休校期間にサッカー観戦にハマり、普段はJリーグ(FC東京、ロアッソ熊本)、プレミアリーグ(チェルシー)セリエA(インテル、モンツァなど)を中心に観戦している者です。
2024年はフットボールへの解像度を上げていくためにアウトプットの機会を設けたいと考えており、そのはじめの一歩として書き始めたnoteでしたが、自分の文章能力の欠如を痛感させられました。稚拙な文章ではありますが、時間と話題があればまた記事を書いていきたいと考えております。今後ともどうぞよろしくお願い致します。

2024シーズンの展望、いかがでしたでしょうか。新参者ゆえクラブの歴史などには疎いですが、スペイン式ポジショナルプレーのインストール計画が1年半で頓挫し、新たな指揮官の元立て直しを図りたいタイミングで最大のライバルであるヴェルディが鮮烈な逆転劇の末、12年ぶりにJ1に昇格してきた2024シーズンが、FC東京にとって今まで以上に重要なシーズンになることはクラブに関わるすべての人の共通認識であると思います。「東京は青赤」を証明するべく、私自身も自分にできる最大限のサポートをしていきたい所存です。

最後までご覧頂きましてありがとうございました。

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