Ton Pan Lar

ミャンマーの若い人はこれから何処に向かうことが出来るのか。 彼ら・彼女らと生きた日々の…

Ton Pan Lar

ミャンマーの若い人はこれから何処に向かうことが出来るのか。 彼ら・彼女らと生きた日々の記憶から、ミャンマーの若い人がどのように生きてきたのかを小説として書くことにより、これから彼ら・彼女らが生きていくことを応援したいと考えました。 ご感想等お聞かせ頂けましたら幸甚です。

マガジン

  • 緬麺屋

    未だにミャンマーは落ち着いていません。毎日どこかで、ゲリラが作った爆弾がいきなり道の真ん中で爆発したり、バイクに乗った若者が国軍に射殺されたり。そのような中、市井の人々はどう生きようとしているのか?を連載小説の形でお伝えしたいと思っています。

  • Diplomacy seen by Eponine

    Introducing selected comments from Office Ton Pan Lar's diplomatic articles (mainly consideration about current Myanmar situation)

  • Office Ton Pan Lar 外交問題考察集

    かつてキッシンジャーに憧れた時があった。チャーチルに惹かれた時もあった。 プーチンに興味を持った。海外で論じられている外交問題についてのOffice Ton Pan Larによる考察をひとつひとつ綴っていきたい。

  • ホテル・インレーの夢

    クーデターから7年、ミャンマーは失敗国家となって崩壊していた。 インレー湖の湖畔のホテルで始まるミャンマーの復讐劇。 小説パドで人気を博したソーミンが少数民族と共に立ち上がる。 (なお、この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。)

  • <Novel> Pado

    ‐Young people in Myanmar‐ Where can young people in Myanmar go from now on? Based on the memories of the days I lived with them, I would like to support their future by writing serial novel about how young people in Myanmar lived. It would be grateful if you could let me know what you think. I would like to use your support I received for the youth of Myanmar. I would like to humbly thank you

最近の記事

緬麺屋 (14)

7.第三試合  「ねえ、どうして『夏の麺』にしたの?」 私は、ティーショップでパイに聞いた。その時、大きな爆発音が聞こえた。ティーショップに居た客は皆、頭を押さえた。 「ポイ、こっちに来い」 パイはそう言って立ち上がると、私の手を掴み、ナワデー通りをパイ麺屋の方に走った。パイはパイ麺屋に入ると階段をそのまま3階まで駆け上がった。3階の一番奥の部屋は扉に鍵がかかっていなくて、パイは扉を開けると部屋の中に飛び込み、窓を開けた。 ナワデ―通りの西の向こうに大きな黒い煙が立ち上って

    • 緬麺屋 (13)

       店の角まで来るとポイの部屋にはまだ灯りがついていた。暫くポイの部屋を見上げていると、窓が開いてポイが顔を見せた。 「そこにいるのはパイ?」 ポイの声は小さかったが、俺が手をあげると窓が締まり、すぐにパイが通りに出てきた。 「どうしたの、こんな夜遅くに出歩いて」 「ここで話をしているのは良くないから、俺の部屋に行こうか」 俺はそう言うとポイの返事を待たずに先に家に入った。  「ねえ、ポイって最近、よく夜になると出歩いていない?」 「うん、ちょっと用事がいくつかあってね」 「

      • 緬麺屋 (12)

        6.第二試合  ナワデー商店街のお店の中で一番遅い時間までお店を開けている火鍋レストランの前を通るのを避け、反対の店の角を曲がってヨーミンジー通りに向かって歩いた。この通り沿いの店は全てもう閉まっている。外国人向けの店の中には2月から店を閉めたままの店が少なくないので、通りは真っ暗だった。 ヨーミンジー通りを通り越して、跨線橋を渡る手前にある細道に入った。雑誌社が入っている建物に入る前に後ろを振り、誰もいない事を確かめて、階段を音を立てないように気をつけて上った。4階まで上

        • 緬麺屋 (11)

           「ポイちゃん、凄い評判いいよ。洋品店も文房具屋もクリーニング屋も、生地屋も美容院も食料品屋も、皆、凄いって言ってるよ。さあ食べさせておくれ」 薬屋のおじさんがそう言いながらお店に入ってきた。パイ麺屋からハンバーガー屋のおじさんと火鍋レストランのおじさんがこちらに歩いてくるのが見えたので、私は3人分を作りに厨房に入った。  「・・・・・・・・」 確かに凄い。薬屋のおじさんがぼそっと言った。 「いや、パイの方はもっと凄かったよな」 「うん、そうかな、俺はポイちゃんの方が凄いよ

        緬麺屋 (14)

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        • 緬麺屋
          14本
        • Diplomacy seen by Eponine
          80本
        • Office Ton Pan Lar 外交問題考察集
          99本
        • ホテル・インレーの夢
          15本
        • <Novel> Pado
          23本
        • ミャンマーの民話・神話・寓話
          11本

        記事

          緬麺屋 (10)

           洋品店のおじさんと文房具屋のおじさんとクリーニング屋のおじさんが一緒にお店に入ってきた。 「ポイちゃん、新商品は出来たかい?生地屋と美容院と食料品屋は、最初にパイ麺屋に行くっていうから、俺たちはポイちゃんの新メニューから食べに来たよ」 洋品店のおじさんは大きな声でそういいながらお店に入ってきた。 「出来てるわよ」 私はそう言うと、厨房から3人分を運んだ。 「これは何という麺?」 私がテーブルに並べた麺を見て、3人のおじさんが一斉に口を開いた。 「リンゴ麺。美味しいわよ。さあ

          緬麺屋 (10)

          緬麺屋 (9)

          5.第一試合  火鍋レストランの二階には絵画教室がテナントとして入っている。 私は絵画教室に一歩入ってびっくりした。以前来た時にあった子供用の机が全て取り払われ、部屋の中に家具が一つもなかった。ただ広い部屋の中に描きかけの3枚の絵が置いてあった。 「どうしちゃったの?教室は止めちゃったの?」 私はマーリンシュエが部屋の窓の側に立ってたばこを吸っているのを見つけて聞いた。 「そうなの。こんなことになって、絵画教室の生徒は一人もやってこないし、彼氏がバリケードに使うからと言って

          緬麺屋 (8)

           パイは夜になるといつも歩いてどこかに出かけて行った。軍によるクーデターが起こった日から大学は閉まったままだった。学生が大学を抗議活動の拠点とすることを防ぐためだろう。私は一日の大半を自分の部屋で机に向かい、窓の正面にあるパイの部屋や店の様子をときどき見ていた。 「ごはんが出来たよ」 父の声に私は「はーい、今行きます」と大きな声で返事をすると、パイの部屋を見た。部屋の灯りは消えていた。毎晩、どこに行っているのだろうか?パイに聞いてもはぐらかされてばかりいた。  「ねえ、お父

          緬麺屋 (8)

          緬麺屋 (7)

          4.試合準備  パイの予感は当たっていた。2月1日に軍がクーデターを起こして、国家顧問や大臣、政権与党の幹部などを逮捕した。街の中の空気は以前とは相当変わっていた。  「では、これからナワデー通り商店街会議を開催します」 洋品店のおじさんが立ち上がって、ティーショップの一角に集まったナワデー通りの店主のおじさんやおばさんに向かって宣言した。洋品店のおじさんの隣に、パイと私が座らさせられている。 「ねえ、こんなことしている場合じゃないと思うんだけれど」 私はパイに小声で言っ

          緬麺屋 (6)

           翌日の日曜日、私は店の中に立っていた。手伝いをするのでもなく、ただぼんやりと立っている私に母が「邪魔、邪魔」と言うけれど、昨日パイから言われたどうしてパイ麺屋とポイ麺屋のメニューが同じなのかについて考える必要があった。パイの得意なハードボイルドの小説のように言うと「答えは現場にある」だ。 モヒンガー、シャンカオスェ、オンノーカオスェ、シーチェ、マンダレーミーシェ、ナンジート、シュエタンカオスェ、トーフーヌェ、コーイーカオスェ、ミーオーミーシェ、ラカインモンティ、カオスエジョ

          緬麺屋 (5)

          3.新商品開発  「いいかい、ポイも麺屋の娘だから当然知っていることと思うけれど、麺料理って簡単な構図なんだ」 私はパイの部屋のベッドに座ってパイの話を聞いていた。私が詰まらなそうな顔をしていることを知っているにも関わらず、何故かパイは熱心に麺について語り始めた。 パイの説明によると、麺は米粉が原料の「モンバッ」と、小麦粉が原料の「カオスェ」、はるさめ風の「チャーザン」の3種類。麺の調理方法は、スープをかけるか、和えるか、炒めるの3種類。従って、麺料理の基本構図は3×3の9

          緬麺屋 (4)

           文房具屋、生地屋、火鍋レストラン、薬屋についても、外国人が買いそうなものは無かった。私は、外国人がナワデー通りを歩く姿をおじさんおばさんの話を聞きながら想像してみたが、何の絵も頭に浮かばなかった。 「でも、麺屋は出来そうじゃないのかな?外国でもスパゲッティとかラーメンとかあるし、外国人も普通に麺を食べているよな」 薬屋のおじさんはいつも余計なことを言うから困る。私の父やパイのお父さんは、生まれてから一度も外国人と話をしたことがないと思う。それなのに外国人向けの麺だなんて、絶

          緬麺屋 (3)

           「パイ、お前からみんなに昨日の話を聞かせてあげなよ」 父がどうしても一緒に行こうと言ったので会合についてきたら、どうやら自分では上手に話すことが出来ないので、私に話をさせようという父の魂胆だったようだ。 翌日のティーショップでの会合には、洋品店、食料品店、ティーショップ、文房具屋、生地屋、薬屋、パイ麺屋、そして私の父の8人が参加していた。クリーニング店のおじさんは午前中は忙しくて仕事を抜け出すことが出来ないので、滅多に会合に参加することはなかった。火鍋レストランのおじさんは

          緬麺屋 (2)

          2.商店街   おい、聞いたかい?ヨーミンジー通りに今度は台湾のパン屋が開店するんだってさ」 一応、ナワデー通りの商店街の会長にもなっている洋品店のおじさんがティーショップに入ってきて言った。 「なんでパン屋が台湾なんだ?小籠包なら分かるけれど」 食料品店のおじさんがコーヒーカップを手にしながら言った。 「そうだな~、不思議だな。パンならフランスパンだろう」 パイのおじさんが適当なことを言った。 「いや、パンはアメリカの朝食だよ」 今度は、私の父がもっと適当なことを言った。

          緬麺屋 (1)

          1.ナワデ―通り  私の家はミャンマーの最大の都市であるヤンゴンのナワデー通りにあります。 ナワデー通りは昔からある商店街です。南に一本下がると、ヨーミンジー通りがあり、ここ数年は外国人向けの新しいお店がヨーミンジー通りに次々とオープンしています。  東と西を結ぶナワデー通りは、長さが200メートル程しかない短い通りです。その通りを挟んで全部で13軒のお店が並んでいます。 通りの南側には、洋品店、食料品店、ティーショップ、クリーニング屋、文房具店、銀行、火鍋レストラン、緬

          緬麺屋 (1)

          Eponine #80 Indian egg problem / Myanmar egg problem

          There was an article in the magazine Cosmopolitan in February 2020, "Why eggs are good for your health." According to it, in recent years, there has been a great debate over "eggs" in Europe and the United States. While the United States D

          Eponine #80 Indian egg problem / Myanmar egg problem

          インドの卵の問題・ミャンマーの卵の問題

          2020年2月の雑誌コスモポリタンに「卵が健康に良い理由」という記事がありました。 それによると、近年、欧米では「卵」を巡って大論争が巻き起こっているそうです。アメリカ合衆国農務省は「卵は優れたタンパク質の摂取源」として推奨している一方で、米国医師会誌は「卵と心臓病のリスク増加および短命」との関連性を示唆する研究内容を発表しているとか。 卵と循環器系疾患の関連性は「週に12個ほどの卵を消費する」など大量に卵を食べている人についての研究であり、1日1個程度であれば気にする必

          インドの卵の問題・ミャンマーの卵の問題