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プレミアリーグ全20クラブのコーナーキックの守り方(23-24 第12節まで)


はじめに

プレミアリーグの全20クラブのコーナーキックの守備戦術をまとめました。まだ12節しか終わっていないのでサンプル数としては怪しいですが、多めに見てくれると助かります。また、例えば「〇〇の配置なので□□のエリアが空く」のような一般論の場合、最初の方のチームではそれに触れていても、進んでいくにつれて書いていない場合もあります。途中で1週間の高熱期を挟み約1ヶ月にかけてまとめたので、最後の方は最初の方では丁寧に書いたことが抜けている可能性があります。お許しください。

Arsenal

アーセナルは10人全員をボックスに戻して4人がゾーンで守る。ゾーンで守る選手の立ち位置はインスイングとアウトスイングの違いだけでなく、対戦相手の狙いによっても変わり、時には5人目の選手がゾーンで守る選手としてニアに配置されることもある。

下の図は、5人のアタッカーがいる場合のインスイング時の基本的な配置になる。

基本的に、ニアポストにKai HavertzかGabriel Jesusが立ち、ゴールエリア内にニアからBen White、Gabriel Magalhães、William Salibaが並ぶ。場合によってはDeclan Riceがニアのゾーンの選手として配置されることがある。トップの位置にはBukayo SakaやGabriel Martinelli、Jesus、Leandro Trossardなどの小柄なアタッカーのうちの1人が残り、もう1人がボールサイドのボックス外の選手を担当する。残りの4人がマンマークで相手のアタッカーを対応するが、基本的に相手1人はノーマークで放置する。ただし、ユナイテッド戦ではゾーンの選手の1人(White)をマンマークで対応させ、全てのアタッカーをマークしていた。

下の図はアウトスイングで6人のアタッカーがいる場合の基本的な配置である。

アウトスイングの場合、ニアポスト以外の3人のゾーン選手の立ち位置が少し高くなり、中央とファーの選手がゴールエリア外にまで出ている場合もある。また、図のように相手が6人ボックス内に配置する場合は、トップの位置の選手もマンマーク要員となる。しかし、その場合はトップの位置に誰もいないため、ペナルティーアーク近辺でセカンドボールを回収される可能性が高まる。実際、素早いラインアップでオフサイドになったものの、トッテナム戦ではトップの位置でセカンドボールを回収されてミドルシュートを打たれ、最後はゴール前で合わせられるという場面もあった。

アーセナルのゾーンの配置はスイングの種類だけでなく、対戦相手ごとに微調整が施されている。対戦相手がニアを狙ってくることがスカウティングでわかっている(と考えられる)状況では、5人目のゾーン選手をニアに配置したり、ゾーンの位置を普段よりもゴール方向に下げることがある。

まず初めに、5人目のゾーン選手について見ていく。

主にOleksandr ZinchenkoやEddie Nketiahが、5人目のゾーンとしてフラム戦やボーンマス戦でニアに配置されていた。ボーンマス戦ではうまくNketiahがニアでクリアできたが、フラム戦ではZinchenkoがクリアできずに失点を喫した。

また、インスイングでニアを狙われる場合には、ゾーン全体を下げることもある。

インスイングの相手に対し、ニアのWhiteがニアポストのHavertzと同じ高さまで下がり、Havertzを超えるボールを対応することがある。カラバオ杯のウエストハム戦ではオウンゴールを喫したが、このニアポスト周辺の管理はアーセナルの弱点だろう。ニアポストのHavertzやJesusは、そもそもの立ち位置がニアポストから2m程度離れている上、少し前に出ていることが多い。さらに、ボールが蹴られるタイミングでニアを抜けていく相手についていく傾向があるため、ボールがニアを通過しやすい。また、GKのAaron Ramsdaleはニアに飛び出そうとしても届かないケースが多かったり、David Rayaも基本的にはニアへの飛び出しはあまり見られない。対戦相手がGK周りに人を置いてGKの動きを制限しようとしてくることもあり、ニアポストへのボールに対して守りづらくなっている。

マンマークの方法は、相手の配置にもよって変化する。相手のアタッカーがそれぞれ散らばっている場合はそれぞれがタイトにマークする形をとるが、相手が密集を作っている場合は中央で距離をとって準備し、それぞれのエリアに入ってきたところでタイトにマークする。

このように互いに隙間を作らずにポジションを取る相手に対しては、それぞれの担当の人を決めるわけではなくそれぞれのエリアを決め、そこに走ってくる相手をマークする形をとる。だが、スピード感を持って飛び込んでくる相手を完全に止めることはできないので、基本的には体をぶつけて妨害することがメインになる。

ショートコーナーへの対応は以下の通りとなる。

ショートコーナーを受けにいく選手にはそのマークが付いていき、そこにニアポストを守る選手も加わり2v2を形成する。また、トップを守る選手がスライドして3人目の対応をすることで、即座に数的同数を作りクロスを上げさせないようにする。

ショートコーナー後やセカンドボールを回収された後などは、特にゾーンの選手が率先して素早くラインを上げる。基本的には相手が背後に蹴れる状況になるまでは上げ続け、それぞれのポジションへ戻していく。

セカンドボールを回収できた場合のカウンターでは、前線の3人がボールホルダーを追い越していくが、スペースへのボールを狙うのではなく足元で繋いでいく傾向があり、途中で奪い返されてしまい、カウンターで相手陣まで攻め込む局面はあまりない。また、GKがキャッチした後は素早くリスタートを狙うが、基本的にはスローでサイドでフリーの選手に繋いでいくパターンが多い。

アーセナルは、ゾーンやマンツーマンの守り方に試合ごとに微調整を加えていることが特徴的だ。ニアポストが弱点ではあるものの、基本的にはトップの位置にゾーンの選手も残しながら全体としてバランスの良い守り方で、試合によってはニアにゾーンを増やしたりと的確に相手を分析し対策を施していると言える。

Aston Villa

アストンヴィラは、基本的には10人全員をボックスに戻すが、ルートン戦では前線に2人残す形を採用していた。また、ゾーンで守る選手の人数は試合によって大きく変化し、3人の時もあれば6人の時もある。まずは、最小単位の3人の場合について見ていく。下の図は、アウトスイングに対してゾーンが3人の場合になる。

ニアポスト付近には基本的にはボールサイドのSBやLeon Baileyがポジションを取り、ニアにOllie Watkins、中央にEzri KonsaやDiego CarlosなどのCBが配置される。WatkinsはCKの守備でも存在感を発揮していて、ニアへのボールはことごとく跳ね返す。また、中央もゾーンの選手だけでなく、GKのEmiliano Martínezも積極的に飛び出し、キャッチで攻撃を断ち切ることができる。ボールサイドのボックス外の選手に関してはMoussa Diabyが管理し、その他の選手がマンマークで対応する。基本的にトップには選手を置かないため、リバプール戦ではこぼれ球をペナルティーアーク付近で拾われミドルを決められてしまった。だが、その後の試合では稀にどちらかのSBをトップに残す試合もあり、この失点を機に少し配置を変更した可能性がある。

次に、インスイング時の配置を見ていく。インスイングではゴールに直接向かってくるボールも想定されるため、Watkinsがニアポストまでポジションを下げ、もう1人のゾーンの選手をニアに配置することが多い。今回は、最大の6人がゾーンでゴールエリア周辺を守る場合を見ていく。

図のように、Nicolò Zanioloがニア、Boubacar KamaraとPau Torresが中央に入り、Konsaがファーを守ることが多いが、先に書いた通りゾーンの人数は頻繁に変わるため、ここからTorresやZanioloがマンマーク要員として抜けたり、2人のCBに加えてCarlosが起用されている場合は彼がゾーン要員となり、Torresがマンマーク要員となることも多い。また、ボールサイドのボックス外の選手を管理するDiabyも、ショートコーナーの可能性がない場合はトップの位置まで絞ったり、ポジションを下げてニア付近を守ることもある。

このように、ゾーンの人数に変化はあるものの、基本的にニアサイドは厚く守ろうとする傾向がある。スイングの種類によってWatkinsの立ち位置を変えながら調整し、アウトスイング時にWatkinsがニアポストまでポジションを下げる時は、もう1人をニアに配置してスペースを埋める。強固なニアの守備をベースに、中央とファーを守るゾーンの人数とマンマーク要員の人数を調整している。もちろん、ゾーンの枚数を増やせばフリーマンを作ってしまう。そのため、対戦相手はそのフリーマンをファーに回り込ませてフリーで合わせるというパターンをよく狙っていて、実際にシュートまで持っていかれるシーンを作られている。

また、マンマークの特徴として、ヴィラの選手は両手を広げて相手を包み込むようにしてタイトにマークする選手が多いように見える。相手を掴むわけではなく、腕で相手の場所や動きを把握できるようにする守り方をしている。

次に、ショートコーナーへの対応を見ていく。ボールサイドのボックス外の選手はDiabyが管理しているが、相手がショートコーナーを狙うそぶりを見せている間は、ニアポストを守るSBがゴールエリア外にとどまり牽制し、ショートパスが出た瞬間にボールサイドで2v2を作ろうとする。しかし、3人目を出すことはないため、相手がうまく3v2を活用しようとする試合も多い。

図はカンファレンスリーグのレギアワルシャワ戦で、ショートコーナーからの3v2を利用してボックス内への侵入を試みたシーンである。最後のパスが流れて繋がらなかったものの、ヴィラの特徴をうまく活用しようとしたシーンと言える。

また、ショートコーナー後やセカンドボールを回収された後のラインアップは素早く、全体としてラインを強く意識している。積極的にラインを高めに設定してオフサイドを狙っていて、上げたところから下げるタイミングは遅い。そのため相手に先に背後で触られるリスクもあるが、現状はほとんどオフサイドを取れているので、うまくいっていると言える。また、オープンプレーにおいてもラインを高く保ち相手をオフサイドにするアプローチを色濃く押し出しているため、一貫した戦術を採用していると言える。

GKがキャッチした後の素早いリスタートはあまりないが、セカンドボールを回収した後は、背後へ抜けるDiabyへのスルーパスというカウンターのルートがある。ただし周りのサポートはあまりないので、単騎でシュートまで持っていかなければならないシーンが多い。

アストンヴィラは、ニアを手厚くゾーンで固めながら相手によってゾーンとマンツーマンの人数を調整して、実際にベンチからの指示かは定かではないが、試合中にもゾーンの配置が変化することもある。また、ショートコーナーを2人で守ろうとしたり、極端にラインを上げてオフサイドにしたりしようとするなど、こだわりゆえ相手の狙いにされる場合も多いが、アイデアへのこだわりを感じる。

Bournemouth

ボーンマスは10人全員をボックスに戻し、3人がゾーンで守る。下の図は、インスイング時の配置の例である。

ニアポストのDominic Solanke、ファーのPhilip Billingはほぼ変わらす、中央にはMarcos Senesi、Illia Zabarnyi、Chris Mephamのうちの1人が入る。また、基本的に1人がボールサイドのボックス外の選手の管理をするが、その選手がキッカーの近くにいてショートコーナーが高い確率で予想される場合は、もう1人がゴール前のマーカーを捨ててボックス内の高めの位置で準備をする。

アウトスイングの場合は、ニアとファーのゾーンの選手がゴールエリアのライン上あたりまでポジションを上げる。ニアのSolankeはかなりニアへのボールを跳ね返せているが、中央やファーの選手が目測を見誤ったりするシーンもあり、ゾーンの選手が積極的にクリアできずに相手に合わせられるシーンも多い。また、ゾーンの選手はボールに届かないと判断すると素早くゴールカバーに入る傾向が強く、これもゾーンの選手で跳ね返せない理由の1つだろう。GKのNetoは、ゴール正面のスペースには飛び出し、パンチングを多用する傾向がある。

ショートコーナーに対しては、基本的にボールサイドは2人で守り、中央に展開してくる場合にはファーのBillingが積極的に飛び出してくる。

ショートコーナーが高い確率で予想される場合には、Billingが立ち位置を上げて素早くボールサイドに到達できるように準備しておくこともある。また、時間的に守り切りたい時などはBillingがゴール前に残り、ボールサイドは2人で対応し、クロスを上げさせないことよりもボックス内に侵入されないことを優先することも多い。ショートコーナーに対し、残りの選手はむやみに飛び出さず、全体でラインを意識しつつじわじわとラインを上げていく。そのため相手がさらに中央にまで展開し、Billingで止めきれなかった場合にはフリーでミドルを許してしまう場面も多く、実際にマンチェスターシティ戦ではこの形から失点を喫した。

セカンドボールを回収された後も同様に、ゾーンの選手がゴールカバーを優先することもあってラインアップはそこまで早くない。また、このトップのエリアには基本的に人を置かないため、ペナルティアーク付近でセカンドボールを拾われてミドルを打たれることもあり、バーンリー戦での失点に繋がった。

GKがキャッチした後は、パントキックで背後を狙う。ただし、素早くカウンターを狙うというよりも、ニアを守るSolankeが前線に駆け上がるのを待ち、少し時間を置いてから長いボールを送ることが多い。そのため、狙いとしては素早いカウンターというよりも、Solankeでボールをキープして陣地を回復することだろう。

ボーンマスは、先にクリアしようとしたりオフサイドをとろうとするのではなく、全体的にまずはゴールを守ろうとする意識が強い。カウンターに関しても、ゴールを奪いにいくというよりもボールの前進を意識したものになっていて、堅実なアプローチと言えるだろう。

Brentford

ブレントフォードは10人全員をボックスに戻し、4人がゾーンで守る。下の図はインスイング時の配置の例である。

4人のゾーンは、ニアからChristian Nørgaard、Ethan Pinnock、Nathan Collins、Kristoffer Ajerであることが多い。Bryan Mbeumoがボールサイドのボックス外の選手を管理し、基本的にその他の5人がアタッカーをマークする。しかし、相手が6人以上のアタッカーをボックス内に入れてきた場合は、誰かをフリーにしなければならない。多くの場合、GKのそばで邪魔をする選手とニアポストを抜けていく選手に関してはマークをつけないことが多い。そのため、相手が5人しかボックスに入れてきていない場合でも、そのうち1人がGKのそばにいる場合、その選手のマークではなくトップの位置でスペースを守ることもある。多くの場合でVitaly JaneltやFrank Onyekaがその役割を担う。下の図は、アウトスイング時で1人がトップでスペースを守る時の例である。

図のように、GK周りの選手とニアを抜けていく選手にはマークをつけず、1人をゾーンの選手としてトップに残すことがある。またアウトスイングの場合、4人のゾーン選手は積極的にポジションを上げ、特にファーの選手はゴールエリア外までポジションを上げる。しかし、これによって空いたファーポストまわりのスペースは弱点となり、ニアや中央でフリックしてファーで合わせるというパターンでシュートチャンスを作られるシーンは多い。とはいえ、万が一フリックされたボールをファーで合わせられたとしても、ライン設定は高くなっているのでオフサイドにすることも可能で、リスクはあるもののゾーン選手が高い位置を取ることでクリアしやすくなるといったメリットがある戦術になっている。高いライン設定は、GKのMark Flekkenの守備範囲の広さによって支えられていると言えるだろう。ゴール前へのボールはパンチングで跳ね返すことが多く、その守備範囲の広さのおかげでマンマーク要員を置かずに守ることができる。

ショートコーナーの対応は、ボックス角付近のMbeumoとニアポストのNørgaard、そしてマンマーク要員の中からJaneltが素早く飛び出しボールサイドで3v3を作る。

ニアを抜けていく選手には、ニアポストのNørgaardが積極的についていき、ボールが蹴られる前から自分のポジションを離れてついていく。ショートコーナーに対してはかなりアグレッシブにプレスをかけ、クロスを上げられる前に奪い切ってしまうシーンも多い。

ショートコーナー後やセカンドボールを回収された後のラインアップは早く、また相手のバックパスに対しても積極的にプレスをかけにいく。相手のGKにまでプレスをかけにいく場面もあり、ボールサイドは積極的に圧力をかける。しかしその反面、ロングボールでひっくり返されたりすると陣形が間延びしてしまったり、ゴール前の守備が手薄になってしまうことも時折ある。

ボールへの積極性は守備だけでなく、カウンター時にも発揮される。基本的にGKのキャッチからカウンターを狙うことはないが、Mbeumoが運び出せるシーンがあると、2、3人と追い越していき、一気に相手陣地に攻め込む。

ブレントフォードは、マンマークのハイプレスにも見られるように、積極性が特徴的である。ゾーンの選手もラインを高くしオフサイドを狙おうとしたり、またショートコーナーに対してはクロスを上げさせないどころかボールを奪い切りにいくといった、攻撃的なアプローチを採用している。

Brighton & Hove Albion

ブライトンは10人全員をボックスに戻し、4人がゴールエリア周辺を、1人がトップをゾーンで守る。基本的にはゾーンで守っているエリア付近の相手にはマークをつけないことが多く、飛び込んでくる相手を優先的にマークをつける。また、トップの位置には基本的にスペースを守る選手を残すことが多い。下の図はインスイング時の配置の例である。

ゴールエリア付近の4人のゾーンの選手は、基本的にはLewis DunkやJan Paul van Hecke、Adam WebsterといったCB、João PedroやEvan Ferguson、Danny Welbeckといった長身のCFから中心に選ばれ、足りない場合はJoël VeltmanやSolly March、James Milner、Carlos Balebaの中から選ばれることが多い。各選手の立ち位置は試合の中でも頻繁に変わり、基本的にはCBが中央やファー、CFがニアを担当することが多いが、場合によってはVeltmanやMarchがファーに入ることもある。

また飛び込んでくる相手の選手が少ない場合は、ゴールエリア付近のゾーンで守っているエリアにいる相手よりも、ボックス外の選手を管理することが多い。その場合、管理する相手からは距離を取り、スペースと人を同時に管理する。下の図はアウトスイング時の配置の例である。

アウトスイング時、ゴール前の4人のゾーンで守る選手はラインを上げる。また、図のようにボックス外の相手から距離を取ることで、ゾーンとしての役割も果たしつつ、ボックス外へのセカンドボール争いにも素早く関わることができる。

主にCBと長身のCFで構成されるゴール前のゾーン守備は硬く、総じてクリアの能力は高い。特にDunkは積極的に飛び出してボールを弾き返し、ピンチを未然に防げている。Jason SteeleとBart Verbruggenの両GKは守備範囲が広く、積極的に飛び出しパンチングで跳ね返すだけでなく、ゴール前へのボールはキャッチで攻撃を断ち切ることもできる。

またマンマークの特徴としては、基本的にはタイトにマークにつくが、スクリーンに対してはマークを離して迂回し、到達地点で競り合いに持ち込もうとする場面が多い。そのため、迂回することによって一時的にマークを離してしまうことにもつながる。対戦相手の傾向としては、スクリーンなどの連携でマークを外し、Dunkを越えたファーで合わせるパターンを狙っていることが多い。

ショートコーナーに対しては、相手がボールサイド付近に選手を寄せている場合は、あらかじめその選手を管理する選手がボックスギリギリまで寄せておき、ショートパスが出たタイミングでトップの選手が加わり2v2を形成する。

3人目への展開に関しても、ある程度は2人で対応することがベースになっていて、3人目の選手は近い選手が出ていく場合が多い。3人目の選手は人に対して厳しく出ていくわけではなく、どちらかというとボールサイドの2人のカバーとしてボックス内への侵入を防ごうとする傾向がある。

ショートコーナーやセカンドボールを回収された後は、Dunkを中心にラインを意識しながら積極的にラインを上げる。その後も、ボールが背後に蹴られる状況ではラインで下げる準備ができている上、背後のスペースはGKも飛び出して管理できている。

コーナーキックの守備からカウンターを狙う場面はあまりなく、GKもオープンなサイドにスローで確実にボールを届ける傾向がある。セカンドボールを回収できたWGの選手が単騎でドリブルで運ぼうとするシーンもあるが、組織的なカウンターにはつながらず、途中でボールロストすることが多い。

ブライトンは、強固なゾーン守備とGKのおかげで、比較的多くの人数をゴール前の守備ではなく、ボックス内高めの位置でセカンドボールやカウンターへの準備に割くことができている。現状、セカンドボール回収からのカウンターは多くはないが、運べるWGが揃っているためそこには期待していきたい。

Burnley

バーンリーは10人全員をボックスに戻し、基本的には5人がゾーンで守る。下の図はアウトスイング時の配置の例である。

基本的に、ニアポストにはSander BergeやJosh Brownhillなどのボランチの選手かCharlie TaylorといったSBの選手が入り、ニアと中央にはAmeen Al-DakhilやDara O'Shea、Jordan BeyerといったCBに加え、ニアポストに入らなかったボランチやSBの選手が入る。ファーにはLyle FosterやLyle FosterといったCFの選手が入る。ボールサイドのボックス外の選手には、Mike TrésorやLuca KoleoshoといったWGの選手が管理する。

マンマークの選手は基本的にはタイトに相手をマークするも、相手を離して対応するケースもあり、特にポジションチェンジをする相手にはマークを交換したり、飛び込んで相手には体をぶつけるクッション的な役割を担うこともある。

ニアサイドの守り方に関して、ニアの選手がニア角のスペースを管理し、ニアポストの選手が背極的に前に出ていきニアのスペースをカバーするという形を採用している。そのためニアの選手を釣り出し、ニアポストの選手をブロックすることで生まれたスペースで合わせようとするパターンを狙うチームは多い。

インスイングで相手が多くの選手をゴール前に集めてくる場合、ゴールエリア内の選手にはほとんどマークをつけず、マークのいないマンマークの選手がゾーンでゴールエリア前のスペースを守ることが多い。またこの場合、Connor RobertsやVitinhoといったSBが6人目のゾーンとしてニアを守ることが多い。

図のように、基本的にゾーン内の相手に関してはマークをつけないことが多く、GKのJames Traffordに任せている。しかし、彼がこのエリアをうまく守れているかというと疑問符がつく。アーセナル戦でSalibaに競り負けたシーンは典型的だが、ゴール前へのボールをうまくパンチングで跳ね返せていないシーンも多く、GKの能力によってこの守り方を採用しているというより、フィロソフィ優先でこの守り方を選択している可能性が高い。

ショートコーナーは、基本的にニアかニアポストを守る選手を出して2v2を作り、もう1人をマンマークの選手から出して3人目を対応する。

バーンリー戦では、対戦相手の多くがゴール前からニアを抜けてショートコーナーを受けにいくという形を多用している。インスイング時に6人目の選手がニアに配置されている時はその選手がついていくが、そうでない場合は基本的にはニアを守る選手を出し、ニアポストの選手が列を上げる。ただしこの辺りは少し曖昧で、ニアポストの選手が出てくることもある。

ショートコーナー後やセカンドボールを回収された後は、ゾーンの選手を中心にラインを意識しながら素早く上げ、マンマークの選手が前に出ていき陣形を回復する。トップをゾーンで守る選手がいないため、ペナルティアーク付近に溢れると相手のミドルシュートのチャンスとなりがちで、そこはマンマークの選手が素早く飛び出すことで対応しようとしている。セカンドボールを回収できてもクリアがメインで、またGKキャッチ後もカウンターを狙うことはほとんどない。

バーンリーは、CKでもラインを高くしてエリアを制限し、主導権を握ろうとしているだろう。しかし、それがGKのTraffordの能力を考慮してのアイデアなのか、アイデアが先なのかに関しては疑問を感じざるを得ない。

Chelsea

チェルシーは10人全員をボックスに戻し、基本的には4人がゾーンで守る。ゾーンの人数は試合によって変わることが多い。下の図は、インスイング時の時の配置の例である。

ニアポストにCFのNicolas Jackson、ニアにはCole PalmerやRaheem SterlingなどのWG、そしてその間でThiago Silvaが構える。また、中央とファーの中間あたりにConor Gallagherなどの選手を置くことがあるが、場合によってはこの選手もマンマーク要員となることがある。

ニアのエリアは長身のNicolas JacksonやThiago Silvaによって守られているが、ファーに関してはゾーンの選手がいなかったり、いたとしても中央寄りのポジションをとっていることが多いため、対戦相手にとっては狙い目になってる。タイトにマークには付かれるものの、スクリーンなどでうまくマークを外すことができればファーのエリアでは比較的フリーで合わせられる。実際にウエストハム戦での失点はファーへのボールからであった。

相手がショートコーナーを狙ってくる可能性が低い場合は、ボックス外の選手をマークしている選手がゴールエリア付近まで深く戻ってきてゾーンの選手となることがある。下の図は、アウトスイング時でショートコーナーの可能性が低い場合の配置の例である。

図のように、ボックス外の選手が中央に寄っていたりしてショートコーナーがあまり考えられない場合は、積極的にゴールエリア付近まで撤退する場合が多い。とはいえ、図のようにニア深くまで戻らずにトップの位置付近でスペースを守ることもある。

ショートコーナーに関しては、ボールサイドのボックス外の選手をマークする選手とニアを守る選手が積極的に飛び出し、基本的には2人で対応する。

図のように、3人目への展開にはマンマークの選手の中から近い選手を出す仕組みになっているが、可能な限り2人のスライドなどで対応しようとする場面が多い。最初から人数を合わせるわけではなく、3人目にパスが出てから近い選手がアプローチをかけるようなイメージだろう。

また、ショートコーナー後やセカンドボールを回収された後のラインアップは、基本的には素早く上げようとするが、慎重になる場面やマンマークの選手が取り残される場合も多く見られる。ゴールエリア内の相手もマークにつくため、ゾーンの選手が素早くラインを上げてもマンマーク要員の選手が取り残される可能性は上がる。シティ戦の失点も、仮に取り残されていたマンマークの選手がSilvaに合わせてラインを合わせられていたら、オフサイドを取れていたりもう少しタイトにマークできていたかもしれない。

GKがキャッチした場合、近くの選手をスローで見つけてカウンターを開始する。GKのRobert Sánchezは守備範囲も広い上に確実にキャッチできるので、カウンターの起点になることができる。メインのアタッカーはニアを守るWGとニアポストを守るJacksonで、どの選手もドリブルで運んでいくことができ、相手陣地深くまで2、3人で侵入することができる。

チェルシーは、SilvaとJacksonを中心にニアを分厚く守るゾーン守備が特徴的だ。CKの守備からのカウンターは、ニアポストのCFとニアのWGが素早く前線に駆け上がっていくことで一気に相手陣地深くまで攻め込むことを狙っている一方、全体としてのラインアップは課題だろう。特に、Silvaを中心にゾーンの選手はラインを素早く上げる一方、ゴールエリア内のマンマークの選手が取り残されることが多く、ギャップが生まれることがしばしばあり、改善が必要な点だろう。

Crystal Palace

クリスタルパレスは10人全員をボックスに戻し、基本的には2人がゾーンで守る。いわゆるオーソドックスなマンマークの守備と言える。下の図は、アウトスイング時の配置の例である。

ニアポストと中央にゾーンの選手が配置され、基本的にニアポストはCFのOdsonne ÉdouardやWGのJordan Ayew、中央はCBのJoachim AndersenやCFのJean-Philippe Matetaが務めることが多い。特にÉdouardやAndersenは積極的にボールにアタックしてクリアすることができ、さらにGKのSam Johnstoneもパンチングでクリアすることができるため、少ない人数ながらニアポスト周辺や中央のエリアは固く守ることができている。

一方で、ファーやニアのスペースを守るゾーンの選手はいないため、対戦相手としてはうまくマークを外してそのスペースで合わせることができればチャンスになる。マンマークの選手はタイトに相手をマークし、確実に相手を離さないようにする。ニアに関してはニアポストを守るÉdouardが積極的に飛び出すことでクリアできるシーンやマンマークの選手が先回りしてクリアできるシーンもあるが、ファーに関してはマンマークの選手も後ろ向きの対応となるため、クリアよりも相手を抑えてうまく合わせられないような対応になることが多い。

ゾーンでの対応が2人でマンマークが8人の場合、キッカーを除いた相手の9人のうち1人をフリーにしてしまうことになる。多くの場合はこの選手が後方でのリスク管理を担うことが多いが、この選手がボックス内に飛び込んでくるとノーマークで合わせることができる。下の図はその一例である。

図のように、マークされていないボックス外の選手がフリーで飛び込むというアイデアはとても有効になる。同時に、ボックス内の選手が後方に戻っていくことによって、ボックス外のリスクマネジメントも維持できる。これは対クリスタルパレスに限った話ではないが、マンマークでの守り方だと、このように特にファーのスペースをうまく活用されてしまうリスクがある。

また、ボックス外の選手にもマンマークで対応することも特徴の一つである。そのため、セカンドボールをボックス外の選手に回収された場合でも、マークについている選手が素早く対応できるという強みがある。一方で、彼らをトップの位置から移動させるというアプローチを採用するチームも多い。下の図はショートコーナー対応の例である。

このようにボックス外の選手を守る2人をボールサイドに寄せることにより、攻撃側はトップの位置へのセカンドボール回収で優位に立つことができる可能性が高まったり、カウンターのスタート位置をサイド深くに押し下げたりすることができると考えられる。また、ショートコーナーに対しては2人で対応する場面が多く、3人目が出てくることはあまりない。

ショートコーナーやセカンドボールを回収された後のラインアップは慎重で、基本的にマンマークを継続する。また、相手がもう一度クロスを上げられそうな時にラインを下げ始めるタイミングも早い。カウンターへの移行はあまりなく、GKがキャッチしても全体を一旦ポジションに戻すことを優先する。

クリスタルパレスは、オーソドックスなマンマークの守備をしていると言える。そのため、いかにマークを外さずに良い体勢のヘディングを防ぐことができるかが鍵になる。ニアや中央のゾーンの選手やGKの守備範囲の広いが、どうしてもファーまでは守ることができないため、このエリアにうまくフリーな選手を届けることを対戦相手は狙っていることが多い。

Everton

エバートンは10人全員をボックスに戻し、5人がゾーンで守る。下の図はインスイング時の配置の例である。

ニアとファーポストにはSBのAshley YoungやDwight McNeil、Nathan Pattersonなどが入り、基本的には自分のポジションのサイドのポストを守り、ニアとファーで役割が割り当てられているわけではない。また、特徴としては基本的にはゴールカバーを意識することが多く、ボールが確実にクリアされてからラインを上げていく。

ゴールエリアのライン上には、基本的にはニアからDominic Calvert-Lewin、James Tarkowski、Amadou Onanaが並ぶことが多く、全体的にクリアの能力は高い。とはいえ3人の間の隙間を狙うことは可能で、いくつかのチームはニアのCalvert-Lewinを釣り出してニアと中央の間を活用するパターンを狙っている。実際に、ルートンはうまく中央のTarkowskiをブロックすることで、ニアと中央の隙間で何度か合わせることができていた。しかし、基本的には長身のCalvert-Lewinや守備範囲の広いTarkowskiで跳ね返すことができるシーンが多い。

4人のマンマークの選手は、基本的にはメインのターゲットの4人をタイトにマークする。そのため、ゴールエリア内の相手にはマークをつけたりつけなかったりと試合によって異なる。

ショートコーナーに対しては、ニアポストの選手が早めにボールサイドに出てくる。下の図はショートコーナーの対応の例である。

図のように、ニアポストの選手がボックス角までボールサイドに寄り、ショートコーナーに素早く対応する。基本的には2人で管理し、3人目が出てくるタイミングは遅い。アーセナル戦での失点は、4人目、5人目と絡んできているものの、最終的にサイドで2v3の数的不利が生まれているところからボックス内に侵入され、ゴールを奪われた。アーセナルだけでなく、この3v2を活かそうとショートコーナーを多用するチームも多い。

ショートコーナーやセカンドボールを回収された後のラインアップは素早く、特に両ポストを守る選手は、ゴールカバーのあと押し上げているラインに追いつくためにスプリントする。その後のカウンターは基本的にGKのキャッチから始まる。GKのJordan Pickfordは、コーナーキックに対してあまり飛び出すことはないが、ゾーン内へのボールをキャッチしたり、二次攻撃のクロスには飛び出してキャッチすることは多い。その後は、なるべく早くボールの出しどころを見つけ、スローの場合もあれば背後へのパントキックの場合もある。

エバートンの特徴はニアとファーの両ポストに選手を配置するところだろう。オフサイドを取るためにファーポストには選手を置かないチームが多い中、どちらのポストにも選手を立たせてゴールカバーの役割を担わせている。まずはゴールを守り、クリアやキャッチ後は積極的にラインを上げカウンターに移行しようとする狙いが見える。

Fulham

フラムは10人全員をボックスに戻し、9人がゾーンで守る。ゴールエリアを7人のゾーンで守り、残りの2人は基本的にゴールエリア前のスペースでスペースを守りながら入ってくる相手をマークする。下の図はインスイング時の配置の例である。

ニアポストからニアにかけて3人が縦に一列に並び、中央に2人、ファーに1人が構え、相手がコーナー付近に2人置いていない場合はもう1人がニアの手前の位置を守る。残りの2人は基本的にゴールエリアの手前でゾーンで守るが、そこにターゲットが入ってきた場合は体をぶつけて抑えたり、ファーを狙われている場合はファー寄りにポジションを取ることもある。

ニアサイドには、SBのAntonee RobinsonやTimothy Castagne、Kenny Tete、そしてボランチのJoão Palhinhaが並び、中央はCBのTim ReamやCalvin Bassey、Issa Diop、ファーはCFのRaúl JiménezやCarlos Viníciusが担当する。ボールサイドのボックス外の選手には主にWillianがマンマーク気味に対応し、ゴールエリア前の2人は基本的に中盤のAndreas PereiraやAlex Iwobiになる。

ゾーンの特徴としては、ゴールエリア付近に多くの人数を割いているため、その周辺での守備は固いものの、彼らがブロックされるとペナルティスポット付近でフリーで合わせられてしまうという点が上げられる。正面だけでなく、ファーでも大外のJiménezなどがブロックされてフリーで折り返されるといったシーンもよく見かける。そのため、ゴール正面やニアなどの最も危険なエリアからのヘディングは抑えられるが、少し離れた位置からのヘディングやファーからの折り返しといった形は狙われてしまう。対策としては、ニアポストのRobinsonを中心に素早くラインを上げ、ゴール前の選手をオフサイドにしてしまうという点が挙げられるだろう。シティ戦ではGKの前にいたManuel Akanjiをオフサイドポジションに残すことができたものの、残念ながらオフサイドを取ってもらうことはできなかった。

また、ゴールエリアの前にいる2人は基本的には飛び込んでくる相手を邪魔する程度だが、自分のエリアで合わせようとする相手に対しては背中で押さえ、フリーで合わせられないようにすることを優先する傾向がある。

アウトスイング時にはゴールエリアのゾーンの選手は積極的に高いポジションを取り、また相手がショートコーナーの準備をしているときにはニアの手前にいるHarry Wilsonや中央の2人のうち余っている方などがゴールエリアよりも前に出て、すぐに2人がアプローチできるように構える。下の図がその例である。

ショートコーナーに対しては、ボールサイドの2人に加え、3人目としてニアの選手が出てくることがある。基本的にはゾーン対応になることが多い。

図のように、ボックス外での展開に対しては2人目の選手が飛び出していくと同時に、大外の選手は内側に絞り、3人目の選手がボックス内への侵入を防ぐように守備をする。基本的には簡単に中へ入らせずに外に追い込む守備をするが、ブライトン戦では4人目の選手で数的優位を作られ、ボックス内まで侵入されてしまうシーンがあった。

ショートコーナー後やセカンドボールを回収された後のラインアップは素早く、人ではなくスペースを意識しながら積極的にラインを上げ、元のポジションに戻していく。GKがキャッチした後は素早くスローでプレーを再開することもあるが、ダイレクトで背後を狙うことはあまりない。カウンターの起点になることができるのはWilsonやWillianで、ドリブルで前進していくが、相手の戻りが早い時などは早めにやり直すことも多い。

フラムの特徴はゾーンを強く意識した守備だろう。7人のゾーンでゴール前を固め、その後のラインアップもラインを意識して上げていく。そのため、ゾーン特有の「捨てているスペース」が明確に弱点となるが、それを補うための素早いラインアップも徹底されている。

Liverpool

リバプールは、10人全員をボックスに戻し、9人がゾーンで守る。基本的には6人でゴールエリアを付近を守り、2人がその前方のスペース、そしてMohamed Salahがトップの位置に残る。下の図はインスイング時の配置の例である。

ニアポストの守備とゾーンエリア前の2人の内の1人、ボールサイドのボックス外の選手の管理は基本的に中盤の3人が努める。それぞれが基本的にはどの役割もこなすことができ、試合ごとの選手起用で変わってくる。ニアの手前とファーにはそれぞれSBが起用され、左SBのAndrew RobertsonかKonstantinos Tsimikasがニアの手前のスペース、Trent Alexander-ArnoldかJoe Gomezがファーを管理する。まれに、Dominik Szoboszlaiがファーに入りAlexander-Arnoldがゾーンエリア前の守備を担当することがある。ニアと中央の3人には、CFのDarwin NúñezやCody Gakpo、Diogo Jotaなどと、CBのペアであるVirgil van DijkやJoël Matip、Ibrahima Konatéが起用される。ゾーンエリア前の2人の役割は、中盤の内の1人と左WGが担う。GKのAlisson Beckerは、ゾーン内のボールには基本的にはパンチングでクリアしたりキャッチしたりできるが、時折ボールをこぼす場面も見受けられる。

基本的にはバランスよくゴール前のスペースをゾーンで埋めることができているが、ニアのスペースが割れやすい点と、ファーのAlexander-Arnoldのところはよく狙われている。

ニアを抜けていく相手に対して、ニアの手前を守る左SBが釣られて出て行きやすい傾向があり、それによって生まれたスペースはニアポストやニアの選手が積極的に飛び出してカバーすることになっている。しかし、ニアの選手がブロックされたり、ニアポストの比較的身長の低い中盤の選手が競り負けたりすることで、ニアで合わせられてしまうことが多い。また、ファーもAlexander-Arnoldとの単純な競り合いだけでなく、ブロックを使いながら合わせるスペースを作り出してくる相手が多い。

ショートコーナーに対しては、トップのSalahが加わって2v2を作り、3人目はニアの手前の左SBになる。下の図はアウトスイング時のショートコーナー対応の例である。

これまで退場者などがいない11v11の状況ではあまりショートコーナーを仕掛けられることがなかったが、基本的にショートコーナーには2人で対応しつつ、ニアの手前のスペースを守っている選手が他の選手とラインアップをしつつ必要に応じて3人目として出ていく形をとっている。

ショートコーナー後やセカンドボールを回収された後のラインアップは素早く、積極的にボールにプレッシャーをかけにいく。一方で、中盤と前線の選手が前へ出ていく意識が強くなりディフェンスラインとの間にギャップを作ってしまい、その結果もう一度クロスを上げられた時に全体が分断されていることもある。実際、開幕戦のチェルシー戦では、二次攻撃のクロスをクリアしたボールをディフェンスラインの手前で先に触られしまい、失点を喫している。

しかし、その強いトランジションへの意識によって多くのカウンターのチャンスを作り出しているのも事実だろう。GKからのパントキックや高くて大きなクリアによって、相手が後ろ向きのセカンドボール争いの状況を作りだし、Salahを筆頭に全線の選手が駆け上がりカウンターに繋げる。また、相手のファウルがあったりゴールキックによる再開になった場合でも、相手がセットする前にリスタートし、一気に相手陣地深くまで攻め込んでいく。

トップのSalahとボールサイドのボックス外の選手をマークしている選手を先導に、ゴールエリア前の2人が次々とボールを追い越しながら、またサイドをバランスよくそれぞれのレーンを駆け上がる。GKのスローやショートパスからのリスタートの場合でも、SBが素早くサイドで受けて前線へと配給する。

リバプールの最大の強みはCKの守備からのカウンターである。パントキックや高くて大きなクリアからのキックアンドラッシュはラグビーのハイパントを彷彿とさせ、そこから生み出されるセカンドボール争いでは、味方の押し上げによって常に優位に立ちながら一気にゴール前へ攻め込む。彼らにとって、一瞬で相手のセンターバックを置き去りにできるCK守備からのカウンターは最大のチャンスなのかもしれない。

Luton Town

ルートンタウンは10人全員をボックスに戻し、基本的には4人がゾーンで守る。マンマークの人数を増やしたいときやキッカーを2人立てている時などは、ニアの手前の選手が持ち場を離れ、3人のゾーンでゴールエリア付近を守ることもある。下の図はアウトスイング時の配置の例である。

ニアの手前にはWBのAlfie DoughtyやIssa Kaboréが入り、中央はCFのCarlton Morrisが守る。ニアとファーのゾーンの担当はJacob BrownやChiedozie OgbeneなどのWGやボランチのRoss Barkleyになることが多い。また、ボールサイドのボックス外の選手のマークはKaboréやTahith Chong、Andros Townsendが担当する。

基本的には飛び込んでくる選手のマークを優先し、6人以上のアタッカーがいる場合は、ゴールエリア内の相手を1人ノーマークにすることが多いが、場合によってはニアの手前の選手がマンマーク要員となり、3人のゾーンと7人のマンマークで守る場合がある。

このエリア内でノーマークの選手がニアを抜けてショートコーナーを受けるそぶりを見せたときや、最初からキッカーを2人立てているときは、ニアの手前の選手が積極的についていく場合が多い。そのため、これらの方法でニアの手前の選手を釣り出し、空けたスペースを狙うチームは多い。

こういったエリアに飛び込んでくる選手を食い止めることがマンマークの選手の役割であるが、特に密集を作ったところからそれぞれのエリアに飛び込んでくる相手に対して離してマークしすぎることが多く、ニアでフリーで合わせられる場合が多い。中央に飛び込んでくる場合は、相手にブロックされていない限りは基本的に中央のゾーンのMorrisとGKのThomas Kaminskiのパンチングによってうまく守られていることが多い。

ショートコーナーに対しては、ボールサイドのボックス外の選手をマークしている選手とニアの手前の選手の2人と、3人目としてはボックス内のマンマークの1人かニアをゾーンで守る選手のどちらか近い方が出てくる。

ショートコーナーからボックス外を展開してくる場合にはマンマークの選手、ボックス内への侵入を狙ってきた場合はニアのゾーンの選手が飛び出てくる傾向がある。

ショートコーナー後やセカンドボールを回収された後のラインアップは慎重で、元のポジションに戻していくよりも、比較的全体が一列のラインにとどまる傾向がある。しかし、二次攻撃をラインが低い状態で受けてしまうことになり、マンチェスターユナイテッド戦では二次攻撃から失点を喫した。おそらく人基準の対応がベースであると考えられるので、最終的にはマークを外した選手の責任になるが、二次攻撃で完璧にマークにつくことは難しく、失点にはなていないものの二次攻撃のクロスにフリーで合わせられるシーンは多い。

CKの守備からのカウンターに関しては、トップの位置に人を残している場合はセカンドボールの回収からカウンターを仕掛けられる場合が多く、リバプール戦では得点を奪うことができた。

基本的にはトップの位置でボックス外の選手をマークするよりも、ボックス内のアタッカーをマークすることを優先する場合は多いが、試合によってはボックス内のフリーマンを許容する代わりにトップに残すこともある。その場合、ボックス外の相手を管理している2人が先陣を切ってカウンターを仕掛けることができる。

ルートンは、ニアと中央、ファーに1人ずつバランスよくゾーンを配置する形をとっているが、それぞれに求められる守備範囲が広いうえ、マンマークの選手が付ききれていない場合が多いように感じる。それでも、特に中央のMorrisが広範囲を守れるおかげで跳ね返すことができている。また、二次攻撃においても相手をフリーにしてしまう場面も多い。実際の失点シーンは、二次攻撃やショートコーナーといった要因もあるが、最終的には「マークを外した」というシーンがほとんどだ。昇格組ということで、セットプレーにおいてもマークの能力といった選手のクオリティが関係あるのかはわからないが、要因の一つであることは間違いないだろう。

Manchester City

マンチェスターシティは、10人全員をボックスに戻し、基本的には9人がゾーンで守る。下の図はインスイング時の配置の例である。

ニアポストにはJulián ÁlvarezやMateo Kovačić、ニアの中央にRodri、ニアの高い位置にErling Haalandが入る。中央はRúben DiasやManuel Akanji、Nathan Aké、John StonesなどのCBが配置され、ファーはJoško Gvardiolが担当することが多い。ゾーンエリア前では、Kyle Walkerと2人のWGの3人がゾーンで構え、入ってきた相手をマークする形で守る。ボールサイドのボックス外の選手はPhil Fodenが管理することが多い。

中央やファーのエリアは、長身のCBやGKのEdersonによって固く守られているが、ニアのエリアは弱点で、実際にそこからフラムやチェルシーにゴールを奪われている。基本的にはニアポストのÁlvarezやニアのRodri、Haalandが積極的に飛び出していく形をとるが、ニアを狙うチームはRodriとHaalandをブロックしてスペースを生み出している。ニアポストのÁlvarezやKovačićが飛び出しても届かないことが多く、ニアのエリアでフリーで合わせられてしまう。

また、ゴールエリアの前の3人のゾーンの選手は基本的に自分のスペースに入ってきた相手をマークするので、自分のスペースから出ていく相手にはついていかないケースが多い。そのため、中央からニアに飛び込んでいく相手を掴んでいないことが多く、フリーで合わせられてしまうことになる。

ショートコーナーに対しては、ボールサイドのボックス外の選手の管理をしているFodenと、ニアポストの選手とゾーンエリア前のゾーンの3人のうちの1人で対応する。

基本的にはニアポストの選手が2人目となり、3人目への展開に対してゾーンエリア前のゾーンの選手が出てくることが多い。ショートコーナー後は基本的にサイドステップで細かくラインをコントロールしていくが、大きくクリアできたあとは素早くラインを上げていくケースが多い。基本的にはGKがキャッチできた後は背後を狙うカウンターを狙うことはあまりなく、素早いリスタートから全体で前進していこうとする傾向がある。

マンチェスターシティは、すでに似た形でニアから複数失点しており、インターナショナルブレイク明けのリバプール戦で守り方に変更があるのか注目したい。とはいえ、4人のDFを全員CBで揃えることができるという点はセットプレーの守備においても大きな武器であり、中央やファーではほとんどの場合跳ね返すことができている。

Manchester United

マンチェスターユナイテッドは、10人全員をボックスに戻し、基本的には5人がゾーンゴール前を守り、1人をトップにゾーンで残すことも多い。下の図はインスイング時の配置の例である。

ニアの手前にはBruno Fernandes、ニアポストにはScott McTominayやMarcus Rashford、ニアと中央にはCBの2人であるVictor LindelöfやHarry Maguire、Jonny Evans、Raphaël Varaneや中盤のCasemiroが入り、ファーポストはSBのDiogo DalotやAaron Wan-Bissakaが管理することが多い。ボールサイドのボックス外の選手のマークはAlejandro GarnachoやAntonyで、トップに選手を残す場合はChristian EriksenやSofyan Amrabatが残る。ボールサイドのボックス外の選手が中央寄りであったりボックス内のマークを優先するときはトップには人を残さず、4人のマンマークになる。

アウトスイング時にはゴールエリアのゾーンの選手は大きく前進する。

この場合、両ポストからは選手がいなくなり、ニアポストとファーポストを務めていた選手がそれぞれニアとファーの高い位置を担当することになる。一方、基本的にGKのAndré Onanaはそこまで高い位置を取らず、シュートブロックに専念することが多い。あまり飛び出してくることはないが、ファーへのボールに対してパンチングで逸らす場面はいくつかあった。

ゾーンの特徴としては、両ポストの選手がゴールカバーを優先することだろう。特に中央のゾーンの選手は積極的に飛び出していくが、ポスト前の選手はボールが入ってきてもポジションを維持し、GKのOnanaとともにゴールを守ることに専念する。

中央の守備は固いため、ニアとファーのエリアを狙われることが多い。ニアサイドに関しては、特にニアのCBやCasemiroがブロックされた場合にFernandesやニアポストの選手が飛び出してクリアする能力がそこまで高くなく、先に合わせられることが多い。ファーサイドに関してはファーポストの選手が出れれば対応できるが、基本的にはゴールカバー優先なので、特にインスイングの場合は空きがちである。

ショートコーナーに対しては、ボールサイドのボックス外の相手をマークする選手とニアの手前のFernandesの2人に加えて、マンマークの選手が3人目として対応する。

ショートコーナーに対するラインアップはゾーンの選手で揃えながら上げていくことができるが、セカンドボールを回収された後のラインアップに関しては両ポスト前の選手がゴールカバーを優先することもあり、少し遅れがちである。アウェイのコペンハーゲン戦の失点は二次攻撃からだが、チーム全体の問題というよりも大外のDalot個人の対応のところだろう。

セカンドボールを回収できた後のカウンターは、高い位置にいるGarnachoや後方から駆け上がってくるRashfordの個人の能力で運んでいくことが多い。GKがキャッチする場面は多くないが、基本的には素早いリスタートよりも配置を整えることを優先する傾向がある。

マンチェスターユナイテッドの特徴は、積極的な中央とゴールカバーを優先する両ポストのハイブリッドのゾーンであろう。中央へのボールは積極的に弾き返せたり、シュートを打たれてもGKのOnanaに加えて両ポストの選手がいることで跳ね返すことができる。一方で、ある程度はシュートを打たれることを許容しているともいえ、特に3、4人のマークでつききれていない選手がフリーで合わせると、質の良いシュートが飛んでくるリスクもはらんでいる。最後はOnanaと両ポストの選手で止める、がベースとしてあるのだろう。

Newcastle United

ニューカッスルは、基本的に10人全員を戻し、3人がゾーンで守る。ブレントフォード戦では、多くの人数をボックス内に入れてくる相手との駆け引きの一環で1人を前線に残すことがあった。また、直近のリーグ戦のボーンマス戦やアーセナル戦では4人のゾーンで守る形を採用していた。下の図は、インスイング時に3人のゾーンで守る場合の例である。

基本的にニアポストとニア、中央にゾーンの選手を配置することが多く、残りの選手がマンマークで守る。ニアポストにはMiguel AlmirónやElliot Anderson、Jacob MurphyなどのWG、ニアにはCFのJoelintonやAlexander Isak、またはIHのSean Longstaffなど、そして中央にはCBのJamaal LascellesやDan Burnなどの長身の守備陣が入る。また、ボックス外の相手の管理はAnthony Gordonが担当することが多い。

残りの6人がマンマークの対応となり、基本的にはタイトにマークにつく。相手が5人しかボックス内に入れてこない場合や、ゾーン内のアタッカーを無視する場合は、1人がトップの位置に残ることもある。ゾーン内の相手やGKの前の相手をマークするかどうかは試合によって異なり、基本的にはメインのアタッカーからマークしていくのだろう。GKのNick Popeは基本的にパンチングでクリアすることを狙う傾向があり、ほとんどキャッチをすることはない。

ファーにはゾーンの相手を置かないため、ファーのエリアは狙い目になり、実際にウルヴズ戦ではファーサイドから失点を喫した。その対策としてなのかはわからないが、リーグ戦の次節アーセナル戦からファーにもゾーンの選手を置く形に変更された。

図のように、ファーのエリアをBurnなどがゾーンで管理するようになったことで、ファーのエリアでフリーで合わせられる可能性は低くなることが考えられる。これが一過性のものなのか、継続して4人のゾーンに変化したのかについては注目していきたい。

ショートコーナーに対しては、ボックス外の相手をマークする選手とニアポストの選手、そしてマンマークの選手の3人で対応する。これはゾーンの人数が3人でも4人でも変わらない。

ショートコーナーやセカンドボールを回収された後のラインアップは慎重で、特にニアポストの選手がゴールカバーを優先することも多いため、積極的にはラインを上げない。また、ラインよりも人を意識する傾向にあるため、ラインに乱れが生じている場面も多い。

セカンドボール回収後のカウンターは、基本的に追い越していく味方にスペースにパスを出すことで進んでいく。ボックス外の相手を管理している選手がセカンドボールを回収することが多く、そこからマンマークやニアポストの前線の選手たちが追い越していき、背後へのボールを積極的に狙う。スルーパスが通った後も、そのパスを受けた選手をさらに追い越す選手がいて、一気に相手ボックス内へと攻め込む。

ニューカッスルは、基本的に長身の選手が揃っていて、マンマーク対応のCBも相手をマークしながらクリアする能力も高い。一方、ファーのオープンなスペースは明確に狙われており、実際にウルブズ戦で失点を喫した。その後は4人のゾーンに変更していて、これが今後も続いていくのか今後も注目していきたい。

Nottingham Forest

ノッティンガムフォレストは基本的に10人全員を戻し、2人がゾーンで守ることが多い。ウエストハム戦やルートン戦、シェフィールドユナイテッド戦のように、3人がゾーンで守る試合もあった。下の図はインスイング時の配置の例である。

ニアポストと中央にゾーンの選手を立てることが多く、ニアポストにはMorgan Gibbs-WhiteやSerge Aurierなど、中央にはTaiwo Awoniyiが入ることが多い。ニアポストの選手の高さであったり、中央の選手がニアよりかファーよりかというところは試合によって変わる。特にアウトスイングの場合はニアポストの選手がニアまで高さを上げることも多い。また、ボックス外の選手のマークはAnthony ElangaやGibbs-Whiteが務め、カウンターの起点にもなる。ボックス外の選手をマークする選手は、基本的にボックス内の高い位置にポジションを取ることが多いが、ゴールエリア手前あたりまで下がってきてゾーンで守ることもある。ゾーンの選手が守れるスペースは広くなく、また2人組のスクリーンでマークが簡単に外されてしまうことがあり、直近のウエストハム戦の2失点はその典型だろう。

ショートコーナーに対しては、ニアポストの選手を出して数的同数を作る。しかし、全体的にクロスは上げさせても良いという対応で、3人目への展開で3人目を出さないことも多い。

例えば、図のようにボックス内で6人をマンマークしてボックス外に2人の相手がいる場合、ボックス外の相手を管理するトップの選手に対して1v2の数的不利が生まれることになる。このような場合には、3人目への展開にも2人で対応しようとする場面が多い。

ショートコーナーやセカンドボールを回収された後のラインアップは慎重で、2人のゾーンの選手が後ろのラインを合わせにいき、他の選手は基本的にマンマークを継続する傾向がある。また、ニアポストの選手はゴールカバーを優先するためラインアップは遅れることが多い。また全体的にラインを揃える意識はなく、それぞれが人への対応となる。

GKがキャッチできた後やセカンドボールを回収できた場合のカウンターは武器で、実際にアーセナルやマンチェスターユナイテッドからゴールを奪っている。直近の2試合で先発したGKのOdysseas Vlachodimosは、Matt Turnerよりも守備範囲は広いがパンチングの割合が多い傾向があるものの、どちらのGKもこぼれ球やシュートをキャッチできたあとは素早くスローやパントキックでカウンターを狙う。ロングボールのターゲットはCFのAwoniyiになることが多く、中央のゾーンでの守備から素早く前線に駆け上がる。スローからの前進やAwoniyiのサポートはElangaが得意で、特に左サイドからドリブルで仕掛けていく。

ノッティンガムの特徴は、純粋なマンマーク守備からの素早いカウンターだ。AwoniyiとElangaのカウンターでの能力の高さに加えて後方から飛び出してくる選手も多いため、非常に整備されたカウンターと言えるだろう。CKの守備からの得点と失点の合計でプラスにできると、残留に向け大きな武器になるだろう。

Sheffield United

シェフィールドユナイテッドは、基本的に1~2人を前線に残そうとし、2人がゾーンで守る。何人を前線に残すことができるかは相手との駆け引きにもよるだろう。実際、ボックス内のマークが足りない場合は前線から戻ってきてマークに入る場合がある。そのため、試合によって何人を残すことができるかは変わり、結局1人も残せず10人全員が戻ってくることも多い。それでも、ボックス外の選手のマークする時に、特に中央やファーの選手はなるべく高い位置に残ろうとする傾向がある。一方で、ボールサイドのボックス外の選手をマークする選手はニアサイドのゴールエリア外あたりまで下がってくることがある。

下の図は、ウルブズ戦で前線に2枚残した時の配置の例である。

この試合では、前半はウルブズ側が合わせる形で後方に3枚を残し、後半はウルブズがボックス手前の人数を2人に増やしたことでシェフィールドユナイテッド側も1人戻すようになり、前線には1枚だけを残す形となった。ブライトン戦やクリスタルパレス戦でも前線に1枚残す形を採用していて、どちらかというとウルブズ戦は極端な例だろう。基本的には前線の選手であるCameron ArcherやGustavo Hamerが残ることが多い。

ゾーンの選手は、基本的にニアとニアポストの中間に1人と中央に1人配置されることが多い。ニアにはOliver Norwood、中央にはVinícius SouzaやOli McBurnieが立つことが多く、その他の選手はマンマークでの対応となる。

正直なところ、シェフィールドユナイテッドのセットプレーの守備はあまり良くなく、ゾーンの2人も守備範囲が広くないためニアや中央でも相手に先に触られてしまうことが多く、またゾーンでカバーしきれないファーのエリアでは純粋にマンマークの部分で後手にまわり、いくつかの失点につながってしまっている。また、GKのWes Foderinghamも基本的には積極的にパンチングでクリアしようとするが、アーセナル戦ではミスから失点につながってしまった。ファーストコンタクトからの失点だけでなく、アーセナル戦の2失点はこぼれ球からの失点で、さらにエバートン戦の失点もファーでの折り返しを中央で触られる形であった。マンマークで対応している選手に先に触られているというだけでなく、多くの場合振り切られていたりボールに背を向けていたりと相手よりも悪い体勢になっていることが、ボックス内でのセカンドボール争いで後手に回る原因のひとつだろう。この辺りに、選手のクオリティを感じる。

ショートコーナーに対しては、それぞれのマークに加えニアのゾーンの選手が基本的にボックス内のスペースを防ぐように出てきて対応する。

基本的にはキッカー以外はマークできているため、3人目として出てくるニアポストの選手が高い位置まで出てくる必要はなく、基本的にボックス内への侵入を防ぐ役割を担うことが多い。また、ショートコーナーに対してのラインアップは慎重で、中の選手はマンマークを継続する。セカンドボールを回収されて相手がボールをハーフェーライン程度まで下げた場合でも、積極的にラインを上げていこうとはしない。また、マンマークがベースなので、ラインはあまり揃っていない。

前線に人を残そうとする割には、なかなかCKの守備からのカウンターの機会がない。いいクリアができてない、GKがキャッチできない、など要因は多いだろうが、GKがキャッチできた場合でも積極的にカウンターを狙うそぶりはない。

シェフィールドユナイテッドは、コーナーキックからリーグ戦12試合ですでに5失点を喫している。残留を目指す上でセットプレーの守備は早急に改善されないといけない点であろう。とはいえ、ゾーンにもマンマークにも如実に選手のクオリティの差が現れており、かなり厳しい状況と言えるだろう。

Tottenham Hotspur

トッテナムは、10人全員をボックスに戻し、最近は6人のゾーンで守ることが多い。基本的には6人のゾーン、3人のマンツーマン、ボールサイドのボックス外の相手の管理に1人という形が多いが、シーズン開幕から9節のリバプール戦あたりまでは9人がゾーンで守っていた。とはいえ、リバプール戦やアーセナル戦などは「自分のゾーンに入ってきたらマークする」と捉えることもできるので、ゾーンとマンマークが曖昧な部分でもある。また、クリスタルパレス戦では5人のゾーンと4人のマンマークで守っていた。下の図は6人がゾーンの場合のインスイング時の配置の例である。

ニアのゴールエリア角にSBのPedro Porro、ニアポストには中盤のYves BissoumaやPierre-Emile Højbjerg、ニアにはPape Matar Sarr、中央にはCBの2人であるMicky van de VenとCristian Romero、ファーにはSBのDestiny Udogieが入ることが多い。ボールサイドのボックス外の選手にはSon Heung-minがマークし、残りの3人がボックス内の飛び込んでくる選手をマークする。

ゾーンの守備に関してはかなり強固で、これまでフリーで合わせられたシーンはほとんどない。強いていえばゾーンの手前のエリアで合わせられることはあるが、距離のあるヘディングなのでさほど脅威とはなっていない。GKのGuglielmo Vicarioは守備範囲は広く、パンチングを選択する傾向が強い。

アウトスイング時には、ニアポストの選手がニアの高さまでポジションを上げ、下の図のような配置になる。

ショートコーナーに対しては、ニアの手前の選手とSonでまず対応し、3人目としてマンマーク要員の選手が出てくる。また、ショートコーナーが高い確率で予想される場合は、あらかじめニアの手前の選手がボックス外まで出て準備をする。

ショートコーナーやセカンドボールを回収された後のラインアップは非常に早いが、ニアポストのBissoumaはゴールカバーを優先することがあり、全体のラインアップに遅れる傾向がある。また、一つの基準としてペナルティエリアのラインを目安にしていることが考えられ、一旦そのラインまで上げた後はストップし、ラインを止める場合が多い。一度ラインを止めた後は積極的にオフサイドを狙い、その後のラインアップはボール状況に応じて行う。特にSonは相手GKまでボールにプレッシャーをかけ続けるので、それに合わせてラインを上げていくことができる。

GKがキャッチした後は素早くスローを狙ったり、セカンドボールを回収された後は素早く前進していくが、無理はせずにやり直すことが多い。

トッテナムのコーナーキックの守備は非常に硬く、基本的にフリーでのヘディングを許すことは少ない。またGKのセーブ能力も非常に高いため、あまり失点することは考えられない。監督の哲学と同様素早いラインアップは特徴ではあるものの、意外とBissoumaが残っていたりとラインが揃いきれていない場合もあるため、セカンドボールの回収から背後を狙うといった攻撃は有効になるだろう。しかし、Sonを中心にボールに対しては激しくプレッシャーをかけにいくため、二次攻撃は簡単ではない。

West Ham

ウエストハムは、10人全員をボックスに戻し、基本的には6人がゾーンで守る。残りの4人の内訳は、2人がメインのアタッカーのマンマーク、もう2人がボールサイドとトップのボックス外の相手の管理という形がベースだが、マンマークの選手がゾーンになることもある。この辺りの人数バランスやゾーンの形は試合によって頻繁に変わる。下の図は、インスイング時の配置の例である。

ニアポストとファーにはそれぞれのサイドのSBであるEmerson PalmieriとVladimír Coufalが入り、ニアには長身のTomáš Souček、中央には両CBのKurt ZoumaとNayef Aguerdが立つことが多い。また、ニアの手前にはLucas Paquetáが入ることが多いが、彼のポジションは試合の中でも頻繁に変わり、基本的にはニアの空いているスペースを埋めるように立つ。相手がショートコーナーを狙っている場合は、ニアポストの選手があらかじめ持ち場を離れてボールサイドに近づくので、その場合はPaquetáがニアポストを埋めることが多い。

中央のマンマークは基本的にアタッカーを抑える目的で、Michail AntonioやEdson Álvarez、James Ward-Prowseが担当することが多い。Ward-ProwseやMohammed Kudusはトップの位置に残るケースが多いが、相手がゴールエリア内に密集させてくる場合にはゴールエリアの手前まで戻ってきてゾーンで守ることがある。ボールサイドのボックス外の選手の管理はJarrod Bowenが担当することが多い。

ゾーンの弱点としてはやはりゾーン外のエリアになってくるが、特に中央のマンマークでも対応しきれないファーのエリアで合わせられることが多い。特に相手に3人以上メインとなるターゲットがいる場合は、誰か1人をフリーにしてしまうことになる。また、ファーからの折り返しに対して、ニアポストの選手がゴールカバーを優先することが多いため、中央で合わせる選手をオフサイドにできずにリバプール戦での失点につながった。ニアポストの選手はサイドで変わるが、Coufalはかなりゴールカバーを優先するがEmersonはラインを上げる傾向がある。また、ニアのSoučekはかなりゴールカバーを優先し、マンチェスターシティ戦では体を張ったクリアを見せた。

ショートコーナーに対しては、ボールサイドのボックス外の選手とニアポストの選手、そしてトップの選手が3人目として守る。

ショートコーナー後やセカンドボールを回収された後のラインアップは比較的慎重で、またゾーンの選手が多いのでラインを意識しながら上げていく。

セカンドボールを回収した後のカウンターは素早く、前線の選手が後方からスプリントから追い越していくことで連動したカウンターにつなげている。GKのAlphonse Areolaはパンチングが多く、またキャッチした時でもそこまで素早いリスタートには持っていかない。

ウエストハムは比較的長身の選手が多いため、ゾーンのエリアもマンマークの選手も基本的にはミスマッチをつかれたりすることはない。とはいえ、ゾーンで守りきれないエリアやゴールカバーによって生まれるギャップをつかれてしまったりといったことは起こっている。一方で、セカンドボールを回収した後のトランジションの速さは特徴で、相手陣地深くまで進んでいけるシーンは多い。

Wolverhampton Wanderers

ウルヴズは、基本的には10人をボックスに戻し、4人がマンマークで守るが、Pedro Netoを前線に残して9人で守る場合もある。下の図は、9人で守る場合のインスイング時の配置の例である。

ニアポストにはNélson Semedo、ニアにはMatheus CunhaやSasa Kalajdzic、中央とファーにはCBのCraig DawsonやMax Kilmanが立つことが多い。ボックス外の管理はNetoが前線に残っている場合はHwang Hee-chan、トップの位置にはRayan Aït-NouriやPablo Sarabiaを残す場合が多い。だが、トップの選手や前線のNetoも戻ってきて5人でマークを担当することもある。

ゾーンの狙われているエリアとしては、ニアの手前のエリアと中央のゾーンの隙間だ。ニアの手前のスペースは、基本的にニアポストとニアの選手が飛び出して対応することになっているが、あらかじめ人が立っているわけではないので先に触られることも多い。また、中央のエリアも1人しか守っていないため、ゾーンの隙間を活用していこうとするチームは多い。しかし、GKのJosé Sáの守備範囲は広く、またキャッチで攻撃を断ち切ることができるので現状うまく守れている。

ショートコーナーに対しては、ボールサイドのボックス外の相手を管理する選手とニアポストの選手が基本的に対応し、トップの選手がいれば3人目として出てくる。

トップに選手がいない場合は中央のマンマークの選手が出てくるが、その場合はトップに選手がいる場合と比べて対応は遅くなる傾向がある。ショートコーナーやセカンドボールを回収された後のラインアップは慎重で、全体的に最終ラインに残る傾向がある。

一方、セカンドボールを回収できたりGKがキャッチできた後は、前線に残っているNetoを中心にカウンターを仕掛ける。Netoは前線にいない場合でも、ボックス内の高い位置からセカンドボールを追い、前線に上がっていく。彼を追い越していく選手はそこまで多くなく、基本的には単独での前進や突破が期待されている。

ウルヴズは、GKの守備範囲の広さを中心に、今のところは固く守ることができている。そこからNetoを起点にカウンターを仕掛けていこうとするが、基本的には単独のカウンターで終わる場合が多い。そこにHwangだけでなく多くの選手が関われるようになると、Netoのボールキープから2人目、3人目と関わっていけるカウンターになり、より脅威になるだろう。

気づきなど

コーナーキックの守備を見続けた中で、いくつか気づいたことや疑問に思ったことなどがあるので、まとめておく。

全体の配置を確認するだけなら一定数の映像を確認すれば見えてくることが多いが、コーナーキックの守備における選手の能力を分析するのは難しかった。例えば、マンマークの場合なら自分のマークの選手に合わせられてしまったかどうか、などを基準に判断することもできると思うが、一人一人を確認するとなると相当な数のサンプルが必要になる。Wyscoutなどのプラットフォームがあれば話は別だが、とはいえ毎週対戦相手のセットプレーの守備の確認のために一人一人のマンマークの質を確認していくのは相当な労力になるだろう。イングランド2部のクラブですらセットプレーのアナリストを募集している意味がよくわかる。また、データによる比較なども工夫が必要になるだろう。特にゾーンの選手やGKの守備範囲を調べるのであれば、どのエリアでクリアしたかだけでなくどの高さのボールに届いているかという三次元のデータが必要になる。今回「守備範囲が広い/狭い」などをまとめているものの、自分の主観ベースになるため果たして正しいのかどうかはわからない。結局のところ、「見る目」を養うことが一番の近道のような気もする。

マンマークとゾーンの選手に関して、自分なりに重要だなと思うポイントをまとめてみる。マンツーマンに関して、タイトにつくか離して管理するかといった準備だけでなく、きちんとマークにつききれているかという実行力も重要になる。もちろん競り勝って先に触って良いクリアができればベストで、先に触られても体を当てることはできてる、などは確認するポイントだろう。とはいえ、ボールが飛んでこなかったエリアの選手はどうするべきか、という点に関してはよくわからない。相手の選手しか見ず徹底的に体をぶつけることに集中する選手もいれば、ボールとマークを同一視しながら場合によってはマークを捨ててボールにチャレンジできる選手もいる。いわゆる「マンマークの守備がうまい」選手を見つけてマークの仕方や認知の仕方、ステップの踏み方などをもっと分析したい。ゾーンの場合も、蹴られる前から決め打ちで動く選手もいれば、きちんと蹴られてから動く選手もいる。特にニアポストの選手がオートマティックにニアの手前のスペースに動くケースはよく見る。ゾーンの能力として、いわゆる「空間把握能力」がキーになることは間違いないだろう。ボールが蹴られてからどこに落ちてくるかを予測し、自分の管理内ならば素早くポジションを調節し、タイミングよく飛んでクリアする。管理外ならばラインを上げたりゴールカバーをしたり、となるだろう。

チーム戦術に関しては、ゾーンとマンツーマンのミックスの場合に誰をフリーマンとして許容するのか、にチームの色が現れるような気がする。特にゴールエリア内(GK周り)の相手をマークするかどうかで分かれるケースが多い。ゴールエリア内の相手をフリーのままにしておくメリットは、オフサイドを活用しやすい点にある。ニアポストの選手がラインを上げるだけで、ゴールエリアのライン上付近にラインを設定でき、折り返しなどでオフサイドを取ることができる。一方、ゴールエリアの中でマンマークをしていると、その選手が取り残されてしまうケースが多い。これはセカンドボール後の状況でも当てはまるが、ゴールエリア内の選手をマークしていると、ゾーンの選手が主導するラインアップに取り残されるケースが多くなる。また、ニアやファーのポストの選手がゴールカバーをするのかラインを上げるのかにもチームの色が現れる。これも、オフサイドを取ろうとするかどうか、がポイントだろう。ラインアップに関しても、積極的に上げるチームと慎重なチームがある。上げ方も、サイドステップで細かく上げる場合もあれば、前向きのジョグやスプリントで上げる場合もあり、これはボール状況によても変わってくる。特にショートコーナーのあとはサイドステップでじわじわと調整する場合が多い。一方、ボックス外へクリアできた後などのラインアップでは、チームによって大きく異なる。積極的に上げてオフサイドをとることを優先するがラインを下げる準備ができていないチームや、全体が後ろに残ったままラインを積極的には上げないチームもある。また、元の配置に戻るべく前線の選手が素早くラインを離れるチームもあれば、比較的長時間ラインに留まるチームもある。ラインアップひとつをとっても様々だった。

また、ショートコーナーも2人だけで対応するのか3人目を出すのかというところは大きく分かれるところであった。積極的にボールにアプローチするチームもあれば、ボックス内への侵入を防ぐことを重視するチームもある。この辺りの違いは、攻撃のショートコーナーを計画する上で最重要ポイントであろう。

カウンターの設計もチームによってそれぞれの色があった。全くカウンターを狙わないチームもあれば、強力な個に依存するチームもあり、またチームとして素早いトランジションでボールホルダーを追い越していくチームもあった。基本的にGKのキャッチはカウンター発動のきっかけになりやすいが、GKがキャッチを得意としているか、それともパンチングを多用するか、などはとても重要だろう。

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