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【八人のアダム】二章 旅立ち

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ギャランシティを飛び出したピップとラムダ。 エネルギーも食料もない二人は、新たなシティを探す。
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2023年12月の記事一覧

【八人のアダム】 2−25 旅立ち

【八人のアダム】 2−25 旅立ち

一行がウィークシティへ到着すると、駆け寄ってきたロバート市長は真っ先にティアに詫びた。
「ティアさん、誠に申し訳ございません。まさか、ワイルドたちが誘拐を企てていたとはッ…」
「いえ、私も脇が甘かったです。ただ、ロバート市長も今後は、人員の事前調査などをしっかりなさってくださいね」
「は、おっしゃる通りです。それで、あの、こんなことがございましたが今後の取引に関しては…」
「ええ、今回のことは、ホ

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【八人のアダム】 2-24 帰還

【八人のアダム】 2-24 帰還

「出てくるときに、誰かに見つからなかったか?」
ピップはラムダの服についた汚れを手で払い落としながらいった。
見たところラムダに目立った損傷はなく、ピップはホッとした。服がところどころ焦げてしまっているので、ウィークシティに帰ったら別のものを買ってあげないと。
「はい、ピップ。二階の窓から静かにでたので、誰にも見つかっている様子はありませんでした」
ピップはうなずくと、ラムダにスターバッテリーを持

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【八人のアダム】 2−23 決着

【八人のアダム】 2−23 決着

激しい金属音とともに、ザーズの<モルスラッグ>が地面を転がった。

(ザーズ!)

ワイルドは世界が真っ白になったようなショックを受けて、しばらく動けなかった。しかし、倒れたモルスラッグがよろよろと起きあがろうとしているのを見てワイルドは我に返った。よく見ると、破損したのは脚部だけで、コックピットなど機体の中心部に重大な損傷はないようだった。

(あの小さなスターズはどこだ?)

とワイルドは周囲

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【八人のアダム】 2−22 帝国の仇

【八人のアダム】 2−22 帝国の仇

(なんというスターズだ)

ワイルドは自分たち四機による集中攻撃を回避する小さいスターズを見て、恐怖を感じた。
<ムーンファルコ>は半壊しているとはいえ、その壮絶な火力はいまも健在である。そこにワイルドたち三人の集中攻撃も加わっているのに関わらず、被弾はいまだに皆無である。
その回避性能と情報処理能力に加えて、あの頑強なムーンファルコを半壊させた攻撃力をも有しているのだ。

(やはり、俺の直感は正

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【八人のアダム】 2-21 決断

【八人のアダム】 2-21 決断

「何をやってんだる俺はッ!」

ピップはモルゴンを空中で加速させながら、ワイルドの思惑に気が付かなかった自分を呪った。
目指すのはラムダがムーンファルコと戦闘を行っている地点だが、ラムダとはまだ通信可能な距離にないため、その正確な位置は不明である。そのため、まずは廃墟付近まで戻ろうとしていた。

ワイルドと戦闘を行っていた際、ピップは逃げることにあまりにも必死だった。
ワイルドは元軍人だったという

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【八人のアダム】 2-20 ムーンファルコ

【八人のアダム】 2-20 ムーンファルコ

自律式スターズ同士の戦いというのは、どんなに激しい戦闘の場合でも、不思議と静かな印象を与えるものだと言われている。
そこには人間のような肉体がなく、神経がなく、感情がないためだろう。

自律式スターズは部品を欠損した痛みで声を上げることもないし、迫り来る死に恐怖の叫びを上げることもない。

「だが、それは本当だろうか?」
そう呟いたのは、かのアダム博士だったという。

人間は、五感で得た情報を神経

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