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ブラッシュアップ!春ゆきてレトロチカの推理パート!

※本記事はゲームシステムに関する考察であるため、ゲームのストーリーに関するネタバレは含みません。尚、使用したゲーム画面画像は、ゲームの公式ホームページより引用しています。(https://www.jp.square-enix.com/retrotica/

2022年にSQUARE ENIX社より発売された、実写推理アドベンチャーゲーム「春ゆきてレトロチカ」。私も実写ゲーム好き&推理作品好きなので発表時からかなり期待しており、発売日に購入し、想像以上の面白さに唸りっぱなしだった。ストーリーや世界観の完成度の高さは申し分なく、実写ゲームだからこそ表現できる緊張と快感の表現はたぶんこれ以上は無理と思うぐらい見事で、自分の中でもかなり上位にきたゲームだった。

実写ゲームとして最高峰の完成度。記憶を消してもう一度やりたいゲーム第1位だ。

ただこのゲーム残念なところがあって、「問題編」と「解決編」のあいだに来る「推理編」のゲームデザインが悪いという点だ。問題編で事件が起こる映像を見て、推理編で事件を整理して推理し、解決編でまた映像を見る、というセットが繰り返されてゲームが進むのだが、推理編は単調なパズルゲームのようになっており、ただの作業に感じて推理できないどころかストレスに感じた。この推理編によりゲーム全体の評価を下げてる気すらする。

せっかくの傑作が一部の要素のせいで評価が下がるのはもったいない。ということで、自分だったらこういうゲームデザインにするというのを、大変失礼ながら、勝手に考えてみた。


現状のゲームデザイン

推理パート 推理画面

問題編の映像をチャプターごとに見返すことができ、それぞれのシーンのキーポイントが、画面右側にピースのように表示される。
画面左側には「どこで殺害された?」などの推理ポイントが提示され、その答えとなるピースを右側から探して当てはめる。
すべての問いかけに対し必要なピースをはめたら次に進めるという流れ。

右側のキーポイントピースを、左側の問いかけに当てはめていく

これ何が問題かと言うと、ピースを当てはめる行為がただの作業になってしまうこと。
まず、ピースに書かれている言葉がどの問いかけに対応するのか分かりづらく、なぜこの問いかけとこのピースの言葉が関係するんだ?みたいなことが多い。だから、プレイヤーは書かれている言葉で考えるのをやめる。
そのうち、ピースの模様が一致する所にだけ当てはめられることに気づき、プレイヤーは言葉ではなく同じ模様のピースを探すようになる。
そうなると、もう論理的に推理とかすることもできなくなるのだ。

スキップできない仮説の再現ムービー

さらにストレスなのは、ピースを当てはめた時、仮説に基づいたこういうシミュレーションCGムービーが流れること。そこそこ長くスキップできないので、ボタン連打タイムになる。しかも一回の推理パートで何回も見ないといけないのだ。

推理パート まとめ画面

上記のパズルゲームをクリアしたら、勝手に「謎はすべて解けた」的な感じになって、まとめ画面が始まる。
ここでは、「なにが気になる?」とか「怪しいのは誰?」とか次々に問われて選択肢を選んで進めていく。すると正解とも不正解とも言わず、「なるほど」とか「本当にそうだろうか」みたいな曖昧にコメントされ、次の質問が延々と繰り返される。
最初いつ終わるのか戸惑ったが、実はいつでも終わらせられた。
考えをまとめる画面のようなのだが、一方的に質問され一方的に与えられた選択肢を選ぶだけなので、これも作業感がある。答えても、それが正解に近いのか遠いのかもわからず、意味を見出せず、自分は最初だけしかやらなかった。

気になる点を直していく

推理パートの役割とは

そもそものゲームデザインから考えていきたい。
ゲーム全体から見た時に、この推理パートではどういう役割であるべきなのか。プレイヤーにどこまでどれくらいの本気度で推理させたいのか。

私が思うに、ここではあまり推理を押し付けず、「プレイヤーに問題編を振り返らせる時間」とするのが良いと考えた。

例えば推理小説を読んでいて、解答編の前に自力で推理したい場合は、また最初から読み直しながら考えるだろう。そこでどう推理するかは読者次第で、一番楽しい時間になることもあると思う。つまり、読者は自分自身と問答するのがやりがいを感じるのだ。

ところがこのゲームでは、推理の仮説をゲーム側から提示され、しかもそれをひとつひとつ考える作業を押し付けられるので、プレイヤーは自問自答しづらくなってしまっているのではないだろうか。
問題編のシーンを自由に見返せるのはいいのだが、そのときに前述のパズルゲームをさせられるので、考えることができなくなってしまう。つまりこの推理パートでは、推理作品として重要な、プレイヤーの推理の機会を奪っているのではないだろうか。
しかもパズルが解けたら勝手に「謎は全て解けた」みたいになって、プレイヤーの心理と一致せず、自力で推理させようという気力を余計に奪っているようにも感じる。
もっと言えば、仮に推理編で完璧に推理させてしまったら、解答編の面白さがなくなってしまう。推理編ではある程度まで推理できるバランスが良いと思った。例えば、トリックは推理できても犯人までは分からないとか。犯人が明らかになる過程は解答編での実写演技には及ばない。

必要な機能

この推理パートで必要なのは、下手にゲーム側でリードせず、「プレイヤーに問題編を振り返らせる時間」に徹することだと思う。
自由にムービーを見返せる機能だけ用意すれば、プレイヤーはそれを見ながら勝手に推理して楽しめるのだ。また、推理までせずとも、充分に問題編の内容を理解させるだけでも解答編の面白さは大きくなるので、推理作品としては必須の過程だと思う。

なのでここでは、問題編を章立てて自由に見返せる機能があればよくて、もしゲーム要素を入れたいと言う話であれば、シーンごとの理解度を確認するテストみたいなのがあれば充分かと思う。事実の確認であれば推理の邪魔にならないし、理解しないまま解答編に進むのも防げる。
こういった、プレイヤーの理解を支援する機能にだけ絞って作ってみてはどうだろうか。



余談だが、私の好きな推理漫画「金田一少年の事件簿」には、解答編の前にそれまでの要点を振り返るシーンがあることが多い。あれはやはり重要で、問題編をしっかり読んでる人にも読んでない人にも事実を整理できるタイミングで、読者に推理を促してるのだ。改めて良い構成だと思った。(漫画的にもページ稼ぎになるだろうし)


改良版ゲームデザイン

気になる点を考慮し、自分だったらこんなデザインにするというのをラフに描いてみた。
あくまで要素デザインなので、細かいことやクオリティは気にしないでね😹

推理パート開始

登場人物がプレイヤーに語りかける構図はそのままに、これまでの出来事を整理しようと促す。

振り返りクイズ

問題編を5〜10個程度のチャプターに分け、それぞれで起こった事実をクイズ形式で出題。「会議の時途中でいなくなったのは誰?」とか。
問題編のムービーはもっと細かく分け、自由に見返すことができる。
クイズは3択で回答し、正解するとそのチャプターは整理完了となる。ここで、問題編ムービーにあった以上の情報や考察はゲーム側から与えてはいけない。例えば正解を選んだあとに「そうだね。この時に何かしてたのかな?」とかいう意見を言われたら推理の妨害になる。

推理パート終わり

すべてのクイズに正解したら、解答編に進んでいいかの確認をしたあと、解答編に進んで推理編は終わりとなる。

※実際はこんなセリフありません

考察

このような、推理はあくまでプレイヤーに任せその支援をする機能のみで構成された推理パートではいかがだろうか。作業感もなく、じっくり推理したい人は無制限に考えられて、そうじゃない人も最低限の理解は担保した上で解決編を見せられる。ゲームの世界観を壊すこともないだろう。
もしこれだけだと推理できないからヒントが欲しいという場合は、ライトユーザー向けに難易度選択ができるのはありかもしれない。

ゲームデザインというのは、そのゲームをどう見せたいかによって大きく変わってくる。例え革新的なアイデアや技術であっても、ゲーム全体としての妨げになるのであれば導入してはいけないのだ。
「何もしない」ことも、ゲームデザインとしては時に正解の選択肢になるのだと思う。

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