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ロシアのウクライナ侵攻を、母親に話してみた。

1.あまりにも急展開だった

 評論家の中には、ロシアのウクライナ侵攻の代償はあまりに大きく、脅威論は西側のプロパガンダと言い切る人もいました。
 ここから先の内容は、テレビのニュースを観て母親が悲しそうに「なぜ?」を繰り返し口にしたのを聞いて、母親に説明した内容をまとめたもので政治的な内容を含みます。
 情報が偏らないように、国内メディア以外にもアメリカの「abc」やイギリスの「BBC」の報道も参考にしていますが、読まれる方によっては内容が間違っていたり、偏っていると捉えるかもしれませんので、その点はご承知ください。
 北京オリンピック時は推測の域であったことが、48時間で最悪のシナリオが完成しそうです。もともと48時間という数字は広く捉えられていたのですが、大国ロシアが短時間に数々の国際法違反を短時間で犯したことには驚きです。

2.「なぜ?」「いま?」

 ロシアがウクライナに侵攻することに対して、「なぜ?」と感じるのが最初でしょう。メディアで10年前のクリミア半島併合を持ち出して、ウクライナ国内でロシア系住民が迫害を受けているのを救済する、と論ずるものがありますが、これは単にロシアの言い分です。
 クリミアや、ドネツク・ルガンスクにロシア系住民が多いのは確かですが全てではありません。一部住民のために、国際社会を敵に回す軍事作戦は尋常ではありません(ナチスのズデーデン併合を思い出します)。
 ウクライナはもともとソ連のメンバーだったので、ロシアがそれを取り戻したい、という情緒的なこともないでしょう。なぜならウクライナがロシア領になれば、NATOメンバーのポーランドと国境を接することになります。隣国ポーランドとの間に有事が生じれば、ロシアはNATOを敵に回します。

 ところがソ連崩壊後のウクライナは、ポーランド同様に西側との連携を求めNATO加盟を目指しています。ロシアは再三にわたり、NATOへウクライナ加盟を認めないように求めてきました。一度ウクライナがNATOに加盟すれば、ロシアはドネツク・ルガンスクへの影響力を失うと同時に、NATO加盟国と国境を接することになります。またNATOの影響力が相対的に大きくなります。そのためロシアはNATO未加盟のウクライナに進行する必要がありました。NATOは現状、ウクライナに侵攻してロシアを追い払う法的根拠はありません。またそのような国に対してNATOが武力侵攻すれば核戦争の可能性もありますが、NATOにとって戦術核の使用といえどもそこまでリスクを犯す理由がありません。したがって、ロシアにはウクライナがNATOに加盟する前に口実を作って進行する必要がありました。それが北京オリンピックが終了して、ウクライナ周辺の凍結した大地が溶け出す前の今でした。

3.侵攻の終着点は?

 これについては各国のメディア、研究者で一致しています。
 侵攻の名目はドネツク・ルガンスクがウクライナ政府より弾圧を受けていることを解放すること。その他のウクライナ領土の占領は目的としないが、作戦上ウクライナ全土の軍事施設を攻撃する。これについてはロシアはウクライナの制空権を3時間で制したと言われていますが、各都市への攻撃がヘリで行われているので、ロシアは相当早い段階でウクライナ全土の制空権を確保したと見られます。
 ロシア軍の報道官は「斬首作戦」とは明言していませんが、ウクライナ大統領を早期に拘束、もしくは殺害してウクライナ軍の組織的抵抗を集結、ロシアに近い人物を政権においた上で和平条約を締結させる。すなわち政権転覆、傀儡政権の樹立です。
 ウクライナ傀儡政権からの依頼で、ウクライナには今後ロシア軍が駐留し、政治はロシアの意向に基づくものとなる。ここで注目したいのは、ウクライナを名目上の独立国家として認め、併合しないことです。これによりロシアはNATOのポーランドとは一定の距離を保ちつつ、軍事的な緊張関係を保てることになります。
 ロシアにしてみたらウクライナの市民・兵士にいかに多くの犠牲が生じても、将来の傀儡政権がそれを咎めることはないので、行き着くとこまでは一切の手を緩めることはないでしょう。

4.各国の対応

 アメリカはNATO加盟国への兵力の増強を行っていますが、万が一の核戦争を警戒してウクライナ領土内には進行しません。イラク戦争とは大きく異なります。現政権のウクライナ正規軍が壊滅しても、抵抗勢力への軍事物資・経済的協力は行うでしょう。
 ロシア本国に対して強大な経済制裁を行いますが、EUへの天然ガスのパイプライン輸出、北海油田の影響を見ながらの対応となるでしょう。
 「力による現状変更」の成功は、ロシアに近い中国の意思決定に大きな影響を与えそうです。アメリカがロシアに気を取られているあいだに、台湾侵攻の確率は大きく上がるでしょう。事実、ロシアのウクライナ侵攻の脅威が高まると、中国による台湾の防空識別圏への侵入は増加しています。
 中国が台湾に進行すれば、アメリカは速やかな対応を行います。中国も核兵器大国ですが、ロシアに対する脅威とは比べるものではなく世界最強の第7艦隊が対応します。台湾事変勃発は急速に展開するでしょう。
 アメリカが台湾を狙うとしたらその基地は、グァム、沖縄、佐世保、岩国、横須賀あたりになりそうですが、その場合には日本に向けて中国から弾道ミサイルが飛んできそうです。
 ウクライナは対岸の火事ではありません。

5.残念な結末

 ウクライナに傀儡政権が樹立した時点で、ロシアは西側諸国に勝利します。政治連合のEU、軍事同盟のNATOはロシア一国に敗北することになります。
 これに教訓を得て中華思想をもつ覇権主義国家である中国が、どのように動くのかが鍵になりそうです。
 ウクライナ紛争はすでに終了しているとみて間違いないでしょう。

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