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ゴミの城〜024~母の誕生日

これまでのお話

先日、母親の誕生日だった。母は81歳になった。父の方が歳上だったのだが、父が81歳で亡くなったので今年で母と父は同じ歳になった。

誕生日の当日は仕事で顔を出せなかったので、前日の夜に実家へ顔を出した。母が病院から退院してすぐの頃は、医者から「柔らかい物を食べさせてくれ」と言われていたので、差し入れはプリンやヨーグルトなど柔らかそうな物だったのだが、兄に聞いたら「最近は、ある程度の物は食べている」ということで、母の好きなお寿司を持っていった。

ほんの数年前までは母と一緒に出かけたり、よく話しをしたのだけれど、最近は僕のこともよく分かっていないようだ。顔を出しても、いつもベットの上で横になっていて、僕が話しかけても答えることはない。ずっと兄が母の介護をしている。兄は20キロも痩せたそうだ。かなりげっそりしている。

ちゃんと勉強をしておけば良かった。

僕は身勝手に生きてきたから、色んな人に迷惑をかけてきた。

無駄遣いも沢山した。貯金をしておけば良かった。お金があれば母親を良い環境におけたのだ。

後悔は山のようにある。それでも、そんなことを考えても仕方がない。

数年前に体を壊し禁煙をしたが、それと入れ違いに子供が煙草を吸うようになった。ジュースばっかり飲んでいるし……。「病気になるよ」と言っても辞める様子はない。自分も若い頃から親の前で煙草を吸っていたので、せっかく健康に産んでもらったのに、ずっと親に心配をかけてしまって悪いことをしたと、今更ながらに思う。

来月は父親の誕生日と命日がある。父が亡くなって、もうすぐ2年が過ぎていく。夏の暑い夜、深夜に弟から電話があって市立病院へと急いだ。病院の細いベットに寝かされていた父はもう動くことはなかった。あの日から、もう2年が経つ。

今でも父の声は、はっきりと思い出せるのに……。

暑い日が続く。実家の一階、父親がエアコンが嫌いだったので、夏は青い羽が付いた扇風機がいつも回っていた。その扇風機の前で、僕たち兄弟は母親が作ってくれた赤いイチゴのシロップがかかった「かき氷」を食べた。夜は緑色の蚊帳の中で寝ていた。

また畳の上でゴロゴロと過ごせる日が来るのだろうか……。

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