COVID-19 国民の中央年齢と致死率の関係

 COVID-19はいったん収束の兆しを見せたが,東京都や北九州市で感染者が増えており難儀な病気である。韓国でもまた広がっているようだし,実に手強い。
 日本がこの病気にうまく対応しているのかどうか賛否両論ある中,指標の一つに致死率がある。これが高いか低いかデータを元に考えるのだけど,知られているように致死率は高齢者ほど高くなる。そのため国際比較する際には国民の人口構成や年齢別感染率の違いを考慮する必要がある。
 単純に言えば,高齢者が多く感染率も高ければ致死率は高くなり,逆の場合は低くなる。その比較は膨大な手間がかかり難しいが,公開データを元に割り切ってざっくりと比較するなら簡単にできる。

■日本の致死率について
 致死率は
  致死率=(ある病気で亡くなった方の人数)/(その病気かかった人の数)
であらわされる。5/28時点で日本の総感染者は16715人,亡くなった方は883人なので致死率は5.28%である。
 一方,死亡率は「通常1年単位で算出され『人口10万人のうち何人死亡したか』」で示される。日本の人口は1億2651万人程度なので現時点で死亡率は0.07(人)となる。
 以下では致死率を扱う。日本のデータはNewsDigestのサイトから引用した(https://newsdigest.jp/pages/coronavirus/)。

 日本の致死率と世界の致死率を比べるたのが次の図。拡大のため致死率は対数表記にしている。国名の次の(M/DD)はデータが公表された日。

致死率 国際比較

 他国と比べ「高齢者で高く若年層で低い」傾向にあるが,比較している日が異なるのであまり意味はない。同じ傾向にあるという程度の認識で良い。なお,日本では「年齢非公開」の方が5/28時点で144人いる。全体の死者が883人なので16%の方はデータに示されておらず,正確性に欠ける点に留意。次に日本での致死率の変遷を示す。

致死率 国内推移

 国内の比較なので比較的信頼できるデータ。感染拡大に伴い50代以上の致死率が上がっているが40代以下では変わらない。おそらく他国でも感染が拡大すると同様の傾向になるのだろう。
 致死率の定義から,感染者数が増える状況では一時的に致死率が下がる。定義の分母が大きくなるからで,新規感染者が重症化し亡くなるまでにはタイムラグがあり数字に現れるのは遅くなる。以下に感染者数と致死率の関係を示す。

感染者数と致死率

 主として中国由来の感染者が増えた3月上旬,致死率は最低値の1.3%となり,その後の感染抑制により3/23頃まで上昇し3.7%となった。欧米由来の感染増加により1.6%まで低下,4/7の緊急事態宣言後の抑制により次第に増加,現在は5.3%程度。全体の致死率はこのように感染拡大のモードにより変化するので,国際比較する際はモードに注意する必要がある。

■致死率の国際比較
 比較はモードに注意しないといけないと書いておきながら,ここではそれは無視する(本格的な研究ではないので)。3/27のworldmeters (https://www.worldometers.info/coronavirus/)から,累積感染者数と死者数のデータをExcelにコピーし致死率を計算,ある程度感染が広がっている国を対象とするため総感染者数1000人以上の110国を選んだ。データの信用性は考えない。
 「国民の若さ」については中央年齢,つまり「上の世代と下の世代の人口が同じになる年齢」を採用した(http://top10.sakura.ne.jp/WHO-WHS9-88.html)。

中央年齢と致死率1

 日本や欧米など高年齢国とアフリカや中近東など若い国でグループが分かれるが,若い国ほど致死率が低い傾向にある。回帰直線を元に分けると
 ・年齢高く致死率も高い 欧米諸国
 ・年齢高いが致死率低い 香港,シンガポール,アイスランド等
 ・年齢低いが致死率高い マリ,ソマリア,スーダン等
 ・年齢低く致死率低い カタール,バーレーン,オマーン等
の特長が見える。
 本来は致死率が低いはずの若い国で数%台の高い致死率になっているのは,致死性の高いウイルスによるものと考えるより,衛生環境・医療環境・栄養環境が他国より劣っているためと考えるほうが妥当だろう。
 湾岸諸国・産油国が1%以下の致死率なのは,もともとの国民の若さに加え,これらの環境が充実しているからと考えられる。

中央年齢と致死率2

 さて,5/28時点で世界全体の致死率は6.2%。プロットに重ねてみると,そのライン上に米国,中国,イラン,ブラジルなど感染者数の多い国が並び,それより致死率が高い国としてイタリア,スペイン,スウェーデン,英国など欧州の国がある。「感染者数が増えると医療崩壊が起こり救える命が救えなくなる」はこういうことなのだろう。

 ここからは妄想だけど,もし仮に最初に示した年齢別致死率のカーブが国レベルにも応用できるならば(中央年齢が年齢でないことは十分承知の上で),致死率と中央年齢の「本来の関係」はもっと傾きが大きくなるのではないか。つまり,医療環境等が充実している湾岸諸国は異常に致死率が低いのではなく,致死率と中央年齢がマッチングした本来のレベルだと想定すると,その関係は「本来の回帰直線」のようになるはず。
 この妄想では,若い国で直線より上にある国の数は増えるけど,こちらのほうが実態に近いように思う。本来は死ななくても良い若い国民が医療等の環境が良くないため亡くなってしまう。一方,欧米はインフラがありながら感染爆発させてしまい,救える命に追随できなくなった。
 日本は致死率が低いとは言えないけれど,WHO上の最高齢国としてこのレベルに踏みとどまっているのは医療関係者の並々ならぬ努力のおかげ。そして感染拡大に自粛協力した国民と,音頭を取った政府と関係者のみなさん。感謝しかない。

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